こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。
SaaSの更新見積もりが届き、前年より高い数字を見て「これなら自分たちで作ったほうが安いのでは」と感じた方は多いと思います。生成AIで開発が速くなったと聞けば、なおさらでしょう。ところが、その勢いで年額と開発費を並べて稟議を書くと、たいてい判断を誤ります。比べる期間が短すぎるうえに、作る側の費用が半分しか入っていないからです。
この記事は、高額SaaSの解約と内製化を考える5本シリーズの3本目です。1本目の判断基準で「そもそも検討に値するか」を、2本目で「どの業務なら自前で作ってよいか」を書きました。今回は、その候補について「5年でいくらかかるか」を数字で確かめます。材料は、値上げと円安の実際の推移、当社の仮定で組んだモデルケースの5年総額、そして損益分岐を動かす変数の表の三つ。作る側には、保守とセキュリティと人の費用を必ず入れます。そこを抜いた試算は、稟議を通すための試算でしかありません。
SaaSの請求は、ドル建ての値上げと円の見直しの二つで上がる
円で払っている海外のSaaSは、二つの経路で値上がりします。一つはドル建ての定価そのものの改定、もう一つは為替を見た円建て価格の見直しです。日本の買い手は、この二つを両方受けます。
円建ての見直しがどれほど大きいかは、海外大手のグループウェアの例でよく分かります。2023年4月、この会社は法人向けのオンラインサービスの円建て価格を15%、オンプレミス製品を20%引き上げました。報道によれば、基本プランの月額はドル建てで6ドルのまま据え置かれ、円建てだけが650円から750円に上がっています1。ドルで見れば1セントも上がっていない値上げです。翌2024年4月にも法人向けのソフトとクラウドサービスをいずれも20%引き上げ、今後もドルに対する為替変動を考慮して、年2回ほど円建て価格を評価し、調整する場合があると説明しました2。そして2026年7月、今度はドル建ての定価そのものに手が入りました。プランによって据え置きから最大33%までの幅があり、同社は「AI機能と、それを支える基盤への継続的な投資」を理由に挙げました3。
ドル建ての値上げは、この会社に限った話ではありません。大手CRMは2025年8月、主要製品の上位エディションを平均6%値上げし、AI機能の強化を反映したものと説明しました4。国内大手のノーコード基盤も2024年11月、ライトコースを1ユーザー月780円から1,000円に、スタンダードコースを1,500円から1,800円に改め、最小契約ユーザー数を5から10に引き上げています5。示された理由は、どの会社も機能の追加や運営への投資です。値上げそのものが不当だと言うつもりはありません。ただ、5年の予算を組む側は、上がる前提で数字を置く必要があります。
為替も見ておきます。日本銀行が公表している東京市場のドル・円の月中平均を当社で年ごとに単純平均すると、2020年は106.78円、2024年は151.50円、2026年1〜8月は158.78円でした6。2020年から見ると約49%の円安です。1ユーザー月60ドルのSaaSなら、ドル建ての定価が一度も変わらなくても、1人あたりの月額は6,407円から9,527円に増えた計算になります。
企業の予算にも、この影響がはっきり出ています。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2026」では、IT予算が増える理由の2位が「円安・人件費高騰・ベンダー提供価格の値上げなどによる影響」で、25年度計画では46.6%の企業が挙げました7。値上げと円安は、もう一部の会社だけの話ではありません。
年額と開発費を並べると、結論を誤る
同じJUASの調査では、システム開発の内製化に期待する効果の1位が「開発コスト削減」(41.3%)でした7。費用を下げたいという動機は自然です。問題は比べ方にあります。
「年3,456万円払っているSaaSを、3,000万円で作れる。1年で元が取れる」。こうした計算をよく見かけます。分かりやすいのですが、三つの点で結論を誤らせます。
一つ目は、作っている間もSaaSを払い続けることです。多くのSaaSは年契約で、更新日の一定期間前までに通知しなければ自動で更新されます。開発に8か月、移行と並行稼働に4か月かかるなら、1年目のSaaS料金はまるごと残ります。解約通知の期限やデータの持ち出しは4本目の解約と移行の実務で詳しく書きますが、試算の上では「1年目は両方払う」と置くのが現実的です。
二つ目は、作ったあとも費用が続くことです。JUASの同じ調査で、25年度のIT予算の配分は「現行ビジネスの維持・運営」が75.9%、「ビジネスの新しい施策展開」が24.1%でした7。企業のIT予算の4分の3は、すでにあるものを動かし続けるために使われています。自社で作ったシステムも、翌年からはこの4分の3の側に入ります。
