こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。輸出管理の相談を受けていると、意外なほど多くの担当者が入口の手前で止まっています。「そもそも、どの法律の、どの表を見ればいいのか」。該非判定の手順をいくら説明しても、その土台にある政令の全体像が頭に入っていないと、一つひとつの作業が宙に浮いてしまうのです。
その土台こそが、輸出貿易管理令、いわゆる輸出令です。日本の輸出管理は、この政令が用意した別表という一覧表に、自社の貨物が載っているかどうかを確かめるところから動き出します。ところが別表は第一から第七まで、枝番を含めると12種類もあり、番号の似た表が並ぶせいで、初めての人は必ずといっていいほど迷子になります。
この記事は、輸出令の全体を1枚の地図として頭に入れてもらうために書きました。細かいスペック値には踏み込みません。まずは「許可の別表第1」と「承認の別表第2」という二本の柱をつかむこと。それができれば、あとの実務は驚くほど見通しがよくなります。2026年10月の更新では、e-Gov法令検索の現行版と条文を一つずつ突き合わせ、初版で私が書き誤っていた箇所もあわせて直しました。
30秒で読む要点 輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号、略称は輸出令)は、外為法第48条を受けて、どの貨物をどの地域へ輸出するときに経済産業大臣の許可や承認が要るかを、12種類の別表で定めた政令です。柱は2本で、別表第1は安全保障のための「許可」(1〜15項がリスト規制、16項がキャッチオール規制)、別表第2は条約や国連制裁などを守るための「承認」です。残りの10の表は、制裁向けの対象品目、仕向地の区分、少額や携帯品などの特例を受け持ちます。2026年10月4日時点の現行版は6月5日施行版ですが、変わったのは第14条が引用する罰則の条番号だけで、規制品目を変えた最新の改正は2026年2月14日施行分です1。
輸出貿易管理令(輸出令)とは、外為法を動かすための政令
輸出貿易管理令は、昭和24年政令第378号として1949年(昭和24年)12月1日に公布された政令です。略称は輸出令で、e-Gov法令検索の法令情報にも略称として登録されています1。単独で存在する法律ではなく、外国為替及び外国貿易法、いわゆる外為法(昭和24年法律第228号)を実際に動かすための下位ルールという位置づけです。
外為法は輸出管理の憲法のような存在で、大枠だけを定めます。その第48条が輸出許可・承認の根拠条文です。ただ、法律の本文には「どの貨物が対象で、どの国が対象か」という具体的な品目リストは書かれていません。そこを埋めるのが輸出令であり、輸出令に付いた別表なのです。法律が「規制する」と宣言し、政令が「これとこれを、こういう地域向けに」と中身を指定する。この二段構えが日本の輸出管理の骨格です。
実際のルールは二段では終わらず、ピラミッドのように何層にも重なっています。経済産業省の「輸出貿易管理の法体系」の図に沿って並べると、いちばん上が法律の外為法、その下に政令の輸出令、さらに省令、告示、通達と続きます2。省令は2本あり、別表第1の各項にある「経済産業省令で定める仕様」を数値で決めているのが、いわゆる貨物等省令(平成3年通商産業省令第49号)です3。許可や承認の申請書と手続を決めているのが、輸出貿易管理規則(昭和24年通商産業省令第64号)です4。その下で、告示が対象貨物の細かな範囲を、通達の「輸出貿易管理令の運用について」が用語の解釈や申請書の書き方を定めています。輸出令の別表で「どの項か」の見当をつけ、貨物等省令で「規制値に届くか」を確かめ、輸出貿易管理規則と通達で手続を進める。この順番を知っているだけで、どの文書を開けばよいか迷わなくなります。
もうひとつ、よく混同されるのが外国為替令、いわゆる外為令(昭和55年政令第260号)です5。輸出令が「貨物」の輸出を扱うのに対して、外為令は設計図や製造ノウハウ、プログラムといった「技術」の提供を扱います。根拠も外為法第48条ではなく第25条です6。外為令の別表は項番が輸出令の別表第1とそろっていて、「輸出貿易管理令別表第一の◯の項の中欄に掲げる貨物の設計、製造又は使用に係る技術」という書き方で対応しています。モノを送るなら輸出令、図面やデータを渡すなら外為令。この記事が扱うのは前者です。
