こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
2026年7月21日、政府が「規制改革実施計画」を閣議決定しました。これは、暮らしや経済の足かせになっている古いルールを見直して、新しい挑戦をしやすくするための、国の実行リストのようなものです。全部で57の実施事項が並んでいて、農業から医療、労働、交通まで、扱う範囲はとても広いです。
この記事では、そのなかからエネルギー・環境・ものづくり・くらしに関わる事項を取り上げます。具体的には、電波を使う機器のルール、蓄電池、次世代型の太陽電池、太陽光発電設備の検査、家電のリサイクル、店頭の景品、広告の規制、自転車の防犯登録です。どれも「うちには関係ない」と思われがちなテーマですが、工場や倉庫、店舗、製造の現場を持つ会社にとっては、意外と身近な話が詰まっています。
政策文書は言い回しが硬くて、初めて読む人にはかなり手強いです。そこでこの記事では、一つひとつの事項について「①これまでどういう課題があったのか」「②今回どう変わる、あるいは検討されるのか」「③事業者にとってどんな意味やチャンスがあるのか」「④これからの見通し」という4つの角度から、やさしく噛み砕いていきます。長くなりますが、気になる項目だけ拾い読みしても大丈夫なように構成しました。
計画全体の位置づけや、農業・企業法制の事項を先に知りたい方は、規制改革実施計画2026の全体像をまとめた記事と、農業・企業法制の実施事項を解説した記事もあわせてご覧ください。自社にAIやデジタルをどう取り入れるか関心のある方は、先にAIリテラシーの無料診断で現在地を確かめておくと、後半の話が具体的になります。
なお、この記事の事実関係は、閣議決定と同時に公表された政府の説明資料(規制改革実施計画 実施事項の説明資料)に基づいています。個別の詳しい条件や適用範囲は、規制改革実施計画の本文を直接ご確認いただくのが確実です1。
事項15 電波利用規制(技適・ワイヤレス電力伝送)の見直し
最初は、電波を使う機器のルールです。この事項は2つの内容から構成されていて、ひとつは技適(技術基準適合証明)の見直し、もうひとつはワイヤレス電力伝送システムの見直しです。それぞれ順に整理します。
技適(技術基準適合証明)の見直し
背景と現状の課題。 スマートフォンやWi-Fi機器のように電波を出す機器は、電波法に基づいて技術基準に適合していることの証明が必要で、これを技適と呼びます。日本国内で使う機器には「技適マーク」を付けることが原則です。ここには実験用の特例もあって、技適を取得していない機器でも、届出をすれば実験などの目的に限り180日まで使えます。ただ、研究開発の現場からは「180日では足りない」「もっと長く試したい」という声がありました。また、機器がどんどん小型化・多様化するなかで、本体に技適マークを直接表示するのが難しいケースも増えていました。
今回の見直し。 政府資料では、我が国の産業競争力を強化する観点から、この実験用特例の期間や、機器へのマークの表示方法などの制度を見直すとしています。具体的には、より長期の実験ニーズを踏まえて180日の期間を延長する方向、そして技適マークの表示方法を拡充する方向です。表示については、たとえば機器本体ではなく取扱説明書だけでの表示を認めるなど、直接表示が難しい場合の選択肢を広げることが例として挙げられています。根拠となるルールは電波法や関連規則で、令和8年度(2026年度)に調査・検討し、令和9年度(2027年度)に結論を得次第、速やかに措置する方向とされています。
事業者にとっての意味。 電波を使う新しい機器を開発したり、海外の最新デバイスを国内で試したりする会社にとっては、実験できる期間が延びるのは実務上大きな助けになります。試作と検証を国内で腰を据えて回せるようになるからです。マーク表示の柔軟化も、超小型のIoT機器やウェアラブル端末をつくるメーカーにとっては、設計の自由度が上がる話です。
今後の見通し。 検討と結論のスケジュールは示されていますが、延長後の具体的な日数や、表示方法の細かい要件は、これからの検討で固まっていく段階です。開発計画に関わる方は、規制改革実施計画本文や総務省の続報を追いながら、確定した条件を確認していくのがよいと思います。


出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料
ワイヤレス電力伝送システムの見直し
