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日本の美大に留学生が集まっている|数字を正確に読み、多様性と研究セキュリティをどう設計するか

公開2026-08-16濱本 隆太

日本の美術・デザイン系大学に留学生が集まっています。マンガやデザインを学びに、世界から人が来ている。喜ばしいことです。同時に、留学生の出身国が一国に偏っていることをどう考えるかという論点もあります。数字を正確に読むところから始めます。

日本の美大に留学生が集まっている|数字を正確に読み、多様性と研究セキュリティをどう設計するか
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株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。

日本の美術・デザイン系の大学に、海外から学生が集まっています。マンガやアニメーション、デザインを学びに来ている。私はこれを、素直にうれしいことだと思っています。

日本の強みは何かという議論をすると、たいてい製造業か、あるいは半導体材料のような素材の話になります。ただ、世界から人が「学びに来ている」領域という意味では、クリエイションはかなり上位にあるはずです。お金を払って、母国を離れて、日本語を覚えてまで学びに来る。これは相当な評価です。

一方で、留学生の出身国が特定の国に偏っていることをどう考えるかという論点もあります。研究セキュリティの話も出てきます。この二つを、感情ではなく数字と公的文書で整理してみたい、というのがこの記事です。

先にお断りしておくと、この記事は一般的な情報の整理であり、個別の大学や個人についての評価ではありません。制度の具体的な適用は所管府省の最新の資料と各機関の規程でご確認ください。この記事は、その議論をするための地図のようなものだと思って読んでいただければと思います。

まず、数字を正確に読む

この話題では「7割」という数字がよく出てきます。ここを最初にはっきりさせておきます。

各大学が公表している学生数から算出すると、こうなります。

大学 留学生に占める中国籍 全学生に占める中国籍
京都精華大学 74.2% 22.4%
多摩美術大学 66.3% 9.0%
武蔵野美術大学 63.7% 9.4%

いずれも各校の公表資料(2026年5月1日現在)から算出したものです123

「7割」は留学生の中での構成比です。学生全体に占める割合ではありません。ここを取り違えると、実態を3倍から7倍に膨らませて語ることになります。

留学生の中で一国が7割を占めるというのは、それ自体が論点になる数字です。ただ「美大生の7割が中国人」という話とはまったく別物なので、どちらの話をしているのかは常にはっきりさせたほうがいいと思います。

もうひとつ、全国の統計も見ておきます。2025年5月1日現在の留学生総数は408,069人で過去最多でした4。ここだけ見ると「留学生が急増している」という話になります。

ところが出身国別の内訳を見ると、印象が変わります。全留学生に占める中国の構成比は、2024年の36.7%から2025年は32.1%へ、4.6ポイント下がっています。中国からの実数は7,612人増(6.2%増)で、全体平均の21.2%増を下回っています。増加を牽引したのはネパール(35,423人増)、ミャンマー、スリランカでした5

つまり全国で見れば、留学生の増加は中国からの増加ではありません。この点は、議論の前提としてかなり大きいと思います。

集まっているのは「美大」ではなく、マンガとデザイン

もう少し中を見ると、この現象の形が見えてきます。

京都精華大学が公表している学部別のデータから留学生比率を計算すると、こうなります。マンガ学部46.4%、デザイン学部28.6%、芸術学部27.8%、メディア表現学部13.0%、人文学部9.1%1

大学まるごとの話ではありません。マンガ、アニメーション、デザインという特定の領域に集まっています。

これは、日本が本当に強い領域に世界から人が来ている、ということでもあります。半導体や自動車の話をするときには「日本の技術が流出する」という警戒から入りがちですが、マンガやアニメーションの教育に人が集まっているのは、素直に成果として受け止めていい部分だと私は思っています。

もう一点、学部と大学院でまったく様子が違います。

大学 学部の留学生比率 大学院の留学生比率
文化学園大学 23.4% 86.2%
京都精華大学 29.2% 64.1%
武蔵野美術大学 11.6% 50.3%
多摩美術大学 10.7% 48.3%

