こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
科研費の締切前夜、提出ボタンが押せません。研究計画調書の中身は完成していて、予算表も整っています。それでも押せません。原因は、研究分担者のうち1人が、e-Radの画面にあるチェックボックスを1つ入れていなかったことです。
こういう詰み方が、いま公的研究費の応募で実際に起きています。厄介なのは、経済安全保障まわりで増えた要件のうち、どれがこの種の物理的な壁で、どれが努力目標なのかが、一次情報を読まないと見分けられないところです。全部が採択条件だと思って身構えると、やらなくていい準備に時間を使います。逆に軽く見ると、提出できません。
この領域の解説は、制度ごとに縦に深く書かれたものがすでに揃っています。制度の全体像そのものは研究インテグリティと研究セキュリティの完全ガイドにまとまっています。足りていないのは横の見分け方です。自分たちにどれが当たり、どれは当たらないのか。この記事はそこに絞ります。読者として想定しているのは、大学の中の人ではなく、大学の外から省庁の公募を取りに行く側です。高専、自治体の公設試験研究機関、民間企業の研究開発部門、スタートアップ、そして応募書類を実際に組み立てる事務・経営企画・法務の方々です。
制度の解説はしません。当たり方だけ整理します
経済安保の要件は、1つの制度が段階的に対象を広げてきたわけではありません。所管官庁も法律も義務の性質も違う、別々の制度が積み上がっています。
2022年5月1日に施行されたのが、外国為替及び外国貿易法(外為法)の役務通達改正による、いわゆるみなし輸出管理の運用明確化です。経済産業省の所管で、改正通達の公布は令和3年11月18日でした1。よく「大学が対象になった制度」と説明されますが、正確ではありません。対象は「輸出者等」であって、企業も大学も同じ日から同じ義務を負っています1。特定類型の3区分そのものの読み方はみなし輸出の「特定類型」を5分で理解に書いてあるので、ここでは繰り返しません。
2024年5月17日には、経済安全保障推進法(令和4年法律第43号)の基幹インフラ制度の運用が始まりました。内閣府が「令和6年5月17日(金)より本制度の運用が開始いたしました」と明記しています2。制度の中身は基幹インフラ事前審査制度とは?へ、推進法そのものが4本柱から成る複合法だという構造は経済安全保障推進法とは?4本柱と企業実務を1枚でへ送ります。
2025年5月16日には、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(令和6年法律第27号)が全面施行されました3。いわゆるセキュリティ・クリアランス制度です。ここは表現に注意が必要で、事業者一般に一律の義務を課す制度ではありません。行政機関との契約・認定を前提に、適合事業者として国の重要経済安保情報を扱えるようになる任意の枠組みです。詳しくはセキュリティ・クリアランス制度とは何かにまとめています。
なぜこの3つが混同されるのか。ひとつは、2022年5月11日に経済安全保障推進法そのものが成立していることです。同じ月に外為法側の施行と推進法の成立が並んだため、記憶のなかで1本の流れに見えます。もうひとつは、応募する側の窓口では区別されずに降ってくることです。立法の系譜は3本でも、公募要領という1枚の紙の上では要件表として並んでしまいます。
応募側から見ると、3つはこう現れます。
| 制度(施行日) | 根拠・所管 | 応募する側に現れる形 |
|---|---|---|
| みなし輸出の運用明確化(2022年5月1日) | 外為法・役務通達(経済産業省) | 参画者の特定類型該当性を把握し、申告様式と内部規程を整えておく必要が出る場面 |
| 基幹インフラ制度(2024年5月17日) | 経済安全保障推進法(内閣府) | 自らが指定事業者なら届出。多くの応募者は納入・委託先として情報提供を求められる場面 |
| セキュリティ・クリアランス(2025年5月16日) | 重要経済安保情報保護活用法(内閣府) | 政府の委託・調達で適合事業者の認定や従事者の指名が前提になる場面 |
自組織が輸出管理側でどこまで整っているかを先に測っておきたい方は、輸出管理コンプライアンス診断で現在地を確かめてから続きを読むと、後半が具体的になると思います。
強制力で3層に切り分ける
「対応していないと予算が取れない」という言い方は、誇張ではありますが嘘でもありません。要件は強制力で3層に分かれていて、層ごとに効き方がまったく違います。混ぜて考えると、優先順位を間違えます。
第1層は本物のハードゲートです。科研費の令和8(2026)年度公募要領は、e-Radにおいて研究代表者および研究分担者が所属機関への研究インテグリティに係る誓約状況を登録していない場合は応募できないと書いています4。JSTはさらに早く、令和5年6月2日の告知で「本登録が完了していないとe-Radにて応募を完了することが出来ません」「全ての主たる共同研究者も対象となります」と明示していました5。この運用は令和7(2025)年度公募から始まりました6。冒頭の詰み方はこれです。何をどこに登録するのかは利益相反・責務相反(COI/COC)の申告実務に画面の場所まで書いてあるので、そちらを開いたほうが早いはずです。