背景と現状の課題。 ワイヤレス電力伝送(WPT)は、コンセントにつながなくても、電波の形で空間を通じて機器に電気を届ける仕組みです。ここで扱うのは、そのなかでも離れた場所へ電波で給電する「空間伝送型」と呼ばれるタイプです。工場や倉庫にセンサをたくさん置いて常時モニタリングしたいとき、配線や電池交換が要らなくなるので、現場の効率化・自動化につながると期待されています。ただ、電波を出す機器は総務大臣の免許が原則必要で、用途の広がりが見込める5.7GHz帯でこの免許を取っているのは、令和8年(2026年)4月時点で1局だけでした。背景には、給電機器を天井に設置して下方向にしか給電できないなど、利用条件が限られていたことがあります。
今回の見直し。 政府資料では、この空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムについて、5.7GHz帯における利用条件などの電波利用規制を見直し、社会実装とIoTを促進するとしています。ほかの無線システムとの電波の共用や、人体への安全性に配慮しつつ、設置の自由度を高めるための技術的条件を、情報通信審議会に作業班を設けて審議し、その結果を踏まえて電波法施行規則や告示などの技術基準を検討するという流れです。時期は令和8年度(2026年度)内を目途に、できる限り早期に結論を出し、速やかに措置するとされています。
事業者にとっての意味。 大量のセンサや電子棚札を扱う物流倉庫、多数の機器を常時動かす工場にとっては、電池交換や配線の手間から解放される道が開けます。設置の自由度が上がれば、天井以外の場所からの給電など、現場のレイアウトに合わせた使い方も広がる可能性があります。IoTを本格的に入れたい現場ほど、恩恵が大きいテーマです。
今後の見通し。 審議会での技術的条件の検討がこれから本格化する段階なので、実際にどこまで利用条件が緩和されるかは、審議の結論を待つことになります。導入を検討している企業は、結論の時期が「令和8年度内目途」と比較的近いことを念頭に、情報を追っておくとよいと思います。
事項17 蓄電池の導入促進に向けた消防法令における取扱いの明確化
背景と現状の課題。 蓄電池は、太陽光や風力のように出力が変わりやすい再生可能エネルギーの電気をためて、安定して使えるようにする設備です。エネルギー安全保障やカーボンニュートラルの実現、災害時のレジリエンス(電力を保つ底力)の面でも重要度が増しています。ところが、蓄電池は消防法などの規制対象で、設備の周囲に「空地」(安全のために空けておく土地)を確保する必要があります。ここで実務上の悩みがありました。蓄電池設備には変圧器などが付帯しますが、この蓄電池と変圧器の間にも空地が要るのかどうか、市町村等によって見解が分かれる場合があったのです。判断が地域でばらつくと、限られた敷地に効率よく設置しづらくなります。
今回の見直し。 政府資料では、安全性を確保しつつ蓄電池を効率的に設置できるよう、周囲に空地を求める規制において、蓄電池設備と付帯する変圧器等は一体の設備であり、両者の間には空地が不要であることを明確化するとしています。根拠となるのは消防法や、危険物の規制に関する政令・規則です。この事項は、政府資料上すでに措置済と位置づけられています。
事業者にとっての意味。 変電所や送電線に近くて条件のよい土地は、すでに工場や住宅に使われていることが多く、蓄電池を置ける敷地は限られがちです。蓄電池と変圧器の間の空地が要らないと明確になれば、同じ敷地でもより効率的にレイアウトできます。再エネに併設する蓄電、系統につなぐ蓄電、需要家(電気を使う側)が自前で持つ蓄電のいずれにとっても、設置のハードルが下がる方向の整理です。
今後の見通し。 措置済とされているため、これからは各地の運用がこの整理にそろっていくかどうかが焦点になります。設置を検討している企業は、所在地の消防部局に、この明確化を踏まえた最新の取扱いを確認しておくと安心です。なお、AIデータセンター向けの大容量リチウムイオン蓄電池については、国際基準を踏まえた試験基準や建築基準法上の扱いを別の事項として見直す動きもあり、蓄電池をめぐるルールは全体として導入しやすい方向に整理が進んでいます。

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料
事項18 次世代型太陽電池の普及促進
背景と現状の課題。 次世代型太陽電池とは、ペロブスカイト太陽電池に代表される、軽くて曲げられる新しいタイプの太陽電池です。従来の重くて硬いパネルでは載せられなかった、耐荷重の低い建物の屋根や、建物の壁面・窓面にも設置できる可能性があり、国産技術としても期待されています。ただ、こうした特徴を生かそうとすると、既存の法令が想定していなかった場面が出てきます。政府資料は3つの課題を挙げています。ひとつ目は、太陽電池を建材の一部として設置する場合、耐風圧や積雪への強度をどう計算するのか、建材としての建築基準法と、電気工作物としての電気事業法のどちらに基づくのかが不明確なこと。2つ目は、ガソリンスタンドや自動車工場など危険物を扱う施設に設置する場合、太陽電池をカバーガラスで挟む必要があり、軽量・柔軟という特徴が損なわれてしまうこと。3つ目は、工場立地法に基づいて環境施設としての太陽光発電施設の面積を測るとき、通常の水平面での測り方だと、壁面などに設置した分の面積が十分に評価されないケースがあることです。
