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中国が9月15日から技術者の出国を制限|国務院令第841号と、日米との「向き」の違い

公開2026-08-09濱本 隆太

中国が2026年9月15日から、輸出管理や技術輸出入管理に違反し産業安全・技術安全を害するおそれのある自国民の出国を制限します。国務院令第841号の条文を一次情報で確認し、米国のみなし輸出(EAR 15 CFR 734.13)・日本の特定類型と並べて、押さえている場所の違いと日本企業の実務への影響を整理します。

中国が9月15日から技術者の出国を制限|国務院令第841号と、日米との「向き」の違い
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

北京発のニュースで、中国が新しい出入国管理の規定に「国家戦略上の重要産業や技術を脅かすおそれがあれば自国民の出国を制限できる」措置を盛り込んだ、と報じられました。施行は9月15日です。

輸出管理の実務をやっていると、規制はモノと技術にかかるものだという感覚が染みついています。そこに人の移動そのものを止める措置が入ってきた。条文を読んでみて、これは向きが違うぞと感じました。私たちが日本で「みなし輸出」としてやっていることと、正反対の入口から同じ問題に手を突っ込んでいます。

9月15日に施行されるのは何か

まず一次情報から押さえます。文書は「国務院関于出境入境管理的規定」、国務院令第841号です。李強総理の署名により2026年7月22日付で公布され、2026年9月15日から施行されます。全19条の短い規定です1

規定は4つの分野を扱っています。出境の安全リスク防止(外務・文化観光部門が海外の安全情報や渡航先のリスク情報を適時に公開する)、出入境の申請要件(申請事由が真実かつ合法であること)、出入境の制限措置、そして出入境の仲介サービスの届出管理です2。報道で注目されたのは3つ目です。

該当するのが第4条です。中国公民の出境を認めない場合が並んでいて、出入境証件の詐取や不法出入境で行政拘留を受けた場合は処罰執行完了日から6か月〜3年、国外で違法犯罪活動を行い国家の安全と利益を害した場合は帰国日から6か月〜3年、といった規定が置かれています1

そして同条第3項です。原文はこうです。

中国公民违反出口管制、技术进出口管理等规定,可能危害国家产业安全、技术安全的,国务院商务等有关主管部门可以决定不准其出境。1

中国公民が輸出管理、技術輸出入管理等の規定に違反し、国家の産業安全・技術安全を害するおそれがある場合、国務院商務等の関係主管部門は出境を認めないことを決定できる、という意味です。

外国人の側も第5条で手当てされています。中国ビザの申請時や入国時に虚偽の資料を提出し、あるいは虚偽の陳述をした場合は1年〜5年の入境不許可。国(辺)境管理を妨害して刑事処罰を受けた場合や、証件の詐取・不法出入境で行政処罰を受けた場合も、処罰執行完了日から1年〜5年の入境不許可です1

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条文を読んで、二つ引っかかりました

ひとつめは、判断する主体が移民当局ではないことです。第4条第3項は「国務院商務等の関係主管部門」が決定できると書いています。他の項が移民管理機構の判断であるのに対して、この項だけ輸出管理を所管する側が出国の可否を握る構造になっています。出入国管理の規定でありながら、実質は輸出管理の執行手段として設計されている、と読みました。

ふたつめが「可能危害」という書き方です。実際に産業安全・技術安全が害されたことではなく、害するおそれがあれば足ります。輸出管理をやっている方なら、この「おそれ」で発動する建て付けの重さは想像がつくと思います。日本のキャッチオール規制も「おそれ」で動きますが、あちらは貨物の出荷を止める話です。こちらは人の移動が止まります。

なお、第4条第3項には期間の定めが見当たりません。他の項が6か月〜3年と明示しているのと対照的です。私が確認した条文の範囲では明記されていない、という事実だけ書いておきます。運用がどうなるかは施行後の実例を見るしかありません。

中国側の輸出管理そのものの構造は中国の対日デュアルユース輸出規制で、駐在員と企業データのリスクは反スパイ法・国家情報法と日本企業のリスクで個別に整理しています。

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この規定だけを見ても、意味が分かりません

今回の規定は単独で出てきたものではありません。中国の輸出管理は、ここ数年で段階的に組み上がってきています。

内閣官房国家安全保障局が2026年8月4日の有識者会議に出した資料が、重要鉱物の対象拡大を時系列で整理しています。2023年8月のガリウム・ゲルマニウムに始まり、同年12月の黒鉛、2024年9月のアンチモン、2025年2月のタングステン等、同年4月の重レアアース7種と続きます3

そして注目すべきは2025年10月に発表された措置です。中国国外の組織・個人による中国以外の国・地域への輸出にまで許可を求める再輸出規制が入り、対象は中国産レアアースを価値比率0.1%以上含む外国製の製品などに及びます。同じ措置に、みなし輸出規制も導入されています3。中国国内で外国の組織・個人に技術を渡す行為も規制の対象、という考え方です。この措置自体は1年間停止とされています。