ひとつだけ、段取りとして押さえてほしいことがあります。e-Radと電子申請システムの連携には、通常30分から60分、混雑時は数時間かかります7。締切当日に分担者へ連絡しても間に合いません。ここは制度の理解ではなく段取りの問題です。
第2層は事後の制裁です。事実と異なる記載があった場合、あるいは誓約に反して所属機関へ報告していなかった場合、不採択・採択取消し・減額配分の対象になり得ます8。提出はできるが、あとで効いてくる層。応募制限の期間まで含めた措置の中身は、同じくCOI/COCの申告実務で別表に沿って整理されています。
第3層が、この記事でいちばん言いたいところです。組織体制の確認は、応募の壁ではありません。科研費の公募要領は、令和7年度助成課題から、外為法の輸出規制にあたる貨物や技術の提供を予定する場合、交付申請時にe-Radの「研究機関情報」の登録内容で所属機関の安全保障貿易管理体制の有無を確認すると定めています4。注意したいのは、「体制がなければ不交付」とは書かれていない点です。研究インテグリティの体制整備についても、必要に応じて所属機関に照会を行うことがある、という書き方にとどまります4。
つまり第1層と同じ強度で身構える必要はありません。ただし誤解のないように書いておくと、輸出管理体制そのものは外為法上の義務として別に存在します。公募の壁ではないという話であって、要らないという話ではないのです。機関としてゼロから体制を組む手順は研究セキュリティ体制の作り方にまとまっています。
締切に直結するのは第1層だけ。ここを取り違えないでください。
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経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。
「かからない範囲」を確定させるのも仕事です
2025年12月に内閣府が「研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書」を公表しました9。デューデリジェンス13項目という重い枠組みが入っていて、これを見て「公的研究費に応募するには全部やらなければいけないのか」と受け取った方が多いようです。そうではありません。
適用範囲は、所管府省が資金配分機関と相談のうえで指定した「特定研究開発プログラム」に限られます。裏を返すと、令和8年度の科研費公募要領には「研究セキュリティ」という語が一度も登場しません4。全ての公的研究費で研究セキュリティ体制が採択条件になっている、という理解は誤りです。どのプログラムが指定されているかは2026年度、研究セキュリティが研究費の応募条件になったで公募要領の原文から読み解いてあります。
手順書は法令ではなくガイドラインです。違反への応募制限措置を「講じることが考えられる」と将来形で書いており、その根拠となる「競争的研究費の適正な執行に関する指針」の改正は、2026年7月時点で確認できていません。同指針の最新改正は令和3年12月17日のままで、手順書への言及がありません8。ただし実務上は別の効き方をします。指定されたプログラムの公募要領には、応募制限措置が既に書き込まれています。JSTの2026年度募集要項は、手順書違反行為について、その悪質性と招いた結果の重大性を踏まえ「競争的研究費の適正な執行に関する指針」における不正受給の行為として、当該研究者および共謀した研究者に本プログラム等への応募制限措置等が講じられる場合があると書いています10。指針そのものが手順書に触れていなくても、その公募に応募する限り、公募条件として効力を持ちます。制度としてはまだ将来形、目の前の公募では現実の条件、という二重構造です。
必須と「望ましい」の線引きも押さえておく価値があります。手順書で必須とされているのは、研究代表者・研究参画者・共同研究代表者に対する13項目のデューデリジェンスと、契約内容の確認です。共同研究機関そのもののデューデリジェンスや、支援者に対するデューデリジェンスは「実施することが望ましい」の扱いです9。ここを取り違えると、必要のない調査に工数を投じることになります。13項目を実際にどう集めてどう答えるかは研究セキュリティ質問票の書き方が実物に沿って解説しています。
細かい点も2つ。手順書のチェックリスト(別紙2)は研究代表機関向けと研究者向けの2種類だと紹介されることがありますが、実際は3種類で、共同研究機関向けが別に用意されています9。共同研究機関として名前を連ねる予定の組織は、自分たちが記入する様式が存在する前提で段取りを組んでください。もうひとつ、重要技術領域リストは2026年7月時点で策定・公表が確認できません。それまでは令和4年9月30日に閣議決定された「特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用に関する基本指針」の20技術領域が代替として使われています9。
デューデリジェンスの目的は、リストへの掲載の有無という事実を把握して、必要なら共同研究や取引の設計を調整することにあります。リストに載っていることは規制上の区分であって、その企業や機関が不正を行ったという判断ではありません。掲載機関を危険な相手として扱う手続ではない、という前提は共有しておきたいところです。
自分の組織にどれが当たるか