三つ目は、SaaSの側にも見えにくい費用があることです。管理者の設定作業、ユーザーの追加と削除、他システムとの連携の保守などです。公平に比べるなら、両側に社内の手間を入れる必要があります。
国の指針も同じ考え方です。デジタル庁の「DS-310 政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」は、SaaSの利用を強く推奨しながらも、無条件ではないと書いています。利用者の段階的な増加などで運用段階のSaaS利用料が高額になる場合は、ライフサイクルコストの観点から本当に削減効果が出るかを慎重に評価し、同じ機能を他のマネージドサービスで実現できるなら両方式を比べて評価すべきだ、という書き方です。アカウント数に応じて課金されるSaaSや高額なSaaSには、利用アカウント数の増加で費用が膨らむ点への注意も求めています8。本稿の試算は、この「両方式の比較」を民間企業の稟議の形に落としたものです。
作る前にもう一つ確かめたいのが、使われていないライセンスです。米国のSaaS管理ツール会社が2026年1月に公表した調査では、同社が管理する4,000万超のライセンスについて、推奨される利用水準に照らすと平均36%が使われていませんでした9。米国中心で、しかもSaaS管理ツールを売る会社の顧客データなので、日本企業にそのまま当てはめることはできません。それでも、作るかどうかを決める前に、自社のログインの記録を一度見る価値はあります。
モデルケースで5年総額を出す(300人、月60ドル、1ドル160円)
ここからは、当社が置いた仮定で試算します。実在する企業の費用ではありません。数字はどれも、読者が自社の数字に置き換えて使う前提の置き値です。
対象は、300人が使う業務SaaSです。ドル建ての定価は1ユーザー月60ドル、為替は2026年1〜8月の平均158.78円を丸めて1ドル160円としました。ドル建ての定価は毎年3%上がると置いています。先に挙げた改定の幅(平均6%、最大33%)より控えめにしたのは、作る側に有利な試算にしたくないからです。作る側は、実際に使っている機能だけを作り直し、1年目の終わりの更新日でSaaSを解約する想定です。
| 費用の項目 | SaaSを続ける場合 | 自社で作る場合 |
|---|---|---|
| ライセンス料 | 300人×月60ドル×1ドル160円で初年度3,456万円。ドル建てで毎年3%上昇 | 1年目は更新日まで払い続ける(3,456万円) |
| 社内の管理工数 | 年100万円 | 1年目のみ100万円(SaaSを使っている間) |
| 初期開発 | なし | 3,000万円(20人月×150万円) |
| データ移行とテスト | なし | 400万円 |
| 並行稼働の社内負担 | なし | 300万円(主な利用者60人×20営業日×1日30分×時給換算5,000円) |
| セキュリティ | なし | 公開前の診断150万円。2年目以降は診断、監視、脆弱性対応で年200万円 |
| クラウド費 | なし | 年1.5万ドル(1ドル160円で240万円)。1年目は半年分の120万円 |
| 保守・改修 | なし | 2年目以降、初期開発費の25%(年750万円) |
| 社内の担当者 | なし | 0.5人分の人件費として年500万円(1年目から) |
この前提で5年を並べると、次のようになります。単位は万円で、四捨五入しています。
| 年 | SaaSを続ける | 自社で作る | 累計の差(続ける-作る) |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 3,556 | 8,026 | −4,470 |
| 2年目 | 3,660 | 1,690 | −2,500 |
| 3年目 | 3,766 | 1,690 | −424 |
| 4年目 | 3,876 | 1,690 | +1,762 |
| 5年目 | 3,990 | 1,690 | +4,062 |
| 5年合計 | 18,848 | 14,786 | +4,062 |
5年総額は、SaaSを続けると約1億8,848万円、自社で作ると約1億4,786万円です。差は4,062万円。作る側が安い計算です。ただし、累計で作る側が追いつくのは4年目です。3年目の終わりの時点では、まだ424万円負けています。1年目はSaaS料金と開発費を両方払うので、作る側が4,470万円重くなります。稟議で「3年で回収」と書きたくなる場面ですが、この前提では書けません。
あえて入れていない費用もあります。5年の途中で起きうる大きな作り直しや、基盤の入れ替えです。6年目以降も同じ条件が続けば、差は年2,400万円ほどずつ開いていきます。とはいえ、そのころには作り直しの可能性が高くなるので、稟議の試算は5年で切ることをおすすめします。
作る側の費用に、保守とセキュリティと人を入れる理由
