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技術流出に懲役6〜7年は重いのか|韓国の判決から見た日本の量刑と「入口」の守り

公開2026-08-24濱本 隆太

韓国でサムスンのDRAM技術を中国企業へ流出させた事件に、懲役6年4カ月と7年の判決が出ました。開発費1兆6000億ウォンに対して、この量刑は妥当でしょうか。韓国の量刑基準、日本の不正競争防止法との比較、そして刑罰では守れない「入口」の管理までを整理します。

技術流出に懲役6〜7年は重いのか|韓国の判決から見た日本の量刑と「入口」の守り
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。中国の半導体はなぜ、これほど短期間で世界のトップに迫ったのか。その一端を示す事実が、韓国の法廷から出てきました。

判決を見て私が最初に思ったのは、「この刑は、行為の重さに見合っているのだろうか」ということでした。そしてもう一つ、経営者としての本音もありました。刑罰をどれだけ重くしても、自社の技術は一グラムも守れません。 刑罰は流出した後にしか作動しないからです。

量刑の話と、企業が明日からできることの話。両方書きます。

韓国の法廷で何が認定されたのか

まず事実関係を整理します。報道を追うと、サムスン電子から中国の長鑫存儲技術(CXMT)へのDRAM技術流出をめぐっては、関連する複数の事案が並行しています。混同されやすいので分けて書きます。

一つは、2016年に18ナノのDRAMプロセス技術を流出させたとされる元社員の事案です。この技術の開発費は1兆6000億ウォン、日本円でおよそ1800億円とされています。2026年4月に懲役6年4カ月が確定しました1

もう一つは、2026年4月22日にソウル中央地裁が言い渡した懲役7年の実刑判決です。被告は元研究員(56)で、産業技術保護法違反などに問われました。サムスンが世界で初めて実用化した10ナノ台のDRAM製造プロセス技術が対象で、判決は流出した技術が韓国の「国家核心技術」に該当すると認定したうえで、企業だけでなく韓国全体に損害を負わせたと判示しています。被告が受け取った対価は、契約金3億ウォンやストックオプションを含め、6年間で計29億ウォンでした2。こちらは一審です。

そして2026年8月、法廷でさらに踏み込んだ証言が報じられました。CXMTの経営陣は創業当初からサムスンの工程情報を入手してDRAMを開発する方針で、当時は研究所も設備もなく自社研究で開発する意思もなかった、という趣旨です。約600工程に及ぶプロセスレシピの取得が、事後的な出来心ではなく事業計画に組み込まれていた、という主張になります3

ここは正確に区別しておきます。この「創業当初からの意図」は法廷での供述であって、裁判所が認定した事実ではありません。 CXMTという法人としての指示や責任も確定していませんし、懲役7年の判決自体も一審です。有罪とされたのはあくまで個人であり、企業の有罪が確定したという話ではありません。

そのうえで、この事件が示す構図は無視できないと思っています。5年と巨額の開発費を投じて積み上げたプロセス技術を、一から研究する代わりに、人材を高額で迎えてノウハウごと持ち出させる。そこに国家支援と巨大な国内市場が加われば、追いつく速度は跳ね上がります。実際、CXMTは流出から7年後の2023年に量産に成功し、世界シェア約5%を確保したとされ、韓国政府はこの流出による経済的被害を数十兆ウォンと推定しています1

私は、この量刑は軽いと考えています

率直に言います。6年4カ月にせよ7年にせよ、行為の性質に対して軽いと考えています。理由は3つあります。

第一に、韓国自身が定めた基準と比べて軽い。 韓国大法院は2024年に技術流出犯罪の量刑基準を新設・強化しました。国家核心技術の海外流出は基本3〜7年、加重で5〜12年、被害が甚大な場合は1.5倍して最大18年まで宣告できます。一般の産業技術流出でも最大15年です。今回の6〜7年は、基本の範囲に収まっており、上限の半分にも届いていません。

第二に、被告が得た利益と比べて軽い。 6年間で29億ウォンです。仮に服役しても、その間に得た資産が手元に残るのであれば、割に合う犯罪として成立してしまいます。抑止として機能しない量刑は、量刑とは呼べないと思います。

第三に、他国の実際の判決と比べて軽い。 法定刑の上限ではなく、実際に出た判決で並べるとこうなります1

事案 判決
米国 GEアエロスペースの技術流出事件 懲役20年(2024年確定)
台湾 TSMCをめぐる事件 懲役10年(2026年4月・一審)
韓国 サムスンディスプレイのOLED流出 懲役5年(大法院)
韓国 今回のDRAM流出 懲役6年4カ月・7年

米国の20年と比べると、差は3倍以上です。

韓国国内でも、この水準への不満は強い。韓国経営者総協会が2026年6月に全国の成人1000人を対象に行った調査では、技術流出への処罰を強化すべきと答えた人が90.7%、罰金や財産没収といった懲罰的な経済制裁に賛成する人が90.6%に達しました1。摘発件数も2021年の9件から2025年には33件へ増えています1

