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セキュリティ・クリアランスとは?機密情報に触れられる資格を初心者向けにやさしく解説

2026-06-29濱本 隆太

セキュリティ・クリアランスとは、国の重要な秘密に触れてよい人かどうかを事前に確かめておく資格のことです。空港の制限エリアに入れる職員バッジにたとえながら、制度の意味、なぜ国際協力に欠かせないのか、2025年5月に日本で始まった新しい仕組みまで、専門用語を避けて一からやさしく解説します。

セキュリティ・クリアランスとは?機密情報に触れられる資格を初心者向けにやさしく解説
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

「セキュリティ・クリアランス」という言葉を、ニュースや新聞で見かけたことはないでしょうか。なんだか難しそうで、自分には関係のない話に感じるかもしれません。けれど、ひと言でいえば「国の大事な秘密に触れていい人かどうかを、あらかじめ確かめておく仕組み」のことです。スパイ映画に出てくる特別な許可証、というイメージにわりと近いかもしれません。

私は普段、輸出管理を助けるAIエージェントTRAFEEDの開発を通じて、経済安全保障という分野に関わっています。その仕事のなかで、この「クリアランス」という言葉を口にする企業の方が、ここ一、二年で目に見えて増えました。とはいえ、制度の中身まで正確に知っている人はまだ多くありません。今回は専門用語をできるだけ使わず、「そもそも何なのか」「なぜ必要なのか」を、身近なたとえを交えながら一からお話しします。

セキュリティ・クリアランスって、そもそも何?

まずは言葉の中身から、ゆっくりほどいていきます。セキュリティ・クリアランスとは、国が持っている安全保障上とても重要な情報に触れる必要のある人のうち、「この人なら情報を漏らすおそれがない」と確認された人だけが、その情報を扱えるようにする制度のことです[^2][^5]。誰でも見られる情報ではなく、信頼を確かめた人にだけ門を開く、という発想だと考えてください。

ここで出てくるのが「適性評価(てきせいひょうか)」という手続きです。難しそうな名前ですが、中身はいわば身辺調査だと思ってもらえれば大丈夫です。本人がきちんと同意したうえで、国がその人の経歴や事情を調べ、「機密を任せても安心できる人かどうか」を見きわめます[^5]。一度確認すれば一生有効というわけではなく、政府が定めた運用基準では評価結果に10年という有効期間が設けられていて、期限が来れば改めて確認し直すことになります[^1][^5]。

ポイントは、これが「人」に注目した仕組みだということです。世の中の情報セキュリティというと、パスワードや暗号化のように、機械やシステムで守るイメージが強いと思います。セキュリティ・クリアランスはそれとは少し角度が違って、情報そのものをどう守るかというより、「その情報に近づける人を、信頼できる人に絞る」という人を起点にした守り方なのです。私自身、この分野に関わるまでは技術的な対策ばかり思い浮かべていたので、人に焦点を当てる発想は新鮮でした。

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「空港の制限エリアに入れるバッジ」にたとえてみる

言葉の定義だけだと、まだ少しふわっとしているかもしれません。そこで、ふだんの暮らしにある似たものでたとえてみます。

たとえば空港を思い浮かべてください。出発ロビーまでは誰でも入れますが、その奥の制限エリア、飛行機の整備場や手荷物を仕分けする場所には、決まった職員しか入れませんよね。あの人たちは、身元を確認したうえで発行された専用のバッジを首から下げています。セキュリティ・クリアランスは、ちょうどこの「制限エリアに入れるバッジ」の国家機密版だと考えると、すっとイメージできると思います。入りたい人みんなを通すのではなく、事前に確認した人にだけ通行を許す、という考え方がそっくりです。

もうひとつ、マンションのオートロックでもたとえられます。エントランスのオートロックは、住人カードを持っている人にだけドアを開けます。カードを渡す相手を信頼できる住人に限ることで、建物のなかの安全を保っているわけです。国の機密情報という「部屋」に入るための鍵を、信頼を確かめた人にだけ渡す。クリアランスもこれと同じ発想だと言えます。

ひとつだけ補足しておくと、これらはあくまで理解を助けるためのたとえ話で、制度の正確な定義そのものではありません。本当のところは、前の章で触れたとおり「漏らすおそれがないと確認された人だけが重要な情報を扱える仕組み」です。たとえはイメージをつかむ入口として使い、正確な中身は政府の説明資料で押さえる、という二段構えで読んでもらえるとちょうどよいと思います。

