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日本人は子どもを望んでいないのか|理想2.25人・現実1.14が示す「望んでも持てない国」

公開2026-08-24濱本 隆太

世界の出生ギャップ地図で日本は最も濃い赤に塗られています。ただしこれは出生率の低さではなく「理想と現実の差」を測った図です。夫婦の理想は2.25人、実際の出生率は1.14。望んでいないのではなく持てていない。ならば原因は価値観ではなく設計であり、設計は変えられます。

日本人は子どもを望んでいないのか|理想2.25人・現実1.14が示す「望んでも持てない国」
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。先日、世界の出生ギャップを国別に塗り分けた地図がX上で大きく拡散し、日本は最も濃い赤に塗られていました。イーロン・マスク氏がこれに反応し、「何年も前から警告してきた」と述べたことで、さらに広がったようです。

この地図、私も最初は「日本の少子化がいかに深刻かを示した図」だと受け取りました。ただ元データにあたって、読み方を間違えていたことに気づきました。この地図は出生率の低さを測ったものではありません。

そして正しく読むと、日本にとってはむしろ厳しい話になります。順に説明します。

この地図が本当に測っているもの

出典はInstitute for Family Studiesが2019年2月に公表した「The Global Fertility Gap」という記事で、著者はLyman Stone氏です1。地図の副題にはこう書かれています。

Estimated Total Fertility Rate minus Average Ideal Fertility of Reproductive Age Women

推定合計特殊出生率から、生殖年齢の女性の平均理想子ども数を引いたもの。つまり測っているのは出生率の水準ではなく、望んだ数と実際の数のズレです。この指標を出生ギャップ(fertility gap)と呼びます。

証拠は地図の中にあります。ニジェールが日本とほぼ同じ濃さの赤で塗られている。ニジェールの合計特殊出生率は6を超え、人口は急増している国です。もしこれが「存続可能性の地図」なら、ニジェールが日本と同色になるはずがありません。ニジェールが赤いのは、そこに住む女性の理想がさらに高く、実際の出生数が理想に届いていないからです。

データセットの中身も確認しました。141か国、86の出典、1936年から2018年にわたる727のデータ点を集めたもので、地図に使われているのは2000年から2018年の平均値です1。理想子ども数を尋ねる設問は「十分な資源があるとしたら、あなた個人にとって理想的な子どもの数は何人ですか」という形式が優先されています。Stone氏は、圧倒的多数の国で女性は理想より少ない子どもしか持たないと述べ、世界全体で年間270万人の「欠落出生」が生じていると推計しました1

この読み方の違いは、日本にとって都合のいい話ではありません。「存続可能性が低い」なら他国と並んで一緒に沈む話ですが、「望んだ数を持てていない」は自国の設計の問題を指しているからです。

日本の数字。理想2.25人、現実1.14

では日本の出生ギャップは実際どれくらいなのか。ここは海外のデータセットに頼る必要がありません。同じことを測っている日本の一次統計があります。

国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに実施している出生動向基本調査です。2021年6月に実施された第16回調査の数字を並べます2

指標 第16回(2021年) 前回からの変化
夫婦の平均理想子ども数 2.25人 漸減が続く
夫婦の平均予定子ども数 2.01人 横ばい
妻45〜49歳の完結出生子ども数 1.81人 1.86人から減少
未婚男性の平均希望子ども数 1.82人 1.91人から減少
未婚女性の平均希望子ども数 1.79人 2.02人から減少

そして現実の側です。厚生労働省が2026年6月3日に公表した2025年の人口動態統計によれば、出生数は67万1,236人で10年連続の過去最少、合計特殊出生率は1.14で過去最低となりました3。死亡数は158万9,489人、自然増減はマイナス91万8,253人で、19年連続のマイナスです3

理想2.25人に対して、実際の出生率は1.14。1人分を超える開きがあります。 冒頭の地図で日本が濃い赤に塗られていたのは、まさにこの差です。

数字を並べて改めて思うのは、この差の大きさです。夫婦が「2人以上が理想」と答え、「2人は持つつもり」とまで答えているのに、社会全体では1.14しか実現していない。ここには、結婚に至らない人が増えていることと、結婚した夫婦でも予定どおりにいかないことの、両方が含まれています。

なお、数少ない明るいシグナルもあります。2025年の婚姻数は48万9,119組で、2年連続の微増でした3。出生の多くが結婚と結びついている日本の構造を考えると、ここは注視する価値があります。

