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【完全解説】輸出貿易管理令一部改正(2026年2月施行)|FPGA組込装置の追加と国際レジーム合意品目の見直し

2026-05-20濱本 隆太

2025年11月14日に公布された輸出貿易管理令の一部改正(令和7年政令第376号)が、2026年2月14日に施行されました。最大の目玉は、FPGAを搭載したモジュール・組立品・装置を新たに規制対象に追加する別表第一7項(10の2)の新設です。LUT入力数の総計1,800,000以上という閾値、従来の単体FPGA規制を装置レベルに拡張する意図、日本企業の実務対応までを、輸出管理の初心者にもわかるかたちで網羅的に解説します。

【完全解説】輸出貿易管理令一部改正(2026年2月施行)|FPGA組込装置の追加と国際レジーム合意品目の見直し
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株式会社TIMEWELLの田中です。今回は輸出管理担当の方が必ず押さえておきたい「2026年2月14日施行の輸出貿易管理令一部改正」を、初心者にもわかるかたちで解説します。

2025年11月14日、経済産業省は「輸出貿易管理令の一部を改正する政令(令和7年政令第376号)」を公布しました。2026年2月14日に施行され、ワッセナーアレンジメント等の国際レジームで合意された規制品目が日本の輸出令別表第一に取り込まれます。最大の目玉が、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を組み込んだモジュール・組立品・装置を規制対象に加える新設項番「別表第一7項(10の2)」 です。

この記事でわかること

  • 令和7年政令第376号の全体像(公布日・施行日・経過措置)
  • 最大の目玉「FPGA組込装置」の規制要件3つと閾値(LUT入力数1,800,000)
  • 従来の単体FPGA規制を装置レベルに拡張し、ループホールを塞ぐ意図
  • 他の追加品目(ペプチド合成装置、高エントロピー合金粉)と削除品目(うなぎ稚魚)
  • 施行日前の許可申請受付(2025年12月15日から)と既存契約の扱い
  • 日本企業が影響を受ける4つの業界と、実務でやるべき5ステップ

はじめに押さえる3つの用語

本題に入る前に、本記事を読み解くうえで欠かせない3つの用語を整理しておきます。

  • FPGA(Field-Programmable Gate Array):製造後にユーザーが論理回路を書き換えられる集積回路。AI推論・画像処理・通信・計測・暗号処理に多用される(用途固定型のASICと対比)。
  • FPLD(Field Programmable Logic Device):FPGAやCPLDなど、出荷後に構造を変更できるプログラマブル論理デバイスの総称。本改正ではFPGAではなく上位概念のFPLDで規制対象が定義されています。
  • 別表第一(輸出貿易管理令別表第一):日本のリスト規制の核。1〜15項に分類され、本改正で新設される「7項(10の2)」の「7項」はエレクトロニクス領域。

本記事ではこのほか、該非判定書(自社製品が別表第一に該当するか否かを技術的に判定した書面)、貨物等省令(別表第一の細目を定める経産省令)、包括許可(一定範囲を一括で認める許可制度。一般包括/特別一般包括/特定包括の3類型)、BOM(部品表)、CP(社内輸出管理規程)、CISTEC(一般財団法人安全保障貿易情報センター)も頻出します。

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METI's FY2024 data shows 52% of foreign exchange law violations stem from classification errors. TRAFEED cuts determination time by ~70% and stores structured rationale for every decision.

令和7年政令第376号の全体像

項目 内容
政令名 輸出貿易管理令の一部を改正する政令
政令番号 令和7年政令第376号
閣議決定日 2025年11月11日
公布日 2025年11月14日
施行日 2026年2月14日
施行日前許可申請の受付開始 2025年12月15日
所管 経済産業省 貿易経済安全保障局

本改正は年1回の定例リスト改正で、次の3つの柱で構成されます。

  1. 国際輸出管理レジーム合意の国内法令化:ワッセナーアレンジメント(WA)、原子力供給国グループ(NSG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、オーストラリアグループ(AG)で合意された規制リストを別表第一と貨物等省令に反映。FPGA組込装置・高エントロピー合金粉・ペプチド合成装置の追加はいずれもこの柱に基づきます。
  2. 他法令との重複規制の解消:別法令で既にカバーされている品目を削除(うなぎ稚魚など)。
  3. 特例規定の追加:来日外国要人警護用の防護衣の一時的な再輸出について、輸出許可不要の特例を新設。

最大の目玉:FPGA組込装置の追加

本改正で実務インパクトが最も大きいのが、輸出令別表第一7項(10の2)の新設 です。条文上は「フィールドプログラマブルロジックデバイス(FPLD)を組み込んだモジュール、組立品又は装置」とされ、貨物等省令第6条第10号の2も同時整備されました。

規制対象の3要件

新項番では、以下の3要件をすべて満たすものが規制対象(リスト規制、全地域向け)となります。

  1. 形態がモジュール、電子組立品、または装置のいずれかであること
  2. ユーザー構成可能(user-configurable) なFPLDを1個以上搭載していること
  3. ルックアップテーブル(LUT)入力数の総計が1,800,000以上であること