前提の表で、作る側の保守・改修を初期開発費の25%と重めに置いたのには理由があります。生成AIで書く速さは上がっても、直す手間とセキュリティの手間はむしろ増えうる、という調査が複数あるからです。
米国の研究機関METRが2025年7月に公表したランダム化比較試験では、経験を積んだオープンソース開発者16人が実際の課題246件に取り組み、AIを使える条件のほうが19%長くかかりました。本人たちは事前に24%速くなると予想し、終わったあとも20%速くなったと感じていました10。同じMETRは2026年2月の更新で、2025年末のAIツールでは所要時間の変化が−18%(信頼区間は−38%から+9%)だったと報告しています。速くなった可能性は高い、ただしAIなしで作業したくない開発者が参加を断るといった偏りのせいで本当の効果は見えにくい、というのが著者たちの見立てです11。速くなっていないとは言えません。ただ、見積もりを半分に削ってよいほど確かな数字でもないのです。
ソフトウェア開発組織を調べる研究プログラムDORAの2025年の報告書は、約5,000人の回答から、AIの利用が提供の速さとは正の関係にある一方、提供の安定性とは負の関係が続いていると報告しました。回答者の90%がAIを使い、80%超が生産性が上がったと感じている一方で、30%はAIが書いたコードをほとんど、あるいはまったく信頼していません12。開発分析ツールの会社GitClearが2億1,100万行の変更を調べた調査では、コードを整理し直す「移動」の行の割合が、2021年の24.8%から2024年には9.5%まで下がりました。逆に「コピー&ペースト」の行は8.4%から12.3%へ。書いてすぐ書き直される行の割合も3.3%から5.7%に上がっています13。作ったあとに直す費用は、作る費用ほどには下がっていないと読むのが自然でしょう。
セキュリティも同じです。セキュリティ製品の会社Veracodeが100を超える言語モデルに書かせたコードでは、45%がセキュリティ試験に不合格でした。新しく大きなモデルでも、安全性は改善していなかったと報告しています14。売り手の調査である点は差し引いて読む必要があります。それでも、公開前の診断と、公開後の監視や脆弱性対応を予算から外す理由にはなりません。
最後に人の費用です。情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2025」で、内製化を進めている日本企業334社に課題を尋ねると、「人材の確保や育成が難しい」が82.3%で突出していました。「外部発注と比較して、コスト意識が低くなる」も15.0%あります15。作ったシステムには、要望を受けて優先順位をつけ、直すかどうかを決める人が社内に要ります。表で0.5人分の人件費を1年目から入れたのはそのためです。この行を抜くと、試算は毎年500万円ずつ作る側に甘くなります。
並行稼働の費用も、忘れやすい行です。IPAの「システム再構築を成功に導くユーザガイド」は、現行と新しいシステムの両方で同じ操作をする並行稼働について、利用部門の負担が増えるので、どこまで許容できるかを確認するよう注意を促しています16。表の300万円は、主な利用者60人が1か月、毎日30分ずつ二重入力をする想定で出しました。人数か期間が倍になれば、この行も倍になります。
損益分岐を動かす変数
モデルケースの結論は、前提が一つ変わるだけで逆になりえます。変数を一つずつ動かし、ほかは基準のままにしたのが次の表です。5年の差額は「SaaSを続ける場合」から「自社で作る場合」を引いた値で、プラスなら作る側が安くなります。
| 動かした変数 | 値 | 5年の差額 | 累計で逆転する年 |
|---|---|---|---|
| 基準ケース | 300人、月60ドル、1ドル160円、年3%値上げ | +4,062万円 | 4年目 |
| 為替 | 1ドル140円 | +2,336万円 | 4年目 |
| 為替 | 1ドル180円 | +5,789万円 | 3年目 |
| ドル建ての値上げ | 年0% | +2,994万円 | 4年目 |
| ドル建ての値上げ | 年10% | +6,813万円 | 3年目 |
| 利用者数 | 150人 | −3,384万円 | 5年では逆転しない |
| 利用者数 | 240人(ライセンスを2割削減) | +1,084万円 | 5年目 |
| 利用者数 | 450人 | +1億1,509万円 | 3年目 |
| SaaSの単価 | 月40ドル | −902万円 | 5年では逆転しない |
| 初期開発費 | 1,500万円(半分で済んだ場合) | +7,062万円 | 3年目 |
| 初期開発費 | 4,500万円(1.5倍に膨らんだ場合) | +1,062万円 | 5年目 |
| 保守・改修 | 初期開発費の年40% | +2,262万円 | 4年目 |
| 開発費と保守が同時に膨らんだ場合 | 4,500万円、年40% | −1,638万円 | 5年では逆転しない |