ここまでの制度は、解説のほとんどが大学の研究者や大学の事務局を読者に想定して書かれています。ですが公募を取りに行くのは大学だけではありません。応募主体ごとに、引っかかる場所が違います。
高専は「大学と同じ側」です
高等専門学校は、科研費の研究機関の4類型に含まれます。4類型は、大学および大学共同利用機関、文部科学省の施設等機関のうち学術研究を行うもの、高等専門学校、そして文部科学大臣が指定する機関です4。研究インテグリティやe-Rad登録の義務は、大学とまったく同じようにかかります。文部科学省が令和4年3月8日に出した「大学及び研究機関等における安全保障貿易管理の徹底について(依頼)」も、宛先に高等専門学校長を含んでいます11。令和7年4月10日に設置された文部科学省の研究セキュリティ相談窓口も、大学・短期大学・大学共同利用機関法人・高等専門学校を対象にしています12。高専は制度上「大学と同じ側」に立っていると考えて設計するのが安全です。
高等学校は同じ枠組みで説明できません
一方で高等学校は、科研費の研究機関4類型のうち1)から3)には入っていません4。公募要領は、1)から3)に該当しない機関が研究機関となるには文部科学大臣の指定を受ける必要があると注記しているので、指定を受ければ4類型目に入る道はあります。いずれにせよ、高校が国の大型公募の当事者でないという意味ではありません。実際に高等学校教育改革促進基金のような数千億円規模の枠組みがあり、学校と教育委員会がそれぞれ申請実務を担っています。ここで正直に書いておくと、高校が省庁事業に応募する際の研究インテグリティや研究セキュリティ上の扱いについて、私が調べた範囲では一次情報を確認できませんでした。同じ枠組みを当てはめて説明することはできません。公募要領ごとに応募資格の定義を読んで、判断がつかなければ所管の窓口に確認するのが確実です。
自治体の公設試は応募資格に明示されています
自治体の公設試験研究機関は、公的研究費の応募資格として明示されている類型です。AMEDの公募要領は応募資格に公設試験研究機関を含めています13。応募資格に入っている以上、研究インテグリティの条項も大学と同じように適用されます。研究者は応募時に、国外を含むすべての研究資金の応募・受入状況と、すべての所属機関・役職を申告し、所属機関へ報告することについて誓約をe-Radに登録します14。実務としては、e-Radの機関登録と研究者登録を先に済ませ、参加する研究者全員の誓約状況の登録を完了させることが出発点です。ここでも1名でも未登録なら応募できません。
民間企業は2つの側から要件がかかります
民間企業は、2つの側から要件がかかります。公的研究費の側では、AMEDの応募資格に民間企業の研究開発部門や技術研究組合が含まれています13。この場合、研究インテグリティの義務は大学と同じです。輸出管理の側では、みなし輸出管理が2022年5月1日から大学と同じ内容でかかっています1。ここでよく誤解されるのが輸出者等遵守基準省令の位置づけで、用途に加えて需要者等を確認する手続を定めて実施することは、努力義務ではなく遵守基準そのものです。努力義務として新設されたのは、子会社に対する指導等の項目です15。専任者も内部規程もない状態から始める場合は輸出管理体制をゼロから構築する10ステップとCISTECモデルCPの選び方が実務的です。規程をゼロから書く必要はありません。
スタートアップは資本構成の再提出が続きます
スタートアップにとって、いちばん重いのはおそらく資本構成の開示です。ここは強度が2段になっているので、順に見てください。手順書が共同研究機関そのものについて挙げているのは、共同研究の目的、対象分野の実績(過去3年分)、財務状況と企業の場合の資本構成、リスト掲載の有無の4項目です。対象は大学・大学共同利用機関・高等専門学校・国立研究開発法人・公設試験研究機関以外の機関に限られ、しかもこれは「自己申告させてデューデリジェンスを実施することが望ましい」の側、つまり現時点では実施を求められていない措置です9。
強度が変わるのは資金配分機関の質問票です。JSTの質問票ひな形は、研究代表機関または共同代表機関が大学・大学共同利用機関・高等専門学校・国立研究開発法人・公設試験研究機関以外の場合、財務状況と資本構成、リスト掲載の有無をJSTに提出してくださいと書いています。資本構成の資料例として挙がっているのは、上場企業なら有価証券報告書、非上場企業なら株主名簿、財団法人やNPO等なら社員・正会員等の名簿で、いずれも主要株主とその所在地・持分比率が確認できるものです。そして「主要株主等」に変更があった場合は都度再提出が必要と明記されています16。資金調達を繰り返している段階の会社にとって、これは1回で終わる作業ではありません。ラウンドごとに再提出が発生する前提で、誰がその管理を持つのかを決めておく必要があります。
受託・調達には別系譜の要件が乗ります
もうひとつ、研究費だけを見ていると見落とすルートがあります。省庁の受託や調達を取る場合は、別系統の要件が上乗せされます。ISMAPとSCS評価制度の話で、経済安保の3制度とはまた別の系譜です。政府調達促進パッケージで公的案件に入る機会そのものは広がっていますから、入口が広がった分だけ要件も一緒に付いてくると考えたほうが現実に近いと思います。
