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ホルムズ海峡の通航を512日分数えた|91.6%減の中身

公開2026-08-27濱本 隆太

ホルムズ海峡の通航データを512日分、日次で集計しました。閉鎖前は1日84.8隻、閉鎖後は7.1隻。崩れたのは3日間です。そして6月にいったん戻りかけた通航は、8月に再び落ちています。回復していません。

ホルムズ海峡の通航を512日分数えた|91.6%減の中身
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

先日、CIA長官のモスクワ訪問について書いたとき、ホルムズ海峡が事実上閉鎖されたままだという話を数行だけ添えました。8月23日の通航が3隻、平常時は1日およそ85隻、と。

書きながら引っかかっていたのが、その3隻という数字が、どういう経過の末に出てきたのかでした。ある日いきなり止まったのか、じわじわ細ったのか。そして、報じられていた「4月に再開の見込み」はどうなったのか。

日次のデータが公開されていたので、512日分を全部集計しました。結論を先に書きます。通航は3日で崩れ、その後いちども回復していません。

どう数えたか、そして何が数えられていないか

データはIMF PortWatchのチョークポイント別日次通航データです。IMFとオックスフォード大学環境変化研究所が共同で運営しているプラットフォームで、AIS(船舶自動識別装置)の信号から通航を数えています。これを日次CSVで配布しているサイトから取得しました。

取得できたのは2025年3月30日から2026年8月23日までの512日分。項目は総数、タンカー、貨物船の3つです。

先に限界を書いておきます。PortWatchが数えているのは、AISを発信している船だけです。 これは小さな注釈ではありません。この海域ではGPSのジャミング、AISの偽装、意図的な発信停止が報告されています。同じ日付の別の指標を見ると、監視対象171隻のうち73隻のタンカーがAISから消えていました。つまり実際の通航は、ここに出てくる数字を上回っている可能性があります。

それでも私はこのデータを使う価値があると考えています。理由は、同じ計測方法で長期間続いているからです。絶対値としては過小でも、閉鎖前と閉鎖後を同じものさしで比べられます。

なお相互検証として、集計した2026年8月23日の値は3隻(タンカー1・貨物2)で、トラッカー側の表示と一致しました。

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崩れたのは3日間だった

まず、いつ止まったのか。

通航は3日で崩れた(2026年2月22日〜3月9日)

2026年2月22日、通航は127隻。これは512日間で最も多い日です。そこから2月28日に57隻、3月1日に20隻、3月2日に4隻、そして3月4日に0隻

127隻から4隻まで、実質3日です。

私はもっと段階的に細っていくものだと想像していました。海運は契約と航海計画で動くので、方針が変わっても数週間は惰性で船が流れるだろうと。実際は違いました。危険が確定した瞬間に、船は一斉に止まる。 データを見て、海運の意思決定の速さに驚きました。

ちなみに通航ゼロの日は、その後2026年7月23日までの間に合計12日ありました。完全に止まった日が12日あったということです。

91.6%減、そして回復していない

次に、閉鎖前と閉鎖後を比べます。

区分 日数 1日あたり平均
閉鎖前(2025年3月30日〜2026年2月19日) 327日 84.8隻
閉鎖後(2026年3月1日〜8月23日) 176日 7.1隻

減少率91.6%。 ただ、この2つの数字を並べるだけでは、いちばん大事なところが見えません。月ごとに並べると景色が変わります。

ホルムズ海峡の1日あたり平均通航隻数(月次)

3月に3.2隻まで落ちたあと、4月に7.1隻、5月に3.9隻、そして6月に12.9隻まで戻しています。停戦枠組みのもとで再開が報じられていた時期と重なります。ここだけ見れば、回復に向かっているように見えます。

ところが7月は10.2隻、8月は4.9隻再び落ちています。

私はこの折れ返しがいちばん重要だと思っています。報道は再開の合意が伝えられるたびに動きますが、実際に船が通ったかどうかは別の話です。データ上は、6月にわずかに戻りかけたものが8月には3月・5月の水準に戻っています。直近30日の平均は4.9隻、最も少ない日は1隻でした。

もうひとつ、月次で並べて気づいたことがあります。閉鎖より前から通航は落ちていました。 2025年10月に89.4隻だったものが、11月67.4隻、12月55.5隻、2026年1月58.5隻。閉鎖の数か月前から4割近く減っています。2月にいったん78.3隻へ戻したところで、崩壊が来ました。

つまり「ある日突然に平常から閉鎖へ」ではなく、すでに細っていたところに最後の一撃が来たという順序です。この前段は、日次データを月で均さないと見えませんでした。

タンカーのほうが深く沈んでいる

船種で分けると、もう一段はっきりします。

タンカーのほうが深く沈んだ

タンカーは閉鎖前の平均47.6隻から2.9隻へ、93.8%減。貨物船は37.2隻から4.2隻へ、88.8%減です。

差は5ポイントですが、意味は小さくありません。閉鎖前はタンカーのほうが多かったのに、閉鎖後は貨物船のほうが多くなっています。順位が入れ替わりました。

理由を断定できるデータは手元にありませんが、リスクの引き受け方の違いは想像できます。VLCC(大型原油タンカー)1隻あたりの戦争リスク保険料は平常時の40倍、およそ1,000万ドルと報じられています。船価も積荷の価値も桁が違うタンカーは、リスクに対してより保守的になります。結果として、原油の流れが真っ先に止まる。

