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海保の無人機調達を全件数えた|4億円の内訳と落札率

公開2026-08-27濱本 隆太

海上保安庁が令和5〜8年度に発注した無人機・無人艇の調達を、開札結果PDFから全件洗い出しました。9件で合計4億1,084万円。金額の幅は126倍あり、応札者が1社の案件では落札率が予定価格に張り付いていました。

海保の無人機調達を全件数えた|4億円の内訳と落札率
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

先日、海上保安庁の危険物探知用無人艇「あるばとろす」について調達記録から追った記事を書きました。1隻の船を追いかけただけでしたが、調べていて気になったことがあります。海保は無人機にいくら使っていて、誰が受注しているのか。

無人化は政府の方針としてよく語られます。日本成長戦略でも海洋無人機は62の重点技術のひとつに選ばれました。ただ、方針の文書には金額の見込みは書いてあっても、実際にいくらの契約が誰と結ばれたかは書いてありません

そこで全部数えました。結果は4億円ちょっとでした。この数字が大きいか小さいかは、内訳を見ないと判断できません。

どう数えたか

海上保安庁は年度ごとに入札・落札の状況を公表しています。そのページから「無人」「ドローン」「自律航行」「遠隔操縦」を含む案件を機械的に抜き出し、各案件の開札結果PDFを取得しました。この資料には契約金額と予定価格に加えて、入札に参加した会社の一覧まで載っています。

対象は令和5年度から8年度までの一般競争4年分。抽出できたのは8件でした。これに、令和7年度の年度まとめ資料から「危険物探知用無人操船システムの開発及び製造」を加えて計9件としています。この案件は令和7年度からの調達ポータル移行により、個別の開札結果PDFがサイト上に見当たらないためです。

取得できなかったものも書いておきます。防衛省・防衛装備庁の契約情報は機械取得ができませんでした。アクセス制御により自動取得が弾かれます。したがって本記事は海上保安庁に限った話であり、「日本政府全体の無人機調達」とは書けません。また随意契約分は対象外で、一般競争のページのみを見ています。無操縦者航空機シーガーディアンは商社経由の購入契約のため、この一覧には現れません。

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全9件、4億1,084万円

まず全件です。

年度 案件 落札者 契約金額 落札率 応札者数
R5 汎用型無人航空機7式ほか2点買入 セナーアンドバーンズ 12,206,700 91.0% 2
R5 汎用型無人航空機用バッテリー100個ほか2点 プラスラボ 1,625,533 90.5% 3
R5 危険物探知用無人艇設計業務ほか2点製造 ヤンマーパワーテクノロジー 110,000,000 92.4% 1
R6 小型無人機等9点買入 セナーアンドバーンズ 6,978,180 84.6% 2
R6 汎用型無人航空機用バッテリー74個ほか4点 セナーアンドバーンズ 2,958,780 91.6% 2
R6 大型無人航空機による海域火山調査支援事業 ヤマハ発動機 12,859,000 97.0% 2
R7 危険物探知用無人操船システムの開発及び製造 ヤンマーパワーテクノロジー 200,420,000 99.9% 不明
R7 遠隔操縦無人潜水艇による海底物件調査 海洋エンジニアリング 31,240,000 87.8% 3
R8 大型無人航空機による海洋調査支援事業 ヤマハ発動機 32,560,000 99.0% 1

合計4億1,084万8,193円。巡視船1隻の建造費が100億円を超えることを思えば、桁が2つ違います。

そして表を眺めていて最初に引っかかったのが、金額の幅でした。

「無人機の調達」と一括りにできない金額差

最小がバッテリー162万円、最大が無人操船システムの開発2億42万円。126倍の開きがあります。 同じ「無人機の調達」という言葉で括られていても、消耗品の買い足しと、新しい船を一から設計する契約が同じ棚に並んでいるわけです。