大学側の体制整備は、数字の上では追いついてきました。文部科学省と経済産業省の合同調査によると、輸出管理の内部規程を策定している大学の割合は、令和3年の66.3パーセント(212大学)から令和6年には80.3パーセント(暫定値、n=335)まで上がり、国立大学86校はすべて策定済みです17。ただしこの調査の母数は、国立大学と、医歯薬理工系学部を置く公立・私立大学です。裏を返せば、自治体の公設試や中小の技術系企業やスタートアップの整備状況は、そもそも数字として見えていません。私が相談を受ける感覚でも、公募に応募する段になって初めて内部規程の不在に気づく組織は、大学の外に集中しています。
締切から逆算する
公募要領が出てから着手して間に合うものと、間に合わないものがあります。
間に合うのは、e-Radの誓約状況の登録そのものです。作業自体は数分で終わります。間に合わないのは、その数分の作業を、共同研究先を含む参加者全員にやってもらうまでの調整です。ここは制度ではなく組織の話なので、公募を待つ理由がありません。今日やっても損はしません。
みなし輸出の側は、もっと時間がかかります。ここで先に確認しておきたいことがあります。特定類型の判定は国籍で決まりません。経済産業省のQ&Aは、国籍にかかわらず居住者である自然人が対象で、日本人の従業員・研究者・学生も確認対象になると明記しています18。研究セキュリティの手順書も、国籍や人種、宗教・文化等を理由とした差別的な取扱いがあってはならないとしています9。以下に書く運用は、外国籍の人を選び出す手続ではありません。誰であれ該当したら同じ手順を踏む、という話です。
そのうえで手順です。特定類型に該当する人へ規制技術を提供する前に、経済産業省の本省(安全保障貿易審査課)へ役務取引許可を申請します18。許可が下りるまでのあいだ、その人が規制技術に触れられない状態を作るのは運用の仕事です。サーバの権限、図面の保管場所、実験データへのアクセス。申請してから考え始めると、研究そのものが止まります。なお経済産業省のQ&Aは、特定類型に該当することだけをもって一律に不許可にすることは想定していないとしており、包括許可の利用も認めています18。該当したら終わり、という制度ではありません。
令和4年5月1日の時点で既に在籍していた人には、追加の誓約書取得は不要です。ただし留保があります。経済産業省のQ&Aは、万が一その従業員のこれまでの兼業報告等の内容が把握できていない場合には、改めてその内容を確認する必要があると書いています18。「既存の職員は対象外」と読み流すと、この確認が抜けます。指揮命令下にない人については、扱いが軽くなります。学生、特別研究員、招へい教員、名誉教授、取締役といった立場の人が該当します。この場合は、入学願書や出願書類、履歴書、受入申請書、共同研究契約書といった、商慣習上通常取得する書面に記載欄を設ける対応で足ります。追加の調査までは求められていません18。
装置の調達や海外機関との共同実施が入る申請では、該非判定書や非該当証明書の提出を求められる場面もあります。書式の違いは該非判定書の書き方にまとめてあるので、必要になってから調べるより先に目を通しておくほうが早いはずです。判断に迷ったときの窓口も一次情報にあります。類型該当性の確認手続を規程等へ記載することに関する相談は bzl-minashi-QA@meti.go.jp、申請書類や記載内容の相談は bzl-qqfcbf@meti.go.jp です18。制度の解釈を社内だけで抱えるより、聞いたほうが早い場面は少なくありません。
ここまで書いてきて自分でも思うのですが、この量を担当者が手作業で追い続けるのは無理があります。役務通達は改正が続いていて、直近の改正は輸出注意事項2025第27号(令和7年11月14日公布、令和8年2月14日施行)です19。外国ユーザーリストも米国の統合スクリーニングリストも別の頻度で更新されます。公募要領は制度ごとに毎年変わります。更新のたびに全部を突き合わせる前提の運用は、いつか必ず抜けます。
この負担をどう機械に渡すかは該非判定をAIで自動化で考え方を書きました。私たちが提供しているTRAFEEDも、各国の法規制を当日反映し、外国ユーザーリストや統合スクリーニングリストなどとの照合を自動化する輸出管理AIエージェントです。性格をはっきりさせておくと、最終的な該非判定は、貴組織の輸出管理責任者が行う前提で設計しています。人が判断すべきところに時間を残すための道具です。
まとめ
要点を整理します。
- 2022年5月1日の外為法みなし輸出の運用明確化、2024年5月17日の基幹インフラ制度の運用開始、2025年5月16日の重要経済安保情報保護活用法の全面施行は、法律も所管官庁も義務の性質も異なる別々の3制度です。応募する側の窓口では、それが1枚の要件表として降ってきます
- 締切に直結するのは第1層だけです。e-Radの研究インテグリティの誓約状況は、研究代表者と研究分担者の1名でも未登録なら応募できません。登録の入口は【所属研究機関】タブのみで、連携に30分から数時間かかります
- 第2層は事後制裁、第3層は交付申請時の体制確認です。第3層は応募の可否を決めないので、応募直前に体制構築を突貫でやる必要はありません。ただし輸出管理体制自体は外為法上の義務なので、応募とは別の時間軸で進めてください
