こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。輸出をこれから始める企業の担当者から、よくこんな質問をいただきます。「税関への申告って、結局どうやるんですか」。話を聞いていくと、多くの方が同じところで止まっています。NACCS(ナックス)という言葉は聞いたことがあるけれど、それが何をするシステムで、輸出申告からモノが港を出るまでのどこに位置するのかが、地図として見えていないのです。
この記事は、その地図を1枚描くために書きました。NACCSとは何か、輸出申告から輸出許可までの流れはどう進むのか、そして輸出管理の実務でつまずきやすい「審査区分」と「外為法の確認」を、関税法や税関の一次資料にあたりながら順に追っていきます。専門用語は初めて出てきたところで必ずかみ砕きますので、貿易実務に触れたばかりの方も安心して読み進めてください。
なお、自社の製品や技術が輸出規制の対象になるかどうかを最初に確かめたい方は、TRAFEEDの輸出管理コンプライアンス診断で当たりをつけてから読むと、後半の外為法の話がぐっと具体的になります。
NACCSとは何か。税関と関係省庁をつなぐ国のシステム
NACCSの正式名称は「輸出入・港湾関連情報処理システム」です。英語では Nippon Automated Cargo And Port Consolidated System といい、その頭文字を並べたものがNACCSになります。ひとことで言えば、日本に入ってくる、あるいは日本から出ていく船舶・航空機と、その積荷である輸出入貨物について、税関をはじめとする関係行政機関への手続きと、それにひもづく民間業務をオンラインで処理する国のシステムです[^1]。
運営しているのは、輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社です。もともとは独立行政法人だった通関情報処理センターが、2008年10月に特殊会社へと衣替えして発足しました[^2]。国のインフラでありながら、事業者が使う実務システムでもある。この二面性が、NACCSの立ち位置をわかりにくくしている一因かもしれません。
もうひとつ知っておくと理解が進むのが、成り立ちの歴史です。かつては航空貨物用のAir-NACCSと海上貨物用のSea-NACCSが、別々のシステムとして独立していました。それが、Sea-NACCSの更改(2008年10月)とAir-NACCSの更改(2010年2月)を機に一本化されます。さらにこのとき、各省庁がばらばらに管理していた輸出入関連のシステムも束ねられました。国土交通省の港湾EDIシステム、法務省の乗員上陸許可支援システム、農林水産省の動植物検疫システム、厚生労働省の輸入食品監視支援システム(FAINS)、経済産業省の貿易管理システム(JETRAS)などです[^1]。
ここで押さえてほしいのは、「NACCSは税関だけのシステムではない」という点です。税関の窓口という印象が強いのですが、実際には複数の省庁の輸出入手続きが一つの基盤に集約されています。だからこそ、貨物が国境を越えるときに関わる検疫や食品衛生、他法令の確認までを、同じシステムの上でつないで処理できるわけです。この一元化こそがNACCSの本質だと、私は考えています。
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輸出申告から輸出許可までの流れ
では、実際にモノを輸出するとき、NACCSの上で何が起きるのか。基本の骨格はシンプルです。輸出しようとする者は税関へ輸出申告を行い、貨物について必要な検査を経て、輸出の許可を受けなければなりません。これは関税法第67条(輸出又は輸入の許可)が定める、輸出通関のいちばん根っこにあるルールです[^3]。
流れを時間軸で並べると、こうなります。最初に、輸出者または委任を受けた通関業者がNACCSで輸出申告のデータを送信します。税関がそれを受理した時点で、申告は法律上の効力を持ちます。関税法基本通達67-1-1は、輸出申告は「税関がこれを受理した時にその効力を生ずる」と明記しています[^4]。ここで大事なのは、申告が効力を持つことと、許可が下りることは別だという点です。受理はスタートラインに立ったにすぎません。
申告のあと、税関はその内容を審査します。必要に応じて貨物の検査が入り、他法令の確認も行われます。すべてクリアして初めて、輸出許可が下ります。
