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規制改革2026×医療・介護・ヘルスケアをやさしく解説|医療データ活用・オンライン診療・タスクシフト

公開2026-07-25濱本 隆太

2026年7月21日に閣議決定された規制改革実施計画のうち、医療・介護・ヘルスケア分野の見直しを初心者向けにやさしく解説します。全国がん登録や電子カルテデータの利活用、本人同意不要の医療等データの範囲、治験の一括審査、介護の人員配置基準、医療・介護のタスクシフト、オンライン診療の普及まで、一次情報に基づいて整理しました。

規制改革2026×医療・介護・ヘルスケアをやさしく解説|医療データ活用・オンライン診療・タスクシフト
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

2026年7月21日、政府が「規制改革実施計画」を閣議決定しました。全部で57事項にわたる、かなり大きな見直しのパッケージです。このうち、この記事で取り上げるのは医療・介護・ヘルスケアの分野です。医療のデータは人の病気や体に関わる、とても機微な情報ですし、介護やオンライン診療は暮らしの安心に直結します。だからこそ、制度がどう変わろうとしているのかを、正確に、そして落ち着いて理解しておく価値があると思います。

医療分野の規制改革は、専門用語が多くて身構えてしまう領域です。この記事では、政策に詳しくない事業者の方でも読み通せるように、7つの実施事項をひとつずつ噛み砕いていきます。各事項は、①背景と現状の課題、②今回どう変わろうとしているのか、③事業者にとっての意味、④今後の見通し、の4点で整理します。長くなりますが、読み終えるころには、医療・介護分野の規制改革の全体像がつかめるはずです。

なお、規制改革実施計画そのものの全体像や、AI・デジタル分野の見直しについては、別の記事で整理しています。あわせて読むと立体的に見えてきます。

医療や介護の現場でAIやデジタルの活用を考えている方は、先にAIリテラシーの無料診断で自社の現在地を確かめておくと、後半の話がより具体的に読めるはずです。

4. 全国がん登録・院内がん情報の利活用に向けた整備

背景と現状の課題

まず「全国がん登録」という制度から説明します。これは、日本でがんと診断されたすべての人の情報を、国が一つのデータベースにまとめて管理する仕組みです。がん登録推進法という法律に基づいて運用されており、どんな種類のがんが、どの地域で、どれくらい発生しているかを正確に把握して、がん対策に役立てることを目的としています。

このデータをがん研究のために外部の研究者へ提供することを、第三者提供と呼びます。ただ、提供にあたっては個人が特定されないように情報を加工します。ここに課題がありました。たとえば診断日、死亡日、最終生存確認日、原死因といった具体的な日付や死因が、提供の段階では「提供用診断年月」「提供用生存期間(日数)」「提供用原死因(がんによる死亡・がん以外の死亡・生存といった区分)」といった、大まかな形に加工されていたのです。研究者からは、この加工方法では研究に使いにくい、より具体的な情報がほしい、という声が上がっていました。

今回どう変わろうとしているのか

規制改革実施計画では、がん対策の一層の充実に向けて、次の3つを進めるとしています。ひとつは、全国がん登録データベースの登録項目そのものを拡充すること。もうひとつは、病院からのより具体的な情報、たとえば死亡日等や死因を第三者に提供できるようにすること。そしてもうひとつが、院内がん登録データベースと公的データベースを連結できるようにすることです。院内がん登録というのは、個々の病院が自院の患者について詳しく記録しているデータで、これを公的なデータとつなげられれば、研究の幅が大きく広がります。これらによって、がん研究におけるデータ利用を量と質の両面で促進する、というのが狙いです。

事業者にとっての意味

がん領域の研究開発に関わる企業や研究機関にとっては、使えるデータが増え、より詳細な分析ができる方向への動きです。創薬や医療機器の開発、疫学研究などで、これまで手が届かなかった粒度の情報にアクセスできる可能性が出てきます。一方で、扱う情報が具体的になるほど、情報の管理や取扱いには一層の慎重さが求められることも忘れてはなりません。