今回の見直し。 政府資料では、次世代型太陽電池の特徴を生かす形で、法令等の適用について整理・明確化を行うとしています。1つ目の強度計算については、適用する法令を整理して、通知や省令などで明確化します。2つ目の危険物施設での設置については、軽量・柔軟という特徴を損なわない安全対策を整理して、ガイドライン等で明確化します。3つ目の面積測定については、対象物を正面から見た面積でも測定できることとし、運用例規集やFAQ集などで明確化します。根拠となるのは、消防庁の太陽光設備安全対策ガイドライン、工場立地法運用例規集、発電用太陽電池設備技術基準(経済産業省令)などで、令和8年度(2026年度)措置とされています。
事業者にとっての意味。 工場や倉庫、店舗など、これまで屋根に重いパネルを載せられなかった建物を持つ会社にとっては、壁面や窓面という新しい設置場所が現実的になります。自家消費型の発電を増やしたい製造業や、危険物施設を持つ事業者にとっては、安全対策の考え方がはっきりすることで導入判断がしやすくなります。工場立地法の面積測定の明確化も、緑地や環境施設の確保に頭を悩ませてきた工場にとっては、壁面設置を選択肢に加えやすくなる話です。
今後の見通し。 令和8年度措置という比較的近い時期が示されています。ただし、実際の設置にあたっては、通知やガイドライン、FAQで示される具体的な基準の中身が鍵になります。ペロブスカイト太陽電池は普及の入口にある技術なので、確定した基準を確認しながら、自社の建物のどこに、どう載せられるかを検討していく段階だと思います。

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料
事項19 太陽光発電設備の使用前自己確認の見直し
背景と現状の課題。 一定規模以上の太陽光発電設備は、使い始める前に、設置した人が自分で安全性を確認する「使用前自己確認」という手続が求められます。ここに実務上の悩みが3つありました。ひとつ目は、一部の試験を省略できる要件が、実際のリスクと合っていないこと。たとえば第三者認証を取っていれば現地での負荷遮断試験(発電した電気を止めても安全か確かめる試験)を省ける規定があるのに、電気を受け渡す受電点が構内で低圧か高圧かによって省略の可否が変わり、リスクの実態に比べて過度な規制になっていました。2つ目は、省略できる試験の範囲が、産業保安監督部(地域ごとの保安の担当部署)によって差があったこと。全項目を省略できる扱いと、温度上昇試験だけ省略できる扱いが混在していました。3つ目は、この確認が「届出」であるにもかかわらず、実際には「申請」と同じように扱われ、手続に時間がかかって発電設備の稼働が遅れる懸念があったことです。届出は本来、提出先に届いた時点で義務を果たしたことになる手続です。
今回の見直し。 政府資料では、一部の試験を省略できる要件の適正化、運用の統一化、届出手続の適正化を行い、これらを明確化するとしています。1つ目については、安全性を整理したうえで省略要件を見直し、通知等で明確化します。2つ目については、試験の実施目的を考慮して省略の在り方を整理し、通知等で明確化します。3つ目については、法令の規定や制度の趣旨に沿った手続を実施するとしています。根拠となるのは、使用前自主検査および使用前自己確認の方法の解釈に関する経済産業省の通知などで、令和8年(2026年)に検討を開始し、令和8年度中に措置する方向とされています。
事業者にとっての意味。 太陽光発電をこれから導入する事業者にとっては、必要のない試験を求められたり、地域によって手続がばらついたりする不確実性が減ります。届出が本来の意味どおりに扱われるようになれば、設備が完成してから発電を始めるまでの待ち時間が短くなり、投資回収の見通しも立てやすくなります。脱炭素電源を増やしたい会社にとっては、地味ですが効いてくる改善です。
今後の見通し。 令和8年度措置と近い時期が示されています。省略できる要件や範囲がどう整理されるか、通知の具体的な中身が実務のポイントになります。導入予定のある企業は、確定した要件を踏まえて、試験計画や稼働スケジュールを組むとよいと思います。

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料
事項20 家電製品の再生材活用・リサイクルの促進
