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自動車部品メーカーの輸出管理|EV化・中国サプライチェーン・みなし輸出の実務対策【2026年版】

2026-04-24濱本 隆太

EV化で増えたパワー半導体・ネオジム磁石・リチウム電池など、自動車部品メーカーが押さえるべき2026年の輸出管理実務を、デンソー・アイシン・ニデック・住友電工などの最新動向を交えて解説します。

自動車部品メーカーの輸出管理|EV化・中国サプライチェーン・みなし輸出の実務対策【2026年版】
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。自動車業界のお客様とお話ししていると、2025年以降で急に話題が変わったテーマがあります。輸出管理です。以前は「エンジン関係のごく一部の特殊材料だけ気にすればよい」というニュアンスだったのが、EV化と中国レアアース規制をきっかけに、会話の熱量がまったく違うものになりました。

きっかけは明確です。2025年4月に中国がテルビウムやジスプロシウムを含む7種のレアアース関連品目に輸出管理をかけ、同じ年の10月には商務部公告2025年第61号で域外適用まで拡大したこと。さらに2026年3月、デンソーは日本経済新聞の取材に対し「インドで需給が逼迫している」と警戒感を口にしました[^1]。自動車部品業界の輸出管理は、法務や品証の片隅にあった地味な業務から、経営リスクそのものに昇格したと感じています。

この記事では、自動車部品メーカーが2026年時点で押さえておきたい輸出管理の論点を、EV化、中国サプライチェーン、Tier1に求められる体制、そして現場で使える自動化ツールの観点で整理します。

自動車部品業界で輸出管理が「経営リスク」になった理由

かつて自動車の輸出管理といえば、ミリタリー向けの特殊鋼、防弾関連、一部の電子戦部品といった「いかにも」という品目が中心でした。量産車両や汎用部品は、基本的にはキャッチオール規制の確認だけで済んでいた印象があります。ところがこの2、3年で潮目が変わりました。

変化を引き起こしたのは主に3つの要素です。1つ目はEV化で部品構成そのものが変わったこと。2つ目は米中対立と中国のレアアース規制で、調達側と輸出側の両方がリスクに晒されるようになったこと。3つ目はみなし輸出規制の厳格化と、経済産業省による経済安全保障アクションプラン再改訂です[^2]。

具体的な影響はすでに出ています。アイシンは米国の追加関税で2026年3月期に営業利益200億円の減益要因になると試算し、デンソーは原材料の代替調達を急いでいます[^3]。両社ともトヨタグループの中核で、国内3万人規模の雇用を抱える大企業です。その大企業ですら、半年単位で調達・輸出の構造見直しを迫られている。これをTier2、Tier3で止められるかというと、正直なところ非常に厳しいというのが現場感覚です。

加えて見落とされがちなのが、中国側の制裁措置の拡大です。2026年2月には中国商務省が日本の40の企業・団体を対象に輸出規制を発表し、その中には防衛関連のほかに自動車関連サプライヤーも含まれていました。自動車は純粋な民生品のつもりでも、中国から見れば安全保障の対象になる。この感覚の差を埋める仕組みを持っているかどうかが、今の輸出管理の分水嶺です。

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EV化で増えた輸出管理対象品目はこの3つ

EV化で新たに管理対象として意識すべき品目は、大きく分けるとパワー半導体、高性能磁石、リチウムイオン電池の3つに集約されます。いずれもエンジン車時代はほぼ無縁だった領域で、部品点数の割合も、金額の割合も、この3つで一気に跳ね上がりました。

パワー半導体はその筆頭です。SiC(炭化ケイ素)を使った次世代品は、ロームがトヨタ向けに採用決定し、富士電機は2026年度に2022年度比で生産能力を50倍へ引き上げる計画です。2026年3月にはローム、東芝デバイス&ストレージ、三菱電機の3社がパワーデバイス事業の統合で基本合意し、同月にデンソーがロームへの出資を提案しました。業界再編のスピードが速く、どの会社がどの品目を持っているかが半年単位で変わります。輸出管理上は、動作電圧や耐熱温度の一部スペックがリスト規制の閾値に触れるため、型式変更のたびに該非判定をやり直す必要があります。

2つ目の高性能磁石は、さらに地政学リスクが濃い領域です。EVの駆動モーターに使われるネオジム焼結磁石には、テルビウムやジスプロシウムといった重希土類が補助材料として使われます。ところが2025年4月、中国はこの7種のレアアース関連品目を輸出管理の対象にしました[^4]。同じ年の商務部公告第61号では、中国由来のレアアースを使った域外の製品にも規制を及ぼす、いわゆる域外適用の枠組みまで導入されています[^5]。