タイミングで混乱しやすいのが、保税地域との関係です。保税地域(ほぜいちいき)とは、外国貨物を関税の手続きが済むまで一時的に置いておける、税関の管理下にある場所を指します。輸出申告そのものは、貨物を保税地域へ搬入する前でも行えます。ただし輸出の許可は、原則として貨物を保税地域等に搬入したあとに行われます[^5]。関税法基本通達67-1-2は、申告書に貨物が搬入前か搬入後かを記載させ、搬入前に申告した場合は搬入された時点でその旨を申告官署へ連絡させると定めています[^4]。「申告は先にできるが、許可は現物が所定の場所に入ってから」。この順番を押さえておくと、スケジュールの立て方を間違えにくくなります。
検査についても一次資料が方針を示しています。輸出貨物の現品検査は、輸出申告者・貨主・仕向地などを総合的に判断し、特に検査を要すると認められる貨物に重点を置いて、原則として貨物が保税地域等に搬入されたあとに実施されます。この検査は原則として統括監視官が行うと、関税法基本通達67-1-7に書かれています[^4]。すべての貨物が現物検査を受けるわけではなく、リスクに応じて重点的に絞り込まれる。この考え方が、次に説明する審査区分につながっていきます。
審査区分(区分1・区分2・区分3)で許可までのルートが決まる
NACCSで輸出申告を送信すると、税関が設定するリスク判定基準にもとづいて、申告は即座に3つの審査区分のいずれかへ振り分けられます。この区分によって、そのあとどれだけの審査や検査を通るか、つまり許可までのルートが変わります。税関が公表している輸出入申告のフロー図でも、区分1は許可へ直行、区分2は審査を経て許可、区分3は審査と検査を経て許可、という流れが確認できます[^6]。
言葉だけだと掴みにくいので、3つの区分を一覧にまとめます。
| 審査区分 | 通称 | 税関の対応 | 貨物検査 | 許可までのルート |
|---|---|---|---|---|
| 区分1 | 簡易審査扱い(即時許可) | 書類審査・検査なし | なし | 申告 → 即時に許可 |
| 区分2 | 書類審査扱い | 通関書類を審査 | なし | 申告 → 審査 → 許可 |
| 区分3 | 検査扱い | 書類審査に加え現品検査 | あり | 申告 → 審査 → 検査 → 許可 |
※NACCSは税関のリスク判定基準にもとづき、申告と同時に区分1から区分3のいずれかへ即時に選別します。出典は税関「NACCSを使用して行われる輸出入申告に係る開庁時間外の取扱いについて」[^6]。
区分1は、いわゆる即時許可です。申告するとほぼ同時に許可が下りるため、実務の体感としてはいちばんスムーズに流れます。区分2になると、税関が申告書と通関書類の中身を確かめます。ここで内容に問題がなければ許可へ進みます。区分3は現品検査を伴う区分で、税関職員が実際に貨物を見て確認したうえで許可します。
現場でよく生まれる誤解が、「NACCSで申告すれば必ず即時に許可が出る」というものです。即時許可はあくまで区分1のケースだけで、区分2なら書類審査、区分3なら現物検査を通ってからの許可になります。しかも、どの区分に振り分けられるかは申告の時点までわかりません。貨物の種類や仕向地、輸出者のこれまでの実績などが総合的に判断されるためです。だからこそ、いつも区分1で通ってきた企業でも、区分3に当たったときに慌てないよう、検査を前提としたスケジュールの余裕を持っておくことをおすすめします。
必要な書類と申告先の税関、そして誰が申告するか
輸出申告は、決まった書式を税関へ提出して行います。関税法基本通達67-1-2は、輸出申告書(C—5010)などを原本・許可書用・統計用の3通そろえて提出させると定めています[^4]。NACCSではこれを電子データで送るかたちになりますが、必要な情報の骨格はこの紙の書式に対応しています。
添付書類についても通達が具体的です。関税法基本通達67-1-5は、輸出許可の判断に必要があるときは仕入書(インボイス)を添付させるほか、関税法第70条にいう他法令の許可・承認・検査の完了などを要する貨物についてはそれを証する書類を、関税の軽減や免除などに関連する貨物については所定の書類を、輸出免税を受ける貨物については輸出免税物品輸出証明申請書などを添付させると整理しています[^4]。どの書類が必要になるかは貨物の性質で変わるため、案件ごとに確かめる姿勢が欠かせません。実際にそろえるべき書類の全体像は、通関に必要な書類のチェックリストにまとめていますので、あわせて確認してみてください。