輸出令を読むときは、常に外為法48条とセットで考える癖をつけてください。条文をたどると、許可・インフォーム・承認という三つの入口が見えてきます。第1項が許可の根拠で、輸出令1条と別表第1が受けます。第2項がいわゆるインフォーム要件で、規制の確実な実施のために、特定の貨物を特定地域以外へ輸出する者にも許可義務を課せるという条文です。第3項が承認の根拠で、国際約束の履行などのために設けられ、輸出令2条と別表第2が受けます6。項が違えば目的も違う。ここを混同すると、後の判定がずれます。自社の体制がそもそもこの入口を押さえられているか先に確認したい方は、輸出管理体制の無料診断で現状のギャップを3分ほどで把握できます。
全体地図、別表第1(許可)と別表第2(承認)の役割分担
輸出令の別表は全部で12種類あります。数だけ聞くと身構えてしまいますが、実務でまず向き合うのは別表第1と別表第2の二つです。残りは制裁の対象品目や地域区分、特例を定める補助的な表と考えて差し支えありません。
いちばん大事なのは、別表第1と別表第2が番号違いの似たリストではない、という点です。この二つは根拠条文も目的もまったく別の制度で、必要な手続きの名前まで違います。番号が隣接しているせいで同じ仲間に見えてしまうのですが、そこが最初のつまずきポイントです。次の表で二つの違いを一望してください。
| 観点 | 別表第1(許可) | 別表第2(承認) |
|---|---|---|
| ひとことで | 安全保障のためのリスト(軍事転用のおそれがある貨物) | 国際約束などを守るためのリスト |
| 根拠条文 | 輸出令1条+外為法48条1項(16項のグループA向けは48条2項) | 輸出令2条+外為法48条3項 |
| 手続きの種類 | 経済産業大臣の「許可」 | 経済産業大臣の「承認」 |
| 規制の中身 | 1〜15項=リスト規制、16項=キャッチオール規制 | ワシントン条約・モントリオール議定書・バーゼル条約・水俣条約・国連制裁などの国内担保 |
| 対象例 | 高性能な工作機械、半導体製造装置、炭素繊維、レーザー、周波数変換器 など | ダイヤモンド、核原料物質、麻薬原料、絶滅危惧種、文化財、知財侵害品、模造通貨 など |
| 仕向地の扱い | 1〜15項は全地域。16項はグループA(別表第3の27か国)を除く全地域 | 各項の下欄で指定。多くは全地域だが、34の項(冷凍のあさり等)は米国向けだけ。北朝鮮・ロシア等向けは第2条の別の号で上乗せ |
| 出発点の実務 | 該非判定(項番×貨物等省令のスペック照合) | 品目が承認対象か、条約・他法令の許可の要否を確認 |
この表を頭の右上あたりに常に置いておくと、輸出令のどの条文を読んでいても迷いません。別表第1を見ているなら安全保障の許可の話、別表第2を見ているなら国際約束の承認の話。まずはこの二軸に情報を仕分けるだけで、混乱は半分に減ります。
残る10の表も含めて、12の別表がどう役割分担しているかを整理しておきます。e-Govの表題に付いている関係条文では、別表第一が第一条・第四条、別表第二が第二条・第四条・第十二条、別表第二の二から第二の四が第二条・第四条、別表第三から先はすべて第四条(特例)です。ただ、別表第三は第1条第3項や別表第一の16の項の下欄からも引用されていて、表題だけでは使われ方が分かりません。そこで、条文の中での働きで並べ直したのが次の表です1。
| 別表 | 関係条文(e-Govの表題) | 条文の中での働き |
|---|---|---|
| 別表第一 | 第一条・第四条 | 許可対象貨物。1〜15項がリスト規制、16項がキャッチオール規制 |
| 別表第二 | 第二条・第四条・第十二条 | 承認対象貨物。条約・国連制裁などの国内担保 |
| 別表第二の二 | 第二条・第四条 | 北朝鮮向けに承認が要る貨物(牛肉、酒類、香水などの奢侈品) |
| 別表第二の三 | 第二条・第四条 | ベラルーシ・ロシア向けに承認が要る貨物(別表第一の1〜15項の貨物ほか) |
| 別表第二の四 | 第二条・第四条 | 告示で指定された者との取引に限って、別表第二の三の貨物に承認が要る仕向地(10か国) |
| 別表第三 | 第四条 | グループA(27か国)。16項の下欄から除かれる地域 |
| 別表第三の二 | 第四条 | 国連武器禁輸国・地域(10か国)。キャッチオールの要件が厳しくなる |
| 別表第三の三 | 第四条 | 地域ではなく貨物の一覧。リスト規制の少額特例の上限が100万円から5万円に下がる品目 |
| 別表第四 | 第四条 | イラン、イラク、北朝鮮。リスト規制の少額特例を使えない仕向地 |
