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SusHi Tech Tokyo 2026 基調講演レポート|小池都知事×高市総理が語った『スタートアップ立国・日本』の本気度

2026-04-29濱本 隆太

SusHi Tech Tokyo 2026の基調講演で小池百合子都知事と高市早苗総理が語った『スタートアップ立国・日本』のビジョン。GDP32%増、スケールアップ・ディープテック・地方自治体調達の三本柱、Tokyo Innovation Base、G-NETS首長級会議の意味——TIMEWELL代表が現場で受け取った国家戦略レベルの「挑戦インフラ」の構造を解説します。

SusHi Tech Tokyo 2026 基調講演レポート|小池都知事×高市総理が語った『スタートアップ立国・日本』の本気度
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。東京ビッグサイトの広大な西ホールでは、開場前から通路に並ぶ行列が建物の外まで伸びていました。世界54カ国、770社のスタートアップが集結する「SusHi Tech Tokyo 2026」。アジア最大級のイノベーションカンファレンスの第4回開催は、初日のオープニングから空気が違いました。

冒頭のスペシャルキーノートに登壇したのは、小池百合子東京都知事、そして日本の高市早苗総理大臣です。私はTIMEWELLの共同創業者として、そして「世界No.1の挑戦インフラを創る」というビジョンを掲げる立場として、この瞬間をどうしても自分の目で見ておきたかったのです。ステージに立つ二人の女性リーダーが、これから日本のスタートアップエコシステムをどう方向づけようとしているのか。その言葉の端々に、本気度が滲んでいました。


SusHi Tech Tokyo 2026とは何か — 数字で見るアジア最大級のイベント

まずイベントの全体像を簡単に紹介しておきたいと思います。「SusHi Tech」は"Sustainable High City Tech"の略で、「持続可能な都市をハイテクノロジーで実現する」という東京発のコンセプトです。2026年の会期は4月27日(月)・28日(火)のビジネスデイ、そして29日(水・祝)のパブリックデイの3日間。会場は東京ビッグサイト西1〜4ホールを中心に展開されています[^1][^2]。

注目すべきは規模感です。過去最多となる約770社のスタートアップがブース出展し、海外VC、大企業、アカデミア、そして今回は世界の都市首長が集結する「G-NETS首長級会議」まで併催されています。昨年は6,000件を超える商談が成立したという数字も発表されており、単なる展示会ではなく、本気の事業創造プラットフォームとして機能しているのが特徴です[^3]。

フォーカス領域は今年、AI・ロボティクス、レジリエンス、エンターテインメントの4分野とされています。4回目の開催にして、東京の「スタートアップ都市」としての立ち位置が、ようやく実体を伴い始めたという手応えを感じます。背景には東京都が2022年に掲げた「Global Innovation with STARTUPS」戦略があり、5年間で10x(ユニコーン数10倍、起業家数10倍、協働実践数10倍)という大胆なKPIが設定されました。その「中間年度」にあたる今年の開催には、実績を示すべき節目という意味合いも込められているように感じます。

海外からの来場者も目立ちます。フランス、韓国、インド、シンガポール、UAE、そして今年はイタリアもパビリオンを構えています。参加国数54という数字は、前年の45カ国から大きく伸びており、アジア・欧州・中東をつなぐ「グローバルスタートアップカンファレンス」としての地位は、いよいよ明確になってきました。

小池知事のオープニング — 「スシテック」という言葉に込めた意志

小池知事のスピーチは、安定感のある語り口で始まりました。「Sustainableの"SUS"と、High-Techの"HI"を合わせて、美味しい寿司(SUSHI)という言葉が生まれた」——というあの説明も、今年で4回目です。耳慣れた語り口のはずなのに、今年は違って聞こえました。

理由はおそらく、規模感です。60,000名近いスタートアップ関係者、大企業関係者、都市リーダーが一堂に会する会場を見渡しながら、小池知事が「東京から世界の叡智を結集し、未来のビジョンを描き、それを実践に移す」と語る姿には、初回の手探り感がもう消えていました。この4年で、東京というスタートアップエコシステムは確実に一段上がったのです。

小池知事はさらに、東京都が独自に進める「Tokyo Innovation Base(TIB)」にも触れました。丸の内に拠点を構え、スタートアップ・大企業・VC・大学・行政を繋ぐハブとして稼働しているこの施設は、2024年の開設から約1年半で来訪者数が大きく伸びています。公共セクターが物理的な「場」を提供することで、民間のエコシステムが加速するというモデルは、シンガポールのBLOCK71やフランスのSTATION Fに匹敵する試みだと私は見ています。