大学ポートレート(私学版)のデータから算出しました6

研究活動が行われるのは大学院です。研究セキュリティを論じるなら、実態に近いのはこちらの層になります。

ちなみに国立の東京藝術大学は、美術学部の学生1,001人に対し外国人学生15人で1.5%と、私立とは比較にならないほど少ない7。ただしこれを「国立は選別しているが私立は緩い」と読むのは早計です。同大の留学生321人のうち中国籍は218人で、留学生に占める割合は67.9%と私立の美術系大学とほとんど変わりません7。国立か私立かではなく、学部か大学院かという段階の差だと見たほうが正確です。

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政府方針は「国籍で判断しない」と明記している

ここからが本題です。

留学生の受入れやチェックの話になると、国籍をどう扱うかという問題が必ず出てきます。この点について、日本政府はかなりはっきりした文書を出しています。

文部科学省の「大学等の研究セキュリティ確保に向けた文部科学省関係施策における具体的な取組の方向性」(2024年12月18日)は、基本的考え方の柱として次を掲げています。

研究セキュリティ確保の取組において、人種や国籍等による差別があってはならない。8

同じ文書は本文で、諸外国でも差別とならないよう慎重な対応が進められているとしたうえで、「我が国の取組が差別的であると国際的に捉えられることがないように留意する必要がある」とまで踏み込んでいます8

さらに新しいところでは、有識者会議がまとめた「研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書」(2025年12月)にも明記があります。

なお、相手方等が信頼できるパートナーであるかどうかを判断するに当たって、国籍や人種、宗教・文化等を理由とした差別的な取扱いがあってはならないことは当然である。9

では何で判断するのか。政府の研究インテグリティ確保方針(2021年4月27日 統合イノベーション戦略推進会議決定)が研究者に求めているのは、次の二つの開示です10

  • 国内外を問わず、補助金・助成金・共同研究費・受託研究費などすべての研究資金の応募・受入状況
  • 兼業、外国の人材登用プログラムへの参加、雇用契約のない名誉教授などを含むすべての所属機関・役職

判断軸は資金源と所属の透明性です。国籍は判断基準として出てきません。

これは実務としても筋が通っています。国籍で線を引いても、資金の流れも所属も見えないままです。逆に資金と所属が開示されていれば、どの国の人であっても同じ基準で確認できます。

科研費では既にこれが応募要件になっていて、研究インテグリティに係る誓約状況を登録していないと応募できない運用になっています11。要求されているのは誓約と情報開示であって、国籍申告ではありません。

それでも懸念される制度について、条文で確認する

中国の国家情報法に触れないわけにはいかないと思うので、条文の事実として整理します。

同法第7条は「いかなる組織および公民も、法に基づき国家の情報活動を支持し、援助し、協力しなければならない」と定めています。これはよく引用される条文です。

ただ、この条文だけを引くと「中国籍である以上、日本にいる留学生も情報提供の義務を負っている」という読みが自動的に生まれます。ここは慎重に見る必要があります。

条文を確認すると、いくつか押さえるべき点があります。第7条の直後の第8条は、情報活動は法に基づいて行われ、人権を尊重・保障し、個人および組織の合法的権益を擁護しなければならないと定めています。罰則を定める第28条の構成要件は「妨害」であって「拒否」ではありません。そして全32条を通して、国外に居住する自国民に義務を課すと明示する条文は見当たりませんでした。

また、日本政府がこの条文について「中国籍であることを理由に協力義務を負う」という読み方を公式に採用した事実は、確認できませんでした。2019年の質問主意書に対する答弁書は、用語の意味が明らかでないとして答弁していません。

条文が存在することと、それが国外居住の個人に対して実際に適用された事例があることは別です。後者について検証可能な公的情報は、調べた範囲では確認できませんでした。

こう書くと歯切れが悪いと感じられるかもしれません。ただ、ここを曖昧にしたまま「だから留学生は危ない」と進むと、根拠のない一般化になります。制度への懸念を語ることと、目の前の個人を疑うことは、切り分けて扱うべきだと考えています。

関連して、見落とされがちな事実があります。英国議会の情報安全保障委員会の報告書には、中国からの学生が複数いる教室では発言しなくなるという証言が記載されています。この記述の文脈は、留学生を疑うためのものではありません。留学生が圧力を受ける側であるという指摘です。