| 別表第五 | 第四条 | 承認が不要になる貨物(無償の救じゅつ品、200万円以下の無償の商品見本など15号) |
| 別表第六 | 第四条 | 出国する人の携帯品・職業用具・引越荷物など、承認が不要になる場合 |
| 別表第七 | 第四条 | 承認の少額特例の金額(30万円・5万円・3万円) |
項番の当たりをつけたら、照合の跡を残す 当社が独自に作った「項目別チェックシート(輸出令別表第1・外為令別表)」は、経済産業省のマトリクス表から該当行を貼り付け、規制値と自社の仕様値を突き合わせて判定の根拠を残すためのExcelです。2026年2月14日施行の改正に対応しています。CISTEC発行の「項目別対比表」とは別の、当社オリジナルの様式です。項目別チェックシートをダウンロード(無料。会社名とお勤め先のメールアドレスのご登録が必要です)
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別表第1、安全保障のリスト規制(1〜15項)とキャッチオール(16項)
別表第1は、外為法48条1項を受けた輸出令1条1項が指す表です。中欄に載っている貨物を、下欄に掲げる地域を仕向地として輸出するときは、経済産業大臣の許可が要ります。ここが安全保障輸出管理、すなわちリスト規制の入口です。
別表第1は大きく二つのゾーンに分かれます。1の項から15の項までがリスト規制。武器はもちろん、原子力、化学、生物、ミサイル、そして高性能な工作機械や半導体製造装置、炭素繊維、レーザー、周波数変換器といった、軍事転用のおそれがある民生品を項番ごとに定めています。3の項と4の項の間に3の2の項があるので、行の数は16ではなく17になります。判断の基準は品名ではなく仕様。同じ名前の製品でも、性能が規制値に届くかどうかで結論が変わります。各項の中身と項目ごとの調べ方は輸出令別表第1の1〜16項一覧と調べ方に、仕様を一行ずつ突き合わせる該非判定の進め方は該非判定の手順と該非判定書のそろえ方にまとめてあります。
ここで注意したいのが、リスト規制は仕向地を問わないという点です。1〜15項の下欄はすべて「全地域」で、グループA、いわゆる旧ホワイト国向けであっても、リスト規制の該非判定そのものは必要です1。グループA向けでは包括許可などで手続きが簡素になるだけで、判定を飛ばしてよいわけではありません。「相手が信頼できる国だから何もいらない」という思い込みは、輸出管理でいちばん危ない誤解のひとつです。
16の項が、リスト規制とは性格の違うキャッチオール規制です。16の項の下欄は、政令の原文で「全地域(別表第三に掲げる地域を除く。)」と書かれています。グループA以外へ16の項の貨物を輸出する場合は、いったん外為法48条1項の許可の枠に入ったうえで、第4条第1項第3号・第4号の特例により、用途や需要者の要件にも、経済産業大臣からの通知(インフォーム)にも当たらなければ許可は要らない、という組み立てになっています。グループA向けは本来この枠の外ですが、2025年10月9日施行の改正で第1条第3項が加わり、懸念国などへ迂回されるおそれがあるとして通知を受けた場合には、外為法48条2項に基づく許可が必要になりました1。
要件の細部は、16の項の(1)に当たる特定品目か(2)の幅広い工業製品か、仕向地が国連武器禁輸国(別表第三の二)かどうかで変わります。「グループA以外なら常にキャッチオール許可が必要」と単純化して覚えるのは避けてください。大枠として、リスト規制は仕様で見る網、キャッチオールは用途と需要者と仕向地で見る別の網だと理解しておけば十分です。両者の比べ方はリスト規制とキャッチオール規制の違いで表にしています。
別表第2、国際約束を守るための輸出承認
別表第2は、外為法48条3項を受けた輸出令2条1項が指す表です。第一号で、別表第二の中欄の貨物を下欄の地域へ輸出する場合に経済産業大臣の承認が要ると定めています。許可が安全保障のためのものだったのに対し、承認は日本が結んだ国際約束を誠実に履行し、国際平和へ寄与するために設けられた制度です。根拠条文も目的も、別表第1とはまったくの別物。
何が承認の対象になるのかを眺めると、別表第2の性格がよく分かります。1の項のダイヤモンドはキンバリー・プロセスという国際的な枠組みの担保で、35の項のオゾン層破壊物質はモントリオール議定書、35の2の項の特定有害廃棄物等はバーゼル法、35の3の項の化学物質はロッテルダム条約、35の4の項の水銀は水俣条約、36の項の絶滅のおそれがある野生動植物はワシントン条約に対応します。2026年1月19日には35の5の項が新設され、海外の海底下に貯留するために輸出する二酸化炭素を含んだガスも、ロンドン議定書の手続に沿って承認の対象になりました17。国際約束を国内で守るための一覧、それが別表第2です。税関の「輸出関係他法令一覧表」も、輸出承認の問い合わせ先として経済産業省の「輸出承認対象貨物一覧」のページを挙げています89。
