株式会社TIMEWELLの濱本隆太です。
「取引先から項目別対比表を求められたが、書き方が分からない」「最新版はどれで、どこで買えるのか」「エクセルの様式は無料で落とせないのか」。該非判定の実務相談で受ける質問のうち、この3つはほぼ毎回登場します。そして書き方の相談で必ずつまずくのが、判定欄に並ぶ【 】[ ]《 》〈 〉という4種類の括弧の意味です。
しかも2026年2月14日、輸出貿易管理令と関連省令の改正が施行され、FPGA(フィールドプログラマブルロジックデバイス)を組み込んだ装置などが新たに規制対象に加わりました1。CISTEC(一般財団法人安全保障貿易情報センター)の項目別対比表も、この改正に対応した「2026年2月版」に改訂されています2。旧版のまま該非判定を続けると、新設された項番の行がそもそも様式に存在しないため、判定漏れに直結します。
この記事は、項目別対比表の使いどころ、最新版の入手方法と価格、そしてCISTEC公式の記入要領に沿った判定欄の記号ルールと記入済みサンプルを、一次情報ベースで整理した実務ガイドです。とくに、これまでネット上の解説記事が「○は該当、×は非該当」と簡略化して済ませてきた判定欄の書き方を、CISTECが公開している記入要領の原文に沿って正確に立て直します。読み終えたときに、自社の判定フローのどこを直すべきかが具体的に見えている状態を目指します。
この記事の要点
- 項目別対比表は輸出令別表第1・外為令別表の全項目を網羅したCISTEC様式のチェックシート。該非判定書や非該当証明書の「根拠資料」にあたります
- 判定欄は【 】が最終判定、[ ]が部分判定、《 》が除外判定、〈 〉が除外の部分判定。○×-の意味も括弧ごとに読み分けます(CISTEC公式記入要領)
- 最新版は2026年2月14日施行の政省令改正に対応した「2026年2月版」。賛助会員4,400円・一般・大学会員8,800円(税込、2026年7月時点のCISTEC掲載価格)です
- 空フォームのエクセル様式は無料ダウンロードできません。CISTECが著作権を持ち、電子ファイルは該非判定コーナーで有償提供されています
様式の話に入る前に、自社の輸出管理体制そのものに不安がある方は、輸出管理体制の無料診断で現在地を確認しておくことをおすすめします。3分で終わり、この先の内容がぐっと自分ごとになります。
そのまま使える書式: 該非判定書・非該当証明書様式・項目別対比明細・キャッチオール確認シート・判定管理台帳を Word/Excel でまとめたセットを無料配布しています。 → 該非判定書・非該当証明書 記入ガイド+様式セット(2026年版)をダウンロード
項目別対比表・パラメータシート・該非判定書の違いと使い分け
まず、名前が似ていて混同しやすい3つの書類の関係を整理します。結論を早見表にまとめました。
| 観点 | 項目別対比表 | パラメータシート | 該非判定書 |
|---|---|---|---|
| 何の書類か | 輸出令別表第1・外為令別表の全項目を網羅したチェックシート(CISTEC様式) | 特定の製品分野に特化したスペック記入式チェックシート | 該非判定の結論を記録・提示する書類の総称 |
| カバー範囲 | 1項から15項までの全項目 | 工作機械・コンピュータ・通信など分野別 | 判定対象の貨物・技術ごとに1件 |
| 位置づけ | 判定の根拠資料 | 判定の根拠資料 | 対比表やパラメータシートを根拠に作る結論の書類 |
| 向いている場面 | パラメータシートがない品目、初めて判定する製品 | 自社製品の分野にシートが存在する場合 | 税関・取引先への提出、社内決裁 |
| 入手先 | CISTEC(有償) | CISTEC・JMC(有償) | 法定様式なし。自社様式で作成 |
ポイントは、項目別対比表とパラメータシートが「調べるための道具」であるのに対し、該非判定書や非該当証明書は「結論を伝える書類」だという役割の違いです。対比表やパラメータシートで規制リストとの照合を行い、その結果を該非判定書にまとめ、非該当であれば非該当証明書として取引先や税関に提示する。これが実務の標準形です。非該当証明書側の書き方と記入チェックリストは非該当証明書の書き方と記入例で詳しく解説しているので、結論書類の整え方はそちらを参照してください。
