キャッチオール規制とは
キャッチオール規制は、リスト規制に該当しない製品や技術であっても、大量破壊兵器や通常兵器の開発に使用される恐れがある場合に輸出を規制する仕組みです。
リスト規制が「特定の品目」を対象にしているのに対し、キャッチオール規制は「すべての品目」を対象にしている点が大きな違いです。名前の通り「すべてを網にかける(Catch All)」規制です。
ただし、食料品や木材など明らかに兵器と関係のない品目は対象外です。具体的には、輸出貿易管理令の別表第1の16項に該当する品目がキャッチオール規制の対象となります。
2つのキャッチオール規制
日本のキャッチオール規制は、2つのカテゴリに分かれています。
大量破壊兵器キャッチオール規制
核兵器、化学兵器、生物兵器、ミサイルの開発等に使用される恐れがある場合に適用されます。
対象地域は、国連安保理決議などで懸念が指摘されている国・地域です(いわゆる「ホワイト国」以外のすべての国が対象)。
通常兵器キャッチオール規制
通常兵器の開発・製造に使用される恐れがある場合に適用されます。
対象地域は国連武器禁輸措置の対象国です。大量破壊兵器キャッチオールよりも対象地域は限定されています。
規制が発動する2つの条件
キャッチオール規制は、以下のいずれかの条件に該当する場合に適用されます。
客観要件(インフォーム要件)
経済産業省から「この取引は懸念がある」と通知(インフォーム)を受けた場合です。この通知を受けたら、輸出許可を申請する必要があります。
主観要件(明らかに知り得た場合)
輸出者自身が、輸出する製品が大量破壊兵器等の開発に使われる恐れがあることを「知り得た場合」です。以下のような兆候があれば、主観要件に該当する可能性があります。
- 需要者(輸入者)が大量破壊兵器の開発に関与している情報がある
- 用途が不自然または曖昧である
- 通常の商慣行と異なる取引条件がある
実務での確認手順
キャッチオール規制に対応するため、輸出者は以下の確認を行います。
ステップ1:用途確認
輸出する製品がどのような目的で使用されるかを確認します。
確認のポイント:
- エンドユーザーの事業内容と整合性があるか
- 数量や仕様が用途に対して適切か
- 過去の取引実績と矛盾がないか
ステップ2:需要者確認
製品の最終的な使用者(エンドユーザー)が、大量破壊兵器等の開発に関与していないかを確認します。
確認のポイント:
- 経済産業省の「外国ユーザーリスト」に掲載されていないか
- 国連安保理の制裁リストに該当しないか
- 公開情報から懸念事項がないか
ステップ3:取引審査
用途確認と需要者確認の結果を踏まえ、取引の可否を判断します。懸念がある場合は、経済産業省に相談するか、輸出許可申請を行います。
「ホワイト国」制度(グループA)
輸出管理において、国・地域は管理レベルに応じてグループ分けされています。
| グループ | 管理レベル | 主な国・地域 |
|---|---|---|
| グループA | 最も優遇 | 米国、EU加盟国、英国、オーストラリアなど |
| グループB | 中程度 | アルゼンチン、南アフリカなど |
| グループC | やや厳格 | 中国、インド、タイなど |
| グループD | 最も厳格 | 北朝鮮、イラン、イラクなど |
従来、グループAの国への輸出ではキャッチオール規制は適用されませんでした。しかし、2025年の法改正により、グループA国向けであっても経済産業大臣からのインフォーム(通知)があった場合には許可申請が必要となりました。これは、グループA国を経由した懸念国への迂回輸出を防止するための措置です。リスト規制は従来通り適用されるため、該非判定は引き続き必要です。
AIを活用したキャッチオール規制への対応
キャッチオール規制の確認作業は、外国ユーザーリストの照合、公開情報の調査、取引内容の精査など、多くの手間がかかります。
EX-Checkは、この確認プロセスをAIで自動化します。需要者情報を入力すると、各種リストとの照合や公開情報の分析を自動で行い、懸念の有無を判定します。経済産業省の基準に準拠しているため、判定結果をそのまま記録として保管できます。
まとめ
- キャッチオール規制はリスト規制の「網」から漏れた品目を補完する規制
- 大量破壊兵器キャッチオールと通常兵器キャッチオールの2種類がある
- 客観要件(インフォーム)と主観要件(知り得た場合)のいずれかで発動する
- 実務では用途確認、需要者確認、取引審査の3ステップで対応する
- 2025年の法改正により、グループA国にもインフォーム要件が適用されるようになった
次の記事では、該非判定の実務フローについて、よくある課題と合わせて解説します。