もっとも、別表第2を「農産物や生き物の輸出リストで、安全保障とは無関係」と片づけるのは誤りです。20の項の核原料物質・核燃料物質、21の3の項の麻薬向精神薬原料。安全保障の色が濃い品目も、承認の側に並んでいます。文化財の側にも目を向けると、43の項に国宝・重要文化財・天然記念物、44の項に知的財産権を侵害する貨物や原産地を誤認させる貨物、45の項に関税法第69条の12の認定手続が執られた貨物が入っています。血液製剤、しいたけ種菌、かすみ網、偽造・変造の通貨まで含めると、その幅の広さに驚かれるのではないでしょうか。下欄にも目を配ってください。34の項の冷凍のあさり、はまぐり、いがいは、仕向地が米国だけと定められています1。
承認には、他の役所や他の法令が関わる仕掛けも用意されています。輸出令2条2項は、別表第二の30の項、つまりしいたけ種菌を承認するには、あらかじめ農林水産大臣の同意が必要だと定めています。2条3項は、35の2の項(2)の廃棄物処理法の廃棄物と、43の項の国宝・重要文化財等について、他の法令による輸出の許可や確認を受けている場合に限って承認すると定めています。承認の入口は別表第2だけでもありません。2条1項は、北朝鮮、ベラルーシ、ロシア、ウクライナの一部地域向けの号に加えて、第2号で、海外に加工を委託する委託加工貿易のうち経済産業大臣が定める加工の原材料の輸出にも承認を求めています(総価額100万円以下は特例で不要)1。承認は経済産業省だけで完結しないことがある、そして別表第2の外にも入口がある。この2点を覚えておいてください。全項目の一覧は輸出貿易管理令 別表第2の全項目と許可との違いに載せています。
このあたりの品目の該否や、他法令の許可が要るかどうかを一件ずつ人力で追うのは、想像以上に骨が折れます。当社が提供する輸出管理AIエージェントTRAFEEDは、こうした別表照合や各国法規の反映を支援するために作ったサービスです。最終的な該非の判断は貴社の輸出管理責任者が行う前提ですが、調べものの初動を速くする役には立ちます。
別表第2の2〜第7まで、制裁・地域区分・特例の早わかり
別表第2の後ろには、制裁と地域区分と特例を担う表が続きます。まず制裁関連です。輸出令2条1項は、第一号のほかに制裁向けの号を多く抱えています。第一号の二が別表第二の二の貨物を北朝鮮へ、第一号の三が別表第二の三の貨物をベラルーシへ、第一号の四が同じ表の貨物をロシアへ、第一号の五がウクライナのうちドネツク州・ルハンスク州の告示区域へ、といった具合に、仕向地ごとに承認義務がかかる構造です1。
別表第二の二は北朝鮮向けの承認対象で、牛肉やキャビア、酒類、たばこ、香水、化粧品、高級かばんといった、いわゆる奢侈品が並びます。国連安全保障理事会の決議に基づく制裁を、日本国内で担保するためのものです。別表第二の四には、アラブ首長国連邦、アルメニア、中国、インド、カザフスタン、キルギス、シリア、タイ、トルコ、ウズベキスタンの10か国が挙がっています。誤解されやすいのですが、これらの国向けの輸出がすべて承認制になるわけではありません。第一号の八により、経済産業大臣が告示で指定した者との直接・間接の取引に限って、別表第二の三の貨物を輸出するときに承認が要る、という仕組みです1。国の名前が載っていることは、その国やそこの企業についての評価ではなく、制度上の区分にすぎません。
地域区分の代表格が別表第三、いわゆるグループA地域です。旧ホワイト国と呼ばれてきた区分で、2026年10月時点の政令本文ではアルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国の27か国です。別表第三は政令そのものの表なので、国の追加や削除は政令の改正で行われます。大韓民国は、令和5年政令第232号により2023年7月21日に再びグループAに加わりました1。ホワイト国(グループA)とは何か、国グループAからDまでの違いはホワイト国(グループA)とは?国グループA〜Dの違いで詳しく解説しています。