韓国はこの現実を受けて動いています。量刑基準の強化に続き、産業技術保護法の改正で国家核心技術の海外流出に対する罰金上限が引き上げられました。

該非判定の属人化を、AIで解消する。

経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。

経済犯罪の物差しでは測れない

なぜ軽いと感じるのか。この行為を経済犯罪の物差しで測ること自体に無理があると考えているからです。

企業が数十年と数兆円をかけて積み上げた製造技術は、その企業だけのものではありません。それを支える装置・材料メーカー、そこで働く数万人の雇用、そして通信やエネルギーのインフラを支える生産能力の一部でもあります。半導体はスマートフォンだけの話ではない。自動車、AIデータセンター、通信、電力網。日本政府が経済安全保障推進法のもとで半導体を特定重要物資に指定しているのも、そのためです。

その基盤の中核を、一人の意思決定で他国へ移す。しかも、いったん移った技術は二度と回収できません。窃盗は物を取り返せますが、プロセスレシピは取り返せない。被害は原状回復が不可能で、時間とともに拡大し続けます。だから私は、業務上横領や背任の延長線上ではなく、別の類型として量刑体系を設計し直すべきではないかと考えています。

そして日本は、韓国よりさらに軽い

ここまでは隣国の話です。日本はどうか。

日本の営業秘密侵害罪(不正競争防止法21条)の法定刑は、個人で拘禁刑10年以下、罰金2000万円以下です。海外での使用等の目的がある場合は3000万円以下で、併科もできます。法人は5億円以下、海外使用等の目的があれば10億円以下です。上限10年という水準は、韓国の量刑基準が認める18年や、米国で実際に出た20年と比べて明らかに低い。

運用はさらに緩い。立件のハードルが高く、企業側の秘密管理性の立証も重いため、起訴に至らない事案や無罪となる事案も出ています。

一方で、事案そのものは確実に増えています。警察庁が2026年3月に公表した統計によれば、2025年の営業秘密侵害事犯の検挙は38事件。前年から16件、率にして72.7%増え、過去10年で最多となりました4。大半は転職や独立の際の持ち出しです。精密金型メーカーの元社員が図面データをメールで海外法人へ送信した事例なども挙げられています4

増える事案、低い上限、緩い運用。この3つが揃っている国は、技術を狙う側から見れば、仕事のしやすい国です。制度は変えるべきだと考えています。

それでも、刑罰では守れない

ここまで量刑の話をしておいて言うのも何ですが、経営者としての本音を書きます。

刑罰は事後の話です。技術が出て行った後にしか作動しません。どれだけ刑を重くしても流出そのものはゼロにならず、出た技術は戻らない。だとすれば、経営者が本当に投資すべきなのは判決の重さではなく、入口の管理です。

前職で海外拠点や技術戦略に関わっていた頃から感じていたことがあります。技術情報を狙う側の活動は、想像よりずっと組織的です。そして入口はほぼ例外なく「人」です。

この点について、日本には制度上すでに求められている確認があります。2022年5月1日に施行された外為法の役務通達改正、いわゆる「みなし輸出」管理の明確化です。日本国内の居住者であっても、次の特定類型に該当する場合、技術提供が輸出許可の対象になり得ます。

  1. 外国政府・外国法人等と雇用契約等を結び、その指揮命令に服する、または善管注意義務を負う者
  2. 外国政府・外国法人等から、年間所得の25%以上を占める経済的利益を受けている、または受けることを約している者
  3. 国内において外国政府等の指示の下で行動する者

重要なのは、この確認を技術提供の前に行うことが求められている点です。本来は採用プロセス、共同研究の開始、業務委託の締結という入口に組み込まれているべき手続きで、人事・法務・研究部門が連携しないと回りません。疑心暗鬼になれという話ではなく、制度上の要請です。

やるべきことは、突き詰めればシンプルです。入口では、採用や共同研究の開始時に相手の属性を確認する。平時は、機微情報へのアクセス権限を職務上必要な範囲に絞って記録を残す。出口では、退職や契約終了の際に持ち出しの有無を確認できる仕組みを持つ。そして取引先については、発注先や共同研究先の資本関係と規制上のステータスを継続的に確認する。

自社がこの4点をどこまで満たせているかを、感覚ではなく項目で確かめたい方は、輸出管理チェックのような無料の診断から入ってみるのも一つの手です。

「リストを引く」だけでは、もう守れない

問題は、これを人手でやり切れるかです。

そもそも「あの会社は規制リストに載っているのか」という一見単純な問いに、単純な答えはありません。今回のCXMTを例に取ります。

米国防総省、現在の戦争省は2026年6月8日付で、Section 1260Hに基づくいわゆる中国軍事企業リストを188エンティティに拡大しました。追加は65件で、うち親会社が17、子会社が48。削除も10件あります。CXMTはこのリストに掲載されており、初掲載は2025年1月7日の告示、2026年6月の告示で改めて指定されています56

