シッピングインストラクション(S/I)とは|船積依頼書の役割・記載項目・提出先を解説

TIMEWELL編集部2026-07-19
シッピングインストラクション(S/I)とは|船積依頼書の役割・記載項目・提出先を解説

輸出の実務に入りたての頃、インボイスやパッキングリストはなんとか用意できても、フォワーダーから「シッピングインストラクションを送ってください」と言われて手が止まる、という相談をよく受けます。船積みに関わる書類なのに、船会社が作ってくれるものなのか、それとも自分たちで書くものなのか、そこからして曖昧なまま進めてしまいがちです。名前だけ聞くと難しそうですが、正体をつかめば怖い書類ではありません。

この記事では、シッピングインストラクション(S/I、船積依頼書)が誰から誰への、何のための書類なのかを整理し、記載項目、提出する相手とタイミング、B/L(船荷証券)との関係、そして輸出管理でつまずきやすい点までを、商法や関税法の条文を添えて一通りたどれるようにまとめました。

シッピングインストラクション(S/I)の全体像 早見表

まず、輸出手配で登場する主な書類とS/Iの位置関係を整理します。誰が作り、どこへ出し、何のための書類なのかを並べると、S/Iの役割がはっきりします。

書類 作成者 主な提出先 役割 法的な位置づけ
S/I(船積依頼書) 輸出者(荷送人) 船会社・フォワーダー・通関業者 B/LやWaybillを作るための記載内容の指示 法定様式なし。商慣習上の書類(内容は商法759条の荷送人の通知に相当)
インボイス(仕入書) 輸出者 通関業者・税関・輸入者 品名・数量・価格を示す取引明細兼請求書 関税法68条で提出を求められる書類
パッキングリスト(包装明細書) 輸出者 通関業者・税関 梱包単位の個数・重量・容積を示す明細 インボイスを補完する書類(関税法68条)
B/L(船荷証券) 船会社・フォワーダー 輸出者から銀行経由で輸入者へ 運送契約・貨物の受取・引渡請求権を表す有価証券 商法757条・758条(記載事項)等

表のとおり、S/Iは輸出者側が作る書類で、B/Lは船会社側が作る書類です。ここが最初のつまずきどころなので、先に押さえておいてください。自社の取引で確認すべき書類や法令に抜けがないか気になる方は、輸出管理コンプライアンス診断を先に回してみると、弱点にざっと当たりがつきます。

シッピングインストラクション(S/I)とは

シッピングインストラクションは、日本語では船積依頼書、あるいは船積指示書と呼ばれます。輸出者、つまり荷送人が、船会社やフォワーダー、通関業者に対して、B/L(船荷証券)やWaybill、航空貨物であればAWB(航空運送状)を作成するときに記載してほしい内容を指定するための書類です。ポイントは作成者で、S/Iは船会社が作ってくれる書類ではなく、輸出者の側が作って提出するものだという点にあります。

役割は「運送書類を作るための指示書」です。輸出者がS/Iに品名や数量、荷受人などを書いて渡すと、その内容がフォワーダーを経由して船会社に伝わり、B/LやWaybillへ転記されていきます。言い換えると、S/Iに書いた内容がそのまま船会社側の書類の下敷きになるわけです。だからこそ、S/Iの正確さがそのまま運送書類の正確さに直結します。

JETROの貿易・投資相談Q&Aでも、通関業者に輸出通関を依頼する際の必要書類として、仕入書(インボイス)、包装明細書(パッキングリスト)、船積依頼書(Shipping Instructions)、委任状の4点が挙げられています。S/Iの役割については、通関業者が船荷証券(B/L)や航空運送状(AWB)を作成するための情報として、記載すべき内容を指定するものだと説明されています。教科書的な定義ではなく、実務の現場で必要書類として位置づけられている書類だということです。

S/Iの役割:B/L(船荷証券)作成の指示書

S/Iの法的な性格を理解するには、B/L側の条文を見るのが早道です。B/L(船荷証券)については、商法(明治32年法律第48号)に規定があります。商法第758条は、船荷証券に記載すべき事項を第1号から第12号まで定め、運送人または船長がこれに署名し、または記名押印しなければならないとしています。貨物を受け取った段階で発行する受取船荷証券の場合は、第7号と第8号を除いた事項を記載します。

