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初心者でもわかる 経済産業省の該非判定ガイドライン徹底解説

2026-02-17濱本 隆太

経済産業省の安全保障貿易管理ガイダンスに基づく該非判定の進め方を初心者向けに徹底解説。リスト規制とキャッチオール規制の違い、該非判定書・用途チェックリスト・需要者チェックリスト・明らかガイドラインシート・取引審査票・出荷チェックリストなど8つの帳票の使い方と注意点を網羅。

初心者でもわかる 経済産業省の該非判定ガイドライン徹底解説
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こんにちは、TIMEWELLの濱本です。今日は、海外と取引のある企業、あるいはこれから始めようと考えている企業にとって避けて通れない輸出管理についてお話しします。なかでも、その核心にある該非判定に焦点を当て、経済産業省が提供しているガイドラインの帳票を一枚ずつ読み解いていきます。

「うちは専門的な機械を扱っているわけではないから関係ない」「正直、手続きが面倒でよくわからない」

こう感じている方がいたら、ぜひこの記事を最後まで読んでみてください。その少しの油断が、知らず知らずのうちに国際社会の平和を脅かす行為に加担してしまったり、会社に計り知れない損害をもたらしてしまったりする危険性をはらんでいます。

読み終える頃には、輸出管理がなぜこれほど重視されているのか背景を理解できるようになっているはずです。リスト規制とキャッチオール規制の違いを説明できるようになり、経済産業省が示す公式の帳票を業務マニュアルのように使いこなす手順も身につく。自社の輸出管理体制をどこから見直すべきか、具体的な第一歩を踏み出せるところまで持っていきます。

少し難しい言葉も出てきますが、一つひとつかみ砕いていきます。リラックスして読み進めてください。

そもそも該非判定とは何か

該非判定(がいひはんてい)とは、輸出しようとしている製品や技術が、日本の安全保障を脅かす可能性があるものとして国が定めた規制リストに該当するのか、それとも非該当なのかを判定する作業のことです。輸出管理におけるすべてのプロセスの出発点であり、法律で定められた義務でもあります。

輸出管理は、大きく分けて2つの規制で成り立っています。リスト規制とキャッチオール規制。この2つの違いを理解することが、輸出管理を正しく進めるうえで最初の、そして最も大切なポイントです。

リスト規制とキャッチオール規制の違い

この二つの規制は、車の両輪のような関係にあります。片方だけでは安全な輸出管理は成り立ちません。

規制の種類 概要 対象 判断の基準
リスト規制 武器そのものや、軍事転用される可能性が特に高いと国際的に合意された品目をリストアップし、その輸出を厳しく管理する制度 輸出貿易管理令 別表第1に定められた貨物(1〜15項)と、関連する技術。特定の性能を持つ工作機械やセンサー、炭素繊維などが含まれる 品目のスペック、つまり性能や仕様がリストに記載された基準に合致するかどうかで客観的に判断する
キャッチオール規制 リスト規制だけでは網羅しきれない品目を補完するための制度。リストに載っていない民生品でも、用途や需要者に懸念がある場合に輸出許可の申請を義務付ける リスト規制品以外の、食料品や木材などを除くほぼすべての品目。日常的に使うような製品も対象になり得る 何に使われるのかという用途要件と、誰が使うのかという需要者要件の2つの観点から、大量破壊兵器や通常兵器の開発に使われるおそれがないかを判断する

リスト規制はモノそのものに着目した規制であり、キャッチオール規制はモノの使われ方と使う人に着目した規制だと言えます。自社の製品がリストに載っていないからといって、輸出管理が不要になるわけではない。ここは強く認識しておいてください。

外為法違反のリスク

もしこれらの規制に違反して、許可なく輸出をしてしまったらどうなるか。

安全保障貿易管理の根拠法は外国為替及び外国貿易法、通称・外為法です。違反者には極めて厳しい罰則が科されます。個人の場合で最大10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金。法人なら最大10億円以下の罰金。行政制裁として最大3年間の輸出禁止という処分が下されることもあります。

