AIコンサル

ソフトバンク等44社の連合「Noetra」とは?フィジカルAI基盤モデルの狙いを解説

公開2026-07-25濱本 隆太

ソフトバンク・ソニーグループ・NEC・ホンダを中核に計44社・団体が出資する国産AI開発会社「Noetra(旧・日本AI基盤モデル開発)」を、初心者向けにやさしく解説します。生成AIではなくフィジカルAIの基盤モデルに賭ける狙い、堺の計算基盤、経産省・産総研が関わる官民一体の意味を、一次情報に基づいて中立に整理しました。

ソフトバンク等44社の連合「Noetra」とは?フィジカルAI基盤モデルの狙いを解説
シェア

こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

2026年、日本の産業界で大きなニュースが動きました。ソフトバンクやソニーグループ、NEC、ホンダといった名だたる企業を中核に、合わせて44の会社や団体が出資して、国産のAIをつくる会社が立ち上がったのです。会社の名前はNoetra(ノエトラ)といい、設立時は「日本AI基盤モデル開発株式会社」という名前だったと報じられています。ソフトバンクは2026年7月16日に、この会社で国産の基盤モデルの本格的な研究開発を始めると公式に発表しました1

ニュースの見出しだけを見ると「巨大なAI連合ができた」という印象で終わってしまいがちです。ですがこの取り組みは、日本がどの土俵でAIの巻き返しを狙うのか、その狙いどころに大きな特徴があります。AIの専門知識がない方でも輪郭がつかめるように、Noetraとは何か、なぜこの規模の連合が組まれたのか、そして私たちの仕事にどう関わるのかを、順を追ってやさしくお伝えします。ご自身の会社のAI活用がどの段階にあるか気になる方は、先にAIリテラシーの無料診断で現在地を確かめておくと、後半の話がぐっと具体的になります。

そもそもNoetraとはどんな会社なのか

まず、この会社の正体からです。ここが分かると、ニュースの受け止め方が変わってきます。

Noetraは、1社が単独で運営する会社ではありません。ソニーグループ、ソフトバンク、NEC、本田技研工業の4社を中核に、幅広い業種の企業や団体が資本を出し合ってつくられた、いわば共同出資の開発会社です。日本経済新聞の報道によれば、この中核4社はそれぞれ株式の10%を超えて保有する筆頭株主のグループにあたるとされています。設立の初期段階で出資が明らかになっていたのは、この中核に加えて、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の三大メガバンクや、日本製鉄、神戸製鋼所といった顔ぶれで、製造業だけでなく金融も名を連ねているのが特徴でした。

その後、出資の輪はさらに広がり、ソフトバンクの公式発表では参加は合わせて44社・団体にのぼると明記されています1。報道では、この内訳は製造業がおよそ28社、非製造業がおよそ16社に分かれると伝えられています。1社ずつの社名をここですべて挙げることはしませんが、要するに、日本を代表するメーカーや金融機関、通信、サービスといった幅広い業種が、業界の垣根を越えて一つのAI会社に集まった、という構図です。これほど多様な大企業が横並びで一つの技術開発に資本を出し合うのは、日本の産業史のなかでもそう多くありません。

なお、会社の設立時期については、資料によって「2026年の初め」「春ごろ」など記述に幅があります。おそらく、法人としての設立、主要企業の出資、社名の変更、そして44社体制の公表が、それぞれ別のタイミングで進んだために、伝える媒体によって時期の書き方がずれているのだと考えられます。この記事では細かい年月日を断定せず、「2026年前半に設立され、その後44社へと拡大した」と押さえておきます。正確な日付にこだわる必要がある方は、登記情報や公式発表で最終確認されることをおすすめします。

なぜ「生成AI」ではなく「フィジカルAI」なのか

この連合のいちばんの特徴は、狙う土俵にあります。ここが他のAIニュースとの決定的な違いなので、じっくり説明します。

ここ数年、世間を賑わせてきたAIは、文章を書いたり質問に答えたりする対話型のAI、いわゆる生成AIでした。この分野では、海外の大手が桁違いの資金と人材を投じて先行しており、後から国産で真正面から追いつくのは容易ではありません。そこでNoetraが照準を合わせているのが、フィジカルAIと呼ばれる領域です。聞き慣れない言葉だと思うので噛み砕くと、フィジカルAIとは、ロボットや製造設備、自動運転車、物流機器といった、現実世界で実際に動く機械を認識し、判断し、制御するためのAIのことです。

