該非判定の実務ガイド - 手順とよくある課題

TIMEWELL編集部2026-02-01

該非判定の実務フロー

該非判定は、輸出する製品や技術がリスト規制に該当するかどうかを判断する作業です。前の記事で概要を説明しましたが、ここでは実務で必要な具体的手順を解説します。

フロー全体像

  1. 製品仕様の把握
  2. 該当する項番の特定
  3. パラメータの照合
  4. 該非判定書の作成
  5. キャッチオール規制の確認
  6. 輸出許可申請(該当の場合)

ステップ1:製品仕様の把握

まず、輸出しようとする製品の技術的仕様を正確に把握します。

必要な情報の例:

  • 処理速度、周波数、精度などの数値スペック
  • 使用されている材料・素材
  • 搭載されている暗号技術の種類とビット数
  • 動作環境(温度範囲、耐衝撃性など)

メーカーであれば設計書や仕様書から情報を取得できますが、商社の場合はメーカーに「パラメータシート」の提出を依頼する必要があります。

ステップ2:該当する項番の特定

製品の種類から、リスト規制のどの項番に該当する可能性があるかを絞り込みます。

たとえば、半導体製造装置であれば「6項(材料加工)」、通信機器であれば「9項(通信)」が候補です。経済産業省が公開している「貨物等省令」の条文と照らし合わせて確認します。

技術の輸出にも注意

製品そのものだけでなく、設計図、製造ノウハウ、ソフトウェアのソースコードなども「技術」として規制の対象になります。海外の技術者にメールで技術資料を送付することも、輸出管理上は「みなし輸出」として扱われます。

ステップ3:パラメータの照合

特定した項番の規制値(スペックの閾値)と、製品の実際のスペックを照合します。

照合の例(暗号技術の場合):

規制条件 製品の仕様 判定
鍵長が56ビットを超える対称暗号 AES-256(256ビット) 該当の可能性あり
鍵長が512ビットを超える非対称暗号 RSA-2048(2048ビット) 該当の可能性あり

ただし、暗号技術には「一般的に市販されている」場合の除外規定もあるため、条文を慎重に読む必要があります。

ステップ4:該非判定書の作成

判定結果を文書化します。該非判定書には法定の書式はありませんが、以下の項目を含めるのが一般的です。

  • 製品名・型番
  • 判定対象の項番
  • 判定理由(該当/非該当の根拠)
  • 判定日
  • 判定者の署名
  • 参照した法令・通達

該非判定書は、取引の正当性を証明する重要な書類です。税関の事後調査や、経済産業省の立入検査で提示を求められることがあります。

よくある課題と解決策

課題1:専門知識を持つ人材が不足している

該非判定には輸出管理法令の知識と製品の技術的理解の両方が必要です。しかし、両方を兼ね備えた人材は限られています。

解決策:

  • 社内研修の実施(CISTECのセミナー等を活用)
  • 判定プロセスの標準化とマニュアル整備
  • AIツールによる判定支援の導入

課題2:法令改正への対応が追いつかない

輸出管理に関する法令は定期的に改正されます。新しい規制品目の追加や、規制値の変更に迅速に対応する必要があります。

解決策:

  • 経済産業省のメールマガジンやCISTECのニュースレターを定期購読
  • 法改正時の社内影響評価フローを事前に構築
  • 最新法令を反映したツールの活用

課題3:取引件数の増加に対応できない

海外取引が増えると、該非判定の件数も比例して増加します。一件ずつ手作業で判定していては、業務が回らなくなります。

解決策:

  • 過去の判定結果をデータベース化し、類似案件を参照できるようにする
  • 定型的な判定はテンプレート化する
  • EX-CheckのようなAI搭載ツールで判定作業を効率化する

課題4:「みなし輸出」の管理が難しい

外国籍の従業員や海外拠点への技術情報の共有も「みなし輸出」として管理が必要ですが、日常的な業務の中で管理が曖昧になりやすい領域です。

解決策:

  • みなし輸出に関する社内ポリシーを策定
  • 技術情報の分類と管理ルールを明確化
  • アクセス制御によるシステム的な管理

輸出管理の内部体制(ECP)

効果的な輸出管理を行うためには、組織的な管理体制(ECP: Export Control Program)を構築することが推奨されます。

ECPの主な構成要素:

  • 経営層のコミットメント:輸出管理の重要性を全社に発信
  • 管理部門の設置:専任の輸出管理部門または担当者を配置
  • 社内規程の整備:該非判定、取引審査、記録保管のルールを明文化
  • 教育・研修:定期的な従業員教育
  • 監査:内部監査による管理状況の確認

まとめ

  • 該非判定は製品仕様の把握から始まり、項番特定、パラメータ照合、文書化までの一連のプロセス
  • 専門人材の不足と法改正対応が企業の主な課題
  • 組織的な管理体制(ECP)の構築が輸出管理の土台となる
  • AIツールの活用で判定作業の効率化と精度向上が可能

輸出管理入門の3記事を通じて、基本的な仕組みから実務のポイントまでを解説しました。自社の輸出管理体制を見直す際の参考にしてください。