使い分けの考え方はシンプルです。パラメータシートは規制値と自社製品のスペックを左右に並べて記入できる構成なので、工作機械やコンピュータなど該当分野のシートが存在する製品なら、対比表より速く正確に照合できます。数値基準がずらりと並ぶ分野では、この「並べて比べる」構成が効きます。一方、パラメータシートが用意されていない品目や、そもそもどの項番に引っかかりそうか見当がつかない新製品では、全項目を網羅した項目別対比表で1項から15項まで面で確認するのが基本です。両者は競合ではなく、カバー範囲の広さと照合の速さのトレードオフだと捉えると迷いません。
実務でよく見るのは、初回判定では項目別対比表で全体を確認し、2回目以降のモデルチェンジや仕様変更ではパラメータシートで差分だけ管理する、という組み合わせ運用です。どちらの様式を使っても判定結果の有効性に差はないので、製品と社内体制に合わせて選んで問題ありません。ただしどちらを使う場合も、後述する「最新版かどうか」の確認だけは省略できません。様式が古いと、照合の土台になる規制リスト自体が古いことになるからです。
もう1つ、前提として押さえておきたいのは、どの様式を使おうと該非判定の主体は輸出者自身だという点です。経済産業省は法令の解釈は示してくれますが、個別の製品が規制に該当するかどうかの判定はしてくれません。対比表は「誰かが判定してくれる仕組み」ではなく、輸出者が自らの責任で判定した過程を、第三者が検証できる形で残すための道具です。この位置づけを理解しておくと、次に述べる記入のルールがなぜここまで細かいのかも腹落ちしやすくなります。
該非判定の属人化を、AIで解消する。
経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。
CISTEC項目別対比表の最新版・入手方法・エクセル様式の扱い【2026年2月版】
2026年7月時点でCISTECが頒布している最新版は、「輸出貿易管理令別表第1・外国為替令別表 項目別対比表2026年2月版」です。CISTECの販売ページに明記されているとおり、2026年2月14日施行の輸出貿易管理令の一部改正政令と関連省令改正に対応しています2。
CISTECの販売ページに掲載されている価格は次のとおりです。
| 購入区分 | 価格(税込) | 税抜 |
|---|---|---|
| 賛助会員 | 4,400円 | 4,000円 |
| 一般・大学会員 | 8,800円 | 8,000円 |
| Amazon経由 | 8,800円 | 8,000円 |
いずれも2026年7月時点の掲載価格です。改訂のたびに変わる可能性があるので、購入前にCISTECサイトで最新の価格と提供形態を確認してください。
ここで、検索でよく見かける「項目別対比表 エクセル」「無料 ダウンロード」という探し方について、はっきり書いておきます。空フォームのエクセル様式を無料でダウンロードすることはできません。 項目別対比表の著作権はCISTECが有しており、購入者が必要な頁をコピー機でコピーして記入し、通関や許可申請に使うのは問題ありませんが、CISTECの許諾なく項目別対比表をワードやエクセル、PDFに電子的に複製することは著作権法に違反します3。ネット上に出回っている様式の複製ファイルは、この点で危ういうえに、改正が反映されていない古い版であることも多く、判定漏れのもとになります。
では正規のルートはどこか。CISTECは電子ファイル(エクセル様式)を、公式サイトの「該非判定コーナー」で有償提供しています4。紙のコピー運用ではなくデジタルで回したい会社は、この該非判定コーナー経由で入手するのが唯一の正しい入り口です。
一方で、記入の練習や様式の読み方を学ぶための資料は無料で公開されています。同じ販売ページに、「対比表の説明と記入要領(PDF)」と「対比表記入サンプル(PDF)」が置かれていて、こちらは無料で入手できます3。判定欄の記号の意味や記入の作法は、後述するとおりこの記入要領がすべての出発点です。入手手順を整理すると次の5ステップになります。
- CISTEC公式サイトの書籍販売ページ(項目別対比表)を開く
- 自社が賛助会員かどうかを確認する(会員なら会員価格が適用されます)
- 紙の様式はCISTECの書籍購入手続きページから申し込む。急ぎならAmazon経由でも購入できます
- エクセルの電子ファイルが必要な場合は、CISTEC総合データベースの「該非判定コーナー」で有償提供されているものを利用する