対話型の生成AIが、画面の中で文章や画像を扱って完結するのに対し、フィジカルAIはカメラやセンサーを通して物理空間を捉え、実際に手足を動かす機械を賢く動かします。工場のロボットが、初めて見る部品でも自分で持ち方を考えて組み立てる。倉庫の搬送機が、周囲の状況を読んで安全に動く。そうした「現実世界で働くAI」の土台になるのがフィジカルAIです。ソフトバンクの発表によれば、Noetraが目指すのは、文章だけでなく画像や映像、音声を統合的に扱う「マルチモーダル基盤モデル」を開発し、最終的には物理空間の特性まで理解できる「世界基盤モデル(Real-world Native AI)」に到達することだとされています1

なぜここに賭けるのか。理由は、日本の強みと重なるからだと考えると腑に落ちます。日本は自動車、ロボット、電機、素材といった、現実世界のモノづくりに強い国です。生成AIの土俵ではすでに大きく先行された一方、機械を賢く動かすフィジカルAIは、これから本格的に立ち上がる次の主戦場であり、まだ勝敗が決していません。しかも、この領域で成果を出すには、実際の工場や現場から得られる多様なデータが欠かせません。多くの製造業が参加する連合は、まさにその現場データを持ち寄れる強みがあります。生成AIで後れを取った日本が、自分たちの得意分野を活かせる次の土俵で巻き返しを図る。Noetraの構図は、そう読むと理解しやすいと思います。

一つ補足しておくと、フィジカルAIをめぐるソフトバンクの動きは、このNoetraだけではありません。ソフトバンクは2025年12月に、産業用ロボット大手の安川電機とフィジカルAIで協業することも発表しています。ただしこれはロボット制御に向けた個別の連携であり、44社が出資して基盤モデルそのものを開発するNoetraとは別の取り組みです。同じ「フィジカルAI」という言葉で語られるため混同しやすいのですが、規模も目的も異なる話として整理しておくと、ニュースを正しく読めます。

AI研修・コンサルティングをお探しですか?

WARPの研修プログラムとコンサルティング内容をまとめた資料をご覧ください。

巨大な計算基盤と開発のロードマップ

基盤モデルをつくるには、途方もない計算資源が要ります。Noetraがどんな設備で、どんな段取りで開発を進めようとしているのかを見ておきます。

まず計算基盤です。ソフトバンクの発表によれば、NVIDIA製の最新世代GPU「Rubin」をおよそ2万7,500基使った大規模なAI計算基盤を構築し、2028年6月ごろの稼働開始を予定しているとされています1。GPUというのは、AIの学習に欠かせない計算装置のことで、簡単に言えばAIの頭脳を鍛えるための特別なコンピューターだと思ってください。それを2万基以上も並べるというのは、国内でも屈指の規模のAI工場をつくるようなものです。その中核拠点として想定されているのが、大阪府堺市にあるデータセンターです。ここはもともと液晶パネルの工場だった建物を、ソフトバンクが取得してAI用のデータセンターに転用したもので、広大な敷地と大量の電力を扱えるという、AIの計算に向いた条件を備えています。

開発の進め方は、いきなり最終形を目指すのではなく、段階を踏む形で描かれています。ソフトバンクが示したロードマップによれば、まず2027年度には、高度な日本語の理解と推論ができる基盤モデルをつくり、次の2028年度には、テキストに加えて画像・映像・音声を扱えるモデルへと広げ、最終的な2030年度には、空間の特性まで理解できる「世界基盤モデル」に到達することを目標にしています1。事業の期間は、おおむね2026年度から2030年度までとされています。文章を理解する段階から始めて、目で見て耳で聞き、最後には物理空間を捉えるところまで、一歩ずつ能力を積み上げていく設計です。

規模の目安として、報道では国内最大級となる約1兆パラメータのモデルを目標とする、とも伝えられています。パラメータというのは、AIの賢さの規模を表す目安のようなもので、数が多いほど複雑な処理ができるとされる指標です。ただし注意が必要で、この「1兆パラメータ」という数字は日経などの報道で示された目標値であり、ソフトバンクの公式発表そのものは段階ごとの目標で語っていて、最終的なパラメータ数を確定的には述べていません。確定した仕様ではなく、あくまで目指す規模感を示す報道値として受け止めておくのが正確です。数字の大きさに引っ張られすぎず、方向性を示すものとして押さえておきましょう。