今後の見通し

この事項は、引き続き検討を進め、令和8年(2026年)夏に結論・措置等とされています。関連する法令等はがん登録推進法や全国がん登録情報の利用マニュアルです。具体的な加工方法や連結の方式については、これから詰められていく段階にあります。詳細は規制改革実施計画本文を参照してください。

規制改革実施計画2026 実施事項 説明スライド(事項4)

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料

5. 電子カルテデータの利活用の促進

背景と現状の課題

続いて電子カルテです。多くの医療機関では、診療の記録を紙ではなく電子カルテで管理しています。このカルテの情報を医療機関どうしで共有できるようにする「電子カルテ情報共有サービス」が、令和8年(2026年)冬頃から運用開始される予定です。患者が別の病院にかかるときに、これまでの診療情報が引き継がれれば、より安全で質の高い医療につながります。

医療データの使い方には、大きく分けて2つあります。ひとつは一次利用で、これは目の前の患者さんの診療に直接使うことです。もうひとつが二次利用で、氏名等の情報を削除して個人が特定できない形にしたうえで、研究機関や、創薬・医療機器を開発する民間事業者などが研究開発に活用することを指します。この二次利用をどう広げていくかが、技術革新のカギを握っています。

今回どう変わろうとしているのか

規制改革実施計画では、電子カルテデータの利活用を促進するために、いくつかの見直しを挙げています。共有サービスの対象となる情報の種類を増やすこと。データの保存期間を延ばすこと(現状は最長5年で、個別の医師の判断で長期保存フラグが付されたものを除く、とされています)。情報を出す側の医療機関が確実にデータを提供するよう、情報拠出の義務化など、医療機関の規模に応じてデータ収集率を高める仕組みを導入すること。共有・閲覧できる対象者の範囲を広げること(病院だけでなく、介護事業所や薬局等も想定されています)。そして、二次利用の対象となる情報を拡充することです。あわせて、構築中の電子カルテ情報データベースについて、その対象情報の範囲も検討するとしています。

事業者にとっての意味

創薬や医療機器の開発を行う事業者にとっては、研究開発に使えるデータの裾野が広がる方向です。介護事業所や薬局にとっても、共有・閲覧の対象が広がれば、患者や利用者の状態をより把握しやすくなる可能性があります。国民にとっては、健康増進やより質の高い医療・ケアにつながることが期待されます。一方で、扱う情報が増えるほど、セキュリティや個人情報の保護の重要性も高まります。

今後の見通し

この事項は、令和8年(2026年)に結論、結論を得次第速やかに措置等とされています。関連する法令等は、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律とその施行規則・ガイドライン等です。共有サービス自体が令和8年冬頃の運用開始予定であり、この見直しはそれと歩調を合わせて進んでいく見込みです。詳細は規制改革実施計画本文を参照してください。

規制改革実施計画2026 実施事項 説明スライド(事項5)

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料

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6. 本人同意不要の医療等データの範囲・利用主体・利用目的の在り方

背景と現状の課題

医療データの二次利用を考えるとき、避けて通れないのが「本人の同意」の問題です。原則として、個人のデータを使うときには本人の同意が必要です。ただ、医療のように大量のデータを研究に使いたい場面では、一人ひとりから都度同意を得るのが現実的でないこともあります。そこで、氏名等を削除して個人が特定できない形にしたうえで、本人の個別同意を都度取らなくても利活用できるデータの範囲を、どこまでとするかが論点になります。

この分野では、EUのデータ利活用制度であるEHDS(欧州保健データスペース)も参考にしながら、議論が進みつつあります。医療等データの利活用の流れの中で、利用者、つまり事業者や研究者の起点で特に重要となる事項について、具体的な検討を加速しよう、というのが背景です。