- 同じ販売ページで無料公開されている「対比表の説明と記入要領」と「対比表記入サンプル」のPDFを入手し、記入前に必ず目を通す
ここで強調しておきたいのが、旧版を使い続けるリスクです。項目別対比表は2025年10月にキャッチオール規制改正対応の改訂版が出て5、2026年2月に政省令改正対応版が出るというペースで、この半年だけでも2回改訂されています。法令改正のたびに項番や省令条項の構成が動くため、旧版の様式では新しい規制項目の行そのものが存在しません。存在しない行はチェックのしようがなく、担当者がどれだけ丁寧に記入しても構造的に判定漏れが起こります。年間の改訂サイクルを考えると、判定業務がある会社は版管理のルール、つまり誰がいつ最新版を確認し社内の様式を差し替えるかを、あらかじめ決めておくべきです。
CISTECという組織の成り立ちや、賛助会員になるメリットの全体像はCISTECとは何か・入会メリット解説にまとめています。年に何件も判定がある会社なら、都度一般価格で購入するより会員になったほうが総コストは下がるはずです。
判定欄の記号ルールと記入の大原則【CISTEC記入要領準拠】
ここが、この記事でいちばん読んでほしい部分です。多くの解説が「○は該当、×は非該当、-は対象外」で片づけていますが、これは正確ではありません。CISTECの記入要領を読むと、判定欄は括弧の種類ごとに役割が違い、同じ○でも意味が変わります3。
判定欄には【 】[ ]《 》〈 〉の4種類の括弧があり、それぞれの欄に○×-のいずれかを記入します。役割を整理すると次のとおりです。
| 記号 | 名称 | 役割 |
|---|---|---|
| 【 】 | 最終判定欄 | [ ]《 》〈 〉の部分判定を総合的に検討し、最後に記入する。ここが○なら「該当」、×なら「非該当」 |
| [ ] | 部分判定欄 | 最終判定に至るための段階的な判定 |
| 《 》 | 除外判定欄 | 「〜を除く」という除外規定の判定。○が付くと同じ区切り記号の[ ]は通常×になる |
| 〈 〉 | 除外の部分判定欄 | 《 》の除外判定を導くための段階的な判定 |
記号そのものの意味も、括弧と合わせて理解する必要があります。○は法令の規定内容に適合する場合に記入しますが、【 】以外の○は、ただちに「該当」を意味しません。あくまで「この段階の条件には合致した」という中間の印です。×は法令の規定内容(数値や機能など)に適合しない、つまり非該当の場合。-は規定された内容と明らかに異なる、そもそも対象になり得ない場合に記入します。
「×」と「-」の違いは実務でよく混乱します。CISTECの記入要領は測定器の例で説明しています。判定対象がそもそも測定器でなければ[-]、測定器ではあるが数値や機能が規制値に届かなければ[×]です。似て見えますが、前者は土俵に乗っていない、後者は土俵に乗ったうえで基準に達していない、という違いです。
もう1つ、判定を左右するのが除外判定《 》の読み方です。条文に「ただし〜を除く」とある場合、その除外に当てはまるかを《 》で判定します。除外に当てはまって《 》が○になると、同じ区切り記号の部分判定[ ]は通常×になります3。除外規定に該当した時点で、その規制の枝からは外れるという読み方です。逆に言えば、除外条件を満たさない(《 》が×)なら、本体の条件で該非を判定し続けることになります。ここを取り違えると、除外されて非該当のはずの製品を該当と誤判定したり、その逆をやってしまいます。
条文中の「除く」には、記入要領が示す3つのパターンがあります。「他の貨物を除く」は別表第1の他項で判定するのでここでは判定しない、「(三)を除く」は同一項番の(三)で判定するのでここでは判定しない、「第5条第十号を除く」は貨物等省令第5条第十号を参照する、という具合です。除外だから即非該当、と短絡せず、どこで判定し直すのかまで追う必要があります。
条件のつながり方にも記号ルールがあります。区切り記号が「かつ」「及び」を表す場合はand条件で、その区切りの条件を全部満たして初めて該当に進みます。区切りが「又は」「いずれか」を表す場合はor条件で、どれか1つ当てはまれば該当に進みます。条文の「全てに該当」と「いずれかに該当」の読み分けは、この区切り記号に対応しています。