こうした国産の基盤づくりが、ロボットや製造業の現場にどう効いてくるかという視点は、日本のフィジカルAI戦略を解説した記事でも整理していますので、あわせて読んでいただくと立体的に見えてきます。国のAIをめぐる大きな動きを腰を据えて把握しておきたい方には、AIの活用そのものを見直すきっかけにもなるはずで、その第一歩としてWARPのようなAIコンサルティングで自社の使いどころを設計しておくと、こうしたニュースを自分ごとに引き寄せやすくなります。

経産省・産総研も関わる官民一体の意味

Noetraは、民間企業だけの取り組みではありません。政府がしっかり関わっている点も、この連合を理解するうえで欠かせない要素です。

Noetraは、経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募した事業に採択される形で進められています。NEDOは、国の資金を使って産業技術の研究開発を後押しする公的機関で、大きな技術投資を国として支える役割を担っています。報道によれば、この分野への政府の支援は5年間でおよそ1兆円という規模にのぼるとされています。金額の内訳については、初年度にあたる2026年度の補助金が約3,873億円と伝える報道もありますが、この単年度の額は二次的な報道に基づくもので、正確な数字は経産省やNEDOの公募採択に関する公式資料で確認するのが確実です。総額の1兆円規模という水準は複数の報道で共通していますが、細かい配分は一次情報にあたるのが安全だと考えてください。

さらに、研究開発の面では、産業技術総合研究所(産総研)と共同で進めるとされています。産総研は国内有数の公的な研究機関で、企業だけでは抱えきれない基礎的・横断的な研究の知見を持ち寄れる存在です。つまりNoetraは、資金の面でも研究の面でも、民間と政府・公的機関がかみ合った官民一体の枠組みとして設計されているわけです。なお、経営体制については、前身にあたる企業の代表を務めた人物が代表に就くと報じられていますが、氏名や肩書は公式発表で最終確認すべき段階のため、この記事では固有名詞の断定は控えます。

この官民一体という形には、それなりの理由があります。基盤モデルの開発は、成果が出るまでに何年もかかり、その間に膨大な資金を投じ続けなければなりません。しかも、必ず成功する保証があるわけでもない。この重さと不確実さは、1社だけで背負うには大きすぎます。だからこそ、幅広い企業が資金と現場データを分担し、政府が長期の支援で下支えし、公的研究機関が知見を寄せる。リスクと負担を社会全体で分かち合いながら、腰を据えて取り組める体制をつくった、というのがこの枠組みの狙いだと理解できます。生成AIをめぐる国の下支えの動きは、国産AI基盤とNEDO・TRAFEEDの関わりを整理した記事でも触れていますので、関心のある方はそちらもご覧ください。

「日本企業連合」であることの意味を考える

最後に、この取り組みが「日本企業の連合」であることに、どんな意味があるのかを考えてみます。ここは事実というより、私なりの見方を交えた整理になります。

これほど多くのライバル企業が横に並んで一つのAI会社に出資する。ふだんは競い合う相手どうしが手を組むこの構図には、一つのメッセージが込められていると感じます。それは、基盤となるAIの土台は、もはや1社の競争力の問題ではなく、日本の産業全体の共通基盤として持っておくべきものだ、という認識です。生成AIの分野で海外の大手に大きく先行された経験は、日本の産業界に「土台を他国のサービスに全面的に依存すると、いざというときに身動きが取れなくなる」という危機感を残しました。フィジカルAIという次の土俵では、その土台を自分たちの手で持っておこう。連合の背景には、こうした共通の問題意識があるように見えます。

もっとも、規模が大きく、参加企業が多い連合には、良い面ばかりではなく難しさもあります。多くの企業が関わるほど、意思決定に時間がかかったり、それぞれの思惑の調整が必要になったりします。基盤ができること自体がゴールではなく、それを各社が自社の現場で本当に使いこなし、成果につなげられるかが、この取り組みの真価を決めます。だからこの連合を、単なる「日本の逆襲」という勇ましい物語として消費するのではなく、これから何年もかけて、地道に技術と現場をすり合わせていく長い挑戦の出発点として見ておくのが、冷静な受け止め方だと思います。特定の国や企業を持ち上げたり、けなしたりする話ではなく、日本の産業がどこに賭けようとしているのかを知る、そういう材料として読むのがちょうどよいはずです。