今回どう変わろうとしているのか

規制改革実施計画では、利用者起点で重要となる論点を整理しています。主なものは次のとおりです。

  • 対象となる医療等データの範囲。EHDSと同様に、仮名化(個人を直接特定できないように加工すること)が難しいゲノムデータや画像情報も含めて、本人同意不要で利活用できるデータの対象範囲を明確化する
  • 多くのデータを収集できる仕組み。医療等データを持つ民間事業者・医療機関・学会・独立行政法人等の様々な主体に対して、優先順位を付けつつ、一定の強制力や強いインセンティブを持ってデータを集める仕組みを構築する
  • 共通の識別子。各データの連結解析を可能にするために、共通の識別子を設定する
  • 一元的な審査体制の整備。公的データベースと民間データベースのデータの利用申請の受付や、利用目的等の審査を一元的に行う体制等を整備する
  • 利用目的および利用者の範囲。利用を可能とする目的と、その目的に応じて想定される利用者の範囲(行政、研究者、製薬会社、医療機器メーカーなど)を明確化する

事業者にとっての意味

製薬会社や医療機器メーカー、研究機関にとっては、研究開発に使えるデータの範囲と、その利用の道筋が明確になる方向です。とりわけ、これまで扱いが難しかったゲノムデータや画像情報が対象に含まれれば、精密医療やAI診断の研究などで意味を持つ可能性があります。ここで大切なのは、これは「本人の同意なしにデータが無制限に使われる」という話ではない、という点です。あくまで個人情報保護法や次世代医療基盤法などの枠組みの中で、個人を特定できない形にしたうえで、利活用できる範囲や審査の体制を整えていく、という慎重な検討です。医療データは機微な情報だからこそ、この線引きは丁寧に進められることになります。

今後の見通し

この事項は、令和8年(2026年)夏に結論、速やかに措置とされています。関連する法令等は、個人情報保護法、次世代医療基盤法、健康保険法等です。対象範囲や審査体制の具体像はこれから固まっていく段階にあります。詳細は規制改革実施計画本文を参照してください。

規制改革実施計画2026 実施事項 説明スライド(事項6)

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料

医療データの利活用は、事業者にとって大きな機会であると同時に、扱い方を一歩間違えれば信頼を損なう領域でもあります。自社が医療・ヘルスケアのデータをどう扱い、どこまでAIを活用できるのかを整理したいとき、社外の専門家の視点を入れることは有効です。私たちはWARPというAIコンサルティングで、こうしたデータ活用とAI導入の設計を経営者と一緒に進めています。

8. 倫理審査の適正化(治験の一括審査)

背景と現状の課題

新しい薬を世に出すには、治験、つまり人を対象にした臨床試験が欠かせません。治験を行うときには、被験者の安全や人権が守られているかを確認するために、治験審査委員会という第三者の委員会が計画を審査します。ここが日本では、大きなボトルネックになっていました。

規制改革実施計画に示された数字を見ると、その差は明らかです。治験審査委員会の開催回数は、日本が平均57.3回に対して米国が28.0回で、およそ2倍。承認を得るまでに要した日数も、日本が平均123日に対して米国が56日で、こちらも2倍以上です。とりわけ課題とされているのが、複数の施設が参加する共同治験のケースです。たとえば12の施設で共同治験を行う場合、現状では各施設がそれぞれ審査を行うため、最大で12回の審査が必要になります。理想は、1回の一括審査で済ませることです。

この非効率が、いわゆるドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの一因にもなっています。ドラッグ・ラグとは、海外で使える薬が日本で使えるようになるまでの遅れのこと。ドラッグ・ロスとは、そもそも日本で開発すらされない薬が出てしまうことです。国際共同治験の実施数でも、日本は2000年から2023年の累計で世界19位、2,698試験にとどまっています。

今回どう変わろうとしているのか

規制改革実施計画では、ドラッグ・ラグ/ロスの解消と日本の創薬力の強化に向けて、治験審査を効率化するとしています。具体的には、治験依頼者(治験を主導する側)が治験審査委員会を選定できるようにすること。治験審査委員会として満たすべき基準を明確化すること。そして、治験審査委員会等の質の担保・向上に資する方策を講じることです。これらによって、施設ごとにバラバラに審査するのではなく、一括審査を推進し、国内での国際共同治験等を進めやすくしよう、というのが狙いです。

事業者にとっての意味

製薬会社や治験を実施する医療機関、治験関連の事業者にとっては、審査の回数と時間が減れば、開発のスピードとコストに直接効いてきます。国際共同治験に日本が参加しやすくなれば、海外の最新の薬が日本の患者に届くまでの時間も短くなる可能性があります。創薬という、日本が国際的に競争していく分野の足腰を強くする見直しだと言えます。