対策として動き出している会社もあります。トヨタは「省ネオジム耐熱磁石」を発表し、テルビウムとジスプロシウムを使わずに耐熱性を確保する技術を開発しました。プロテリアル(旧日立金属)は2025年、EV駆動モーター用に重希土類フリーのネオジム焼結磁石の量産化にこぎつけています。ただ、置き換えには2、3年単位の時間がかかります。その間は既存のサプライチェーンで乗り切る必要があるため、結局、輸出管理と在庫戦略の両輪で対応するしかありません。

3つ目のリチウムイオン電池は、材料側の制約がとくに厄介です。正極材の前駆体やセパレータの一部は、中国勢のシェアが7割以上。電池そのものはBYDやCATLが世界の供給の大半を握り、CATLは2024年時点で世界シェア首位、BYDは17.2%でトヨタ・スズキ・テスラに供給しています。部品メーカーの側から見れば、中国企業を「調達先」として使いつつ、同時に「エンドユーザー」としての規制対象にもなり得るという、二重性のある関係になります。

中国サプライチェーンの直撃と、日本メーカーの対応の現在地

自動車部品の対中依存は、素材と完成品の両面で進みました。日本自動車工業会の集計では、2024年時点で自動車部品の対中輸入比率は40%を超えています。とくに問題になっているのが、レアアース、一部の特殊鋼、電池材料、パワー半導体用ウェハーの4領域です。

中国のレアアース規制はここにそのまま効きます。デンソーはインド市場での需給逼迫を警戒し、アイシンは米国関税と合わせてダブルパンチの状態です[^3]。住友電工はパワー半導体用SiC基板で、ブリヂストンはタイヤのEV対応品で、日本電産(ニデック)は車載用モーターのE-Axleで、それぞれ中国外の代替拠点への移管を進めていますが、数量ベースでは完全移管には程遠いのが実情です。

一方で、中国側のEVサプライチェーンは日本市場そのものにも入ってきています。BYDは2025年にEVとガソリン車の合計輸出で中国を世界首位に押し上げた立役者で、吉利汽車、上海汽車(SAIC)、奇瑞(Chery)と合わせて、世界販売トップ10に複数の中国ブランドがランクインする見通しです。日本のサプライヤーにとっては、彼らが顧客にもなり、競合にもなり、時には規制対象にもなる。このねじれを整理しないまま取引を続けると、どこかで該非判定や取引先スクリーニングがショートしてしまいます。

中国依存を減らす動きそのものは出ていて、中国の対日輸出規制、日本企業が直面する新たな現実とはで触れたように、2026年2月の中国商務省による40社指定の際は、自動車・重工業関連も影響を受けました。経済産業省も2025年4月の経済安全保障アクションプラン再改訂で、自動車部品を含む重要物資のサプライチェーン強靭化を明記しています[^2]。ここで聞こえがよいのは、政府が特定重要物資に補助金を出しますという話ですが、現場で効いてくるのは、むしろ該非判定の粒度と、みなし輸出対応の確実さです。

Tier1に求められる輸出管理体制とOEMからの視線

トヨタ、日産、ホンダといった日本の完成車メーカーは、Tier1に対してここ数年で輸出管理の要求水準を明確に引き上げてきました。形式上は「コンプライアンス・プログラム(CP)を整備すること」という一行で済みますが、中身はかなり具体的です。

典型的には、該非判定書の保管と提示、取引先スクリーニング、エンドユース確認、みなし輸出対応、監査ログの保管、年次の内部監査、経営者のコミットメント文書、この7点セットが求められます。最近はここに「経済安全保障対応」の独立項目が加わり、中国・ロシア・イラン等の特定国向け出荷の有無や、懸念用途のエビデンス管理の仕組みが年次アセスメントで確認されます。

Tier1の側は、これをTier2、Tier3に要求する役回りにもなります。たとえば住友電工がワイヤーハーネスを組み立てる際、被覆材の一部樹脂がキャッチオール規制に引っかかるおそれがある品目であれば、その樹脂を供給するTier2にも該非判定書を求めるのが普通です。ところが中小のTier2、Tier3の多くは、自前で輸出管理担当者を置けていません。結果として、Tier1が「事実上の審査代行」をしているのが現状です。

ここで現実問題として効いてくるのが、みなし輸出規制と外国籍人材の実務対策で解説したみなし輸出の論点です。自動車部品メーカーの研究開発拠点には、中国・インド・ベトナム出身のエンジニアが数多くいます。設計図、CADデータ、試作ノウハウを社内で共有すること自体が、場合によっては輸出許可の対象になる。この点はホンダや日産の最新のサプライヤーアセスメントでは必ず確認されますし、トヨタの取引先モニタリングでも項目化が進んでいます。

