輸出管理の基礎よくある質問20選
株式会社TIMEWELLの濱本です。
「輸出管理って、うちみたいな中小企業にも関係あるの?」「該非判定って何?」「違反したらどうなるの?」。輸出管理は、製造業や商社に限らず、ソフトウェアや技術サービスを扱うあらゆる企業に関わるテーマです。しかし、専門用語が多くて取っつきにくいのも事実です。
この記事では、輸出管理の基本的な疑問に20個お答えします。「そもそも何のためにあるのか」から始めますので、初めての方もご安心ください。
輸出管理の基本
Q1: 輸出管理とは何ですか?なぜ必要ですか?
国際的な平和と安全を維持するために、武器や兵器の開発に転用されるおそれのある製品・技術の輸出を管理する仕組み。日本では外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて運用されています。「うちの製品は武器じゃない」と思っていても、民生品が軍事目的に転用されるリスクがあるため、幅広い製品が管理対象になっている。実際、2007年にヤマハ発動機が産業用無人ヘリコプターを中国の軍事関連企業に不正輸出しようとした事件は、「民生品でも規制対象になる」ことを世に知らしめました。
Q2: どんな企業に輸出管理が必要ですか?
海外に製品を輸出する、海外の企業や個人に技術情報を提供する、外国籍の社員やパートナーに技術を開示する。これらのいずれかに該当すれば、輸出管理が必要です。正直なところ、「うちは関係ない」と思っている中小企業ほど危ない。製造業だけでなく、IT企業、商社、大学、研究機関まで幅広い組織に適用されます。
Q3: 何が規制対象になりますか?
大きく分けて「貨物」と「技術」の2種類。貨物は工作機械、電子部品、化学物質、素材など。技術は設計図、製造ノウハウ、ソフトウェア、実験データなど。ここが一番ややこしいところなのですが、有形のモノだけでなく、メールで送る技術資料や口頭での技術説明も規制対象になり得ます。
Q4: 輸出管理に関係する法律は何ですか?
主に外為法(外国為替及び外国貿易法)と、それに基づく輸出貿易管理令、外国為替令、貨物等省令です。加えて、輸出先の国によっては米国EAR(輸出管理規則)やEU規制も関係します。日本から輸出する場合でも、米国原産品が含まれていればEARの対象になることがあります。
該非判定に関する質問
Q5: 該非判定とは何ですか?
輸出しようとする製品や技術が、法令で規制されている品目に「該当」するか「非該当」かを判定する作業。すべての輸出に先立って行う必要がある、輸出管理の最も基本的な業務です。「該当」なら経済産業大臣の許可が必要で、「非該当」なら許可不要(ただしキャッチオール規制は別途確認)。この判定を正確に行えるかどうかが、輸出管理の要になります。EX-Checkではこの該非判定をAIが支援し、規制条文との照合作業を大幅に効率化できます。
Q6: 該非判定は誰がやるべきですか?
製品の技術仕様を正確に把握できる人(技術部門)と、法令の規定を理解している人(法務・貿易管理部門)の連携が必要です。技術者だけでは法令の解釈が難しく、管理部門だけでは製品仕様がわからない。お客様のケースでも、この連携がうまくいかずに判定に時間がかかっている企業が非常に多い印象です。
Q7: 該非判定はどのように進めますか?
まず製品の用途・機能・技術仕様を整理する。次に該当する可能性のある規制品目の項番を特定し、貨物等省令の規定と製品仕様を照合する。最後に判定結果を記録・保存する。この4ステップが基本の流れです。経済産業省の「貨物・技術のマトリクス表」が判定の入り口として便利ですし、EX-CheckならAIがこの照合作業を支援してくれるので、判定にかかる時間を大幅に短縮できます。
Q8: 該非判定書とは何ですか?
該非判定の結果を文書化したものです。メーカーが発行するケースが多く、製品が輸出規制に「該当」するか「非該当」かが記載されています。取引先から該非判定書の提出を求められることがあります。判定の根拠(どの項番を確認し、なぜ該当/非該当と判断したか)が明確に記載されていることが重要です。
Q9: 判定に迷ったらどうすればいいですか?
経済産業省の安全保障貿易管理課に事前相談が可能です。無料で相談でき、判定の方向性について助言を受けられる。CISTECも判定に関する情報提供やセミナーを行っています。個人的に強調したいのは、「わからないから非該当にしておく」は絶対に避けてほしいということ。これが違反事案のきっかけになるケースが非常に多いんです。
対象品目に関する質問
Q10: リスト規制品とは具体的に何ですか?
輸出貿易管理令の別表第1に掲載された15の項目に分類される品目です。第1項の武器、第2項の原子力、第3〜4項の化学・生物兵器関連、第5〜9項のミサイル関連、第10〜15項の先端技術(デュアルユース品)が含まれます。工作機械、暗号装置、センサー、半導体製造装置なども規制品に含まれます。
Q11: デュアルユース品目とは?