今後の見通し

この事項は、令和8年度(2026年度)上期に検討・結論、結論を得次第速やかに措置等とされています。関連する法令等は、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令、いわゆるGCP省令や、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針です。比較的早い時間軸で結論が出ることが見込まれています。詳細は規制改革実施計画本文を参照してください。

規制改革実施計画2026 実施事項 説明スライド(事項8)

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料

38. 地域の実情に応じた介護サービス提供体制・人員配置基準の見直し

ここからは介護の話に移ります。この事項は、2つの内容から構成されています。順に見ていきます。

背景と現状の課題

介護の現場は、人口減少と高齢化の板挟みにあります。とくに中山間地域や人口減少地域では、介護サービスを支える職員の確保がますます難しくなっています。介護保険法などの基準では、施設ごとに必要な職員数が定められていますが、地域によっては、その基準を満たすこと自体が困難になりつつあります。介護の質は保ちつつも、地域の実情に応じた柔軟な体制をどう組むかが問われています。

今回どう変わろうとしているのか

ひとつめは、特例介護サービスの枠組みの拡張です。中山間・人口減少地域における人員配置基準の緩和など、地域の実情に応じた柔軟な対応が可能となるよう、特例介護サービスに新たな類型を設定するとしています。ここで重要なのは、新たな類型を適用するときの要件や対象が、過度に限定されることのないよう留意する、と明記されている点です。大都市部や一般市等にも、すでに介護サービスの提供が困難なエリアはあるため、対象を過度に絞らず、市町村の意向が反映されるプロセスにすることが求められています。

ふたつめは、特定施設等における人員配置基準の特例的な柔軟化です。具体的には、要介護者と看護・介護職員の比率を、これまでの「3対1」から「3対0.9」へと柔軟化する取扱いの制度運用が念頭にあります。これは、ロボットやICTといったテクノロジーを導入して生産性を上げることが前提になっています。あわせて、テクノロジー導入前後の職員の業務時間を計測する「タイムスタディ調査」の事務負担を軽くすることも盛り込まれています。現状では10分単位での記録が煩雑であったり、調査項目が業務の実態に合わず過多であったりする、という課題があるためです。また、介護用シャワーや自動体位交換機能付マットレスなど、直接介護に充てる業務時間の減少につながるテクノロジーが存在することを踏まえ、要件の見直しも検討されます。

事業者にとっての意味

介護事業者にとっては、人手が確保しにくい地域でもサービスを続けやすくなる方向の見直しです。とくに、テクノロジーの導入を前提とした人員配置の柔軟化は、介護ロボットやICT機器を提供する事業者にとっても関わりの深い動きです。タイムスタディ調査の負担が軽くなれば、テクノロジー導入のハードルも下がります。ただし、あくまで介護の質の確保に留意しつつ、という前提が繰り返し強調されている点は押さえておく必要があります。

今後の見通し

特例介護サービスの枠組み拡張については、措置済等とされています。特定施設等における人員配置基準の柔軟化とタイムスタディ調査の簡素化については、令和7年度(2025年度)検討開始、令和8年度(2026年度)結論等とされています。関連する法令等は、介護保険法や、指定居宅サービス等の事業の人員・設備及び運営に関する基準などです。詳細は規制改革実施計画本文を参照してください。

規制改革実施計画2026 実施事項 説明スライド(事項38)

規制改革実施計画2026 実施事項 説明スライド(事項38)

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料

40. 医療・介護分野におけるタスク・シフト/シェアの促進

背景と現状の課題

タスク・シフト、タスク・シェアという言葉は、医療・介護の世界でよく使われます。ある職種が担っていた業務を、一定の要件の下で別の職種にも担えるようにして、負担を分け合ったり、限られた人手を有効に使ったりする取組のことです。医師や看護師が慢性的に不足するなかで、持続可能な医療と介護を続けるための工夫として注目されています。