EU理事会の勧告も、出身国による在外同胞への強制に注意し、留学生や博士課程学生を保護すべきだとしています。日本学術会議の見解も、脆弱な立場にある留学生はとりわけ慎重に保護する必要があるとしています。

留学生が自由に発言できる環境を守ることも、大学の責任のうちだということです。この視点は、日本の議論ではあまり出てきません。

多様性は、閣議決定に書かれている

では、出身国の偏りを問題にすること自体はどうなのか。

これも公的文書に答えがあります。骨太方針2025(2025年6月13日閣議決定)は、留学生40万人目標の注記としてこう書いています。

目標の実現に当たっては、外国人留学生の出身国・地域の多様性に留意する。12

閣議決定の中に、出身国の多様性に留意するという文言が入っています。文部科学省と経済産業省が参加する政府会議のまとめでも、「現状では、特定の国・地域からの比率が高く多様性確保という観点からは課題がある」と明記されています13

つまり、問題設定は「特定の国が危険」ではなく「多様性が不足している」です。この枠組みなら、差別にならずに議論できます。

考えてみれば当然で、これはどの国であっても同じ話です。仮に留学生の7割がフランスからだったとしても、教育の場としては同じ問題が生じます。多様な視点が交わることに教育的な価値があるのなら、一国に偏った構成はその価値を損ないます。国籍の問題ではなく、教育設計の問題です。

諸外国がどうしているかも見ておきました。オランダは欧州域外からの定員上限を設定できる制度を持っていますが、区分はEU域内か域外か、そして教育言語です。オーストラリアの制度は総数の優先順位付けで、政府自身が「上限ではない」と明言しています。カナダは州・準州別の配分です。英国には国籍別のクォータはなく、政策の方向は特定国への依存を減らす「分散」です。

調べた範囲では、特定国籍を名指しした上限を設けている例は見つかりませんでした。総数、機関別、地域別、教育言語といった軸で調整されています。日本の骨太方針が「出身国・地域の多様性に留意」という書き方をしているのは、国際的な扱いとも整合しています。

ただし、日本の大学の国際化を支援する事業の成果指標を見ると、留学生数や比率は指標に入っている一方で、出身国の多様性は指標に入っていません。閣議決定で留意するとされているものが、大学を評価する指標には落ちていない。ここは制度設計としてつながっていない部分だと感じます。

大学が実務としてやれること

整理すると、こうなると思います。

受入審査は、国籍ではなく所属と資金で見る。 政府方針が求めているのは資金の受入状況と所属機関の開示です。この情報が出てこない、あるいは確認できないという場合に、確認できるまで進めないという運用にする。これは国籍による排除ではなく、手続の話です。どの国の出身であっても同じ基準が適用されます。

大学院と研究室の単位で考える。 学部全体の比率を眺めても、研究セキュリティの実態は見えません。比率が5割から9割に達しているのは大学院です。ただし念のため書いておくと、政府の研究セキュリティ手順書が対象としているのは、所管府省が指定した特定の研究開発プログラムであって、すべての研究活動ではありません。比率が高いこと自体が問題という話ではないので、そこは混ぜないほうがいいと思います。

多様性を、目標として持つ。 閣議決定に書かれている以上、大学が出身国の多様性を自校の目標として設定することには根拠があります。特定国を減らすのではなく、他の国からの受入れを増やすという形にすれば、誰も排除せずに構成を変えられます。

留学生を守る仕組みも用意する。 学生が出身国からの圧力を受けることがありうるという前提で、相談窓口や発言の自由を守る運用を持っておく。これは国際的な指針が求めている方向でもあります。

最後に

この話題は、扱い方を間違えると簡単に差別になります。だからといって触れないでいると、大学は判断の根拠を持てないまま個別に対応することになります。

私が調べていて意外だったのは、日本政府自身が「国籍で差別してはならない」と明文で書いていることでした。文部科学省の文書にも、研究セキュリティの手順書にも、はっきり書かれています。同時に、閣議決定には「出身国の多様性に留意する」とも書かれている。この二つは矛盾しません。個人を国籍で判断しないことと、構成の多様性を設計することは、別の次元の話だからです。