次に、どこの税関へ申告するかという論点です。原則は、輸出しようとする貨物を入れる保税地域等の所在地を所轄する税関に対して申告します。これは関税法第67条の2(輸出申告又は輸入申告の手続)が定める申告先のルールです[^3]。ところがこの原則には、実務を大きく変えた例外があります。2017年(平成29年)10月8日に実施された「輸出入申告官署の自由化」です[^7]。AEO事業者、具体的にはAEO輸出者やAEO認定通関業者などは、貨物の蔵置場所を所轄する税関に縛られず、いずれかの税関官署へ申告できるようになりました。この自由化を使って行う申告などはNACCSで行う必要がある、とされています[^7]。
ここでも誤解が生まれがちです。「自由化されたのだから、誰でもどこの税関にでも申告できる」と受け取られることがあるのですが、対象はあくまでAEO事業者です。AEO(Authorized Economic Operator、認定事業者)とは、貨物の安全管理と法令遵守の体制が税関に認められた事業者を指します。一般の輸出者にそのまま適用されるわけではない点は、押さえておいてください。
申告する主体にも選択肢があります。輸出申告は貨物の輸出者本人が行ってもよいですし、輸出者から委任を受けた通関業者が代理で申告することもできます。通関業(他人の依頼を受けてその者を代理し、通関手続などを行う業務)は、通関業法(昭和42年法律第122号)第2条によって定義され、規律されています[^8]。「NACCSは通関業者しか使えない」と思い込まれることがありますが、輸出者本人による自己申告も可能で、通関業者への委任は義務ではありません。専門知識と人手が社内にあれば自社で申告し、そうでなければ通関業者に任せる。この判断は、取引量や社内の輸出管理体制と相談して決めるのが現実的だと思います。
見落とすと危ない、外為法の確認とNACCS外為法関連業務
輸出通関の流れの中で、私がもっとも注意を促したいのが他法令の確認です。関税法第70条(証明又は確認)は、他の法令で輸出に許可や承認、検査が必要とされている貨物について、それらが済んでいることを税関の申告時に確認すると定めています[^3]。この「他の法令」の代表格が、外為法(外国為替及び外国貿易法)にもとづく輸出管理です。
安全保障に関わる貨物や技術を輸出する場合、まず経済産業大臣の輸出許可を取得しなければなりません。これは税関への通関申告とはまったく別の手続きです。ここを混同すると事故につながります。「外為法の輸出許可も、税関のNACCS輸出申告で一緒に取れるだろう」と考えてしまうケースがあるのですが、実際には順序が決まっています。規制対象の貨物や技術は、事前に経済産業省へ許可を申請して許可証を得ておき、そのうえで税関申告のときにその許可証の確認(関税法第70条の他法令確認)を受ける、という二段構えです。
その経済産業省への輸出許可申請も、いまはNACCSの上で行えます。NACCS外為法関連業務(旧・貿易管理サブシステム、かつてのJETRAS)がそれで、外為法にもとづく輸出入の許可・承認などの申請から、税関への通関申告時における輸出入許可・承認証などの裏書き処理までを電子化したシステムです[^9]。2022年7月以降、外為法関連業務の輸出許可申請は、一部の未対応手続きを除いて原則として電子申請のみとなりました[^10]。紙で出していた時代の感覚のままだと、手続きの入口を間違えかねません。
そして外為法の入口にあるのが、該非判定(がいひはんてい)です。該非判定とは、輸出しようとする貨物や技術が、輸出貿易管理令の別表などに定められた規制リストに該当するのか、それとも非該当なのかを、仕様や性能にもとづいて確かめる作業を指します。ここで「該当」となれば経済産業大臣の許可が要りますし、「非該当」であってもキャッチオール規制の確認は別途必要です。判定の進め方や非該当を証する書類の考え方は、非該当証明書の基礎知識で詳しく扱っていますので、外為法の確認を自社で回す前にぜひ目を通してください。
この該非判定こそ、輸出管理でもっとも手間がかかり、もっとも間違えやすい工程です。当社が提供するTRAFEEDは、経済産業省の基準に準拠した輸出管理AIエージェントで、多言語に対応し、AI判定精度は95%以上(岡山大学との共同実証および過去の審査データにもとづく自社調べ)を実現しています。安全保障輸出管理の領域では世界初のサービスです(2026年3月時点・自社調べ)。もっとも、AIはあくまで判定を支援する道具であって、最終的な該非判定は貴社の輸出管理責任者が行うものだという前提は変わりません。人が判断の主役であり続けたうえで、その負担を軽くする。そういう使い方を想定しています。
まとめ。NACCS申告で押さえるべき勘どころ
ここまでの流れを、最後に頭の中で一本の線につないでおきましょう。NACCSは税関だけでなく複数省庁の輸出入手続きを束ねた国の共通基盤であり、輸出は「申告して、受理され、審査区分に振り分けられ、審査や検査を通り、他法令の確認をクリアして、許可が下りる」という順で進みます。申告は保税地域への搬入前でもできますが、許可は原則として搬入後です。この時間差を頭に入れておくだけで、出荷計画の精度はずいぶん上がります。