なぜわざわざ必要なの? 大きな理由は「国際協力の入口」

「秘密を守りたいなら、扱う人を社内で決めておけばいいのでは」と感じる方もいるでしょう。もちろん漏えいを防ぐことは第一の目的です。実際、この制度のもとになった法律も、重要な情報の保護体制を整えて漏えいを防ぎ、日本と国民の安全を守ることを目的にうたっています[^1]。ただ、それと並んでもうひとつ、見落とされがちな大きな理由があります。それが「国際協力の入口になる」という点です。

安全保障に関わる情報のやり取りは、国と国との信頼関係がなければ成り立ちません。そして、アメリカやイギリスをはじめとする同盟国・同志国の多くは、すでにこの種の保全制度を持っています[^3][^7]。ここで日本にだけ同じ仕組みがないとどうなるか。たとえば先端技術を複数の国で一緒に開発しようというとき、「お互いにクリアランスを持っている者同士でなければ、踏み込んだ情報は共有できない」という場面が出てきます。資格を示せない日本の企業や研究者は、その輪に入れてもらえないおそれがあるわけです。

実際、産業界からも「クリアランスがないために国際共同開発から外されかねない」という声が上がり、経済界の団体は制度づくりを政府に求める提言を出してきました[^8]。つまりこの制度は、秘密を守る盾であると同時に、世界の重要なプロジェクトに参加するための通行証でもあります。守りのためだけでなく、攻めのためにも要る。私はこの「入口になる」という側面こそ、ニュースの見出しだけでは伝わりにくい肝だと感じています。

日本では2025年5月に何が始まった?

ここで、日本の最近の動きを押さえておきましょう。少し長い名前ですが、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」、通称で重要経済安保情報保護活用法という法律ができました。報道や政府の資料によると、この法律は2024年5月10日に成立し、同年5月17日に公布されたあと、2025年5月16日に施行されています[^1][^4]。施行というのは「実際に効力を持って動き始める」という意味だと考えてください。

何が新しいのかを、ひとことで言うと「機密を守る対象を経済の分野まで広げた」ことです。日本にはもともと特定秘密保護法という制度があり、防衛、外交、スパイなどの有害活動の防止、テロ防止という4つの分野の機密を守ってきました。今回の法律は、これに加えて経済安全保障の分野へ、機密の保護とクリアランスの仕組みを広げたものです[^5]。半導体など重要な物資の供給網の弱点や、電気や通信といった重要インフラに関わる情報などが、新たに「重要経済安保情報」として守られる対象に含まれます。

そして、ここが多くの人にとって意外なところなのですが、対象は役所のなかだけではありません。報道によれば、政府が一定の基準を満たした「適合事業者」を認め、その会社で情報を扱う従業者に対して身辺調査にあたる適性評価を行う、という形で、民間企業や働く個人も対象になりうる設計になっています[^5][^6]。情報を漏らした場合の罰則についても、複数の解説では5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金が科され得るとされています[^5][^6]。ただし罰則の正確な条文や、調査項目の細かい数といった点は、入門の段階では深追いせず、断定を避けておきます。

制度をどう動かすかの細かい決めごとは、施行に合わせて公表されたガイドラインなどで少しずつ具体化されています[^9]。一方で、身辺調査が働く人のプライバシーや内心の自由を侵さないか、運用次第では行きすぎが起きないか、といった慎重な声があるのも事実です。弁護士の団体は法案の段階で懸念を表明しましたし[^10]、働く人を代表する労働団体も、調査の範囲や本人保護のあり方をていねいに見るよう求めてきました[^11]。新しい制度には期待と不安の両方がついてまわるものなので、入門の段階では「便利な仕組みができた」とだけ受け取らず、こうした論点が並走していることも頭の片隅に置いておくと、ニュースをより立体的に読めると思います。より詳しい制度の中身や企業がとるべき実務は、セキュリティ・クリアランス制度の最新と企業実務でていねいに整理しているので、踏み込みたくなったらそちらを読んでみてください。

「人の管理」と「技術の管理」は両輪

ここまで読んで、「うちの会社には縁のない話だ」と思った方もいるかもしれません。ところが、機密や重要な技術にかかわる仕事をしていると、案外この話は近くにあります。私が現場で強く感じるのは、機密を扱う仕事には「人の管理」と「技術の管理」という二つの輪があって、どちらが欠けても前に進まない、ということです。