ここで注意が必要です。1260Hリストは、それ自体は制裁リストではありません。 掲載されたからといって民間企業の取引が禁止されるわけではなく、政府調達の制限という形で効いてきます。FY2024国防授権法805条により、2026年6月30日から戦争省の直接契約が禁じられ、間接的な契約は2027年6月30日から対象になります。さらにFY2023国防授権法5949条により、2027年12月23日からは全連邦機関がCXMTの半導体製品を調達できなくなります5。掲載は米国の制度上の区分であって、その企業が不正を行ったと確定したことを意味するものではない、という点も押さえておく必要があります。

そしてリストは動きます。1260Hの2026年2月版では、公開情報上CXMTが削除対象に含まれていたと報じられましたが、その版は公表直後に取り下げられ、6月に改めて公表されました6

どのリストに、どの版で、どういう法的効果を伴って載っているのか。 それを追い続けなければ判断を誤ります。さらに米国BISのいわゆる50%ルールのように、掲載企業が50%以上を保有する子会社まで規制が及ぶ枠組みが加わると、企業名の完全一致検索はほとんど意味をなさなくなります。持株構造を何段も遡らないと答えが出ない。制度の詳細はBIS 50%ルールの完全ガイドにまとめました。

一方で多くの日本企業や大学では、この業務を数名の担当者がExcelと官公庁サイトを行き来しながら支えています。担当者が異動すれば、その知見はまるごと失われます。

私たちがTRAFEEDを開発しているのは、この構造的なギャップに対してです。輸出管理の該非判定、取引先調査、大学における研究セキュリティのスクリーニングを対象にした、経済安全保障コンプライアンスのAIエージェントで、複数モデルの合議によって根拠を示しながら判定します。国立大学法人岡山大学との共同実証では95%以上の精度を確認しており、現在20を超える組織で本番運用され、コア技術は国内特許を取得済みです。

もちろんAIがすべてを解決するわけではありません。最終的な該非判定は、貴社の輸出管理責任者が行うものです。 ただ、誰がどのリストのどの版にどういう根拠で該当し得るのかを高速に洗い出し、記録として残す作業は、明らかに機械の仕事だと思っています。

まとめ。刑罰の議論と、入口の投資は別々に進める

事実を確認します。韓国では、サムスンのDRAM技術をCXMTへ流出させたとされる事案で、懲役6年4カ月が確定し、別の事案では一審で懲役7年が言い渡されました12。韓国の量刑基準は国家核心技術の海外流出に最大18年を認めており、米国では同種事件で懲役20年の判決が出ています1。日本の営業秘密侵害罪の上限は10年で、2025年の検挙は38事件、前年比72.7%増と過去10年で最多です4

私は、日本の量刑体系は行為の重大性に見合っていないと考えています。制度の議論は進めるべきです。

ただ同時に、刑罰の議論だけをしていても自社の技術は守れません。技術は図面やデータの形で漏れる前に、まず人の意思決定として漏れます。だから守りの起点も人にある。誰を迎え入れ、誰に何を見せ、誰と組むのか。その一つひとつを、感覚ではなく手続きとして積み上げること。地味で面倒で成果が見えにくい仕事ですが、そこを疎かにしたまま「うちは大丈夫」と言い続けるほうが、はるかにコストが高い。

まずは自社の採用と共同研究の開始手続きに、特定類型の確認が組み込まれているかを見てみてください。入っていなければ、そこが着手点です。体制づくりを具体的に相談したい方は、個別相談からお声がけいただければ、状況を伺ったうえで一緒に考えます。

参考

判決および統計は報道と公的資料で確認しています。法廷での供述にもとづく部分は、その旨を本文中に明記しています。

Footnotes

  1. 半導体技術を海外流出させたのに懲役6年4カ月 国民の90%「国家核心技術の流出 処罰強化すべき」 — 朝鮮日報日本語版 — 2026年7月20日 2 3 4 5 6 7

  2. サムスン半導体技術を中国へ漏えい 元研究員に懲役7年=韓国地裁 — 聯合ニュース — 2026年4月 2

  3. CXMT経営陣は創業時からSamsung工程情報の取得を計画か、元研究員が法廷証言 — XenoSpectrum — 2026年8月

  4. 令和7年における生活経済事犯の検挙状況等について — 警察庁生活安全局 — 2026年3月 2 3

  5. Notice of Availability of Designation of Chinese Military Companies — Federal Register — 2026年6月10日 2

  6. Entities Identified as Chinese Military Companies Operating in the United States in Accordance with Section 1260H — U.S. Department of War — 2026年6月8日 2

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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