過去には「自社製品は汎用品だと思い込んでいた」「取引先から大丈夫だと言われた」といった安易な判断が、重大な法令違反に繋がったケースが後を絶ちません。経済産業省が公表している違反事例の分析によれば、違反原因の約6〜7割が該非判定のプロセスに起因しており、なかでも判定誤りや法令解釈の誤りが突出して多いのが実情です。国際的なニュースになれば企業のブランドイメージは失墜し、取引先からの信用も失う。罰金の額だけでは測り知れない損害が待っています。輸出管理は、企業の存続を左右するリスク管理活動そのものなのです。

経産省が提供する8つの帳票の全体像

輸出管理の重要性は理解できた。でも、具体的に何から手をつければ良いのか。そう不安に思った方もいるかもしれません。

経済産業省は安全保障貿易管理ガイダンスという手引書を公開しています。そのガイダンスの別添4として提供されているのが、今回読み解いていく8種類の帳票です。企業が輸出管理を実践するうえで必要な手続きを、抜け漏れなく体系的に進めるために作られたテンプレート集だと思ってください。

8つの帳票はバラバラに存在しているわけではありません。該非判定から取引審査を経て出荷管理へと至る一連の流れに沿って、それぞれが有機的に連携するよう設計されています。安全な輸出という目的地まで正しく導いてくれる羅針盤のようなものです。

ここからは、帳票を1枚ずつ、具体的な記入シーンを想像しながら見ていきます。

ステップ1 該非判定

輸出管理のプロセスは、すべてこの該非判定から始まります。

使用する帳票は「該非判定書」。自社が輸出しようとしている製品や技術がリスト規制に該当するかどうかを判定し、その結果と根拠を正式な記録として残すための書類です。

該非判定書の書き方と注意点

一見するとシンプルな書類ですが、見落としてはいけないポイントがいくつも詰まっています。

承認欄で責任の所在を明確にする

書類の冒頭にある判定者、該非判定責任者、上長の承認欄。単なる形式ではありません。誰が、どのような根拠で判定し、それを組織として承認したのかを明確にする仕組みです。個人の思い込みや判断ミスを防ぎ、組織としての責任ある判定を行うための第一歩になります。

私が実務で見てきた限り、この承認フローが形骸化している企業は少なくありません。とりあえず判子を押しておく、ではなく、承認者が判定内容を実際に確認するプロセスを社内に根付かせることが大切です。

該非結果欄で法令の条文と向き合う

輸出令別表1の何項に該当するか、貨物等省令の何条何項何号にあたるか。初心者にとっては最初の関門かもしれません。リスト規制のどの部分に該当する、あるいはしないのかを、法令の条文レベルで特定して記入する場所です。

経済産業省のウェブサイトには貨物・技術のマトリクス表という便利なツールがあります。規制品目と法令条文の対応が一覧できるので、まずはこの表と自社製品の仕様書をじっくり見比べ、どの項目に当てはまりそうか当たりを付けるところから始めましょう。

ここで一つ、声を大にして伝えたいことがあります。判断に迷ったら、自己判断で非該当と結論づけないでください。経済産業省の安全保障貿易管理相談窓口や、安全保障貿易情報センター、いわゆるCISTECの対面相談を利用する選択肢を常に持っておくこと。初心者にとって、これが最大のリスク回避策だと考えています。

判定理由と判定根拠資料は未来の自分を助ける記録

この書類で最も大切な部分と言っても過言ではないのが、判定理由と判定根拠資料の欄です。

特に非該当と判断した場合、なぜそう判断できたのかを誰が見ても納得できるよう、客観的な言葉で説明する必要があります。たとえば「本製品に搭載されているセンサーの精度は〇〇であり、規制基準の△△には達しないため、輸出令別表第1のX項には該当しない」といった具体的な記述が求められます。

判断の裏付けとなる資料も欠かせません。製品のカタログや仕様書、メーカーが発行した成分分析表などを明確にし、該非判定書と一緒に保管しておく。数年後に監査が入った際や、取引先から判定根拠の説明を求められた際に、これらの記録が会社を守ることになります。輸出管理において信頼は記録に宿る。これは大げさな話ではありません。

ステップ2 取引審査

リスト規制に非該当と判定されたとしても、まだ安心はできません。次に行うのが、キャッチオール規制の観点から取引に危険な点がないかを確認する取引審査です。ここでは4つの帳票を連続して使います。