そして記入要領が繰り返し強調しているのが、記号だけで済ませてはいけないという原則です。対比表の記入欄には、単に○×-を書くのではなく、一般人が見て容易に該非が判断できる合理的な理由や数値を併記します。数値の規制なら原則として数値で答え、非該当や対象外とした場合は、他の記載から明らかな場合を除いて判定理由を書きます。税関や経済産業省の担当官が、記入内容を見ただけで「なぜこの判定になったか」を追えるようにする、というのが記入の目的です。○×だけがずらりと並んだ対比表は、たとえ結論が正しくても「本当に確認したのか」と疑われますし、監査で説明責任を果たせません。
項目別対比表の書き方と記入例【記入済みサンプルつき】
記号ルールを踏まえて、実際の書き方を6ステップに分けて説明し、記入済みサンプルのイメージを示します。
- 判定対象を特定する。 貨物か技術かをまず区別し、製品名・型番・リビジョンを確定します。装置本体だけでなく、付属する設計図・ソフトウェア・マニュアルは「技術」として別途判定が必要になる点に注意してください
- 様式の版を確認する。 手元の対比表が2026年2月版かどうかを確認します。旧版なら判定を始める前に差し替えます
- 候補項番を絞り込む。 1項から15項を順に眺める前に、経済産業省の「貨物・技術のマトリクス表」でキーワード検索し、関係しそうな項番に当たりをつけると効率が上がります6。マトリクス表の使い方は経産省マトリクス表の使い方ガイドを参照してください
- 省令条項とパラメータを照合する。 候補項番について、貨物等省令の条文にある規制値と自社製品の仕様を1つずつ突き合わせます7。「以下」と「未満」の違い、単位の換算ミスに要注意です
- 判定欄の記号を記入する。 前章のルールに沿って、部分判定[ ]、除外判定《 》を埋め、最後に最終判定【 】を記入します。記号の横には合理的な理由と数値を必ず書きます
- 総合判定と承認・記録。 全項目が非該当なら製品全体として「非該当」と判定結果欄に記入し、判定日・判定責任者を明記して記名押印のうえ社内承認を取り、根拠資料と一緒に保管します
では、記入が終わった対比表がどんな姿になるのか、全体像から見ていきます。FPGAを2個搭載した産業用画像処理モジュールを判定した場合の例です。実際のCISTEC様式は省令の文言単位で行が細かく分かれているので、これは構造を理解するために主要行だけ抜き出した簡略イメージだと理解してください。
| 項番(輸出令別表第1) | 対象貨物の概要 | 参照する省令条項 | 判定基準(パラメータ) | 自社製品の仕様 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 7の項(1) | 集積回路 | 貨物等省令第6条第1号 | 耐放射線性など所定の仕様に該当するか | 民生用FPGAで所定の仕様に非該当 | × |
| 7の項(10の2) | FPLDを組み込んだモジュール・組立品・装置 | 貨物等省令第6条第10号の2 | ユーザー構成可能なFPLDを1個以上組み込み、LUT入力数の総計が1,800,000以上 | FPGA2個搭載。総計1,440,000で未満 | × |
| 8の項(1) | 電子計算機等 | 貨物等省令第7条 | 加重最高性能等の基準に該当するか | 該当する電子計算機を含まない | - |
| 10の項 | センサー等 | 貨物等省令第9条 | 所定の光検出器等に該当するか | 対象となる光検出器を含まない | - |
| 総合判定 | 非該当 |
問題は、この7の項(10の2)の行が、実際の様式ではどう埋まるのかです。ここに前章の括弧記号が効いてきます。同じ枝を判定欄の中身まで開くと、次のようになります。
| 判定欄 | 区分 | 条文の内容 | 判定 | 記入欄(合理的な理由・数値) |
|---|---|---|---|---|
| [ ] | 部分判定 | モジュール・電子組立品・装置であること | ○ | 産業用画像処理モジュールに該当 |
| [ ] | 部分判定 | ユーザー構成可能なFPLDを1個以上組み込み | ○ | 民生用FPGAを2個搭載 |
| [ ] | 部分判定 | LUT入力数の総計が1,800,000以上 | × | 120,000LUT×6入力×2個=1,440,000でしきい値未満 |
| 《 》 | 除外判定 | 特定機能に固定され書き換え不可のものを除く | × | 出荷後もユーザーが論理を書き換え可能なため除外に当たらない |
| 【 】 | 最終判定 | 7の項(10の2)の総合 | × | LUT入力数の総計が1,800,000未満のため非該当 |