加えて「Sustainable High City」という言葉にも含意があります。気候変動への対応、高齢化社会でのウェルビーイング、災害レジリエンス——これらは都市の本質的な課題であり、東京はそれらを「ハイテクで解こうとしている都市」として世界にメッセージを発信しているわけです。スタートアップの存在は、その意思決定の最前線にあります。

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高市総理の「三本柱」— スタートアップ支援は『経済安全保障』へ

そこに登壇した高市総理。自らを「小池知事ほどパワフルではないのですが」と謙遜から入る姿が印象的でしたが、語り始めた瞬間に会場の空気が変わりました[^4]。

総理の口から出てきた数字は強烈でした。「日本の名目GDPは過去2年間で32%増加した」——従来の年間4%目標を大きく上回る伸びです。この数字を根拠に、総理はスタートアップ支援の「三本柱」を打ち出しました。

第一の柱はスケールアップ支援です。グロースフェーズのスタートアップへの資金供給を強化し、成長した企業から生まれた人材とノウハウが再投資される「循環型エコシステム」を作ります。さらに海外から優秀な起業家と人材を呼び込み、東京をグローバルエコシステムのゲートウェイにするという明確な宣言がありました。この発言の背景には、日本のスタートアップの平均シリーズC以降の調達規模が、米国・中国・インドと比べて1/5〜1/10程度にとどまっているという構造課題があります。シード・アーリー期の起業家数は増えたが、「グロースの壁」を突破できず海外投資家やIPOに繋がる企業が限られる——この課題認識は現場のVCの多くが共有しているものです。

第二の柱はディープテック支援です。量子、半導体、AIといった基盤技術領域で、研究開発から商業化までを支援します。特に印象的だったのが、「政府調達のハードルを下げる」という踏み込んだ発言でした。SBIR(中小企業技術革新制度)の強化や、各省庁がPoCや実証実験の場を提供する仕組みは、現場でスタートアップを見てきた私にとって「ようやくここまで来たか」という感覚が強いです。日本のディープテックが商業化の壁を越えるには、初期顧客としての政府の存在が決定的に重要になります。米国のSBIR制度はNASAやDoDが毎年数十億ドル規模でディープテックに先行投資する仕組みで、SpaceXやPalantirもその恩恵を受けて成長しました。日本版SBIRが本当にその水準まで踏み込めるか——ここは今後ウォッチしたいポイントです。

第三の柱は地方自治体による調達です。これも地味ですが効きます。地方のスタートアップが、地方自治体を最初の顧客にできます。これは長年求められてきたが、なかなか動かなかった仕組みでした。東京一極集中の議論が語られる中で、地方発スタートアップの「最初の10社の顧客」を、いかに地元自治体が担えるか。この仕組みが機能すれば、地方大学発のディープテックが「地域で育って世界に出る」という新しい成長経路が現実味を帯びてきます。

筆者所感 — 「挑戦のインフラ」が国家レベルで組まれ始めた

私がこのキーノートで最も感じたのは、スタートアップ支援が「応援」の段階を超えて「国家戦略」のOSとして実装され始めているということです。TIMEWELLが掲げる「挑戦の民主化」は、個人が挑戦するための足場を作る仕事だと考えています。その足場は、これまでは個別のアクセラレーター、事業会社、VCが支えてきました。しかし今回の高市総理の発言で、政府がその足場の一角を担うという意思表明がなされたわけです。

一方で、冷静に見ておくべき点もあります。GDP32%増という数字は確かに大きいですが、内訳には物価上昇(名目成長)の要素が含まれます。実質ベースで見ればもう少し慎重な評価が必要でしょう。また「5年間のスタートアップ育成計画」の延長についても、KPIの設定と実行の粒度が問われる段階に入っています。掛け声だけでは動きません。

ただ、私がパナソニック時代に社内起業家支援をしていた頃と比べると、明らかに風向きは変わりました。10年前、「日本でスタートアップをやる」と言うと、学生からも親からも怪訝な顔をされたものです。今はどうでしょうか。総理大臣がスタートアップを「国家の成長エンジン」と明言する時代になりました。これは時代の空気そのものの変化だと受け止めています。

TIMEWELLでは「誰もが自分らしく挑戦できる社会」の実現を目指して、キャリアコーチング、大企業内での新規事業開発伴走、信州大学での特任准教授としてのアカデミア連携など、複数のレイヤーで「挑戦のインフラ」を形にしてきました。国家戦略として政府が動き出した今、私たち民間プレイヤーは自分たちの立ち位置を再定義する必要があります。政府がやるべきことと、民間しかできないこと——その境界線を鮮明にしなければ、せっかくの追い風が無駄になってしまうからです。