金額の上位2件はどちらも危険物探知用無人艇「あるばとろす」の関連で、しかも受注はヤンマーパワーテクノロジーです。設計に1億1,000万円、開発と製造に2億42万円。**この2件だけで全体の75.6%**を占めます。裏を返せば、残り7件は合わせて1億円ほど。無人機の調達といっても、大半は既製品と消耗品の買い足しでした。

応札者が1社だと、落札率が天井に張り付く

次に落札率を見ます。契約金額を予定価格で割った比率です。

応札者が1社だと、落札率は予定価格に張り付く

きれいに分かれました。**応札者が複数いた6件の平均は90.4%、応札者が1社だった2件の平均は95.7%**です。5.3ポイントの差があります。

とくに目を引くのが上の2件。危険物探知用無人操船システムの99.9%(予定価格2億600万円に対して契約2億42万円)と、大型無人航空機による海洋調査支援事業の99.0%(予定価格3,287万9,999円に対して契約3,256万円)。後者は応札者が1社であることが開札結果に明記されています。

こういう数字を見ると身構える方もいると思うので、私の見方を書いておきます。これを不透明さの証拠として読むべきではないと考えています。

理由は、仕様を満たせる企業がそもそも少ないからです。無人艇なら、舶用エンジンを自社で作り、船体を成形でき、自動着桟の制御まで一貫して持つ国内企業は数えるほどしかありません。大型無人航空機の運航サービスなら、機体と運航体制の両方を持つ事業者が限られます。応札できる会社が1社であれば、価格は予定価格の近くに張り付きます。競争が働かなかったのではなく、競争できる母集団が小さいということです。

逆に、消耗品では競争が効いています。バッテリー100個ほかの案件は3社が応札して落札率90.5%、小型無人機等9点は2社で84.6%。汎用品になった瞬間に競争が生まれるという、ごく素直な結果でした。

機体を買うのではなく、飛ばしてもらう

もうひとつ、数えるまで気づかなかったことがあります。買っているものの性質が変わってきています。

令和6年度の「大型無人航空機による海域火山調査支援事業」と、令和8年度の「大型無人航空機による海洋調査支援事業」。どちらもヤマハ発動機が受注していますが、これは機体の購入ではありません。案件名のとおり「調査支援事業」、つまり運航ごと委託する役務調達です。

金額を見ると、令和6年度が1,285万9,000円、令和8年度が3,256万円。2年で2.5倍になっています。

この形には合理性があります。大型無人航空機を自庁で保有すると、機体の維持整備、操縦要員の養成、法令上の許認可、保管場所まで抱え込むことになります。年に数回の火山調査や海洋調査のためにそこまで持つより、必要なときに飛ばしてもらうほうが安い。実際、令和8年度の3,256万円は、機体を1機買う金額には遠く及びません。

ただし、この形は能力が事業者側に蓄積することも意味します。運航のノウハウも、データの取り方も、受注した会社に貯まる。国内に技術が残るという意味では成長戦略の狙いと合致しますが、発注側の海保に運用知見が貯まるかは別の話です。私はここを、良し悪しではなく構造として押さえておくべき点だと見ています。

日本成長戦略が海洋無人機について「アンカーテナンシーを通じた市場形成」を掲げていることは別の記事に書きました。政府が最初の顧客になって市場を立ち上げる考え方です。今回数えた9件は、まさにその実例にあたります。総額4億円は市場を作る規模としては小さいものの、ヤマハ発動機・ヤンマー・セナーアンドバーンズといった受注側から見れば、開発投資の出口が実在することの証明にはなっています。

件数で数えるか、金額で数えるかで景色が変わる

受注者別に集計すると、見え方が変わります。

受注者別の金額(件数の順位とは一致しない)

件数で最も多いのはセナーアンドバーンズの3件です。ところが金額で見ると2,214万円で4位。逆にヤンマーパワーテクノロジーは2件だけですが3億1,042万円、**全体の75.6%**を占めます。

