みなし輸出管理の基礎:技術提供における規制と実務対応

TIMEWELL編集部2026-02-01

みなし輸出管理とは

みなし輸出管理とは、日本国内において非居住者に対して規制対象の技術を提供する場合に、外為法第25条第1項に基づき経済産業大臣の事前許可を求める制度です。

物理的に貨物を国外に送り出す「輸出」とは異なり、技術情報の提供を「輸出とみなす」ことからこの名称が使われています。図面の手渡し、口頭での技術指導、メールでの技術データ送信など、提供の形態は問いません。

なぜ技術提供を規制するのか

大量破壊兵器や通常兵器の開発には、物資だけでなく製造技術やノウハウが不可欠です。たとえば、高性能な工作機械を輸出規制の対象にしても、その設計図面や製造技術が流出すれば規制の意味がなくなります。

そのため、貨物の輸出管理(輸出貿易管理令)と技術の提供管理(外国為替令)は車の両輪として運用されています。

規制の対象となる「技術」

みなし輸出管理の対象は、外国為替令別表に掲げられた技術です。具体的には、リスト規制の15項目に対応する技術が該当します。

対象となる技術提供の形態は多岐にわたります。

提供形態 具体例
有形媒体での提供 紙の図面、USB、CD-ROM
電子的な提供 メール添付、クラウド共有、FAX
口頭での提供 技術指導、講義、電話での説明
視覚的な提供 工場見学、実験への立ち会い

「技術」には設計図、製造マニュアル、仕様書だけでなく、技術的な助言やトレーニングも含まれます。一方、製品カタログや公知の学術論文など、誰でも入手可能な情報は対象外です。

2022年5月施行「みなし輸出管理の明確化」

改正の背景

従来のみなし輸出管理は、技術提供の相手が「非居住者」かどうかで判断していました。しかし、日本国内に居住する外国人研究者や留学生に対する技術提供については、形式上は「居住者」同士のやり取りとなり、規制の対象外となるケースがありました。

この抜け穴を塞ぐため、2022年5月1日に役務通達が改正され、「特定類型」に該当する居住者への技術提供も許可の対象となりました。

特定類型の3分類

特定類型とは、居住者であっても外国政府等の強い影響下にあり、実質的に非居住者と同等とみなされる者を指します。

特定類型(1)契約に基づく指揮命令関係

外国政府、外国法人、または外国の大学と雇用契約や委任契約を締結し、その指揮命令に服する者、またはそれらに善管注意義務を負う者です。外国企業の駐在員や外国政府機関の委託を受けた研究者が典型例です。

特定類型(2)経済的利益の受領

外国政府、外国法人等から年間所得の25%以上に相当する経済的利益を受けている、または受けることを約している者です。外国政府系の奨学金を受給する留学生などが該当する可能性があります。

特定類型(3)外国政府等の指示下での行動

日本国内において、外国政府等の指示の下で行動する者です。

該当しないケース

以下の場合は特定類型に該当しません。

  • 日本企業に雇用され、その指揮命令下にある外国籍社員
  • 日本の大学に正規入学し、日本の奨学金のみを受給する留学生
  • 外国法人との取引があっても、指揮命令関係にない者

大学・研究機関での対応

みなし輸出管理は、大学や研究機関にとって身近な問題です。外国人研究者の受け入れ、留学生への技術指導、国際共同研究など、日常的に技術提供が発生するためです。

大学が取るべき対応

  1. 受け入れ時の確認: 外国人研究者や留学生の受け入れ時に、特定類型への該当性を確認する仕組みを整備する
  2. 研究テーマの審査: 規制対象技術を扱う研究に外国人が参加する場合、事前に該非判定を行う
  3. 教職員への周知: みなし輸出管理の対象と手続きについて定期的に研修を実施する
  4. 記録の保管: 技術提供の記録と該非判定の結果を文書で保管する

企業での実務対応

外国籍社員への技術開示

外国籍の従業員であっても、日本企業の指揮命令下にある場合は原則として特定類型に該当しません。ただし、別途外国政府等との契約関係がある場合は確認が必要です。

海外グループ会社との技術交流

海外の子会社やグループ会社への技術提供は、みなし輸出ではなく通常の「役務取引」として外為法の規制対象です。グループ内であっても、規制対象技術の提供には許可が必要となります。

国際会議・展示会での対応

学会発表や展示会で技術情報を開示する場合、その内容が規制対象技術に該当し、かつ特定の非居住者を対象とした提供であれば、許可が必要です。不特定多数に向けた一般的な発表は「公知の技術」として対象外となります。

違反した場合のリスク

みなし輸出管理に違反した場合も、貨物の不正輸出と同様に外為法上の罰則が適用されます。

  • 刑事罰: 10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金(法人は10億円以下)
  • 行政制裁: 最長3年間の技術提供の禁止

「国内でのやり取りだから規制対象外」という認識は誤りです。日本国内であっても、非居住者や特定類型に該当する者への技術提供は規制対象となります。

該非判定の効率化

みなし輸出管理では、提供する技術の該非判定に加え、提供先の相手方の属性確認も必要です。これらの確認作業は、特に研究機関や技術者が多い企業では大きな負担となります。

EX-Checkは、技術の該非判定と需要者確認をAIで支援するツールです。提供しようとする技術の内容と相手方の情報を入力すると、規制対象への該当性を自動判定します。経済産業省の基準に準拠しているため、判定結果をそのまま社内記録として活用できます。

まとめ

  • みなし輸出管理は、国内での技術提供を「輸出とみなして」規制する制度
  • 2022年5月の明確化により、特定類型に該当する居住者への技術提供も許可対象に
  • 特定類型は(1)契約に基づく指揮命令関係、(2)経済的利益の受領、(3)外国政府等の指示下での行動の3分類
  • 大学・研究機関では受け入れ時の確認体制の整備が重要
  • 企業では外国籍社員の属性確認や海外グループ会社との技術交流に注意が必要