G-NETSとの併催が意味するもの — 都市外交としてのイノベーション

もう一つ、今年のSusHi Techで個人的に重要だと感じているのが、G-NETS(Global Network of Tokyo Summit)首長級会議との併催です。世界のイノベーションリーダーとシティリーダーが同じ場所に集まります。これは単なる偶然ではなく、都市のイノベーション能力が、国際的な外交カードになり始めている兆候だと私は読んでいます。

ヘルシンキ、バルセロナ、ソウル、モントリオール、シンガポール——世界のスタートアップハブ都市はもはや単独で存在するのではなく、ネットワーク化しています。東京がその結節点として存在感を示すなら、国内スタートアップの海外展開にとっても巨大な追い風になるはずです。

例えばバルセロナのSmart City Expo、ヘルシンキのSlush、リスボンのWeb Summit。これらのカンファレンスはいずれも、都市行政が主導して「スタートアップの世界的なハブ都市」というブランドを築き上げた結果、世界中の起業家と投資家が年に一度集まる場になりました。SusHi Techが目指しているのは、まさにその東京版です。4年目を迎えて、いよいよ手応えが出始めたと感じます。

スマートシティセッションのレポートでも書きましたが、人間中心AI都市というキーワードは今後の都市OSの設計思想を左右するテーマです(市民のためのスマートシティとは何か|ソウル・バルセロナ・東京が描く『人間中心AI都市』の最前線を併せてお読みください)。都市と都市が連携してエコシステムを育てる構図は、今まさに東京の足元で組まれつつあります。

写真撮影の瞬間 — カメラに向かう二人のリーダー

セッションの最後、ステージ中央に並んだ小池知事と高市総理が、会場のカメラに向かって並んだ瞬間がありました。派手な演出ではありません。しかしスタートアップエコシステムという、「民」が主役の領域で、「政」のトップ二人が並ぶ絵がこうして撮られること自体が、日本のスタートアップ環境の変化を象徴していたように思います。

私はその絵を見ながら、TIMEWELLがやるべきことを改めて考えていました。政策の追い風は吹いています。大企業の社内起業家支援の動きも確実に加速しています。信州大学での特任准教授の仕事を通じて、アカデミア側の芽吹きも感じます。あとは、これらを統合して個人の挑戦を後押しする「インフラ」として形にできるか。それがTIMEWELLに問われている宿題だと考えています。

挑戦の現場には、グローバルに活躍する個人タレントの動きも合流してきています。独立タレントとコミュニティの関係を読み解いたStudio STELLAR と独立タレント時代、そして社会の受け皿そのものを問い直した外国人共生社会政策も、この流れと地続きの議論です。

まとめ — この3日間、東京で起きること

SusHi Tech Tokyo 2026は、まだ始まったばかりです。このキーノートは序章に過ぎません。この後、ビジネスデイでは数百のセッション、数千のブース、そしておそらく1万件を超える商談が生まれるでしょう。パブリックデイでは一般の来場者が最先端テクノロジーに触れます。

未来の日本のイノベーション能力は、この3日間の密度の中で、小さな火種をいくつ生めるかにかかっています。そして私たち民間側が、その火種をどう育てるか。高市総理のスピーチは「舞台は整えた、あとは走れ」というメッセージだった、と私は受け取っています。

走りましょう。全力で。それしかありません。TIMEWELLは、挑戦したい誰か一人の背中を押す仕事を、これからも愚直に続けていきます。SusHi Tech Tokyo 2026の3日間が、日本のスタートアップエコシステムにとって、新しい章の扉を開く瞬間になることを、現場で強く願っています。


経営戦略・新規事業に落とし込むなら

こうした政策動向や都市実装の議論を、自社の経営戦略・新規事業・AI実装にどう組み込むかは、TIMEWELLのAIコンサルティング WARP でも個別の相談を承っています。スタートアップ立国・日本の追い風を、自社のスケールアップやディープテック商業化、地方自治体との協業にどう変換するか——30分のオンライン相談から始められます。

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参考文献

[^1]: SusHi Tech Tokyo 2026 公式サイト. https://sushitech-startup.metro.tokyo.lg.jp/ [^2]: 東京都庁. "SusHi Tech Tokyo 2026 の詳細をお知らせします。" https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/03/2026032717 (2026-03-27) [^3]: 読売新聞. "SusHi Tech Tokyo 2026 27〜29日開催" https://www.yomiuri.co.jp/economy/20260425-GYT8T00055/ (2026-04-25) [^4]: YouTube. "Special Keynote — Expectations for Startups Driving Transformation and Growth —". https://www.youtube.com/watch?v=m73hFcvcg_U

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