この差は、担っている役割の違いから来ています。セナーアンドバーンズが受注しているのは汎用型無人航空機の機体7式やバッテリー、小型無人機9点といった既製品の供給です。単価は小さく、頻度が高い。一方ヤンマーが受注したのは、危険物探知用無人艇の設計と、無人操船システムの開発及び製造。一点ものの開発案件です。

ヤマハ発動機の2件は、そのどちらとも違います。機体を納めるのでも開発するのでもなく、大型無人航空機を飛ばす役務。合計4,541万円で、件数2件・金額2位という位置にいます。

つまり同じ「無人機を調達した9件」のなかに、既製品の購入・一点ものの開発・運航の委託という3つの異なる取引が混ざっています。数を数えるだけでは、この違いは見えません。私は金額と件数の両方を並べてはじめて、この構造に気づきました。

数えて分かったこと、そして輸出管理との接点

最後に、この調査が輸出管理とどうつながるかを書きます。

無人機は日本成長戦略でデュアルユース技術として明記されました。民生にも軍事にも使える技術という意味です。そして今回の9件を見ると、受注しているのは防衛専業のメーカーではありません。ヤマハ発動機、ヤンマー、そして小規模な専門商社です。もともと民生品を作ってきた会社が、官需の無人化を担っているという構図がはっきり見えます。

ここが実務上の分かれ目になります。民生品として設計した部品や機体が、無人機に組み込まれた瞬間に、輸出時の扱いが変わることがあります。センサー、モーター、通信機器、制御装置。単体では規制対象でなくても、用途と組み合わせ次第で該非判定が必要になります。

自社の製品がこうしたサプライチェーンに入りそうな方は、3分でできる輸出管理チェックで現在地を確かめておくことをお勧めします。当社のTRAFEEDは経産省基準に沿った該非判定と取引先スクリーニングを支援していますが、最終的な該非判定は貴社の輸出管理責任者が行うものです。

まとめ

海上保安庁の無人機・無人艇調達を全件数えた結果です。

  • 令和5〜8年度の一般競争で9件、合計4億1,084万8,193円
  • 金額は162万円から2億42万円まで126倍の幅。上位2件(無人艇の設計と開発)で全体の75.6%
  • 応札者が複数の6件は平均落札率90.4%、1社の2件は95.7%。最高は99.9%
  • 消耗品では3社・2社の競争があり、落札率も90%前後に収まる
  • 機体購入ではなく運航の役務調達が増えている。 大型無人航空機による調査支援は2年で1,285万円→3,256万円と2.5倍
  • 件数の最多はセナーアンドバーンズ3件だが、金額ではヤンマーパワーテクノロジーが3億1,042万円で全体の75.6%
  • 9件のなかに既製品の購入・一点ものの開発・運航の委託という3つの異なる取引が混在している
  • 受注しているのは防衛専業ではなく民生メーカー
  • 防衛省分は機械取得ができず、本記事は海上保安庁に限定した集計

数えてみて、無人化という言葉の解像度が上がりました。政府の無人化というと大型の装備品を思い浮かべますが、実際に動いていた契約の大半は、既製の小型機とそのバッテリー、そして「飛ばしてもらう」役務でした。派手さはありません。ただ、現場の調査業務が確実に置き換わりつつあることは、この9件から読み取れます。

そして担い手が民生メーカーだという事実は、輸出管理の実務に直結します。自社の技術が官需の無人化に関わりそうで、輸出管理の整理から手をつけたいという場合は、個別相談でお受けしています。


出典: 海上保安庁「入札・落札等の状況(一般競争)」令和5〜8年度の各ページ、および各案件の開札結果PDF。令和7年度の「危険物探知用無人操船システムの開発及び製造」は「公共調達の適正化について(財計第2017号)に基づく競争入札に係る情報の公表(物品役務等)」令和7年度分による。いずれも2026年8月27日時点で取得したもの。

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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