具体的な記載事項は次のとおりです。S/Iに書き込む欄の多くは、この各号に対応しています。

記載事項
第1号 運送品の種類
第2号 容積若しくは重量又は包若しくは個数及び記号
第3号 外部から認められる運送品の状態
第4号 荷送人又は傭船者の氏名又は名称
第5号 荷受人の氏名又は名称
第6号 運送人の氏名又は名称
第7号 船舶の名称
第8号 船積港及び船積みの年月日
第9号 陸揚港
第10号 運送賃
第11号 数通の船荷証券を作成したときはその数
第12号 作成地及び作成の年月日

S/Iの法的な位置づけの中核になるのが、商法第759条です。第1項は、船荷証券の記載事項のうち運送品の種類、および容積・重量・包数・記号に関する事項について、荷送人または傭船者から書面または電磁的方法による通知があったときは、その通知に従って記載しなければならないと定めています。つまり、貨物の中身にあたる部分は船会社が勝手に決めるのではなく、荷送人の通知どおりに書く義務があるということです。その代わり第2項で、荷送人または傭船者は、通知が正確でなかったことによって生じた損害を運送人に賠償する責任を負うとされています。正確に伝える責任は荷送人側にある、という建て付けです。

実務でこの「荷送人の通知」を具体化するのがS/Iだと整理できます。ただし注意しておくと、条文自体に「シッピングインストラクション」や「S/I」という語は登場しません。S/Iがこの通知の役割を果たすという理解であって、両者が法的に同一の書類だと定めた条文や通達が確認できているわけではありません。そのうえでも、貨物情報の正確性の責任が荷送人にあるという条文の考え方は、S/Iを丁寧に書くべき理由をよく説明してくれます。

なお、船荷証券に関する商法の規定は、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律(平成30年法律第29号、2018年5月25日公布、2019年4月1日施行)によって、約120年ぶりに本格的に見直されました。この改正で、それまでの片仮名文語体から平仮名口語体へと条文が現代化されています。外航の海上運送には、特別法である国際海上物品運送法(昭和32年法律第172号)もあわせて適用されます。ちなみにB/Lそのものの交付については商法第757条に定めがあり、運送人は荷送人などの請求により船荷証券を交付する義務を負います。

S/Iの記載項目

S/Iには国が定めた法定様式がありません。船会社やフォワーダーが指定する書式を使うことが多く、様式によって欄の並びや呼び方に差があります。ここで挙げるのは、あくまで実務でよく見かける一般的な項目です。法令で決まった項目一覧ではない点だけ、頭の隅に置いておいてください。

多くのS/Iには、荷送人(Shipper)、荷受人(Consignee)、着荷通知先(Notify Party)を記載する欄があります。荷受人はB/Lの権利者に直結する重要な情報で、着荷通知先は貨物が着いたときに連絡する相手です。輸送手段の情報としては、本船名と航海番号(VesselとVoyage)、船積港(Port of Loading)、荷揚港(Port of Discharge)、船会社名やBooking No.を書きます。

貨物そのものについては、貨物明細として品名(Description)、数量、重量(Weight)、容積(Measurement)を記載し、あわせて荷印および個数(Marks and Numbers)を書きます。この部分が、先ほどの商法759条でいう運送品の種類や容積・重量・包数・記号に対応する箇所です。さらに、Original B/Lを何通発行するか、運賃支払方法をPrepaid(元払い)にするかCollect(着払い)にするか、発行地や支払地といった条件も指定します。信用状(L/C)取引では、これらの記載がL/Cの条件どおりでないと後で不一致になるため、条件を突き合わせながら埋めていくことになります。

S/Iを誰に、いつ提出するか

提出する相手は、実務上は輸出通関を依頼するフォワーダー(通関業者)です。船積み手配のタイミングで、インボイスやパッキングリストと一緒にS/Iを渡します。渡したS/Iの内容は通関業者を通じて船会社や航空会社に伝わり、そこでB/LやAWBに転記されていきます。輸出者が船会社と直接やりとりするより、フォワーダーがハブになって書類を回す形が一般的です。

