株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。
先に、確認した事実だけを並べます。
| 措置 | 期限(原文) | |
|---|---|---|
| 米国 | BIS Affiliates Rule(50%ルール)の停止 | 2026年11月9日まで stay(=11月10日に復活する見込み) |
| 中国 | 商務部・海関総署 公告2025年第70号による暫停 | 「自即日起至2026年11月10日」 |
同じ日です。
そして今日は2026年8月2日。残り14週間です。
この記事では、両方の原文を確認したうえで、この14週間で何を終わらせておくべきかを整理します。結論から言うと、11月10日に本当に戻るかどうかは確定していません。それでも準備すべき理由がある、という話をします。
米国側:何が停止しているのか
BISのAffiliates Rule(一般に50%ルール)は、こういう規則です。
米国のEntity List等に掲載された事業者が、直接・間接、単独・合算を問わず50%以上を保有する会社は、自身の名前がリストに載っていなくても、同じ規制の対象になる。
これが2025年9月30日に中間最終規則として公示されました(90 FR 47201)。
その後、2025年11月12日に停止規則が公示されます(90 FR 50857-50858、第90巻第216号)。内容は次のとおりです。
2025年11月10日をもって、90 FR 47201 による 15 CFR 第732・734・736・744・748 各部の改正を、2026年11月9日まで stay する。
そして、この停止規則のSUMMARYにはこう書かれています。
"The suspension is set to end November 9, 2026, absent a future extension."
「後続の延長がなければ」。ここは正確に読む必要があります。復活は確定ではなく、条件付きです。
中国側:何が暫停しているのか
中国側は、商務部・海関総署 公告2025年第70号(2025年11月7日発表)です。
内容は、次の6つの公告の実施を暫停するというものです。
- 商務部・海関総署 公告2025年第55号
- 同 第56号
- 同 第57号
- 同 第58号
- 商務部 公告2025年第61号
- 商務部 公告2025年第62号
対象領域は、超硬材料、一部のレアアース設備・原輔料、一部の中重レアアース、リチウム電池と人造黒鉛負極材料、域外のレアアース関連物項、レアアース関連技術です。
そして暫停の期間が、原文でこう書かれています。
「自即日起至2026年11月10日」
つまり、2025年11月7日から2026年11月10日まで。
該非判定の属人化を、AIで解消する。
経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。
なぜ同じ日なのか
偶然ではありません。
中国側の暫停は、米中クアラルンプール経貿協議の共通認識を受けた措置として発表されています。米国側の停止も、2025年10月末の米中合意を受けたものです。
つまり両者は同じ取り決めから出た表裏一体の措置であり、期限が揃っているのはその結果です。
これが意味することは1つ。11月10日は、片方だけを見ていればいい日ではないということです。
何が同時に起きうるのか
日本の輸出企業にとって、この日が持つ意味は両方向です。
米国側から来るもの
取引先が、名前をリストに載せることなく規制対象になりうる。50%ルールの怖さは、取引先名でリストを照合しても発見できないという点にあります。対象となる会社は、定義上リストに載っていないからです。合算持分が50%に届くかは、株主をさかのぼらないと分かりません。
中国側から来るもの
レアアース、リチウム電池材料、人造黒鉛負極材料、超硬材料——これらの調達が、再び許可制の対象に戻りうる。電池・磁石・工具・半導体まわりの製造業にとっては、供給計画そのものに関わります。
そして両方が同じ週に来る。
片方への対応で手一杯になっているところに、もう片方が重なる。11月に入ってから両方を同時に処理するのは、率直に言って厳しいと思います。
「戻らないかもしれない」ことをどう扱うか
ここは正直に書きます。
米国側は原文が条件付きです。 延長される可能性は実在します。中国側も協議次第で変わりえます。
では準備は無駄になるのか。ならない、というのが私の見方です。理由は3つあります。
1つ目。作業の中身が、この規則専用のものではない。
取引先の資本関係を把握する作業は、OFACの50%ルール、軍事最終用途者リストの照合、そして通常の取引先デューデリジェンスが、すでに同じことを求めています。50%ルールが延長されても、これらは消えません。
2つ目。作業に時間がかかる。
これが本質的な理由です。取引先の株主を2〜3層さかのぼる作業は、対象社数に比例して時間がかかります。100社なら数週間、1,000社なら数か月です。直前の2週間で終わる性質の作業ではありません。
延長されるかどうかを見極めてから着手する、という戦略は成立しません。見極められた時点では、間に合わないからです。
3つ目。取引先から先に聞かれる。
大手の顧客は、サプライチェーンに対して確認記録の提出を求め始めます。そのときすぐに出せる会社が、残される側になります。出せない会社はリストから外れる——何かをやらかしたからではなく、やったことを証明できないからです。
残り14週間の使い方
作業の性質が違うので、順序が重要です。
第1〜2週:範囲を確定する
何をやるか:どの取引先、どの品目が対象になりうるかの当たりをつける。
なぜ最初か:ここが決まらないと、以降の作業量が見積もれません。そしてこの作業はツールが要りません。既存の取引先リストと品目リストで始められます。
- 米国側:EAR対象になりうる品目を扱っている取引先はどれか
- 中国側:レアアース・リチウム電池材料・人造黒鉛負極材料・超硬材料の調達がどこに依存しているか
第3〜8週:資本関係を潰す
何をやるか:優先順位の高い取引先から、株主を遡る。
ここが最も時間を食います。 そして、ここで多くの会社が「データが取れない」という壁に当たります。
重要なのは、取れなかったことを取れなかったと記録することです。空欄にせず、「2層まで遡った、3層目はその法域で非公開、確認日は○月○日」と書く。地味な作業ですが、これが後で効きます。