より厳しい側の区分として、別表第三の二が国連武器禁輸国・地域(アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン)を、別表第四がイラン、イラク、北朝鮮を定めています。では、別表第四の3か国は何を決めるための表なのか。答えは、リスト規制の少額特例を使えない仕向地です。少額特例とは、別表第一の5〜13項と15項の貨物で総価額が100万円以下なら、キャッチオールの要件に当たらない限り許可が要らないという第4条第1項第5号の定めです。その少額特例の上限を5万円に下げる品目を集めたのが、別表第三の三です。名前が地域の表と並んでいますが、中身は貨物の一覧なので注意してください1。
一方で、輸出のすべてに重い手続きを課すわけではありません。別表第五は承認が不要になる貨物の一覧で、無償の救じゅつ品や、総価額200万円以下の無償の商品見本・宣伝用物品、国際郵便で送る個人用の身廻品など15号が並びます。別表第六は出国する人の携帯品や職業用具、永住のための引越荷物などの特例です。別表第七は承認の少額特例の金額で、麻薬向精神薬原料のうちアセトンなど省令で定めるものは30万円、血液製剤は5万円、しいたけ種菌と冷凍のあさり等は3万円と線が引かれています1。どれも別表第2の「承認」に対する特例で、別表第1の「許可」の特例は第4条第1項に別に書かれています。特例があるからこそ、日常的な小口の輸出が現実的に回る、というわけです。
初版(2026年7月)から何が変わったか、当時と現在
別表は固定された石板ではありません。国際輸出管理レジームの合意や条約の改定を受けて、毎年のように手が入ります。初版を書いた2026年7月から10月までの間に新しい政令が出たわけではありませんが、初版で書き切れていなかった改正や、施行日の書き方の誤りがありました。e-Govの改正履歴で版ごとの条文を突き合わせた結果を、ここでまとめて整理します1。
直近の大きな改正は、令和7年政令第376号です。2025年11月14日に公布され、施行は3段階に分かれていました。2025年11月15日には、別表第一の1の項(武器)の貨物にも「無償で輸入すべきものとして無償で輸出する貨物(告示で定めるもの)」の特例を使えるようにする改正が施行されました。国際的なスポーツ競技大会に参加するために持ち出す銃や、警護のために持ち出す防弾チョッキのように、持ち帰ることが前提の一時的な持ち出しを許可不要にするものです10。12月1日には別表第二の33の項「うなぎの稚魚」が削除され、2026年2月14日に別表第一の追加が施行されました。加わったのは、3の2の項(二)10のペプチドの合成を行うための装置、5の項(二十)のほぼ等しい割合の複数の元素で構成された合金の粉または耐火性のある金属の粉、7の項(十の二)のフィールドプログラマブルロジックデバイス(FPGAなど)を組み込んだモジュール、組立品または装置の3つです111。初版では、うなぎの稚魚の削除まで2月14日施行と読める書き方をしていたので、ここで訂正します。
その少し前、2026年1月19日には令和7年政令第382号で別表第二に35の5の項が新設され、二酸化炭素を含んだガスの輸出承認が始まっています7。そして2026年6月5日、外為法の改正法(令和8年法律第30号)が公布され、同日に一部が施行されました。罰則の条が1つ繰り下がったため、令和8年政令第194号で輸出令第14条の「第六十九条の六」が「第六十九条の七」に直されています。e-Govで輸出令を開くと現行版が「2026年6月5日施行」と表示されるのはこのためで、別表の中身は2月14日施行版と変わっていません。外為法第48条の文言も変わっておらず、改正法の残りの部分は2027年1月4日に施行される予定です16。
| 項目 | 初版の記載(2026年7月19日) | 現在(2026年10月4日に確認) |
|---|---|---|
| e-Govの輸出令の現行版 | 記載なし(2月14日施行の改正を直近の例として紹介) | 2026年6月5日施行版(第14条の条番号の整理だけ) |
| 令和7年政令第376号の施行日 | 2026年2月14日として記載 | 2025年11月15日、12月1日、2026年2月14日の3段階 |
| うなぎの稚魚 | 2月14日に承認対象から削除と読める記載 | 2025年12月1日に削除(別表第2の33の項) |
| 別表第2の35の5の項 | 記載なし | 2026年1月19日に新設(二酸化炭素を含んだガス) |
| グループA向けのキャッチオール | 第1条第3項を施行日なしで記載 | 2025年10月9日施行の改正で加わったと明記 |
| 無許可輸出の罰則の条 | 外為法第69条の6 | 第69条の7(令和8年法律第30号の一部施行で繰り下げ) |