つまり、中国は既に米国・日本と同じ「受け渡しを捕まえる」仕組みを持っています。そこに今回、出口も押さえる仕組みが加わったというのが正確な理解です。私が最初に「向きが逆だ」と書いたのは、半分しか見ていませんでした。中国は両方向から手を打っています。

2026年に入ってからは日本を名指しした措置も続いています。1月6日、2月24日、6月29日の3回です3。この流れの延長線上に9月15日がある、と読むほうが自然だと思います。詳しくは有識者会議で示された経済安全保障の方向性にまとめました。

米国と日本は、受け渡しの側から止めている

では米国と日本はどうか。両国は受け渡しの瞬間だけを捕まえていて、出口は押さえていません。ここが今回いちばん書きたかった対比です。

米国のEARにはみなし輸出(deemed export)という考え方があります。15 CFR 734.13は、米国内で技術やソースコードを外国人に開示することを、その人の直近の国籍国または永住権国への輸出とみなすと定めています4。つまり、モノが国境を越えなくても、情報が外国籍の人に渡った時点で輸出です。研究の現場では口頭説明やデモンストレーションも該当します。永住権者や市民、protected individuals は対象外で、公開が前提の基礎研究(fundamental research、734.8)も適用除外です4

日本も同じ考え方を採っています。しかも日本には特定類型という独自の上乗せがあります。本来「みなし輸出」は非居住者への技術提供が対象ですが、居住者であっても、雇用契約や経済的利益等によって外国政府や外国法人の強い影響を受けている状態にある場合は対象になる、と明確化されました5。経産省が挙げている例は、外国大学と兼業(クロスアポイントメントを含む)している日本の大学の教職員や、外国政府の理工系人材獲得プログラムに参加して個人として多額の研究資金や生活費の提供を受けている研究者です5。制度の詳細はみなし輸出管理の明確化と工作機械輸出管理にまとめています。

並べると、押さえている場所の差が見えます。

国内で外国籍の人に渡すところ 技術を持つ人が国から出るところ
中国 2025年10月措置のみなし輸出規制(1年停止中) 国務院令第841号(9月15日〜)
米国 EAR みなし輸出(15 CFR 734.13) 規定なし
日本 みなし輸出・特定類型 規定なし

右の列に入っているのは中国だけです。どちらが良い悪いという話ではなく、制度の設計思想が違うということだと受け止めています。ちなみに米国は同じ時期に、先端コンピューティング半導体の対中国・マカオ輸出について審査方針を原則否認から個別審査へ変更しています(2026年1月15日発効)6。モノの規制は緩め、人と技術の管理は各国が強める。単純な「強化一辺倒」ではない動きです。

日本企業の実務に何が起きるか

では現場は何を考えればよいか。3つあると思っています。

ひとつめは中国拠点の技術者・研究者の移動です。中国法人に勤める中国籍の従業員が、日本本社での研修や会議のために出国できなくなる可能性が出てきます。特に、その方が中国の輸出管理や技術輸出入管理に関わる業務に携わっている場合です。出張が直前で止まる前提でスケジュールを組んでおくのが現実的だと思います。人事異動や駐在の計画も、同じ想定が要ります。

ふたつめが共同研究とライセンスの棚卸しです。第4条第3項が想定しているのは「技術輸出入管理等の規定に違反」した場合です。中国側のパートナーとの技術のやり取りが、中国の技術輸出入管理制度から見てどう位置づけられるのかを、相手方と確認しておく必要があります。日本側から見て問題がなくても、中国側の制度で引っかかれば、相手の担当者が動けなくなります。

みっつめが採用と受け入れの側です。これは中国の規定とは別の話ですが、同じ「人を介した技術移転」という文脈で一緒に見ておくべきものです。日本の特定類型は、居住者であっても外国の強い影響下にあれば対象になります。研究者や技術者を受け入れるとき、その方が外国政府のプログラムから資金を受けていないか、外国大学と兼業していないかを確認する。ここは既に制度化されていて、やっていないと今日から違反です。人の側の対策は技術流出を防ぐ「人」の防波堤で採用から退職まで通しで整理しました。

日本側でも、来週にひとつ施行があります。2026年8月16日、技術管理強化のための官民対話スキームで、事前報告の対象となる重要管理対象技術に8項目が追加されます(経済産業省告示第71号、2026年6月16日公布)。永久磁石やペロブスカイト太陽電池が入っています。リスト規制の許可とは別建ての「契約前報告」という仕組みで、見落としやすいところです。詳しくは官民対話スキームの事前報告に8項目が追加をご覧ください。

8月16日と9月15日

整理します。中国は2026年9月15日から、輸出管理・技術輸出入管理の規定に違反し産業安全・技術安全を害するおそれのある自国民について、商務等の主管部門の判断で出国を認めないことができるようになります。外国人の入国も、虚偽申告や国境管理の妨害を理由に1年〜5年の不許可があり得ます。根拠は国務院令第841号、全19条です。

国内で外国籍の人に技術を渡す行為を輸出とみなす仕組みは、米国のEAR、日本の特定類型、そして中国の2025年10月措置と、三者とも持っています。違うのは出口です。技術を持つ人が国から出ることを規制の対象にしているのは、現時点で中国だけです。