3つ目の「LUT入力数の総計」は初心者にとってつまずきやすいポイントなので、次の節で具体的に説明します。

「LUT入力数の総計1,800,000」とは何か

LUT(Look-Up Table)はFPGA内で論理回路を構成する基本ユニットで、N入力LUTは2のN乗通りの真理値表を保持できる小さな論理ブロックです。条文の「LUT入力数の総計」は、装置に搭載されているすべての物理LUTの独立入力数を合計した値を指します。

計算例:基板上に150,000個のLUT(各6入力)を持つFPGAが2個搭載されているとします。

総計 = 2 個 × 150,000 LUT × 6 入力 = 1,800,000 ⇒ 閾値ちょうど(該当)

FPGA1個では閾値に届かなくても、複数搭載で合算され規制対象に入るケースがある点が重要です。AI推論ボードや高性能信号処理装置では、こうした構成は珍しくありません。

なぜ「装置レベル」で規制するのか――ループホール対策

従来も、FPLD単体(集積回路として別表第一7項(1)で規制)は輸出規制の対象でした。しかし、高性能FPGAを基板に実装し「汎用画像処理ボード」として輸出すれば、装置全体としてのリスト規制が及ばない――こうしたループホール(抜け道)が存在していました。今回の改正は、モジュール・組立品・装置レベルでも規制対象として明示することで、「単体だと規制、装置に組み込めば自由」という構造的弱点を塞いだものです。

該非判定の実務上の留意点と判定書の必要項目

すべてのFPGA組込装置が一律に規制されるわけではなく、条文・運用通達では次の除外条件が明記されています。

  • 機能固定なら対象外:ユーザーが構成変更できず、機能が固定されている装置。
  • 特定用途固定かつ技術非開示なら非該当の余地:FPLD機能が特定用途に固定され、製造元以外に技術情報が非開示の場合(秘密保持契約下を含む)。
  • 「10%ルール」不適用:ユーザー変更可能な状態で組み込まれていれば、部分品の金額比率による除外は使えず装置全体が規制対象。

つまり「ユーザー側で論理回路を書き換えられない設計になっている」と証明できるかが、実務上の分岐点です。CISTEC「項目別対比表」をベースにした該非判定書では、新項番7項(10の2)への対応として最低限**「製品名・型番・リビジョン」「FPLD搭載個数とLUT入力数の総計」「ユーザー構成可能性の有無」「除外条件への該当性と根拠」「判定責任者・判定日」**を備える必要があります。

TRAFEEDのご案内(記事中盤) これらの項目を製品ごとに整備するのは想像以上に重い作業です。AI輸出管理エージェント「TRAFEED」は、BOMと製品仕様を取り込むだけで、新項番7項(10の2)を含む別表第一・米CCL・EU Annex I・中国両用品目目録を横断照合し、根拠付きの該非判定をドラフトします。

旧令との差分(FPGA関連)

項目 旧令(〜2026/2/13) 新令(2026/2/14〜)
規制対象 FPLD単体(集積回路として7項(1)) 単体に加えモジュール・組立品・装置(7項(10の2)新設)
閾値の概念 デバイス単体仕様 LUT入力数の総計(複数FPGAの合算)
「ユーザー構成可能」の定義 明示なし 条文に明記
該非判定の実務 完成品としての評価は限定的 完成品ベンダーが該非判定書を再発行する必要
ループホール 汎用ボード経由で実質回避可能 塞がれた

「該非判定書の再発行」が、輸出に関わる全ての日本企業にとって最大の実務負荷になります。後段で詳しく触れます。

FPGA以外の主な改正項目

全地域向け追加(リスト規制強化)

カテゴリ 追加品目 背景レジーム
化学・バイオ ペプチドの合成を行うための装置 AG合意(生物兵器転用懸念)
材料 高エントロピー合金粉、耐火性金属粉とその合金粉 WA合意(極限環境部材・国防転用懸念)
エレクトロニクス FPLD組込モジュール・組立品・装置 WA合意

ペプチド合成装置は医薬品研究と生物兵器合成の双方に転用可能としてAGで合意、高エントロピー合金粉は複数元素をほぼ等量で含む新世代材料でジェットエンジン部品など極限環境部材に使われます。このほか貨物等省令でも、化学・材料・エレクトロニクス分野で複数項番の仕様・閾値見直しが行われました。

削除

別表第二33項:うなぎの稚魚 は、2025年12月1日施行の農林水産省所管法令で規制対象となったため、輸出令から削除されます(二重規制の解消)。

施行日前許可申請と経過措置

実務担当者にとってもうひとつ重要なのが、施行日前の許可申請経過措置 の取り扱いです。

  • 施行日前許可申請の受付:2025年12月15日から受付開始。正式な許可は施行日(2026年2月14日)以降に下りる仕組みで、施行直後の出荷を予定する企業は早めの申請で出荷遅延を防げます。
  • 包括許可の見直し:品目によっては、一般包括許可・特別一般包括許可から特定包括許可へ移行するケースがあります。経過措置は施行日(2026年2月14日)を起算日とする6カ月間(2026年8月14日まで) で、対象は包括許可関連に限定。「何もしなくていい」期間ではなく、対象範囲点検と切り替え手続きの期間です。
  • 該非判定書の更新:CISTECの「項目別対比表」は「2026.2.14施行省令対応版」を使用。旧版での通関手続きは税関で受理されない可能性があります。
  • 既存契約の取り扱い:施行日時点で未積出の貨物は、既存契約であっても新令の適用対象。基準は契約日ではなく積出時点の法令です。