みなし輸出は技術流出リスクと直結します。レアアース・重要鉱物の対中依存から脱却するために牧野フライス買収阻止から読み解く外為法の産業保護といった個別論点でも、Tier1に求められる動きは「守る」だけでなく「他社の動きを先読みして備える」フェーズに入っています。どこまで準備するかで、受注の可否が決まるようになってきました。

TRAFEEDで何を自動化すれば現場は回るか

ここまで書いて、読者の方の多くが思うはずです。「言っていることは分かるが、現場の工数ではとても回らない」と。まさにこの感覚を前提に、私たちTIMEWELLが開発しているのが輸出管理AIエージェントのTRAFEEDです。

TRAFEEDが得意にしているのは、該非判定の一次ドラフト作成、取引先スクリーニング、エンドユース質問票の自動送付と回収、みなし輸出チェック、監査ログの自動保管の5つです。経済産業省の外為法別表第1、米国EAR、EUデュアルユース規則の最新版を学習しており、型式番号とスペックシートを投入すると、該当項番の候補と判定根拠を提案してくれます。判定の最終責任は人間の管理者にありますが、8割の時間はドラフト作成に消えていたはずなので、そこを消すだけで効きます。

実運用で効果が出やすいのは、Tier2、Tier3から集める該非判定書の一次レビューです。紙やPDFで届く判定書をTRAFEEDに読み込ませると、型式のゆらぎや判定根拠の抜けを拾って、質問状のドラフトまで作ります。このフローを導入したある自動車部品メーカーでは、年間1万件規模の判定書処理のうち、人間が確認する工数を6割ほど削れました。

もう1つ、意外と効くのが「取引先モニタリング」です。BIS Entity List、EU制裁リスト、経済産業省の外国ユーザーリスト、OFAC SDN、このあたりを毎週差分チェックするのは、人手では現実的ではありません。TRAFEEDは差分を検知した瞬間に、取引先マスタと突き合わせて「このサプライヤーが新たに該当しました」と通知します。地政学の動きが速い今、この即応性がとくに重要です。

ツール導入で解決できるのはあくまで運用の一部です。経営としてのスタンス、OEMへの説明責任、従業員への教育、この3点は必ず人の仕事として残ります。そこは割り切って、自動化できる部分は思い切り自動化する。私はこの役割分担が、2026年以降の自動車部品メーカーの輸出管理の現実解だと考えています。

今日から動ける3つのアクション

最後に、明日からの動きに落とし込める3つのアクションで締めます。

1つ目は、自社で取り扱う部品のうち、パワー半導体、ネオジム系磁石、リチウム電池関連、高耐熱樹脂、SiC基板のどれかに該当するものを棚卸しすることです。棚卸しができていない状態では、該非判定の粒度が粗くなり、OEMからの監査で必ず指摘されます。

2つ目は、研究開発拠点の外国籍人材リストを人事と輸出管理担当で共有することです。みなし輸出は2022年の改正以降、特定類型の居住者まで対象が広がっています。名簿レベルで把握していないと、そもそも対応が始まりません。

3つ目は、取引先マスタと制裁リストのマッチングを自動化する仕組みを入れることです。TRAFEEDでも、他社ツールでも構いません。人手の週次チェックに頼るのは、正直なところ、もう限界です。

2026年は、自動車部品メーカーにとって輸出管理が「やっておくと褒められる」ものから「やっていないと失注する」ものに変わる年になります。この記事が、現場で動き出すきっかけになれば嬉しいです。


参考文献

[^1]: 日本経済新聞「中国レアアース規制、車部品に影響 デンソー『インドの需給逼迫』」2026年3月 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC114GK0R10C26A3000000/

[^2]: 経済産業省「経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプラン再改訂にむけて」2025年4月 https://www.meti.go.jp/policy/economy/economic_security/06-03.pdf

[^3]: 日経xTECH「アイシン『転嫁リスク』デンソー様子見、車部品関税13社方針」 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/at/18/00006/00791/

[^4]: ジェトロ「米自動車業界団体、中国のレアアース輸出規制に強い危機感」2025年6月 https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/06/4ea2f287b93c611a.html

[^5]: 赤坂国際法律会計事務所「商務部公告2025年第61号:対外関連レアアース物項への輸出管理実施に関する決定」 https://ailaw.co.jp/news/post16895/

[^6]: トヨタ自動車「ネオジム(Nd)使用量を大幅に削減したモーター用の新型磁石『省ネオジム耐熱磁石』を開発」 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/21137873.html

[^7]: 経済産業省「安全保障の輸出管理への入門 令和7年度」 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/seminer/shiryo/anpo_level1.pdf

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