制度の根拠も一度たどっておく価値があります。輸出通関の骨格は関税法第67条と関税法基本通達67-1-1から67-1-7に、申告先のルールは関税法第67条の2に、他法令の確認は関税法第70条にあります。NACCSそのものの運用根拠はNACCS法(昭和52年法律第54号)とその施行令(昭和52年政令第220号)・施行規則(昭和52年大蔵省令第30号)に置かれています。条文の細かな文言まで暗記する必要はありませんが、「どこに書いてあるか」を知っておくと、判断に迷ったときに一次情報へ戻れます。
なお本記事の執筆時点(2026年7月)で、NACCSは第6次(2017年10月稼働)を経て第7次への更改(2025年10月)の時期にあたります。更改による機能の細部は一次情報での確認が前提になりますので、実務では必ずNACCSセンターや税関の最新の公表資料をご確認ください。俗に言われる「輸出入手続きの大半がNACCS経由」という割合の数値も、断定せずに最新の公表資料で裏を取ることをおすすめします。
最後にひとつだけ。NACCSでの申告手続きそのものと、外為法の輸出管理は、別々の話ではなく地続きです。通関の入口で他法令の確認に引っかからないためには、その前段にある該非判定と輸出審査を自社で回せる体制が要ります。「うちの製品は規制対象になるのか」「輸出管理の体制をどう整えればいいのか」で迷ったら、TRAFEEDの個別相談で状況をお聞かせください。輸出コンプライアンスの現在地を一緒に整理するところから、お手伝いします。
参考文献・一次情報
[^1]: NACCS(輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社)「NACCSとは/事業概要」 https://www.naccs.jp/aboutnaccs/ / JETRO「NACCSの概要:日本」 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010139.html [^2]: NACCS(輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社)会社概要(2008年10月に独立行政法人通関情報処理センターを特殊会社化して発足) https://www.naccs.jp/aboutnaccs/aboutnaccs.html [^3]: 関税法(昭和29年法律第61号)第67条・第67条の2・第70条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000061 [^4]: 関税法基本通達(昭和47年3月1日蔵関第100号)第6章第1節 一般輸出通関 67-1-1〜67-1-7(税関PDF) https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kihon/TU-S47k0100-s06-01~02.pdf [^5]: 税関「5001 輸出通関手続の概要」(カスタムスアンサー) https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/extsukan/5001_jr.htm [^6]: 税関「NACCSを使用して行われる輸出入申告に係る開庁時間外の取扱いについて」(区分1・2・3のフロー図) https://www.customs.go.jp/tsukan/naccs-time.pdf [^7]: 税関「輸出入申告官署の自由化について」(2017年10月8日実施) https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/jiyuka.html [^8]: 通関業法(昭和42年法律第122号)第2条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000122 [^9]: 経済産業省「電子申請(NACCS外為法関連業務)」 https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/05_naccs/naccs.html [^10]: NACCS掲示板(経済産業省 貿易管理部)「輸出許可申請の電子化について」(2022年7月以降 原則電子申請のみ) https://bbs.naccscenter.com/pickup/gaitame.html