日本企業への影響:4つの業界

今回の改正で影響を受ける主な業界は次の4つです。

  • 半導体・電子機器メーカー:FPGA搭載の産業機器・計測機器・サーバー・AI推論アクセラレータ等を輸出する企業。用途が広く影響範囲は想定以上。
  • 基板・モジュールメーカー(OEM/ODM):FPGA搭載ボードを海外機器メーカーへ供給する事業者。完成品メーカーからの該非判定書要求がより細かくなる。
  • 暗号機器・通信機器メーカー:FPGAは暗号実装や高速パケット処理で多用され、別表第一9項との重複判定が複雑化。
  • 化学・製薬装置/金属粉メーカー:ペプチド合成装置、高エントロピー合金粉・耐火金属粉の輸出企業。

罰則リスク

施行日以降の無許可輸出は外為法違反となり、個人は最大10年以下の懲役・3,000万円以下の罰金、法人は最大10億円または取引価額の5倍のいずれか高い額の罰金、行政処分として最大3年の輸出禁止措置の対象となります。旧版の該非判定書を使用した通関書類が税関で受理されないリスクも見落とされがちです。

実務でやるべき5ステップ

施行日(2026年2月14日)に間に合わせるための5ステップは次のとおりです。

  1. 製品棚卸し:自社製品のFPGA搭載状況をBOMレベルで棚卸しし、LUT入力数の総計が1,800,000以上の製品をリストアップ。
  2. 該非判定書の更新:新項番7項(10の2)に対する判定書を再発行。3要件と除外条件への該当性を技術情報を整理して判定。
  3. 包括許可の見直し:一般包括・特別一般包括・特定包括の対象範囲に新規制品目が含まれるかを確認し、経過措置6カ月で切り替え手続き。
  4. 取引先への周知:商社・代理店・海外子会社・エンドユーザーに、新項番対応と判定書のバージョン管理を周知。
  5. 社内CPの更新:新項番7項(10の2)を反映し、営業・調達・物流・法務の各部門で教育機会を設定。

実務工数の目安(TIMEWELLの支援実例から) 該非判定書の再発行は 4〜8時間/製品(同型機が多い場合の平均)が目安。FPGA搭載のAI推論ボードや計測機器を50製品以上抱える中堅メーカーでは、棚卸しから判定書更新まで2〜3人月相当を費やすことも珍しくありません。TRAFEEDの導入相談を受けた数社では、同じ型番のバリエーション違いに同一の判定工数を重複投下していた旧令の判定書を流用しようとして手戻りが発生した、というミスが目立ちました。

よくある質問

Q1. 自社の産業機器にFPGAが1個だけ搭載されている場合、規制対象になりますか? LUT入力数の総計(FPGA個数 × LUT数 × 入力数)が1,800,000未満であれば非該当です。総計が閾値以上で、かつユーザー構成可能であれば該当します。製品仕様書からLUT個数と入力数を確認し、計算してください。

Q2. FPGAをファームウェアで固定して出荷している場合は? ユーザー側で構成変更できず、機能が固定されていれば対象外となる余地があります。ただし「ユーザーが書き換え可能」な余地が物理的に残っている場合は注意が必要です。判定は、ベンダーが技術情報の開示状況も含めて行います。

Q3. 海外子会社向けの社内移転も対象ですか? 対象です。グループ内取引であっても、日本から海外へ貨物が出る以上、輸出令の適用対象です。

まとめ

  • 2026年2月14日施行の輸出貿易管理令一部改正(令和7年政令第376号)の最大の目玉は、FPGA組込装置の規制対象化(別表第一7項(10の2)新設)。LUT入力数の総計が1,800,000以上のモジュール・組立品・装置が対象。
  • 単体FPGA規制を装置レベルに拡張し、汎用ボード経由のループホールを塞いだ。他にペプチド合成装置・高エントロピー合金粉等が追加、うなぎ稚魚は二重規制解消で削除。
  • 施行日前許可申請は2025年12月15日から受付開始。経過措置は包括許可関連で6カ月(〜2026年8月14日)。
  • 既存契約でも、施行日時点で未積出の貨物は新令の適用対象(基準は積出時点の法令)。
  • 実務は 製品棚卸し → 該非判定書の更新 → 包括許可の見直し → 取引先周知 → 社内CP更新 の5ステップ。中堅メーカーでは2〜3人月規模の負荷になることを念頭に、早期着手を推奨。

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日本の別表第一が改正されるたびに、自社製品の該非判定書をすべて見直し、取引先へ展開する必要があります。FPGA組込装置のように「単体だと旧来から規制、装置に組み込むと新規対象」というかたちで規制範囲が広がると、BOMレベルでの棚卸しと判定が膨大な作業量になります。

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