この表を見ると、記号の使い分けが一目で分かります。装置であること、FPLDを組み込んでいることの部分判定[ ]は○ですが、それだけでは「該当」になりません。LUT入力数の総計という数値基準の[ ]が×だったため、最終判定【 】は×、つまり非該当です。除外判定《 》が×なのは、この製品が「書き換え不可に固定された除外対象」ではないからで、除外に助けられて非該当になったわけではない点にも注意してください。そして記入欄には「1,440,000」という具体的な数値を残しています。これが記入要領の言う「一般人が見て該非が判断できる合理的な理由・数値」です。
計算方法は「FPLDの個数×各デバイスのLUT数×各LUTの入力数」の合計で、この例では2個×120,000LUT×6入力で総計1,440,000となり、しきい値の1,800,000に届かないため非該当です。経産省の説明資料にも、2個×150,000LUT×6入力でちょうど1,800,000になる計算例が示されています8。自社製品のLUT数と入力数はFPGAベンダーのデータシートで確認できるので、判定の前に必ず数字を取り寄せてください。
なお、項目別対比表がカバーするのは貨物(輸出令別表第1)だけではありません。様式名にあるとおり外国為替令別表、つまり技術側の項目も対象です。装置と一緒に設計図や制御ソフトウェア、保守マニュアルを海外に提供するなら、貨物の行だけ埋めて満足せず、対応する技術の項目まで判定を終わらせてください。貨物は非該当でも技術は該当する、という組み合わせは実務で普通に起こります。技術の対比表では、貨物名の欄に「○×ポンプの設計図面 No.T00012」のように、技術内容と管理番号まで書き込むのがCISTEC記入要領の作法です。
ここまで書いてきて改めて感じるのは、この照合作業は正直なところ地道で時間のかかる仕事だということです。数百項目の規制リストと製品仕様書を往復し、括弧ごとに記号と理由を埋めていく部分をAIで効率化するアプローチもあり、私たちが開発している輸出管理AIエージェントTRAFEEDは、製品仕様から候補項番の抽出と規制値照合のドラフト作成までを支援します。判定業務の設計を見直したい方は、あわせて資料一覧にあるホワイトペーパー類も参考にしてください。
2026年の改正で項目別対比表はどこが変わったか
2025年11月11日、輸出貿易管理令の一部を改正する政令が閣議決定され、11月14日に公布、国際レジーム合意分は2026年2月14日に施行されました1。項目別対比表2026年2月版は、この改正を様式に反映したものです。経済産業省の改正概要資料によれば、対比表の実務に関係する主な追加品目は次の3つです9。
| 追加された貨物 | 新設・追加された項番 | 概要 |
|---|---|---|
| ペプチドの合成を行うための装置 | 3の2の項(2)10 | 医薬品研究と生物兵器製造の両方に転用しうる装置として追加 |
| 高エントロピー合金の粉・耐火性金属の粉等 | 5の項(20) | ほぼ等しい割合の複数元素で構成される合金粉等。ジェットエンジン部材などの先端材料 |
| FPLDを組み込んだモジュール・組立品・装置 | 7の項(10の2) | LUT入力数の総計1,800,000以上かつユーザー構成可能なものが対象 |
実務インパクトが最も大きいのはFPGA組込装置です。従来はFPGA単体(集積回路)が7の項で規制されていましたが、今回の改正でFPGAを搭載した「装置レベル」まで規制の網が広がりました。貨物等省令第6条第10号の2の要件は、モジュール・電子組立品・装置であること、ユーザー構成可能なFPLDを1個以上組み込んでいること、LUT入力数の総計が1,800,000以上であること、の3点です8。組み込まれたFPLDが特定の機能を実行するように固定されている場合は除外されるため、「ユーザーが書き換えられない設計になっているか」が実務上の分岐点になります。前章の記入例で除外判定《 》を×にしたのは、まさにこの分岐で「書き換え可能」と判断したからです。
項目別対比表の観点で言えば、変化は明確です。旧版の様式には7の項(10の2)の行が存在しないため、旧版で判定を続けている限り、この規制は視界に入りません。FPGAは産業機器・計測機器・通信機器と幅広い製品に組み込まれているので、エレクトロニクス系の製品を扱う会社は、2026年2月版への差し替えと同時に、FPGA搭載製品の再判定が必要かどうかをBOM(部品表)レベルで棚卸しすることをおすすめします。再判定の要否は、次のチェックで当たりをつけられます。