監査や顧客が問うのは2つです。結論は何か。そして、その結論に至るまでに何をしたか。後者は記録がなければ答えようがありません。
第9〜12週:手順を固定し、人を広げる
何をやるか:確認を「毎回やる手順」にして、やれる人を増やす。
3つ目が最も見落とされます。輸出管理の違反は、法務やコンプライアンス部門では起きません。営業が客に約束した瞬間、技術が仕様を確定した瞬間、調達が発注した瞬間に起きます。そこに確認する手段がなければ、いくら体制図を整えても意味がありません。
もし社内のツールが人数課金であれば、確認できる人の数がリスク判断ではなく予算判断で決まっていることになります。ここは一度点検する価値があります。
第13〜14週:総仕上げ
何をやるか:期限直前の再照合と、顧客への説明準備。
- 全取引先を最新のリストで再照合する(期限後ではなく前に)
- 取引先が規制対象になった場合に契約上どう動けるかを確認する
- 「なぜ追加の確認をお願いするのか」を顧客に説明する文面を用意しておく
そして11月10日以降は、延長されたかどうかを官報で確認する。日付を前提に動くのではなく、公示を見て動く。ここだけは崩さないでください。
何もしない場合に起きること
逆側から見ておきます。11月に入ってから着手した場合、こうなります。
- 資本関係の調査が終わらない。優先順位もつけられていないので、どこから手をつけるかで時間を使う
- 顧客からの確認要請に即答できない。「調査中です」を繰り返すことになる
- 中国側の調達影響と米国側の取引先影響を同時に処理することになり、どちらも中途半端になる
- 結果として、判断のつかない取引を止めるという一番高くつく選択をすることになる
止めた取引は戻ってきません。ここが、準備コストと未準備コストの非対称なところです。
この14週間で使えるもの
自社で進める分には、次のものが役に立ちます。
BIS50%ルール対応チェックリスト(PDF・無料) — 体制準備から期限直前の総仕上げまでを6フェーズ29項目に分解したものです。着手済みと未着手を埋めるだけで、社内の進捗報告や監査への説明にそのまま出せます。
中国関連取引 輸出管理スクリーニングシート(PDF・無料) — 中国側の制度を1取引ごとに記入しながら確認できる手順書です。
BIS 50%ルールの簡易チェック(無料・登録不要) — 取引先名から資本関係を遡って合算持分を計算します。まず1社試してみると、自社のデータがどこで途切れるかが分かります。
そして、対象社数が人手で回らない規模になったときは、TRAFEED が担当できる範囲です。取引先の各種リスト照合、資本関係と関連事業体ネットワークの調査、そして判断ごとに根拠を紐づけて残すところまで。課金は照会回数ベースで人数課金ではないため、確認できる人を絞る必要がありません。
最終的な判定は貴社の輸出管理責任者と当局の最新公表を正とします。この線は動かしません。
まとめ
- 2026年11月10日、米中の一時停止が同じ日に切れる。 米国はBIS Affiliates Ruleの stay が11月9日まで(90 FR 50857)、中国は公告2025年第70号の暫停が「自即日起至2026年11月10日」
- 偶然ではない。 どちらも米中協議の取り決めから出た表裏一体の措置
- ただし米国側の原文は "absent a future extension" と条件付き。復活は確定ではない
- それでも準備すべき理由は3つ。(1) 作業の中身がこの規則専用ではない (2) 資本関係の調査は時間がかかり直前では終わらない (3) 顧客から先に聞かれる
- 残り14週間の順序:範囲確定(1〜2週)→ 資本関係を潰す(3〜8週)→ 手順を固定し人を広げる(9〜12週)→ 総仕上げ(13〜14週)
- 取れなかったデータは「取れなかった」と記録する。 監査が問うのは結論だけでなく、そこに至る過程
- 10月に着手した場合は間に合わないと考えたほうが安全。判断のつかない取引を止めるのが、一番高くつく
自社の体制で足りるか不安な方は、個別のご相談からお声がけください。まず現状の運用を伺ったうえで、14週間でどこまで到達できるかを一緒に見ます。
参考文献
- One Year Suspension of Expansion of End-User Controls for Affiliates of Certain Listed Entities — Bureau of Industry and Security — 2025年11月12日公示 — 90 FR 50857 — https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-11-12/html/2025-19846.htm
- Expansion of End-User Controls to Cover Affiliates of Certain Listed Entities — Bureau of Industry and Security — 2025年9月30日公示 — 90 FR 47201
- 商務部、海關總署公告2025年第70號 公佈暫停實施商務部、海關總署公告2025年第55號、56號、57號、58號及商務部公告2025年第61號、62號的決定 — 中華人民共和国商務部 — 2025年11月7日 — https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_b1ec77dd3f0d4762952904df7cdaadec.html
- 15 CFR Part 744 — End-User and End-Use Based Controls;Supplement No. 4(Entity List);Supplement No. 7(MEU List)— eCFR
- Consolidated Screening List — International Trade Administration — https://www.trade.gov/consolidated-screening-list
※ リストへの掲載や規制対象化は、規制上の区分であって企業の是非を判断するものではありません。本記事の制度内容は2026年8月2日時点で確認した各国政府の一次情報に基づきます。期限・内容は延長や変更がありえます。実際の判断は当局の最新公表を正とし、貴社の輸出管理責任者による確認を経てください。