- 研究セキュリティのデューデリジェンスは指定プログラム限定です。まず公募要領を検索して、指定の有無を確かめてください。指定がなければ13項目の準備は不要で、指定があっても共同研究機関自体の調査は「望ましい」止まりです
- 高専は科研費の研究機関4類型に含まれ、大学と同じ扱いです。高等学校は4類型の1)から3)に含まれないため、同じ枠組みをそのまま当てはめられません(文部科学大臣の指定を受ける道は残されています)
- 自治体の公設試も民間企業の研究開発部門も技術研究組合も、応募資格に類型として書かれています。書かれている以上、研究インテグリティの条項はそのままかかります
- 省庁の受託・調達を取る場合は、経済安保の3制度とは別系譜の調達側の要件も上乗せされます
最後にひとつだけ。この領域の解説は、大学の中の人向けに書かれたものが圧倒的に多いです。制度の作り手も、まず大学を見ています。ですが公募に応募しているのは、大学の外にもたくさんいます。自治体の公設試、地域の技術系中小企業、創業3年目のスタートアップ。そういう組織が「うちは大学じゃないから関係ないだろう」と思ったまま応募に進むのが、いちばん危ない状態だと感じています。
まず公募要領の応募資格の欄を開いて、自分たちの類型が書かれているかを読んでみてください。それが5分で終わる最初の確認です。そのうえで輸出管理の体制づくりから相談したい方は、TRAFEEDの担当までご相談ください。制度の全体像を並べ直すところからご一緒します。
参考文献・一次情報
Footnotes
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経済産業省 貿易経済協力局「『外国為替及び外国貿易法第25条第1項及び外国為替令第17条第2項の規定に基づき許可を要する技術を提供する取引又は行為について』等の一部を改正する通達」20211102貿局第1号/輸出注意事項2021第30号。令和3年11月18日公布、令和4年5月1日施行。特定類型①②③、別紙1-3「特定類型の該当性の判断に係るガイドライン」、別紙1-4「誓約書の例」を新設 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/211118tsutatsu2.pdf ↩ ↩2 ↩3
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内閣府 政策統括官(経済安全保障担当)「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度」。「令和6年5月17日(金)より本制度の運用が開始いたしました」と明記 https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/suishinhou/infra/infra.html ↩
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内閣府 政策統括官(経済安全保障担当)「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」(令和6年法律第27号)。令和6年5月10日成立・5月17日公布、令和7年5月16日全面施行 https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/hogokatsuyou/hogokatsuyou.html ↩
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日本学術振興会「令和8(2026)年度科学研究費助成事業 公募要領(基盤研究A・B・C、挑戦的研究(開拓・萌芽)、若手研究)」令和7年7月14日。e-Radでの研究インテグリティに係る誓約状況が未登録の場合は応募できない旨、令和7年度助成課題から交付申請時にe-Rad「研究機関情報」の登録内容で安全保障貿易管理体制の有無を確認する旨、および研究機関の4類型(大学および大学共同利用機関、文部科学省の施設等機関、高等専門学校、文部科学大臣指定機関)を記載。本要領に「研究セキュリティ」の語は登場しない https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_kiban_2025_g_3687/r8_7_kobo.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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科学技術振興機構(JST)「【重要】e-Radでの『研究インテグリティ』の登録について」令和5年6月2日。「本登録が完了していないとe-Radにて応募を完了することが出来ません」「全ての主たる共同研究者も対象となります」と明示 https://www.jst.go.jp/kisoken/boshuu/r05/teian/top/info/info_230602.html ↩
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日本学術振興会「令和7(2025)年度科学研究費助成事業 公募要領(特別推進研究、基盤研究(S))」令和6年4月12日公募開始。e-Rad誓約の応募要件化の初出 https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_tokus2024/r7_4_kobo.pdf ↩