用途チェックリスト、需要者チェックリスト、明らかガイドラインシート、取引審査票。輸出しようとする製品が、テロリストや懸念国に渡り、大量破壊兵器やミサイルなどの開発に使われるおそれがないかを、あらゆる角度から慎重に評価し、最終的な取引の可否を組織として判断するためのプロセスです。

用途チェックリストで使われ方を確認する

まず手に取るのが用途チェックリストです。取引相手から提示された用途が、大量破壊兵器等の開発といった懸念用途に該当しないかを確認します。

チェックリストには核兵器の開発・製造・使用・貯蔵、軍用の化学製剤の開発といった項目が並んでいます。これらに「はい」と答えるケースは稀かもしれません。しかし大切なのは、こうした用途に使われる可能性を常に意識し、取引相手の説明に少しでも不審な点があれば立ち止まって確認する姿勢です。

余談ですが、私が以前関わった案件で、ごく一般的な計測機器の輸出にもかかわらず、納入先が原子力関連の研究施設だったことがありました。製品自体は民生品でも、使われる場所や目的によっては慎重な確認が必要になる。そういった想像力が、このチェックリストを使いこなすうえでの鍵になります。

需要者チェックリストで取引相手を見極める

次に確認するのが、誰がその製品を最終的に使うのかという点です。

ここでの最重要チェック項目は、経済産業省が公開している外国ユーザーリストに需要者が掲載されているかどうか。このリストには、大量破壊兵器等の開発に関与している、あるいはその懸念が払拭されない外国の企業や組織が掲載されています。リストに載っている企業への輸出は、原則として経済産業大臣の許可が必要です。

リストは随時更新されます。取引の都度、必ず最新のものを確認する習慣をつけてください。経済産業省のウェブサイトからダウンロードできます。

リストに掲載されていなくても油断はできません。需要者が軍関係機関であったり、過去に懸念のある活動を行っていたことが判明した場合には、同様に慎重な検討が求められます。一つでも懸念事項があった場合は、次の明らかガイドラインシートのチェックに進みます。

明らかガイドラインシートで懸念を見極める

用途チェックや需要者チェックで懸念が浮上した場合、その取引を諦めるしかないのか。そうとは限りません。懸念が明らかなものなのか、それとも合理的な説明がつくものなのかを深掘りして判断するためのツールが、この明らかガイドラインシートです。

19項目の質問が用意されており、取引の不審な兆候を体系的にあぶり出せるようになっています。特に初心者が注意すべき危険なサインをいくつか挙げておきます。

需要者の事業内容や技術レベルから見て、その製品を必要とする合理的な理由が見当たらない場合。通常は必要ないはずの過剰な梱包や秘密保持を要求してくる場合。代金の支払条件が異常に好意的だったり、取引慣行から外れていたりする場合。製品の設置や技術指導といったメーカーによるサポートをかたくなに拒否する場合。

これらの質問に一つでも「いいえ」がつく、つまり不審な点がある場合は、キャッチオール規制に該当する可能性が高いと判断されます。経験の浅い担当者でも、ベテランの審査官のような視点で取引のリスクを評価できるよう設計されたツールです。一つひとつの質問の意図を理解し、取引相手の言動と照らし合わせながら慎重にチェックを進めてください。

正直なところ、この19項目すべてを完璧に判断するのは、初心者には荷が重い場面もあるかと思います。そういうときこそ、社内の上長や輸出管理部門に判断を仰ぐことが正しい対応です。わからないから聞く。これは恥ではなく、むしろ輸出管理における最良の行動だと私は考えています。

取引審査票ですべてを集約し最終判断を下す

ステップ2の最終段階。取引審査票は、これまでチェックしてきたすべての情報をこの一枚に集約し、会社としてその取引を実行するのか、許可申請に進むのか、中止するのかといった最終的な意思決定を行うための書類です。

該非判定の結果、用途や需要者のチェック結果、明らかガイドラインの確認結果が転記され、それらを踏まえて総合取引判定結果を結論づけます。判定結果の選択肢には承認する、非該当、許可例外、包括許可、個別許可、経済産業省へ届出や報告・相談、承認しないなどがあり、取引の性質に応じた適切な判断が求められます。

そして最も大切なのが、社内で定められた最終判断権者が署名すること。この取引に関する一切の責任を会社として負うという重い決断の証であり、担当者一人に責任を負わせず、組織全体でリスクを管理する体制を機能させるための仕組みです。