いちばん効くのは、利用者数とSaaSの単価、つまりSaaSの年額そのものです。利用者が150人なら、あるいは単価が月40ドルなら、この条件では5年のうちに作る側が追いつきません。年額が小さいSaaSは作り直しても元が取れない、ということです。当たり前に聞こえますが、稟議の場ではこの確認がよく抜けます。
為替と値上げも効きます。1ドルが10円動くと、5年の差額は約860万円動きました。作る側もクラウド費をドルで払う前提なので、SaaSの側ほどではないにせよ円安の影響を受けます。ただ、値上げが年0%でも年10%でも、基準の条件なら作る側が5年で勝つ結論は変わりませんでした。為替と値上げは、逆転する年を1年ずらす程度の変数です。結論を裏返すのは、利用者数と単価、そして作る側の見積もりの確かさです。
その見積もりの確かさが、二番目に効く変数です。開発費が1.5倍に膨らみ、保守が年40%かかると、基準の条件でも作る側は1,638万円負けます。どちらも、システム開発ではめずらしくない外れ方です。逆に開発費が半分で済めば、差は7,062万円に広がります。私は、稟議に出す数字は一つではなく、この表のような幅で出すべきだと考えています。基準、楽観、悲観の三本を並べ、悲観の場合でも許容できるかを経営に判断してもらう形です。
表の中でもう一つ見てほしいのが、ライセンスを2割減らした240人の行です。作る側の5年の有利は1,084万円まで縮み、逆転は5年目になります。作る前に棚卸しをするだけで、判断が変わりうるわけです。ただし、大手SaaSの基本契約の中には、数量を減らして更新すると前の単価にかかわらず価格を再設定する、という条項を置いているものがあります。減らして残すつもりが、単価が上がって思ったほど下がらないこともあるので、契約書の確認を先に済ませてください。この点も4本目で扱います。
稟議書には、撤退の条件も書いておくと安全です。たとえば「4か月目の時点で開発費が予算の6割を超えたら、SaaSを更新して作るのをやめる」という一文です。SaaSの更新日は、そのまま判断の期日になります。作るか買うかは一度決めたら終わりではなく、更新日のたびに見直せる判断だと考えると、稟議の重さが少し下がるはずです。
受託開発との違い
この試算を外部と組んで実行する場合、受託開発に出すか、FDE(Forward Deployed Engineer、顧客の現場に入って動くソフトを作るエンジニア)と進めるかで、表の中身が変わります。
受託開発では、工数が売上です。初期開発の行も、2年目以降の保守・改修の行も、発注先への支払いとして5年間ずっと残ります。仕様書に書かれたものを作るので、作ってみて要らないと分かった機能も、たいていは作り切ります。発注する側から見ると、表の中でいちばん不確かな「開発費」と「保守率」を、相手の工数見積もりに預ける形です。
当社のFDEは、工数を売上ではなく投資と考えています。初日に動く試作を見せ、実際に使われている機能を確かめながら作るので、使われない機能を作らずに済みます。他社でも使える共通の仕組みは当社の製品に返し、貴社だけの手順は貴社の設定として残します。終わりの条件は、貴社の担当者が自分で直せる状態になること。表の言葉で言い直すと、開発費の行を小さくし、保守の行を社内で持てる大きさに変えることを目指す、ということです。契約の組み方は成果の測り方と契約の記事に書きました。
当社のFDEでできること
当社のFDEでは、この記事の試算を、貴社の実際の数字で作るところから入ります。契約書の更新日と通知期限、ライセンスの数と実際のログイン記録、使われている機能と使われていない機能を確かめ、表の置き値を一つずつ実数に替えていきます。
いちばん不確かな開発費は、机の上の見積もりだけで決めません。個人情報などを伏せた実際のデータで試作を作り、どこまでを作り直せばよいかを確かめてから数字にします。試作があると、「実はこの画面はほとんど使っていない」「この帳票だけは外せない」といった事実が早く出てきて、開発費の幅が狭まります。感応度の表で二番目に効いた変数を、先に小さくしておく進め方です。
作ったものの置き場所は貴社のクラウド環境を基本とし、リージョンを含めて貴社の要件に合わせて選べる設計にします。自社テナントに置くときの権限やデータの所在の考え方は、5本目の設計の記事で書いています。移行と並行稼働の段取りも、SaaSの更新日から逆算して一緒に組みます。
当社の実践と限界
正直に書いておきたいことがいくつかあります。
まず、試算の結果がSaaS継続なら、そのままお伝えします。利用者数が少ない場合、単価が低い場合、会計や給与のように法令に縛られた複雑な業務の場合がそうです。こうした条件では、作るよりもSaaSを続け、ライセンスの棚卸しや更新時の交渉に時間を使うほうが得です。どの業務なら作り直してよいかは、2本目に書きました。