- 自社製品にFPGA・FPLDを搭載したモジュールや装置があるか
- 搭載FPGAのLUT数と入力数をデータシートで確認し、総計が1,800,000以上になる製品があるか
- ユーザーが論理回路を書き換えられる状態で出荷している製品があるか
- ペプチド合成装置、高エントロピー合金粉・耐火性金属粉に関わる取扱いがあるか
- 過去の該非判定書が2026年2月14日より前の様式・法令に基づいていないか
改正の全体像、FPGA規制の3要件と除外条件の詳細、施行前後の経過措置については、輸出貿易管理令一部改正(2026年2月施行)の完全解説で条文レベルまで踏み込んで解説しています。該非判定の担当者はセットで読んでおくと、対比表の新しい行を迷わず埋められるはずです。
もう1点、鮮度の観点で触れておきます。2026年の改正は2月14日だけではありません。CISTECの政省令改正一覧によれば、2026年6月16日には、貿易関係貿易外取引等に関する省令第10条第3項に基づく重要管理対象技術を提供する取引の報告事項について、一部改正が施行されています10。これはいわゆる「みなし輸出」に関わる報告事項の改正で、項目別対比表の行そのものが変わるわけではありません。ただ、対比表の判定と並行して技術提供の管理も走っている会社にとっては、2026年の直近改正として押さえておく価値があります。「対比表さえ最新なら安心」ではなく、リスト規制と技術管理の両方が動いている、と捉えておいてください。
こうした改正は今回で終わりではありません。日本のリスト規制はワッセナー・アレンジメントなど国際レジームの合意を国内法令化する構造なので、レジーム側で合意が積み上がるたびに、輸出令・省令・対比表が連動して改訂されます。「一度買った対比表を何年も使う」という運用が構造的に成立しない領域だと理解しておいてください。
よくあるつまずきと再判定チェックリスト、まとめ
最後に、項目別対比表の記入で実際によく起こるつまずきを整理します。私たちが判定業務の相談を受ける中で繰り返し目にするパターンです。
第一に、括弧記号の読み違いです。前章で述べたとおり、【 】以外の○はただちに該当を意味しませんし、除外判定《 》が○になれば同じ区切りの[ ]は通常×になります。この構造を知らないまま「○が付いたから該当だ」と早合点すると、判定が真逆になります。条文の「全てに該当」と「いずれかに該当」を取り違えるのも同じ根の失敗です。数値基準でも「以下」と「未満」で境界値の扱いが変わり、μm(マイクロメートル)とmm(ミリメートル)のような単位換算ミスも、笑い話のようで実際に起こります。
第二に、記号だけを書いて理由を書かないことです。CISTECの記入要領は、単に○×-を記入するのではなく合理的な理由や数値を併記するよう明記しています。ここを省くと、結論が正しくても監査や税関で説明できず、対比表の価値が半減します。
第三に、確認範囲の狭さです。「うちは通信機器だから9の項だけ見ればいい」という思い込みは危険で、通信機器でも7の項(エレクトロニクス)、8の項(電子計算機)、15の項(暗号)に該当する可能性があります。また、貨物の判定だけ済ませて、一緒に提供する設計図やソフトウェアといった技術(外為令別表側)の判定を忘れるケースも後を絶ちません。
第四に、他者の判定への過度な依存です。部品メーカーから非該当証明書をもらっていても、最終的な判定責任は輸出者にあります。メーカー判定は重要なインプットですが、鵜呑みにせず自社の責任で内容を確認する必要があります。判定を誤って無許可輸出になれば外為法違反であり、罰則や社名公表など重い結果につながります。実際、経産省の分析では外為法違反の過半が該非判定起因とされており、詳細は外為法違反事案の分析記事と外為法違反の罰則解説にまとめています。
こうした属人的なミスを仕組みで減らしたい場合、AIの活用は現実的な選択肢になっています。私たちのTRAFEEDは輸出管理に特化したAIエージェントで、岡山大学との共同実証ではAI判定精度95%以上(自社調べ)を確認し、判定技術で特許(特許第7862062号)を取得しています。現在、大学・企業あわせて20組織以上に導入いただいていますが、AIが出すのはあくまで根拠つきのドラフトで、最終判定を行うのは貴社の輸出管理責任者です。この原則は法令上動かせませんし、動かすべきでもありません。米国EARなど海外法令との横断照合が必要な場合は、EAR99かどうかを確認する手順も参考になるはずです。