| 無承認輸出の罰則 | 「別の条でより軽い」とだけ記載 | 第69条の8。5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金 |
| 関税法の輸出禁制品 | 第69条の11と記載(誤り) | 第69条の2(第69条の11は輸入してはならない貨物) |
| 別表第三の三 | 地域区分と記載(誤り) | 少額特例の上限を5万円にする貨物の一覧 |
| 別表第三の国の増減 | 告示改正で動くと記載(誤り) | 政令の改正で動く(大韓民国は令和5年政令第232号) |
2026年10月4日時点で、e-Govに公布済み・施行待ちの輸出令の改正はありません1。次の定例のリスト改正がいつ来るか、ペプチド合成装置やFPGA組込装置の要件をどう読むかは、輸出貿易管理令の改正一覧で追いかけています。経済産業省の「関係法令・改正情報」のページにも、最新の制度改正が一覧で載ります12。この記事は全体地図の担当なので、改正の細部はそちらに任せます。施行日をまたぐ取引では、旧版の判定のまま出荷せず、新しい施行版で判定し直すのが原則です。
自社が該当するか確かめる手順と、実務のはじめ方
ここまでの地図を、実際の動きに落とし込みます。輸出令を前にしたとき、最初にやることは自社の貨物を別表第1と別表第2の両側から見ることです。片側だけ見て安心するのが、初心者に多い失敗です。
別表第1については、品名ではなく仕様で該非判定を行います。項番の見当をつけ、貨物等省令の規制値と自社スペックを一行ずつ対比し、結果と根拠を該非判定書に残す。判定の証跡の残し方は非該当証明書とは?該非判定書の書き方で具体例を示しています。並行して、別表第2の承認対象に当たらないか、条約や他法令の許可・確認が要らないかも確認します。文化財なら文化財保護法、動植物ならワシントン条約関連の法令、といった具合です。
輸出令だけを見ていれば足りるわけでもありません。税関が公表している「輸出関係他法令一覧表」(令和3年1月現在の表)には、外為法の外為令と輸出令のほかに、文化財保護法、鳥獣保護管理法、麻薬及び向精神薬取締法、覚醒剤取締法、あへん法、植物防疫法、狂犬病予防法、家畜伝染病予防法、道路運送車両法などが、主な品目や税関で確認する書類とあわせて並んでいます8。表の時点が古く、その後に名前が変わった法令もあるので、実際の確認は各省庁の最新の案内で行ってください。輸出令はこの体系の一部だと押さえておくと、確認の抜け漏れが減ります。関税法第69条の2が水際で止める「輸出してはならない貨物」(麻薬、児童ポルノ、知的財産権を侵害する物品など)とも制度が別なので、両方が同時にかかる可能性も忘れないでください13。
守らなかったときの重さも、はっきり書いておきます。外為法第69条の7第1項は、別表第1の貨物の無許可輸出(48条1項違反)に7年以下の拘禁刑か2,000万円以下の罰金、またはその両方を定めています。核兵器などの開発等に使われるおそれが特に大きい貨物として輸出令第14条が定めるもの(別表第1の1の項の大半と2〜4の項)では、同条第2項により10年以下の拘禁刑か3,000万円以下の罰金に上がります。では、別表第2の無承認輸出(48条3項違反)や、グループA向けにインフォームを受けながら許可なく輸出した場合(48条2項違反)はどうでしょうか。こちらは第69条の8で、5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金です。いずれも目的物の価格の5倍が上限額を超えれば、罰金の上限は価格の5倍になります。法人には第72条により、第69条の7第1項の違反で7億円以下、第2項で10億円以下、第69条の8で5億円以下の罰金が科され(いずれも価格の5倍が上回ればその額まで)、行政制裁として第53条による輸出の禁止(無許可輸出なら3年以内)もあります6。違反事例と罰則の全体は外為法違反の罰則一覧と事例にまとめました。
輸出管理は「知らなかった」で済む世界ではありません。だからこそ、迷ったら自己判断で非該当と結論づけず、社内の上長や輸出管理部門、経済産業省の相談窓口、CISTECの相談などに判断を仰ぐ。この一手が、初心者にとって最良のリスク回避策だと考えています。輸出令の地図を手に入れたら、次は自社の主力製品がどの別表のどの項に近いのかを、実際に当ててみてください。属人化しがちな別表照合を仕組みで支えたい場合は、TRAFEEDの個別相談で現状の体制を30分ほどで整理できます。