次に、この記事の保守率25%やセキュリティ費は、当社の5年間の実績から出した数字ではありません。FDEとして作った業務アプリを5年間運用した実績値は、まだ当社の手元にありません。だから表の数字は仮定だと明記し、読者が自分の数字で計算し直せるように前提をすべて出しました。
そして、当社は作る側の事業者です。作る結論に寄りやすい立場にいることは自覚しています。だからこそ、SaaSの値上げは控えめに置き、作る側には保守とセキュリティと人の費用を重めに入れました。それでも甘いと感じる行があれば、その行を厳しくして計算し直してください。結論が変わるなら、それが貴社にとっての答えです。
最後に、当社は小さな会社で、同時に入れる現場の数には限りがあります。SaaSの更新日が近い案件ほど、早めにご相談いただけると試作と試算の時間を取りやすくなります。
まとめ
- SaaSの支払いは、ドル建ての値上げと円建ての見直しの二つの経路で上がります。円ドルの年平均は、2020年の106.78円から2026年1〜8月の158.78円へ動きました(日銀の月中平均から当社計算)
- 年額と開発費を並べず、5年総額で比べます。作る側には、解約までのSaaS料金、移行、並行稼働、保守・改修、セキュリティ、クラウド、社内の担当者を入れます
- 当社の仮定のモデルケース(300人、月60ドル、1ドル160円)では、5年で作る側が4,062万円安くなり、累計の逆転は4年目でした
- 結論を裏返すのは、利用者数と単価、そして作る側の見積もりの確かさです。為替と値上げは、逆転する年を1年ずらす程度でした
- 稟議には基準、楽観、悲観の幅と撤退の条件を書き、SaaSの更新日を判断の期日にします
作るか続けるかは、どちらが正しいかという話ではありません。どの前提が崩れると逆転するのか、という話です。表の一行一行を自社の数字に替えてみると、議論の焦点がどこにあるかが見えてきます。
自社のSaaSで5年総額を試算したい方、試作で開発費の幅を先に狭めたい方は、FDEのサービスページをご覧いただくか、FDEの個別相談でお話ししましょう。次の4本目では、解約の通知期限、データの持ち出し、並行稼働の段取りを書きます。
Footnotes
-
法人向けライセンスの円建て価格改定を報じた記事(@IT、2023年4月7日)。ドル建て価格が据え置かれたことも同記事による ↩
-
法人向けソフトとクラウドサービスの20%引き上げを報じた記事(日経クロステック、2023年12月8日)。年2回ほどの価格評価の説明も同記事による ↩
-
2026年7月からのサブスクリプション価格改定(最大33%)を報じた記事(ITmedia エンタープライズ、2025年12月19日) ↩
-
日本銀行 時系列統計データ検索サイト。系列「東京市場 ドル・円 スポット 17時時点/月中平均」(FXERM07)。年の値は当社が月中平均を単純平均した計算値で、2026年は1〜8月の平均。2026年9月29日取得 ↩
-
企業IT動向調査報告書2026(一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会、2026年4月)。IT予算の増加理由は2.1節の図表2-1-3、IT予算の配分は2.1節(4)、内製化に期待する効果は7.2節の図表7-2-6 ↩ ↩2 ↩3
-
DS-310 政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針(デジタル庁、2025年5月27日) ↩
-
米国のSaaS管理ツール会社が2026年1月29日に公表した年次調査。同社の管理下にある4,000万超のライセンスと750億ドルの支出が対象。当社の方針により、社名とリンクは載せていません ↩
-
Measuring the Impact of Early-2025 AI on Experienced Open-Source Developer Productivity(METR、2025年7月10日) ↩
-
We are Changing our Developer Productivity Experiment Design(METR、2026年2月24日) ↩
-
State of AI-assisted Software Development 2025(DORA、2025年9月) ↩
-
AI Copilot Code Quality 2025(GitClear、2025年2月)。開発分析ツールの会社による調査。数値は同資料の表「Trends in Code Changes: 2020-2024」による ↩
-
2025 GenAI Code Security Report(Veracode、2025年7月30日)。セキュリティ製品の会社による調査 ↩
-
DX動向2025(独立行政法人情報処理推進機構、2025年6月)。図表2-16(内製化を進めている企業、n=334) ↩
-
システム再構築を成功に導くユーザガイド 第2版(独立行政法人情報処理推進機構、2018年2月)。表3.9「リスク対策の例」 ↩