そして忘れたくないのは、この現象の出発点です。日本のマンガやデザインの教育に、世界から人が学びに来ている。これは日本が長い時間をかけて積み上げてきたものが評価されているということです。もっと世界に売っていい領域だと思いますし、来てくれた学生が良い教育を受けて帰る、あるいは日本で活躍してくれるなら、それが一番いい形です。

多様性を設計するのも、セキュリティの手続を整えるのも、その価値を守るためのものであってほしいと思います。

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参考文献・一次情報

Footnotes

  1. 京都精華大学「学生数・教員数」(2026年5月1日現在)。学部生4,102名・大学院生117名の計4,219名、うち留学生1,271名。学部の出身国内訳は中国877名ほか計20の国・地域。学部別留学生比率は同ページの学部別・コース別留学生数表から算出。 https://www.kyoto-seika.ac.jp/about/number.html 2

  2. 多摩美術大学「外国人留学生数」(2026年5月1日現在、在留資格「留学」のみ対象・令和8年度学校基本調査による)。合計649名、うち中国430名・韓国164名・台湾25名・その他30名。 https://www.tamabi.ac.jp/international-exchange/data/numbers/

  3. 武蔵野美術大学「留学生データ」(2026年5月)。在留資格「留学」の留学生716名、学部519名・修士176名・博士21名。 https://www.musabi.ac.jp/international/foreign_student/data/

  4. 日本学生支援機構(JASSO)「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査結果」。2025年5月1日現在の外国人留学生数408,069人、前年度比71,361人(21.2%)増で過去最多。 https://www.studyinjapan.go.jp/ja/statistics/enrollment/data/2605291000.html

  5. 同調査結果PDF・表1-5(出身国・地域別)。中国131,097人(32.1%)、ネパール100,239人(24.6%)、ベトナム43,366人(10.6%)ほか。括弧内の前年値との比較により構成比の変動を算出。 https://www.studyinjapan.go.jp/ja/_mt/2026/05/data2025z.pdf

  6. 大学ポートレート(私学版・日本私立学校振興・共済事業団運営)各校の学生情報(2026年5月1日現在)から学部・大学院別に算出。 https://up-j.shigaku.go.jp/

  7. 大学ポートレート(大学改革支援・学位授与機構)東京芸術大学 美術学部 学生データおよび大学概要。学生数3,240人(学部2,002人、大学院1,238人)、美術学部は学生1,001人に対し外国人学生15人。 https://portraits.niad.ac.jp/faculty/enrollment/0184/0184-1V02-01-01.html 2

  8. 文部科学省「大学等の研究セキュリティ確保に向けた文部科学省関係施策における具体的な取組の方向性」(2024年12月18日)。概要版「2.基本的考え方」に「人種や国籍等による差別はあってはならない」を独立項目として掲載。 2

  9. 研究セキュリティと研究インテグリティの確保に関する有識者会議「研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書」(2025年12月)。基本的な考え方の項。なお同手順書が対象とするのは所管府省が指定した特定研究開発プログラムであり、すべての研究活動ではない。

  10. 統合イノベーション戦略推進会議決定「研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクに対する研究インテグリティの確保に係る対応方針について」(2021年4月27日)。研究者に求める開示事項として、国外を含む全ての研究資金の応募・受入状況、および兼業・外国の人材登用プログラムへの参加を含む全ての所属機関・役職を明記。

  11. 日本学術振興会「科学研究費助成事業 令和8(2026)年度公募要領」(2025年4月11日)。e-Radにおいて研究インテグリティに係る誓約状況を登録していない場合は応募できない旨を明記。

  12. 「経済財政運営と改革の基本方針2025」(2025年6月13日閣議決定)脚注256。「目標の実現に当たっては、外国人留学生の出身国・地域の多様性に留意する。」

  13. Global×Innovation人材育成フォーラム最終まとめ(2025年6月30日、文部科学省・経済産業省が参加)。「多様な国・地域から優秀な外国人留学生を受け入れることが重要。現状では、特定の国・地域からの比率が高く多様性確保という観点からは課題がある。」

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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