よくある質問
輸出貿易管理令(輸出令)とは何ですか? 外為法第48条を実施するための政令(昭和24年政令第378号)で、どの貨物をどの地域へ輸出するときに経済産業大臣の許可や承認が必要かを、12種類の別表で具体的に定めたものです。安全保障のためのリスト規制・キャッチオール規制(別表第1・許可)と、国際約束や制裁を守るための輸出承認(別表第2・承認)の2つの柱で構成されています。
別表第1と別表第2の違いは何ですか? 別表第1は外為法48条1項に基づく許可の対象で、軍事転用のおそれがある貨物を安全保障の観点から規制します。別表第2は外為法48条3項に基づく承認の対象で、ワシントン条約や国連制裁など、日本が結んだ国際約束を誠実に履行するためのものです。番号が近いだけで、根拠条文も目的も別の制度です。
輸出令と外為令はどう違いますか? 輸出令は貨物の輸出を外為法48条に基づいて、外為令は技術の提供を外為法25条に基づいて規制します。外為令の別表は項番が輸出令の別表第1とそろっているので、モノを送るなら輸出令、図面やプログラムを渡すなら外為令、と入口を分けて確認します。
輸出令と関税法の「輸出してはならない貨物」は同じですか? 別の制度です。輸出令は外為法に基づき経済産業省が所管する許可・承認の仕組みで、税関が水際で止める関税法第69条の2の輸出禁制品とは根拠法も所管も異なります。実務では両方が同時にかかることがあるため、輸出令だけでなく他法令のチェックも必要です。
最新の改正はいつ施行され、何が変わりましたか? 規制品目を変えた最新の改正は令和7年政令第376号で、2025年11月15日、12月1日、2026年2月14日の3段階で施行されました。2月14日にペプチド合成装置、合金の粉、FPGAなどを組み込んだモジュール等が別表第1に加わっています。2026年6月5日施行の改正は第14条の条番号を直しただけなので、判定をやり直す必要はありません。
地図を持って、はじめの一歩を
輸出貿易管理令を、別表第1の許可と別表第2の承認という二本の柱で読み解いてきました。最後にひとつだけ強調させてください。輸出令の別表は生き物で、レジーム合意や条約改定を受けて毎年のように更新されます。今回の更新で私自身、初版の書き誤りをいくつも直すことになりました。一度覚えた内容がずっと正しい保証はありません。
だからこそ、地図の読み方を覚えることに意味があります。細かな数値やその年の改正は変わっても、「許可は安全保障、承認は国際約束、その先に特例と地域区分がある」という骨格は変わりません。この骨格さえ体に入っていれば、毎年の改正情報も落ち着いて追えるようになります。
今日からの一歩として、自社の主力製品が別表第1のどの項に近いのか、そして社内で誰が輸出管理の責任者なのか。この2点を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。地図を手にした人から、輸出管理は少しずつ怖くなくなっていきます。
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参考文献・脚注
Footnotes
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e-Gov法令検索「輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)」。2026年6月5日施行版(現行)の第1条・第2条・第4条・第14条・別表第一〜第七と、改正履歴(令和5年政令第232号、令和7年政令第175号・第376号・第382号、令和8年政令第194号)の各施行版の条文を当社で比較(2026年10月4日確認)。https://laws.e-gov.go.jp/law/324CO0000000378/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17
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経済産業省「輸出貿易管理の法体系」。https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/01_seido/01_gaitame/download/yushutsutaikei.pdf ↩