前提として、通関業者に通関を任せるには委任状が必要です。これは通関業法(昭和42年法律第122号)第22条第1項、および通関業法施行令第8条第2項にもとづくもので、JETROの必要書類4点のうちの1つでもあります。実務の流れとしては、荷主または乙仲がL/Cなどの条件に従ってS/Iを作り、そのS/Iの内容どおりに船会社やフォワーダーがB/Lを作成する、という順序になります。輸出通関の一連の書類がどう連動するのかを俯瞰したい方は、輸出通関で必要な書類のチェックリストもあわせて読むと、S/Iが全体のどこに位置するのかがつかみやすくなります。

輸出通関書類の中でのS/Iの位置づけ

S/Iは船積みの指示書ですが、輸出そのものは別のルートで進みます。輸出通関は関税法(昭和29年法律第61号)第67条にもとづき、輸出申告を行って税関の輸出許可を受けることで成立します。申告にあたっては、同法第68条により、税関は仕入書その他、申告内容の確認に必要な書類の提出を求めることができます。インボイスの提出根拠はここにあります。加えて、同法第70条は他法令の証明や確認を定めており、外為法や他省庁の許可が必要な貨物は、その手続きを了したことを示さないと許可が下りません。

現在の輸出申告は、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)による電子申告が一般的です。紙のS/Iを起点にしつつ、申告そのものはシステム上で流れていきます。税関のカスタムスアンサー1107は、申告の際に必要な書類として仕入書(インボイス)、包装明細書、船荷証券(B/L)などの運送書類、保険契約書、領収書などを挙げ、その根拠として関税法67条・68条・70条などを示しています。ここで整理しておくと、S/Iは税関へ直接出す申告書類というより、B/Lなど運送書類を成立させるための輸出者側の指示書という位置づけです。税関に出す書類群と、船会社に出す指示書は、役割が違うのだと分けて考えると混乱しません。

S/Iでよくあるミスと輸出管理上の注意点

最も多いミスは、S/Iの記載間違いです。S/Iの内容どおりにB/Lが作られる以上、S/Iを間違えれば誤った内容のB/Lが発行されます。荷受人や品名、数量の取り違えは、そのまま貨物の引き渡しや代金回収に影響します。発行後でも訂正はできますが、多くの船会社で訂正料(Correction FeeやAmendment Fee)がかかります。L/C取引なら記載不一致、いわゆるディスクレの原因にもなりかねません。だからこそ、S/Iを出す前に輸入者と内容をすり合わせておくのが現場の定石になっています。

もう一つ、輸出管理の観点で強調しておきたい注意点があります。S/Iはあくまで運送書類を作るための書類であって、輸出してよいかどうかを判断する書類ではない、という点です。S/Iを出せば輸出が通る、という感覚で進めてしまうと、外為法にもとづく該非判定や取引審査が抜け落ちます。S/Iに書く品名・仕向地・荷受人は、リスト規制やキャッチオール規制、需要者・用途・仕向地の確認といった審査に直結する情報です。順序としては、S/Iを書く前に該非判定と取引審査を終えておくのが本来の形です。運送手配と輸出可否の判断を、同じ流れの中でつい一緒くたにしてしまうところに落とし穴があります。

よくある誤解

現場でよく耳にする思い込みを、いくつか整理しておきます。

「S/Iは船会社が作成する書類だ」というのは誤りです。作るのは輸出者(荷送人)で、船会社はそのS/Iを基にB/Lを作ります。作成者の向きを取り違えると、待っていても書類が出てこないという事態になります。

「S/Iとインボイスは同じものだ」というのも違います。S/Iは運送書類であるB/Lを作るための指示書、インボイスは取引の明細兼請求書で、目的がまったく別です。項目が一部重なるだけで、役割は交換できません。

「S/Iには国が定めた法定様式がある」というのも正しくありません。法定様式はなく、船会社やフォワーダーが指定する書式を使います。記載事項の中心は、最終的に商法758条のB/L記載事項へ転記されるものです。

「S/Iを出せば輸出できる」という理解も危険です。S/Iは運送手配の書類であって、外為法にもとづく該非判定・輸出許可や、関税法にもとづく輸出申告を代替するものではありません。

「B/Lの記載内容は船会社が自由に決める」というのも実態とずれています。運送品の種類や容積・重量などは、商法759条1項により荷送人の通知、実務上のS/Iに従って記載する義務があります。中身の情報の主導権は荷送人側にあるわけです。