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なぜ持てないのか。52.6%が答えた理由

出生動向基本調査の優れているところは、「なぜ理想の数を持たないのか」を当事者本人に直接聞いている点です。予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦への設問で、最も多く選ばれた理由はこれでした2

「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」52.6%

半数を超えています。しかも同調査は、妻の年齢によって理由が変わることも示しています。妻が35歳未満の夫婦では、養育費・教育費・住居・仕事といった経済的な理由の選択率が高い。一方、妻が35歳以上の夫婦では「高年齢で生むのはいやだから」「ほしいけれどもできないから」という身体的な理由が上位に来ます2

この2つは地続きです。経済的な理由で先送りした結果、身体的な制約に突き当たる。若いうちはお金が足りず、お金が足りるころには年齢の壁が来ている。実際、不妊の検査・治療を受けたことのある夫婦は前回の18.2%から22.7%へ増え、4.4組に1組に達しました2

つまり日本の出生ギャップの中身は、かなりの部分が経済と時間、そしてその結果としての年齢です。「子どもはいらない」という選好ではありません。

念のため、価値観の変化を否定するつもりはありません。未婚女性の平均希望子ども数が初めて2人を割ったこと、「結婚したら子どもを持つべき」という規範への支持が大幅に低下したことも、同じ調査が示しています2。ただ、夫婦の理想が2.25人ある以上、1.14という現実を価値観だけで説明することはできません。

これは価値観の変化ではなく、設計の失敗である

ここからは私の見解です。

「若い世代の価値観が変わったのだから仕方がない」という説明を、私は何度も聞いてきました。この説明には、聞く側にとって非常に都合のいい性質があります。打つ手がなくなるからです。 選好が変わったのなら、政策は無力ということになる。誰も責任を負わなくてよくなる。

しかしデータが示しているのは選好の問題ではありません。理想2.25人、予定2.01人、現実1.14。望んでいるのに持てていないのなら、そこにあるのは選好ではなく制約です。そして制約は、選好と違って設計で動かせます。

もう一つ、私が失敗だと考える理由があります。同じ調査は、改善した項目もはっきり示しているからです。第1子出産前後の妻の就業継続率は、5年間で5割台から69.5%へ上がりました。就業を続けた人の79.2%が育児休業制度を利用しています2。制度を作り、運用を変えれば、行動は実際に変わる。それが証明されている領域があるのに、経済的制約のほうは52.6%が理由に挙げ続けている。できる領域があると分かっていて、まだ動いていない。それは仕方のないことではなく、優先順位の問題だと思います。

将来推計も見ておきます。社人研の2023年推計では、2020年に1億2,615万人だった総人口は2070年に8,700万人となり、高齢化率は28.6%から38.7%へ上がります。総人口が1億人を割るのは2056年の見込みです4。50年で3割以上減る社会で、いまと同じ設計が持つとは考えにくい。

マスク氏の警告と、その批判を両方見る

冒頭のマスク氏の反応に触れておきます。氏がこの問題を語るのは今回が初めてではありません。

2022年5月7日、日本の人口が過去最大の減少幅を記録したという報道に反応して、氏はこう述べています。「当たり前のことを言うようだが、出生数が死亡数を上回るように何かが変わらない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう。それは世界にとって大きな損失だ」5。同年8月には「低出生率による人口崩壊は、地球温暖化よりはるかに大きな文明のリスクだ」とも述べました6。2021年にはテキサス大学オースティン校へ1,000万ドルを寄付し、人口動態を扱う研究の立ち上げを支援しています6

一方で、この主張には正面からの批判もあります。米シンクタンクの研究者Tobias Harris氏は2022年の時点で、日本の人口をめぐる本当の懸念は「日本が存在しなくなる」ことではなく、人口が低い水準へ移行していく過程で生じる深刻な社会的混乱にあると指摘しました5。国連の推計では、世界全体の人口は2050年に97億人、2080年代半ばに104億人まで増え続ける見込みです7。「世界人口の崩壊」と「特定の国の急速な収縮」は、分けて考える必要があります。

私はこの批判のほうが実務的だと思っています。日本が物理的に消滅するかどうかは、少なくとも私たちが生きている間の論点ではありません。論点は、生産年齢人口が減り続けるなかで、医療も物流もインフラも維持できるのか。消滅の心配ではなく、機能低下の心配です。そしてこちらのほうが、はるかに手前に迫っています。