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日本学術振興会 科研費電子申請システム「e-Rad 研究インテグリティに係る情報の入力」。登録の入口が e-Rad の「研究者情報の修正」画面【所属研究機関】タブであること、e-Radと電子申請システムの連携に時間を要することを記載 https://www-shinsei.jsps.go.jp/kaken/docs/research_integrity_e-rad_touroku_2024koubo.pdf ↩
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競争的研究費に関する関係府省連絡会申し合わせ「競争的研究費の適正な執行に関する指針」平成17年9月9日制定、令和3年12月17日改正。事実と異なる記載や誓約違反に対する不採択・採択取消し・減額配分を公募要領上に明記することを各府省に義務づけ。応募制限期間は別表1・別表2。本指針は法令ではなく申し合わせであり、2026年7月時点の最新改正は令和3年12月17日のままで、研究セキュリティ手順書への言及はない https://www8.cao.go.jp/cstp/compefund/shishin_r3_1217.pdf ↩ ↩2
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研究セキュリティと研究インテグリティの確保に関する有識者会議(内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局)「研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書」令和7年12月(公表 令和7年12月26日)。デューデリジェンス13項目、必須と「実施することが望ましい」の区別、別紙2のチェックリスト3種(研究代表機関向け/共同研究機関向け/研究者向け)、共同研究機関そのものについての4項目(共同研究の目的、対象分野の実績、財務状況と企業の場合の資本構成、リスト掲載の有無)の自己申告とデューデリジェンスが大学等以外の機関を対象とする「実施することが望ましい」措置であること、重要技術領域リスト策定までは令和4年9月30日閣議決定「特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用に関する基本指針」の20技術領域で代替することを含む https://www8.cao.go.jp/cstp/kokusaiteki/integrity/yushikisha/guidelines_v1.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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科学技術振興機構(JST)「2026年度 戦略的創造研究推進事業(CREST・さきがけ・ACT-X)募集要項」令和8年4月7日募集開始。「(ⅵ)手順書違反が生じた場合の措置について」に「手順書違反行為については、当該行為の悪質性及び招いた結果の重大性を踏まえ、『競争的研究費の適正な執行に関する指針』(平成17年9月9日競争的研究費に関する関係府省連絡会申し合わせ)における不正受給の行為として、当該不正受給を行った研究者及び共謀した研究者に対し、本プログラム等への応募制限措置等が講じられる場合があります」と記載 https://www.jst.go.jp/kisoken/boshuu/teian/koubo/2026youkou.pdf ↩
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文部科学省 高等教育局長・科学技術・学術政策局長・研究振興局長・研究開発局長「大学及び研究機関等における安全保障貿易管理の徹底について(依頼)」令和4年3月8日。宛先に各国公私立大学長、高等専門学校長、大学共同利用機関法人の長、国立研究開発法人の長を含む https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/mext_00048.html ↩
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文部科学省 科学技術・学術政策局長・高等教育局長「文部科学省研究セキュリティ相談窓口の設置について(通知)」7文科科第54号、令和7年4月10日。対象は大学、短期大学、大学共同利用機関法人、高等専門学校 https://www.mext.go.jp/content/20250424-mxt_kagkoku-000039402_1.pdf ↩
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日本医療研究開発機構(AMED)「令和8年度 難治性がん克服フラッグシッププログラム 公募要領」令和8年4月。応募資格に公設試験研究機関、民間企業の研究開発部門、技術研究組合を含む https://www.amed.go.jp/content/000159002.pdf ↩ ↩2