よくある質問

S/Iとインボイス(仕入書)は何が違いますか。

目的が異なります。インボイスは品名・数量・価格を示す取引の明細兼請求書で、B/Lを作るための書類ではありません。S/IはB/LやWaybillの記載内容を船会社・フォワーダーに指示するための書類です。記載項目が一部重なるため、実務では両方を通関業者に提出します。

S/Iは誰に、いつ提出しますか。

実務では、輸出通関を依頼するフォワーダー(通関業者)に、インボイス・パッキングリストと一緒に船積み手配のタイミングで提出します。内容は通関業者を経由して船会社や航空会社に伝わり、B/LやAWBに転記されます。JETROも輸出通関を依頼する際の必要書類の一つとして船積依頼書(S/I)を挙げています。

S/Iに決まった法定フォーマットはありますか。

ありません。国が定めた法定様式は存在せず、船会社やフォワーダーが指定する書式を使うのが一般的です。記載事項は最終的に、商法758条が定めるB/Lの記載事項へ転記されるものが中心になります。

S/Iの記載を間違えるとどうなりますか。

S/Iの内容どおりにB/Lが作成されるため、誤った内容のB/Lが発行されます。発行後でも訂正は可能ですが、多くの船会社で訂正料(Correction FeeやAmendment Fee)が発生します。信用状(L/C)取引では記載不一致(ディスクレ)の原因にもなるため、輸入者と事前に内容確認を行うのが実務の定石です。

S/Iに輸出管理(該非判定・輸出許可)の記載は必要ですか。

S/I自体は運送書類であるB/Lなどを作るための書類で、輸出許可の要否を判断する書類ではありません。ただしS/Iに書く品名・仕向地・荷受人は、リスト規制やキャッチオール規制、取引審査に直結します。S/Iを作る前に、外為法にもとづく該非判定と取引審査を済ませておくことが重要です。

S/Iの前段にある該非判定をどう回すか

ここまで見てきたとおり、S/Iは船積みの指示書として大切ですが、その前段には外為法にもとづく該非判定という別の関門があります。品名や仕向地をS/Iに書く前に、その貨物や技術が輸出令別表第1や貨物等省令の各条文に該当するかを確認しておかないと、運送手配だけ進んで輸出可否の判断が抜ける、という事故が起きます。担当者が一人で該非判定から書類作成まで抱えていると、どこかで確認が薄くなりがちです。

該非判定の負荷は仕組みで下げられます。TIMEWELLのTRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK)は、輸出管理の該非判定を支援する輸出管理AIエージェントです。製品の仕様をもとに、輸出令別表第1や貨物等省令の各条文との照合を支援し、判定の根拠とあわせて結果を提示します。経済産業省の基準に準拠し、多言語にも対応しています。定型化できる該非判定を先に効率化しておけば、S/Iやインボイスの作成といった書類仕事に人手を回しやすくなり、全体の抜けも減っていきます。

自社の輸出フローにS/Iや該非判定をどう組み込めばよいか、取引に即して相談したい方は輸出管理の個別相談をご利用ください。

まとめ

シッピングインストラクション(S/I、船積依頼書)は、輸出者が船会社やフォワーダーに対して、B/LやWaybillの記載内容を指示するための書類です。作るのは輸出者側で、船会社が作るのはあくまでB/L。この作成者の向きさえ間違えなければ、S/Iはそれほど難しい書類ではありません。次の一歩としては、自社が普段使っているフォワーダー指定のS/I様式を一度手元に開き、どの欄が商法758条・759条のどの事項に対応しているかを突き合わせてみることを勧めます。欄の意味がわかると、記載ミスは目に見えて減ります。

最後に、順序だけは崩さないでください。該非判定と取引審査を済ませてから、S/Iを書いて船積みを手配する。運送手配の書類であるS/Iは、外為法の輸出許可や関税法の輸出申告を代わってはくれません。法定様式がない書類だからこそ、書く前提となる判断を丁寧に固めておくことが、遠回りのようで一番の近道です。細かい記載条件は船会社の様式や相手国の要求で動くので、最終的には自社のフォワーダーと取引先に確認してください。

参考文献(一次情報)