介護の現場では、介護福祉士が医師の指示の下に実施できる医行為が法令で定められています。社会福祉士及び介護福祉士法施行規則では、口腔内の喀痰吸引、鼻腔内の喀痰吸引、気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養の5つが挙げられています。経管栄養というのは、口から食事をとることが難しい方に、チューブなどを通じて栄養を届ける方法です。ただ、現場では、これらに含まれていない「食道ろうによる経管栄養」についても対応の必要があり、強いニーズがあると指摘されていました。

今回どう変わろうとしているのか

規制改革実施計画では、介護現場の実態等に応じた利用者本位のサービスの実現に向けて、一定の要件の下で、介護職員が実施可能な行為として食道ろうによる経管栄養を追加するとしています。すでに実施可能な胃ろう・腸ろう・経鼻経管による経管栄養に、食道ろうを加える、という見直しです。これにより、持続可能な医療と介護のサービス提供につなげることが狙いです。

事業者にとっての意味

介護施設や在宅介護サービスの事業者にとっては、対応できる利用者の幅が広がる方向の見直しです。これまで医療職でなければ対応が難しかった行為の一部を、一定の要件の下で介護職員が担えるようになれば、限られた人材でサービスを提供しやすくなります。もっとも、追加されるのはあくまで一定の要件の下でのことであり、安全の確保や必要な研修などが前提になります。要件の具体的な中身は、これから固まっていきます。

今後の見通し

この事項は、令和8年度(2026年度)検討開始、令和10年度(2028年度)結論等とされています。介護の他の事項に比べると、結論までの時間軸はやや長めです。関連する法令等は、社会福祉士及び介護福祉士法施行規則や、原則として医行為ではない行為に関するガイドライン等です。詳細は規制改革実施計画本文を参照してください。

規制改革実施計画2026 実施事項 説明スライド(事項40)

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料

41. 地域におけるオンライン診療の更なる普及・円滑化

背景と現状の課題

最後はオンライン診療です。医療機関から離れた地域に住む方や、通院が難しい方にとって、情報通信機器を使って診察を受けられるオンライン診療は、大きな助けになります。とくに、医療機関が少ない地域では、その意義はいっそう大きくなります。

この分野では、すでに制度の整備が一歩進んでいます。医療法の改正によって、オンライン診療を受ける場所に関して、オンライン診療専用車両等も対象とする「オンライン診療受診施設」という制度が新設されました。たとえば、医療機器を搭載した専用の車両が地域を回り、その車内で看護師が立ち会いながらオンライン診療を行う、といった運用が想定されています。ただ、いくつかの課題が残っていました。ひとつは、この受診施設で患者が看護師等とともにいる場合に、どこまでの診療の補助行為ができるのかが明確でないこと。もうひとつは、診療報酬上の取扱いです。令和8年度(2026年度)の診療報酬改定で、患者が看護師等とともにいる場合のオンライン診療の検査・処置等について算定が明確化されましたが、この「オンライン診療受診施設」における算定はできない状態にありました。

今回どう変わろうとしているのか

規制改革実施計画では、次の2つを進めるとしています。ひとつは、オンライン診療受診施設で患者が看護師等とともにいる場合について、可能な診療の補助行為や、必要な設備・体制等を明確化したガイドライン等を整備すること。もうひとつは、そのガイドライン等の整備を前提に、診療報酬上の取扱いを明確化することです。参考までに、診療報酬の算定方法では、看護師等とともにいる患者に対して情報通信機器を用いた診療を行い、一定の処置を実施した場合の「看護師等遠隔診療処置実施料」として、1種類の場合100点、2種類以上の場合150点、という区分が示されています。こうした算定を、オンライン診療受診施設でも適切に扱えるようにしていく方向です。

事業者にとっての意味

オンライン診療のサービスや、専用車両を活用した巡回型の医療提供に関わる事業者にとっては、できることの範囲と報酬の取扱いが明確になる方向の見直しです。ルールがはっきりすれば、地域医療の担い手が新しい形の診療に踏み出しやすくなります。医療機器や情報通信の分野でも、関連するニーズが広がる可能性があります。地域の移動の足の確保や、へき地医療の維持といった、暮らしを支える取組ともつながっていく領域です。