背景と現状の課題。 エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機のいわゆる家電四品目は、リサイクルが義務づけられています。集めた家電から取り出したプラスチックなどを再び原料として使う「再生材」の活用は、資源循環の面でも、プラスチックの原料となる石油の輸入依存度が高い日本にとっても、重要なテーマです。ところが、冷蔵庫・冷凍庫については再生材を使いにくい事情がありました。食品に触れる器具や容器包装には、安全な物質だけを列挙して使ってよいとする「ポジティブリスト制度」があります。逆に、通常の使い方で食品が触れるおそれのない部分は、この制度の対象外で、幅広い再生材を使えます。ところが冷蔵庫・冷凍庫では、どこが「食品が触れるおそれのない部分」なのかがはっきりせず、メーカーが再生材の使用に慎重になっていました。
今回の見直し。 政府資料では、人の健康を損なうおそれがないことを前提に、再生材を利用できる範囲を明確化するとしています。具体的には、冷蔵庫でポジティブリスト制度の対象外となる部位を例示します。挙げられているのは、食品が収納される部分と物理的に隔てられた構造部分(ケースの外側や引き出しの外枠など)、通常は容器に入った、または包装された食品だけを収納する部分(冷凍庫や扉ポケットなど)、そして食品を置く部分以外の部分(天井、側面、背面、扉の内面など)です。根拠となるのは、器具及び容器包装のポジティブリスト制度に関するQ&A(令和8年6月5日 消費者庁)で、この事項は政府資料上すでに措置済とされています。
事業者にとっての意味。 家電メーカーや、その部品をつくる会社にとっては、どの部位になら再生材を使ってよいかがはっきりするので、判断に迷う時間が減り、再生材を採り入れやすくなります。石油由来の新品プラスチックへの依存を下げられれば、原料価格の変動への強さや、環境配慮を求める取引先への対応力にもつながります。資源循環に取り組む姿勢は、これからの調達や取引で評価されやすくなる要素でもあります。
今後の見通し。 措置済とされているため、これからは各メーカーが例示された部位を踏まえて、再生材の採用を実際に進めていく段階です。冷蔵庫・冷凍庫以外の家電や、ほかの製品への横展開がどう進むかも、今後の注目点だと思います。

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料
事項50 消費の活性化に向けた総付景品の上限額の引上げ
背景と現状の課題。 ここからは、暮らしと消費に近いテーマです。まずは景品のルールです。商品を買った人や来店した人に、抽選ではなくもれなく渡す景品を「総付景品」と呼びます。おまけやノベルティをイメージしてもらうと分かりやすいです。景品が商品やサービスの値段に比べて大きすぎると、消費者が景品目当てで買ってしまい、商品そのもので選べなくなる恐れがあります。そこで景品表示法に基づいて、景品類には上限額が定められています。現行の上限は、取引価格が1,000円未満なら200円(税込)、1,000円以上なら取引価格の20%です。ところが物価が上がるなかで、思わぬ問題が起きました。たとえば商品購入者にペットボトル飲料を配っていた事業者の場合、その飲料の市場価値が2025年の税込181.44円から2026年には税込203.04円へと上がり、税込200円を超えてしまいました。すると同じ販促が上限額を超えてしまい、続けられなくなったのです。
今回の見直し。 政府資料では、一般消費者の自主的で合理的な選択を確保しつつ、事業者の競争を促し、消費を活性化する観点から、総付景品の上限額を引き上げるとしています。昨今の多様なマーケティング手法の広がり、消費者の購買行動や価値観の変化、そして物価上昇を勘案した見直しです。根拠となるのは、一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(内閣府告示)などで、令和8年度(2026年度)に検討を開始し、令和9年(2027年)に結論を出し、結論を得次第、速やかに措置する方向とされています。
事業者にとっての意味。 店頭でおまけやノベルティを使った販促をしている小売業や飲食業、メーカーにとっては、物価上昇で「配れなくなった」販促を続けやすくなる可能性があります。上限額が上がれば、季節のキャンペーンや来店特典などの企画の幅も広がります。ふだんから景品を使うビジネスほど、実務に直結する話です。
今後の見通し。 引き上げ後の具体的な金額や割合は、これからの検討で決まります。結論は令和9年の方向とされているので、販促の設計に関わる方は、確定した上限額を確認したうえで企画を組み直すのがよいと思います。現時点で「いくらまで上がる」と断定はできませんので、続報を待つ段階です。

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料