日本にとってはここが痛点です。輸入原油の大半がこの海峡を通ってきました。止まりやすいものから止まっているという構図になります。

止まった船はどこへ行ったのか

通航が減ったぶん、船は消えたわけではありません。同じ日の別の指標を見ると、行き先が分かります。

ペルシャ湾内に滞留している船は1,078隻。 通航中の船が127隻ですから、およそ8倍の船が動けずに留まっている計算になります。

そして運航事業者の側では、確認できた9社のうち8社が迂回を選んでいました。運航停止はゼロです。つまり「待つ」のではなく「回る」という判断が主流になっています。喜望峰回りを選べば、アジア・欧州間で数千海里と2週間前後が上乗せされます。運賃と納期に効いてくる話です。

保険の数字も動いています。戦争リスク保険料は平常時の40倍、VLCC1隻あたりおよそ1,000万ドルと報じられています。原油価格そのものはブレント86.29ドルで、危機の深さに比べれば落ち着いて見えます。ここは私も意外でした。ただ、これを「影響が小さい」と読むのは早いと思っています。価格は迂回と在庫でいったん吸収され、遅れてコストとして出てくるのが通常だからです。

AISの話も、この文脈で見ると意味が変わります。監視対象6,975隻のうち171隻をスクリーンして、73隻のタンカーがAISから消えていました。消えた船がどこにいるかは、この数字からは分かりません。ただ、私が本稿の冒頭で「実際の通航は集計値を上回っている可能性がある」と書いた根拠がこれです。数えられているのは、数えられることを選んだ船だけという前提を、忘れないほうがいいと思います。

数字を見たうえで、実務に何を引き取るか

ここからは解釈です。

第一に、「再開見込み」の報道と実際の通航は別物として扱う。 6月の12.9隻は、報道の熱量に比べればわずかな戻りでした。そして8月には消えています。供給網の計画を報道ベースで動かすと、振り回されます。通航実績のような実際に動いた量の指標を1つ持っておくほうが確実です。

第二に、閉鎖の前段があったことを教訓にする。 2025年11月から2026年1月にかけて、通航は4割落ちていました。この時点で気づけたかどうかが分かれ目です。危機は、ニュースになる前に数字に出ていました。

第三に、供給網の問題は輸出管理の問題と地続きだと認識する。 海上輸送が制約されると、代替ルート、代替調達先、在庫の積み増しが動きます。取引先が変われば、その取引先の素性を確かめる作業が発生します。緊急時ほど、確認を飛ばしたくなる場面が増えます。

第四に、迂回はコストとして遅れてくる。 運航事業者9社のうち8社が迂回を選び、運航停止はゼロでした。物流は止まっていません。ただ、止まっていないことと、影響が無いことは別です。喜望峰回りの日数と燃料、上がった保険料、湾内で待つ1,078隻の滞船料。これらは数か月遅れで調達価格に乗ってきます。いま原油価格が落ち着いて見えることを、安心材料として読まないほうがいいと私は考えています。

だからこそ、平時にスクリーニングと該非判定の工程を回しておく意味があります。当社のTRAFEEDは経産省基準に沿った該非判定と取引先スクリーニングを支援していますが、最終的な該非判定は貴社の輸出管理責任者が行うものです。まずは自社の現在地を確かめたい方は3分でできる輸出管理チェックからどうぞ。

まとめ

512日分の日次データを集計した結果です。

  • 期間は2025年3月30日〜2026年8月23日の512日分。IMF PortWatchのAISベース
  • 閉鎖前327日は1日平均84.8隻、閉鎖後176日は7.1隻減少率91.6%
  • 崩壊は3日間。2月22日127隻 → 3月1日20隻 → 3月2日4隻 → 3月4日0隻
  • 通航ゼロの日が12日
  • 6月に12.9隻まで戻したが、7月10.2隻、8月4.9隻と再び低下。回復していない
  • 閉鎖の数か月前から4割減していた。2025年10月89.4隻 → 12月55.5隻
  • タンカー93.8%減、貨物船88.8%減。閉鎖後はタンカーより貨物船のほうが多い
  • 湾内の滞留船は1,078隻。通航中127隻のおよそ8倍。運航事業者9社のうち8社が迂回を選択(運航停止はゼロ)
  • 戦争リスク保険料は平常時の40倍。ブレントは86.29ドルと相対的に落ち着いている
  • AISを発信している船のみの集計。監視対象171隻のうち73隻のタンカーがAISから消えている。実際の通航は集計値を上回る可能性がある

数えてみていちばん印象に残ったのは、127隻から0隻までが3日だったことです。供給網の議論では「徐々に代替する」という前提で計画を立てがちですが、現実には判断の切り替わりは一瞬でした。

そして回復のほうは、5か月かけてまだ戻っていません。壊れるのは3日、戻るのは年単位。この非対称性が、いま海運と調達の現場で起きていることだと思います。

供給網の変化にともなう取引先の確認や、輸出管理の体制づくりについて相談したい場合は、個別相談でお受けしています。


出典: IMF PortWatch「Daily Chokepoint Transit Calls and Trade Volume Estimates」(AISを発信している船のみを計上)を日次CSVで配布したもの https://straits.live/data/transits.csv 。2026年8月27日に取得した512日分(2025年3月30日〜2026年8月23日)を集計した。保険料・AIS消失隻数の参考値は同サイトの同日時点の表示による。

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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