民生用途と軍事用途の両方に使える製品・技術です。高精度の工作機械は自動車部品の製造にも、遠心分離機の部品製造にも使えます。「うちの製品は民生品」と思っていても、技術仕様が規制値を超えていれば規制対象になります。
Q12: ソフトウェアも規制対象ですか?
はい。暗号ソフトウェア、シミュレーションソフト、CAD/CAMデータ、制御ソフトウェアなども規制対象になり得ます。よく見落とされがちですが、クラウド経由で海外からアクセスできる状態にすることも「輸出」に該当する場合がある。SaaS企業やIT企業は特に注意してください。
罰則・リスクに関する質問
Q13: 輸出管理に違反するとどうなりますか?
刑事罰として10年以下の懲役、または個人で3,000万円以下・法人で10億円以下の罰金。行政処分として最大3年間の輸出禁止処分を受けます。経済産業省のウェブサイトで違反者名が公表され、取引先からの信用失墜にもつながる。実際に2017年には大川原化工機が外為法違反の疑いで逮捕される事態になり(後に起訴取消)、企業経営に甚大な影響が出ました。
Q14: 「知らなかった」は通用しますか?
通用しません。「法令を知らなかった」「規制対象だと思わなかった」は免責事由にならない。輸出を行うすべての事業者に、法令遵守の義務がある。だからこそ、社内体制の整備と継続的な教育が欠かせないんです。
Q15: 過去の違反事例にはどんなものがありますか?
精密測定器をリスト規制に該当することを知りながら無許可で輸出したケース、大学の研究者が規制技術を海外に提供したケース、キャッチオール規制の用途確認を怠ったケースなど。2010年には横浜の計測機器メーカーがミャンマー向けにフライス盤を無許可輸出し、刑事罰を受けています。いずれも「うっかり」や「知識不足」が原因で、故意に武器を輸出しようとしたわけではない。だからこそ怖いんです。
届出・手続きに関する質問
Q16: 輸出許可の申請手続きはどう進めますか?
該非判定で「該当」となった場合、経済産業省に輸出許可申請を行います。申請はNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)から電子的に行えます。申請に必要な書類は、輸出許可申請書、契約書、技術仕様書、エンドユーザー証明書などです。審査期間は通常2〜4週間です。
Q17: 包括許可と個別許可の違いは?
包括許可は、一定の条件を満たす場合に複数の輸出をまとめて許可する制度です。同じ製品を繰り返し輸出する場合などに適用されます。個別許可は、1件ごとに申請・許可を受ける方式です。包括許可を取得するには、適切なコンプライアンスプログラム(CP)の整備が条件となります。
社内体制に関する質問
Q18: コンプライアンスプログラム(CP)とは何ですか?
輸出管理の社内ルールをまとめた内部規程です。経営者の責任、組織体制、該非判定の手順、取引審査のフロー、監査の仕組み、違反時の対応などを規定する。経済産業省やCISTECがモデルCPを公開しているので、ゼロから作る必要はありません。自社の規模に合わせてカスタマイズすればOKです。
Q19: 中小企業でも社内体制を作る必要がありますか?
輸出を行うなら、規模に関わらず必要です。「うちは小さいから」は通用しない。中小企業向けの簡易版モデルCPも用意されていますし、日本商工会議所や各地の商工会議所が無料の体制構築支援を行っている。最低限、輸出管理の責任者を決め、該非判定のフローを整備するところから始めてください。
Q20: 該非判定を効率化する方法はありますか?
AIの活用が有効です。TIMEWELLのEX-Checkは、製品情報を入力するとマルチLLMが規制条文との照合を行い、該非判定を支援します。最終判断は人間が行いますが、事前のスクリーニングをAIが担うことで、判定にかかる時間を大幅に短縮できます。多言語対応なので、海外拠点との連携もスムーズです。
まとめ
輸出管理の基礎で押さえるべきポイントです。
- 輸出管理は製造業だけでなく、技術やソフトウェアを扱うすべての企業に関係する
- 該非判定は輸出の基本。技術部門と管理部門の連携で進める
- 違反すると懲役10年以下、罰金10億円以下。「知らなかった」は通用しない
- 社内体制(CP)の整備は必須。まずは責任者の任命と判定フローの整備から
- AIを活用すれば該非判定の効率化が可能
輸出管理は「知らなかった」が最大のリスクです。まずは自社の製品・技術リストを作成し、該非判定が必要なものを洗い出すところから始めてみてください。その作業をAIで効率化したい場合は、EX-Checkが該非判定から需要者スクリーニングまでカバーしています。
参考文献
- 経済産業省「安全保障貿易管理 輸出管理への入門」2025年12月
- CISTEC「該非判定の手引き」2025年
- ジェトロ「安全保障貿易管理 早わかりガイド」2024年