事項51 消費者の適切な商品選択に向けた不実証広告規制の見直し
背景と現状の課題。 次は広告のルールです。景品表示法には、実際よりも著しく優れていると見せる「優良誤認表示」を禁じる仕組みがあり、そのなかに「不実証広告規制」があります。これは、消費者庁が広告の効果などについて「その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を、期限までに出してください」と求め、事業者が期限内に出せない、あるいは出した資料が合理的な根拠を示すものと認められない場合には、その表示を優良誤認表示とみなす、という制度です。消費者を守るための大切な仕組みですが、事業者や消費者団体からは声が上がっていました。事業者側からは、この規制を過度に恐れるあまり萎縮してしまい、新しい商品やサービスの挑戦がしにくくなっているという指摘。消費者側からは、消費者庁の調査結果は有益なので、措置命令書などの記載内容をもっと充実させてほしいという要望です。
今回の見直し。 政府資料では、優良誤認表示に当たるかどうかをめぐる消費者庁と事業者のやりとり(コミュニケーション)を向上させることで、表示の適正化と消費者の適切な商品選択を進めるとしています。具体的には、措置命令を出すときに、事業者が提出した資料が「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものに該当しない」と判断した理由を、営業秘密に配慮しつつ説明・公表するとしています。根拠となるのは、不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針などで、令和8年度(2026年度)に検討を開始し、令和9年度(2027年度)に結論を出し、結論を得次第、速やかに措置する方向とされています。
事業者にとっての意味。 広告や商品説明で効果をうたう会社にとっては、どういう資料なら根拠として足りるのか、なぜ足りないと判断されたのかが見えやすくなります。判断の理由が分かれば、必要以上に萎縮せず、根拠をきちんと用意したうえで新しい表現に挑戦しやすくなります。正しい情報をきちんと届けたい事業者にとっては、予見可能性(見通しの立てやすさ)が高まる方向の見直しです。
今後の見通し。 これはガイドラインの見直しが中心で、結論は令和9年度の方向とされています。説明・公表の具体的なやり方や、営業秘密への配慮の線引きが、実務のポイントになります。広告表示に関わる方は、運用指針の続報を追いながら、根拠資料の整え方を見直しておくとよいと思います。

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料
事項53 自転車防犯登録のローカルルール見直し及びデジタル化
背景と現状の課題。 最後は、暮らしにいちばん身近な自転車の防犯登録です。自転車を買うと、多くの場合お店で防犯登録をします。ところがこの制度は、都道府県(指定団体)ごとに運用がまちまちでした。政府資料によれば、登録料の額やその会計処理、登録の有効期間、抹消登録の受付方法、登録票や登録番号・登録証(車体に貼るステッカー)の様式、登録票の保存期間など、多くの項目が地域で異なっています。手続も紙が中心で、販売店は紙の申請書を長期間保管する負担を抱えていました。さらに、紙をやりとりするため、申請してから警察の共通基盤システムに登録されるまでの期間が、警察庁の調査で全国平均でも最短47.9日、最長62.0日もかかっていました。登録に日数がかかると、放置自転車の持ち主を特定したり、個人間で自転車を売買したりするときの手続がスムーズにいきません。
今回の見直し。 政府資料では、合理性に乏しいローカルルールを是正し、防犯登録のデジタル化・標準化を図るとしています。これにより、登録などの手続を即時に、効率よく行えるようにし、放置自転車の利用者特定への迅速な対応や、個人間取引での登録手続の円滑化を進める狙いです。根拠となるのは、自転車防犯登録に係る警察庁の通達などです。施行時期など詳細については、規制改革実施計画本文をご参照ください。
事業者にとっての意味。 自転車の販売店にとっては、紙の保管負担が軽くなり、登録作業が効率化される方向です。標準化が進めば、地域をまたいで店舗を展開する事業者も、都道府県ごとの違いに悩まされにくくなります。フリマアプリなどで自転車を扱う個人間取引の事業者や、シェアサイクルなど自転車を活用するサービスにとっても、登録手続の円滑化は追い風になります。