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統合イノベーション戦略推進会議「研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクに対する研究インテグリティの確保に係る対応方針について」令和3年4月27日。国外を含むすべての研究資金の応募・受入状況と、すべての所属機関・役職の提出、および所属機関への報告に関する誓約を資金配分機関が求めることを規定 https://www8.cao.go.jp/cstp/kokusaiteki/integrity/integrity_housin.pdf ↩
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経済産業省「輸出者等遵守基準を定める省令の一部を改正する省令」令和3年経済産業省令第79号、令和3年11月18日公布・令和4年5月1日施行。需要者等の確認や情報の信頼性を高める手続は第1条第2号ニで「行うこと」とされる遵守基準そのもので、努力義務として新設されたのは子会社に対する指導等(同号チ)である https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/shourei/20211118shourei.pdf ↩
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科学技術振興機構(JST)「研究セキュリティ確保の取組(JST-TRUST)質問票【ひな形】」2026年度版。「2. 研究機関のデュー・ディリジェンス(1)」で「貴機関(研究代表機関)又は共同代表機関が、我が国の大学、大学共同利用機関、高等専門学校、国立研究開発法人及び公設試験研究機関以外の場合は、以下の①および②に掲げる事項に関する情報をJSTに提出してください」として①財務状況、資本構成 ②リストへの掲載の有無を挙げ、脚注viで資本構成の資料例(上場企業は有価証券報告書、非上場企業は株主名簿、財団法人やNPO等は社員・正会員等が確認できる名簿等)と「『主要株主等』に変更があった場合は、都度再提出が必要となります」を明記。質問票は特定研究開発プログラムの採択候補課題のうち、リスクマネジメントの対象となった課題に送付される https://www.jst.go.jp/osirase/research_security/pdf/rs_questionnaire_2026.pdf ↩
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文部科学省・経済産業省の合同調査による大学の輸出管理内部規程の策定率(令和3年66.3パーセント/212大学、令和6年80.3パーセント/n=335・暫定値、国立大学86校はすべて策定済み。母数は国立大学と医歯薬理工系学部を置く公立・私立大学)。数値は同合同調査の公表値だが、これを掲載した資料のURLは2026年7月時点で特定できていない(経済産業省のサイトは自動取得が拒否されるため未確認)。なお経済産業省 安全保障貿易管理課「大学・研究機関における安全保障貿易管理に関する事例集[みなし輸出管理の運用明確化への対応編]」令和5年8月は10大学へのヒアリングに基づく取組事例集であり、策定率の数値そのものは含まない https://www.meti.go.jp/policy/anpo/daigaku/minashi.pdf ↩
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経済産業省 安全保障貿易管理課「『みなし輸出』管理の明確化に関するQ&A」令和5年8月8日改訂(全65問、表紙に「順次改訂予定」と記載)。特定類型該当のみをもって一律に不許可とすることは想定していないこと、包括許可が利用できること、令和4年5月1日時点の在籍者について兼業報告等の内容が把握できていない場合は改めて確認が必要であること、指揮命令下にない者については商慣習上通常取得する書面での確認で足り追加調査までは求められないこと、および相談窓口のメールアドレスを含む https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/minashi/minashiqa3.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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経済産業省「外国為替及び外国貿易法第25条第1項及び外国為替令第17条第2項から第4項までの規定に基づき許可を要する技術を提供する取引又は行為について」(役務通達/4貿局第492号、平成4年12月21日制定)。柱書の最終改正は輸出注意事項2025第27号(令和7年11月14日公布、令和8年2月14日施行) https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/t10kaisei/ekimu_tutatu.pdf ↩