今後の見通し

この事項は、令和8年(2026年)検討開始、令和9年(2027年)結論等とされています。関連する法令等は、ガイドライン等の新設や、診療報酬の算定方法(告示)等です。診療報酬に関わる部分は、改定のタイミングとも連動しながら整えられていくことになります。詳細は規制改革実施計画本文を参照してください。

規制改革実施計画2026 実施事項 説明スライド(事項41)

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料

この見直しを、自分の事業の話として読む

ここまで、医療・介護・ヘルスケア分野の7つの実施事項を見てきました。全体を貫いているのは、2つの流れだと思います。

ひとつは、データとテクノロジーを、安全に配慮しながら前に進めるという流れです。がん登録や電子カルテの利活用、本人同意不要のデータの範囲の明確化、治験の効率化。いずれも、医療という機微な領域で、慎重さを保ちながらデータ活用の道を広げようとしています。もうひとつは、人手不足の現実に向き合うという流れです。介護の人員配置の柔軟化、タスクシフト、オンライン診療。人が足りないという厳しい前提のなかで、テクノロジーと制度の工夫でサービスを維持しようとしています。

この2つの流れに共通しているのは、AIやデジタルの活用が実効性を左右する、ということです。データを研究に生かすのも、限られた人手でサービスを回すのも、結局はテクノロジーをどう業務に落とし込めるかにかかっています。制度が整っても、現場で使いこなせなければ、機会は素通りしてしまいます。

私の見方はこうです。医療・介護・ヘルスケアに関わる事業者にとって、今回の見直しは追い風になりうるものです。ただし、その追い風を受け取れるかどうかは、AIやデータを自社の武器にできるかどうかで大きく変わります。何から手をつければいいか分からないまま待っていると、制度があっても活かしきれません。かといって、AIを入れれば人手不足がすべて解決するわけでもありません。どこに効いて、どこには効かないのかを見極める判断が、最初の分かれ道になります。

自社でAIやデータをどこからどう取り入れればいいか、その出発点の整理に迷っておられるなら、WARPの担当までご相談ください。元大手企業でDXやデータ戦略を担ってきた専門家が、月次で伴走しながら、AIを事業に落とし込むお手伝いをしています。医療・介護は特に慎重さが求められる分野だからこそ、効くところと効かないところを見極める設計から、一緒に始めましょう。

まとめ

長くなったので、要点を整理します。

  • 全国がん登録・院内がん情報(事項4)は、登録項目の拡充、より具体的な情報の第三者提供、院内データと公的データの連結を進め、がん研究のデータ利用を量・質両面で促進します。令和8年夏結論・措置等です
  • 電子カルテデータ(事項5)は、対象情報の拡充、保存期間の延長、収集率を高める仕組み、共有・閲覧対象者の拡大、二次利用の拡充を進めます。令和8年結論等です
  • 本人同意不要の医療等データ(事項6)は、対象範囲・収集の仕組み・共通識別子・一元的な審査体制・利用目的と利用者の範囲を明確化する検討です。無制限にデータを使う話ではなく、あくまで慎重な線引きの話です。令和8年夏結論・措置です
  • 倫理審査の適正化(事項8)は、治験審査の一括化などでドラッグ・ラグ/ロスの解消と創薬力強化を目指します。令和8年度上期検討・結論等です
  • 介護の提供体制・人員配置基準(事項38・39)は、地域の実情に応じた柔軟化やテクノロジー前提の配置基準の見直し、調査の簡素化を進めます
  • 医療・介護のタスクシフト(事項40)は、一定の要件の下で介護職員が実施可能な行為に食道ろうによる経管栄養を追加します。令和8年度検討開始、令和10年度結論等です
  • オンライン診療(事項41)は、オンライン診療受診施設での補助行為や設備・体制をガイドラインで明確化し、診療報酬上の取扱いも明確化します。令和8年検討開始、令和9年結論等です

政策文書は、読むだけだと他人事に見えます。ですが、そこに書かれた見直しの一つひとつは、医療・介護・ヘルスケアに関わる会社が明日から考えていいテーマです。制度の方向が示されている今は、自社のどこにAIやデータが効くのかを見極めるところから、始めてみてください。

参考文献・一次情報

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