そして日本側は8月16日、中国側は9月15日。**1か月のあいだに、人と技術に関する規制が両側で動きます。**どちらも、貨物の出荷を止める話ではありません。誰が何を知っていて、どこへ行くのか、という話です。

正直なところ、これは輸出管理の担当部署だけで抱えられる話ではないと思っています。誰を採用し、誰をどこへ出張させ、誰と共同研究するか。人事と研究開発と法務が同じ地図を見ていないと対応できません。まずは自社の技術者・研究者の一覧を出して、その人がどの国の制度に触れうるかを一度だけ確認してみる。それだけでも、抜けている場所が見えるはずです。

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Footnotes

  1. 「国務院関于出境入境管理的規定」(国務院令第841号)。総理 李強の署名により2026年7月22日付で公布、2026年9月15日施行、全19条。第4条は中国公民の出境を認めない場合を定め、出入境証件の詐取・不法出入境による行政拘留は処罰執行完了日から6か月〜3年、国外での違法犯罪活動により国家の安全と利益を害した場合は帰国日から6か月〜3年としている。同条第3項の原文は「中国公民违反出口管制、技术进出口管理等规定,可能危害国家产业安全、技术安全的,国务院商务等有关主管部门可以决定不准其出境。」。第5条は外国人の入境制限を定め、ビザ申請時・入国時の虚偽資料提出および虚偽陳述について1年〜5年、国(辺)境管理の妨害による刑事処罰または証件詐取・不法出入境による行政処罰について処罰執行完了日から1年〜5年の入境不許可としている。中国商務部が公開する条文による。https://fec.mofcom.gov.cn/article/ggfw/crjfw/crjzcwj/202607/7209.html / 新華社による全文公表 https://www.news.cn/20260731/08228229f320402fb3a97a095abfd1ad/c.html / なお第4条第3項には他項のような期間の定めが見当たらない。本記事執筆時点で確認した条文の範囲による記述である。 2 3 4

  2. 司法部・公安部・国家移民管理局の責任者による「国務院関于出境入境管理的規定」答記者問。規定が扱う4分野(出境の安全リスク防止制度、出入境の申請要件、出入境の制限措置、出入境仲介サービスの届出管理)、制定の背景(突発的事象からの在外自国民の保護、虚偽資料による証件取得への対応、2018年の許可制廃止後に急増した仲介機構への対処)、および施行前から仲介サービスに従事する機構は施行日から90日以内に届出を行うとの経過措置は同答記者問による。https://www.nia.gov.cn/n741440/n741577/c1793235/content.html / 司法部による公表 https://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/gwxw/xwyw/202607/t20260731_538116.html

  3. 内閣官房国家安全保障局「国家安全保障における『経済安全保障』の今後の方向性」(令和8年8月4日、総合的な国力から安全保障を考える有識者会議 第3回提出資料)。重要鉱物の対象拡大の時系列(2023年8月ガリウム・ゲルマニウム、同年12月黒鉛、2024年9月アンチモン、2025年2月タングステン等、同年4月重レアアース7種)、2025年10月発表の輸出管理措置における再輸出規制(中国産レアアースを価値比率0.1%以上含む外国製の製品、中国のレアアース関連技術を用いて外国で製造された製品、中国産のレアアース関連製品の3類型)およびみなし輸出規制の導入と1年間の停止、ならびに2026年1月6日・2月24日・6月29日の対日輸出管理強化は、いずれも同資料による。https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/boueiryoku_kaigi/sogoteki_dai3/shiryo.pdf 2 3

  4. 米国輸出管理規則(EAR)15 CFR 734.13。米国内における「technology」またはソースコードの外国人への release は、当該外国人の直近の国籍国または永住権国への輸出とみなされる(deemed export)。永住権者、米国市民、protected individuals は対象外。15 CFR 734.8 が定める fundamental research(通常公表され科学コミュニティで広く共有される基礎・応用研究)は適用除外。https://www.ecfr.gov/current/title-15/subtitle-B/chapter-VII/subchapter-C/part-734/section-734.13 / BISによる解説 https://www.bis.gov/learn-support/deemed-exports/what-deemed-export 2

  5. 経済産業省貿易管理部「『みなし輸出』管理の明確化について」。居住者への技術提供であっても、雇用契約や経済的利益等に基づき外国政府または外国法人の強い影響を受けている状態(特定類型)に該当する居住者への提供は、みなし輸出管理の対象であることが明確化された。特定類型の具体例として、外国大学と兼業(クロスアポイントメントを含む)している本邦大学の教職員、および外国政府の理工系人材獲得プログラムに参加し個人として多額の研究資金や生活費の提供を受けている研究者が挙げられている。https://www.meti.go.jp/policy/anpo/anpo07.html / 運用明確化の資料 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/minashi/meikakukanitsuite2.pdf 2

  6. 米国商務省産業安全保障局(BIS)は2026年1月15日発効の最終規則で、米国から中国およびマカオの需要者向けに輸出される一定の市販先端コンピューティング半導体について、許可審査方針を原則否認(presumption of denial)から一定条件下での個別審査(case-by-case)へ変更した。https://www.bis.gov/news-updates

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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