今後の見通し。 政府資料では令和8年度(2026年度)に結論を得る方向とされています。ただし、デジタル化と標準化がどこまで、どのくらいの速さで進むかは、これからの通達の具体的な内容次第です。全国で登録の即時性が高まれば、盗難自転車の返還や持ち主特定にも役立つと期待されます。自転車に関わる事業をしている方は、警察庁や各都道府県警の続報を確認しておくとよいと思います。

出典:内閣府「規制改革実施計画」(令和8年7月21日 閣議決定)実施事項 説明資料
この記事で扱わなかった関連事項
エネルギー・環境・ものづくり・くらしの分野には、ほかにも関連する事項があります。たとえば植物工場については、人工光型の植物工場システムの評価項目や評価方法を標準化し、太陽光型植物工場については法令上の疑問を解消するガイドブックを作成して、スマート農業技術やフードテックの活用を後押しするとされています。複合環境制御装置のある温室で、建築基準法上「建築物」とみなすかどうか、騒音・振動の上限、消防法上のボイラーや重油の制限が地方自治体ごとに異なっている点なども論点に挙がっています。
また、コンビナートについては、企業の事業や組織の再編に伴う高圧ガス保安法の適用関係を整理する事項もあります。プラント同士が一体で動く石油化学コンビナートで、会社の再編があっても保安のルールが円滑に適用されるようにする狙いです。これらは今回の8事項とは別枠ですが、ものづくりの現場に関わるテーマとして、興味のある方は規制改革実施計画本文をあわせてご覧いただければと思います。
これらの見直しを、自社の一歩にどうつなげるか
ここまで8つの事項を見てきました。並べてみると、共通するねらいが見えてきます。安全性はしっかり確保したうえで、これまで判断がばらついていたり、実態に合っていなかったりしたルールを整理・明確化して、新しい設備・素材・手法を試しやすくする。エネルギーやものづくり、くらしの現場で、動きたい会社が動けるようにする。そういう方向でそろっています。
ただ、制度が変わることと、自社が実際に恩恵を受け取れることは、別の話です。次世代型太陽電池を壁面に載せるにしても、蓄電池を効率的に配置するにしても、IoTのセンサ給電を導入するにしても、「自社のどこに、何を、どう入れると、どれだけ効くのか」を見極める作業が要ります。ここは号令だけでは進みません。現場に合わせた設計と、それを回せる人の力が必要です。
私たちがWARPというAIコンサルティングを続けているのも、まさにこの「制度や技術を、目の前の一歩に翻訳する」部分に手応えを感じているからです。新しい設備投資やデジタル化の判断は、選択肢が増えるほど迷いやすくなります。何から手をつけ、どこにリソースを集めるか。その優先順位づけを、経営者と一緒に整理していく仕事です。もっとも、新しい制度や技術を全部追いかける必要はありません。自社にとって効くところと、まだ様子見でよいところを見分ける判断こそが、最初の分かれ道になります。
まとめ
長くなったので、要点を整理します。
- 電波利用規制の見直しでは、実験用特例の期間延長や技適マークの表示方法の柔軟化、5.7GHz帯のワイヤレス電力伝送の規制見直しが進み、機器開発やIoT導入がしやすくなる方向です
- 蓄電池は、設備と付帯する変圧器の間の空地が不要と明確化され(措置済)、限られた敷地でも効率的に設置しやすくなります
- 次世代型太陽電池は、建材としての強度計算、危険物施設での安全対策、環境施設面積の測定方法が整理され、壁面や窓面への設置が進みやすくなります(令和8年度措置)
- 太陽光発電の使用前自己確認は、省略要件や運用の差、届出手続が適正化され、稼働までの時間短縮が見込めます(令和8年度措置)
- 家電の再生材活用は、冷蔵庫で再生材を使える部位が例示され、資源循環を進めやすくなります(措置済)
- 総付景品は物価上昇を踏まえて上限額の引上げが検討され、不実証広告規制は判断理由の説明・公表で予見可能性が高まり、自転車防犯登録はデジタル化・標準化が進みます
どれも、地味に見えて現場に効く見直しです。制度が整っても、それを使いこなす準備ができていなければ、恩恵は素通りしていきます。自社のどこに新しい設備やデジタルが効くのか、その出発点の整理に迷っておられるなら、WARPの担当までご相談ください。元大手企業でDXやデータ戦略を担ってきた専門家が、月次で伴走しながら、政策の大きな流れを目の前の一歩に翻訳するお手伝いをしています。
参考文献・一次情報
Footnotes
-
「規制改革実施計画」令和8年7月21日 閣議決定(内閣府 規制改革推進会議)。本記事の事実関係は、閣議決定と同時に公表された政府の説明資料「規制改革実施計画(令和8年7月21日閣議決定)実施事項」に基づく。個別事項の詳細・引用等は規制改革実施計画の本文を直接参照のこと。内閣府 規制改革推進会議 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/ ↩