ステップ3 出荷管理

取引審査が無事に承認され、いよいよ出荷。しかし、最後の最後まで気は抜けません。

使用する帳票は出荷チェックリスト。今まさに輸出しようとしているモノが、時間をかけて審査し承認されたモノと寸分たがわず同一であり、必要な許可手続きがすべて完了していることを出荷担当者が最終確認するための書類です。

そんな当たり前のことを、と思うかもしれません。しかし、この段階でのヒューマンエラーが思わぬ法令違反に繋がることは珍しくない。

確認すべきポイントは5つあります。該非判定書が責任者によって承認されているか。取引審査票が最終判断権者によって承認されているか。出荷する貨物が該非判定や取引審査を行った貨物と同一であるか。許可が必要な場合は許可証が取得済みであるか。許可証を取得した場合、許可を取得したものと出荷するものが同一であるか。

一つひとつは地味な確認作業です。しかし、この地道さが最後の砦として機能し、うっかりミスや勘違いによる法令違反を水際で防ぐ。出荷担当者は、会社の信頼を守るゲートキーパーなのです。

体制構築と継続的改善

輸出管理の一連の流れを帳票に沿って見てきました。ただ、これらの手続きをその場限りで終わらせていては、真の輸出管理体制は構築できません。属人的なスキルに頼るのではなく、組織としての仕組みに落とし込み、継続的に見直し改善していく。そのために用意されているのが、最後の2つの帳票です。

担当部門及び責任者一覧で責任体制を可視化する

この帳票は、輸出管理に関わるすべての責任体制を可視化するためのものです。最高責任者である代表取締役社長から、該非判定部門、営業部門、輸出管理部門、出荷部門まで、それぞれの部門と責任者を明確に定めておきます。何か問題が発生した際に誰が判断し、指示を出すのかが一目でわかる状態にしておくことで、迅速かつ的確な対応が可能になります。

中小企業の場合、一人の担当者が複数の役割を兼務しているケースも多いでしょう。それ自体は問題ありません。ただし、誰がどの責任を負っているのかを書面で明確にしておくことが、いざというときの混乱を防ぎます。

監査チェックリストで形骸化を防ぐ

ルールや仕組みは、作っただけでは意味がない。実際に正しく運用され、機能しているかを定期的にチェックする必要があります。

監査チェックリストには、該非判定は最新の法令と照合しているか、取引審査票は正確に記入されているか、輸出関連書類は定められた期間(原則7年間)保管されているか、教育は役員及び従業員に対し定期的に行われているか、といった項目が網羅されています。

年に一度でも、このリストを使って内部監査を行うことで、プロセスの形骸化を防ぎ、法令改正などの外部環境の変化にも対応していけます。監査で見つかった問題点を改善していくサイクルを回し続けること。これが、生きた輸出管理体制を維持する鍵です。

迷ったら立ち止まる。それが最善の判断

経済産業省が提供する8つの帳票を道しるべに、初心者の方でも実践できる輸出管理の具体的なプロセスを解説してきました。

輸出管理は単なる事務手続きではなく、企業の存続を左右するリスク管理活動です。その根幹をなすのが、リスト規制とキャッチオール規制という2つの考え方に基づいた該非判定と取引審査。経済産業省の帳票セットは、複雑に思えるこのプロセスを、誰でも体系的に、抜け漏れなく進めるために作られた実践的なツールです。

個人的に、この記事を通じて最も伝えたかったのは「迷ったら立ち止まる」ということです。初心者のうちは、判断に自信が持てない場面が必ず出てきます。そのとき、自分だけで結論を出そうとしないでください。社内の上長に相談する。経済産業省の窓口に問い合わせる。専門機関であるCISTECの対面相談を利用する。こうした判断を仰ぐという行動こそが、実は最も正しい輸出管理の実践なのだと考えています。

今日からできる最初のステップとして、まずは自社の製品がリスト規制に該当する可能性があるのか、社内の管理体制は誰が責任者になっているのか、といった点を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

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参考文献

[1] 経済産業省「外為法違反事案の分析結果について(安全保障貿易関係)」(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/gaitameho_document/ihanjireigaitamehou5.pdf) [2] 経済産業省「安全保障貿易管理ガイダンス」(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/guidance.html)

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