まとめます。
- 項目別対比表は該非判定の根拠資料で、結論書類である該非判定書・非該当証明書とは役割が異なります
- 判定欄は【 】が最終判定、[ ]が部分判定、《 》が除外判定、〈 〉が除外の部分判定。○×-の意味も括弧ごとに読み分け、記号だけでなく合理的な理由・数値を必ず併記します(CISTEC公式記入要領)
- 最新版は2026年2月14日施行の政省令改正に対応した「2026年2月版」。CISTECから賛助会員4,400円・一般・大学会員8,800円(税込、2026年7月時点)で入手できます
- 空フォームのエクセル様式は無料ダウンロードできません。著作権はCISTECにあり、電子ファイルは該非判定コーナーで有償提供されています
- 2026年2月の改正でFPGA組込装置(7の項の10の2)などの行が追加され、6月16日にはみなし輸出関連の省令改正も施行されました
項目別対比表の運用は、地味ですが会社を守る仕事です。「自社の判定フローをどう組み直せばいいか」「FPGA関連の再判定をどこから手をつけるか」「括弧記号の読み方を社内でどう標準化するか」といった個別の悩みは、TRAFEEDの個別相談(30分)でお聞かせください。機能の全体像はTRAFEEDサービスカタログ(PDF)で、その他のホワイトペーパーは資料一覧からダウンロードできます。
参考文献(一次情報)
Footnotes
-
経済産業省「輸出貿易管理令の一部を改正する政令が閣議決定されました」(2025年11月11日) https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251111001/20251111001.html ↩ ↩2
-
CISTEC「輸出貿易管理令別表第1・外国為替令別表 項目別対比表2026年2月版」販売ページ https://www.cistec.or.jp/publication/shoseki/b01_taihihyou.html ↩ ↩2
-
CISTEC「対比表の説明と記入要領」(判定欄の記号【】[]《》〈〉と○×-の一次資料) https://www.cistec.or.jp/publication/shoseki/sample/b-01koumoku_kinyurei/3-taihihyou_kinyuyouryou.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
CISTEC「該非判定コーナー」(項目別対比表の電子ファイルの有償提供) https://www.cistec.or.jp/about/sdintro/koumokuIndex.html ↩
-
CISTEC「キャッチオール規制の一部改正に伴う項目別対比表2025改訂版」 https://www.cistec.or.jp/publication/251010kaisei_taihihyo.html ↩
-
経済産業省「貨物・技術のマトリクス表」紹介ページ https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html ↩
-
輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50000400049/ ↩
-
経済産業省「外為法の安全保障貿易管理に係る改正」説明資料(2025年12月) https://www.meti.go.jp/policy/anpo/20251114koufu_setsumeishiryou.pdf ↩ ↩2
-
経済産業省「輸出貿易管理令等の改正の概要について」(令和7年11月) https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/seirei/20251114_gaiyo01.pdf ↩
-
CISTEC「政省令改正等一覧」(2026年6月16日施行 貿易外取引省令第10条第3項に基づく重要管理対象技術の報告事項改正) https://www.cistec.or.jp/export/express/index1.html ↩