その意味で、マスク氏の警告は注意を引く役には立ちました。ただ、注意が向いた先で議論すべきは「絶滅するかどうか」ではなく、「望んだ数を持てない状態をどう解くか」だと考えています。

これからどうすべきか

では何をするか。私が優先順位が高いと考える順に3つ挙げます。

第一に、費用の不確実性を減らすことです。 52.6%が挙げた経済的理由の中身は、いま手元にお金がないという話だけではありません。これから18年から22年にわたって、いくらかかるか読めないという不確実性です。人は不確実な支出に対して保守的に振る舞います。金額の多寡以上に、見通しが立つかどうかが効く。現金給付は分かりやすい手段ですが、単発の給付は不確実性を減らしません。教育費のように長期にわたる支出について、いくらで済むかが事前に確定する設計のほうが、行動を変える力は強いはずです。

第二に、若い時期に持てるようにすることです。 経済的理由で先送りし、身体的制約に突き当たるという流れがデータに出ている以上、支援を後ろ倒しにするほど効きにくくなります。20代の可処分所得と住居費に効く施策は、40代向けの施策より優先度が高い。ここは私の意見ですが、調査の年齢別の結果を見る限り、そう読むのが自然だと思います。

第三に、労働力が減る前提で仕事の設計をやり直すことです。 ここが企業の担当領域です。出生率が明日上がっても、その子たちが労働市場に入るのは20年後です。今後20年の労働力減少は、もう確定しています。 2070年に高齢化率が38.7%になる社会で、いまと同じ人数を前提にした業務設計は持ちません。

3つ目について、私たちは仕事で日々向き合っています。人を増やして解決してきた業務を、増やせない前提で組み直す。AIと自動化はそのための道具であって、流行だから導入するものではありません。自社の業務がいまどの程度その前提に耐えられるかを確かめたい方は、AIリテラシー診断のような棚卸しから入ってみるのも一つの手です。組織全体の設計の話はWARPでも扱っています。

まとめ。望んでいるのに持てていない、という事実から始める

事実を確認します。話題になった地図が測っているのは出生率の低さではなく、理想と現実の差です1。日本の夫婦の平均理想子ども数は2.25人、平均予定子ども数は2.01人2。一方で2025年の合計特殊出生率は1.14、出生数は67万1,236人で10年連続の過去最少です3。理想の数を持たない理由の最多は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」で52.6%2。総人口は2070年に8,700万人になる見込みです4

この記事で一番伝えたかったのは、日本人が子どもを望まなくなったわけではないという一点です。望んでいる。持てていない。この2つが同時に成り立っているという事実から出発しないと、対策は必ずずれます。価値観の問題にしてしまえば議論は終わりますが、それは終わったのではなく、諦めただけです。

企業にできることは限られています。国の制度を動かすのは私たちの仕事ではありません。ただ、労働力が減る前提で仕事を作り直すことは、いますぐ自社の判断でできます。そしてそれは、子育て世代が働きながら望んだ数の子どもを持てるかどうかにも、直接つながっています。長時間労働を前提にした業務設計を放置したまま、少子化を政策のせいにするのは筋が通りません。

まずは自社の主要な業務について、10年後に人員が2割減っても回るかを一度試算してみてください。回らないなら、そこが着手点です。組織の設計を具体的に相談したい方は、個別相談からお声がけいただければ、状況を伺ったうえで一緒に考えます。

参考

数値はすべて一次統計と発表元の資料から取りました。マスク氏の発言および識者の批判は報道を通じて確認しています。

Footnotes

  1. The Global Fertility Gap — Lyman Stone, Institute for Family Studies — 2019年2月25日 2 3 4

  2. 第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)結果の概要 — 国立社会保障・人口問題研究所 — 2021年6月実施 2 3 4 5 6 7 8

  3. 令和7(2025)年 人口動態統計月報年計(概数)の概況 — 厚生労働省 — 2026年6月3日公表 2 3 4

  4. 日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要 — 国立社会保障・人口問題研究所 2

  5. Elon Musk tweet on Japan doomed by low birthrate provokes anger — The Japan Times — 2022年5月9日 2

  6. Elon Musk tweets "population collapse" — Newsweek 2

  7. World Population Prospects — United Nations Department of Economic and Social Affairs

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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