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e-Gov法令検索「輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令(平成3年通商産業省令第49号)」。https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50000400049/ ↩
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e-Gov法令検索「輸出貿易管理規則(昭和24年通商産業省令第64号)」。https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50000400064/ ↩
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e-Gov法令検索「外国為替令(昭和55年政令第260号)」別表(2026年10月4日確認)。https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000260/ ↩
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e-Gov法令検索「外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)」。第25条・第48条・第53条・第69条の7・第69条の8・第72条、令和8年法律第30号の施行日(2026年10月4日確認)。https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000228/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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経済産業省「二酸化炭素を含んだガスの輸出承認について」。https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/download/export/2026/20260113_01_ex.pdf ↩ ↩2
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税関「輸出関係他法令一覧表」(令和3年1月現在)。https://www.customs.go.jp/yusyutu/2021_1/data/export.htm ↩ ↩2
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経済産業省「輸出承認対象貨物一覧」。https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/04_kamotsu/01_export/export_kamotsu.html ↩
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CISTEC事務局「2025年度定例のリスト改正等について(解説)」(2025年11月18日)。無償告示第二号の改正(武器の一時持ち出し)と各規定の施行日。https://www.cistec.or.jp/export/express/251117/12_kaisetsu.pdf ↩
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経済産業省「輸出貿易管理令の一部を改正する政令が閣議決定されました」(2025年11月11日)。https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251111001/20251111001.html ↩
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経済産業省「関係法令・改正情報」。https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law00.html ↩
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e-Gov法令検索「関税法(昭和29年法律第61号)」第69条の2・第69条の11(2026年10月4日確認)。https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000061/ ↩