そのうえで、当事者となりうる製造業やロボット領域の企業にとっては、この動きは他人事ではありません。国産の基盤が育てば、日本語や国内の商習慣、自社の現場に合ったAIを使える選択肢が広がる可能性があります。その恩恵を実際に受け取れるかどうかは、基盤が整うのを待つだけでなく、自社のどの業務にAIを効かせるのかを見極める力があるかで変わってきます。

経営者として、このニュースをどう受け止めるか

ここまで大きな話を追ってきましたが、最後に、これを自分の会社の話としてどう受け止めればいいかを書きます。

Noetraのような国レベルの連合は、規模が大きすぎて「自分の会社には関係ない」と感じるのが自然かもしれません。ですが、根っこにあるメッセージは、実はとても身近です。それは、AIの土台がこれから急速に整っていく時代に入る、ということです。国産にせよ海外製にせよ、賢いAIを使える環境は年々整っていきます。問題は、その環境を目の前の自社の仕事に翻訳できるかどうかです。どれだけ立派な基盤ができても、自社のどこにAIが効くのかが分からなければ、恩恵は素通りしていきます。

私の見方はこうです。これからの数年で差がつくのは、最新のAIを知っているかどうかよりも、自社の業務のどこにAIを差し込めば効くのかを見極め、実際に動かせるかどうかです。フィジカルAIのような大きな話は、ともすれば「うちには関係ない先端技術」に見えます。けれど、その根っこにある「AIを現場の力に変える」という発想は、規模の大小を問わず、あらゆる会社に通じます。大きな潮流を、目の前の一歩に翻訳できる会社ほど、この時代の恩恵を受け取りやすくなります。

自社のどこにAIが効くのか、何から手をつければいいのか。その出発点の整理に迷っておられるなら、WARPの担当までご相談ください。元大手企業でDXやデータ戦略を担ってきた専門家が、月次で伴走しながら、AIを経営に落とし込むお手伝いをしています。もっとも、AIを入れれば何もかも解決するわけではありません。どこに効いて、どこは人がやるべきかを見極めるところから、一緒に始めましょう。

まとめ

長くなったので、要点を整理します。

  • Noetra(旧・日本AI基盤モデル開発)は、ソニーグループ・ソフトバンク・NEC・ホンダを中核に、計44社・団体が出資してつくられた国産AIの開発会社です
  • 狙う土俵は、文章を書く生成AIではなく、ロボットや機械を現実世界で動かす「フィジカルAI」。最終的に物理空間を理解する「世界基盤モデル」を目指しています
  • 開発は段階的で、2027年度に推論基盤、2028年度にマルチモーダル、2030年度に世界基盤モデルという計画。事業期間はおおむね2026〜2030年度です
  • 計算基盤は、堺のデータセンターにNVIDIA Rubin GPUを約2万7,500基。2028年6月ごろの稼働を予定しています(いずれも公式発表による)
  • 経産省・NEDOの支援(報道では5年で約1兆円規模)や産総研との連携を伴う、官民一体の枠組みです
  • 多くのライバル企業が横に並ぶ構図には、AIの土台を日本の産業共通の基盤として持とうという問題意識がうかがえます。ただし基盤づくりはゴールではなく、各社が使いこなせるかが真価を決めます

大きな連合のニュースは、勇ましい物語として受け取られがちです。ですが大事なのは、何が起きているのかを正確に押さえたうえで、自社にとっての意味を考えることだと思います。AIの土台が整っていくこの時代に、それを自社の力に変える準備を始めるには、悪くないタイミングです。まずは自社のどこにAIが効くのかを見極めるところから、動き出してみてください。

参考文献・一次情報

Footnotes

  1. ソフトバンク株式会社「国産マルチモーダル基盤モデルの本格的な研究開発を開始」2026年7月16日 プレスリリース https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2026/20260716_01/ 2 3 4 5

AI導入について相談しませんか?

元大手DX・データ戦略専門家が、貴社に最適なAI導入プランをご提案します。初回相談は無料です。

この記事が参考になったらシェア

シェア

メルマガ登録

AI活用やDXの最新情報を毎週お届けします

ご登録いただいたメールアドレスは、メルマガ配信のみに使用します。

無料ダウンロード資料

おすすめの資料

無料診断ツール

あなたのAIリテラシー、診断してみませんか?

5分で分かるAIリテラシー診断。活用レベルからセキュリティ意識まで、7つの観点で評価します。

AIコンサルについてもっと詳しく

AIコンサルの機能や導入事例について、詳しくご紹介しています。

関連記事