セキュリティ・クリアランスは、このうち「人の管理」にあたります。誰が信頼できる人なのかを確かめて、その人にだけ情報を任せる仕組みでした。一方で、扱う技術やモノそのものを管理する側も必要です。たとえば海外と先端技術を共同開発するとき、やり取りする技術情報が法律で輸出を制限された対象に当たらないか、海外の研究者に技術を渡すことが規制に触れないか、取引相手が懸念のある先ではないか、といった確認が同時に求められます。人を確かめるクリアランスと、技術の流出を防ぐ輸出管理は、同じ机の上で起きるのです。

ただ、技術の管理を人手だけで続けるのは年々きつくなっています。各国の規制はしょっちゅう改正され、照らし合わせるべきリストも増え続けるからです。私たちが開発する輸出管理AIエージェントTRAFEEDは、経済産業省の基準に沿って、輸出してよい品目かどうかの判定や、軍民両用(民間でも軍事でも使える技術のこと)の見きわめ、懸念のある取引先リストとの照合といった重い作業を自動化し、多言語にも対応しています。クリアランス制度をきっかけに社内の管理を見直すなら、技術側の足元を固め直す好機にもなります。人の信頼を確かめる輪と、技術の流出を防ぐ輪。この両方をそろえてはじめて、安心して重要な仕事に踏み出せると私は考えています。

覚えておきたいポイントと、はじめの一歩

最後に、入門としてここだけは持ち帰ってほしい点を、短くまとめておきます。

  • セキュリティ・クリアランスは「機密に触れていい人かを事前に確かめる資格」で、確認の手続きが適性評価(身辺調査)です
  • 目的は漏えい防止だけでなく、同盟国との国際共同開発などに参加するための「入口」になることです
  • 日本では2025年5月16日に重要経済安保情報保護活用法が施行され、対象が経済安全保障の分野まで広がり、民間企業も関わりうる仕組みになりました

難しそうに見えて、根っこにあるのは「大事なものを、信頼できる人にだけ任せる」というシンプルな考え方です。まずはこのイメージを持っておくだけでも、ニュースの受け取り方がだいぶ変わるはずです。

もし自社が半導体や重要インフラ、先端技術の共同開発などに関わっていて、「人の管理も技術の管理も、何から手をつければいいのか」と迷っているなら、頭の整理だけでも早めにしておくことをおすすめします。論点を先に押さえておくほうが、制度が動いてから慌てるより結局は早く形になります。輸出管理の側からどう備えるかについては、個別相談で具体的なご相談を受け付けています。クリアランスと輸出管理を一つの地続きの課題として見ておく。その第一歩のお手伝いができればうれしいです。

参考

[^1]: 重要経済安保情報保護活用法について — 内閣府 経済安全保障推進室 — ページ更新2026年6月26日(アクセス2026年6月29日) [^2]: いわゆる「セキュリティ・クリアランス」制度の概要(有識者会議第10回 参考資料)— 内閣官房 — 2024年(アクセス2026年6月29日) [^3]: 経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議 最終とりまとめ案 — 内閣官房 — 2024年(アクセス2026年6月29日) [^4]: 重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(令和6年法律第27号、施行2025年5月16日版)— e-Gov法令検索(デジタル庁)— 2025年5月16日施行 [^5]: セキュリティ・クリアランス制度の概要を重要経済安保情報保護活用法に基づき解説 — BUSINESS LAWYERS — 2025年(アクセス2026年6月29日) [^6]: 政府は民間人にも「身辺調査」を行う…経済安保情報保護法が成立 「特定秘密」も拡大へ — 東京新聞デジタル — 2024年(アクセス2026年6月29日) [^7]: セキュリティ・クリアランスとは?なぜ日本で必要性が高まっているのか? — トレンドマイクロ — 2023年4月10日 [^8]: 経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する提言 — 一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)— 2024年2月20日 [^9]: 『セキュリティ・クリアランス制度』法制化の最新動向【第4回】ガイドライン及びQ&Aの公表 — PwC Japanグループ — 2025年(アクセス2026年6月29日) [^10]: 重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案についての会長声明 — 日本弁護士連合会 — 2024年3月13日 [^11]: セキュリティ・クリアランスに関する取り組み — 日本労働組合総連合会(連合)— アクセス2026年6月29日

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