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ネオクラウドとは何か|CoreWeaveとNebiusはなぜ強いのか、そしてフィジカルAI時代に日本が「データ主権のあるGPU基盤」を持つべき理由

公開2026-09-12濱本 隆太

CoreWeave(米国)とNebius(オランダ)は、GPUを大量に確保してAI企業に貸し出す「ネオクラウド」の代表格です。2026年第2四半期の決算資料をもとに、両社が何をしている会社で、なぜNVIDIAが出資するほど評価され、どこが強いのかを初心者向けに解説します。あわせて、日本のGPU整備の現在地を経産省の認定実績で確認し、ヒューマノイドやドローンがセンサーの塊になるフィジカルAI時代に、計算する場所とデータを置く場所を自分で選べる「データ主権のあるAI基盤」がなぜ重要になるのかを考えます。

ネオクラウドとは何か|CoreWeaveとNebiusはなぜ強いのか、そしてフィジカルAI時代に日本が「データ主権のあるGPU基盤」を持つべき理由
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。CoreWeave(コアウィーブ)とNebius(ネビウス)という会社の名前を聞いたことがあるでしょうか。片方は米ニュージャージー州の会社で、もう片方はオランダ・アムステルダムの会社です。どちらも一般の人にはほとんど知られていませんが、2026年のAI業界では、NVIDIAが自ら出資し、MicrosoftやMeta、OpenAIが数兆円規模の契約を結ぶ相手として、最も注目される企業に入ります。

この2社がやっていることを一言で言えば、「NVIDIAのGPUを誰よりも大量に確保し、AIを作りたい会社に貸す」です。それだけの商売が、なぜこれほど巨大になり、なぜ強いのか。そして、その動きを見ながら日本は何をすべきなのか。私は、日本国としてもデータ主権を守りながらGPUインフラを積み増していく必要があり、フィジカルAI、つまりヒューマノイドやドローンのように現実世界で動くAIの時代には、その重要性がさらに高まると考えています。この記事では、両社の会社概要を決算資料に沿ってできるだけ詳しく紹介したうえで、その強さの理由と、日本にとっての意味を、初めてこの話題に触れる方にも分かるように整理します。自社のAI基盤がどの水準にあるかを先に確かめたい方は、AI活用レディネスの無料診断から入ってみてください。

ネオクラウドとは何か。ハイパースケーラーとの違いを初心者向けに

まず言葉の整理からです。AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudのような総合クラウドは、業界では「ハイパースケーラー」と呼ばれます。メール、データベース、ストレージ、動画配信、認証、何百ものサービスを一つの巨大なプラットフォームで提供する事業者です。これに対して、AIの学習や推論に必要なGPU(画像処理装置。AIの計算に最も向いた半導体)を専門に確保し、それを貸し出すことに事業を絞った新しいクラウド事業者が、2023年ごろから「ネオクラウド」と呼ばれるようになりました。

GPUを貸すとはどういうことか、身近な例で考えてみます。AIモデルを作るには、何万枚ものGPUを数か月間、休みなく動かす必要があります。1枚数百万円のGPUを何万枚も買い、それを収める建物と電力を用意し、冷やし、故障に備えるのは、AIモデルを作る会社にとって本業ではありません。そこで、GPUと建物と電力を丸ごと用意して「時間貸し」する会社が必要になります。ホテルが部屋を貸すように、ネオクラウドはGPUの計算能力を貸します。ただし、ホテルと違うのは、部屋が空いてから客を探すのではなく、建物を建てる前に客と数年契約を結び、その契約を担保にお金を借りて建てる、という順番で動く点です。

ここが、ネオクラウドを理解するうえで最も大切なところです。彼らの決算資料を読むと、売上の何倍もの「受注残」や「契約済み電力」という数字が並びます。受注残とは、すでに契約で約束された将来の売上のこと。契約済み電力とは、これから建てるデータセンターに何ギガワットの電力が確保されているかという数字です。データセンターの規模は、いまやサーバーの台数ではなく電力で語られます。1ギガワットは、およそ原子力発電所1基分の出力です。それだけの電力を、GPUの計算だけのために使う施設が、世界中で建てられています。

この記事で繰り返し出てくる言葉を、ここで一度そろえておきましょう。「学習」とは、大量のデータからAIモデルを作る工程で、何万枚ものGPUを数か月動かす最も重い計算です。「推論」とは、できあがったモデルに質問を投げて答えを返してもらう工程で、私たちがチャットで使うときの計算がこれに当たります。「オープンウェイトモデル」とは、モデルの中身(重み)が公開されていて、誰でも自分のサーバーにダウンロードして動かせるモデルのことです。「リージョン」とは、クラウド事業者が設備を置いている地域の単位で、東京リージョンなら物理的に日本国内のデータセンターで計算されます。「ARR」は直近1か月の売上を12倍した年間換算の売上、「受注残」は契約済みでこれから計上される売上、「メガワット」「ギガワット」はデータセンターが使える電力の大きさ。ここが分かっていれば、両社の決算資料は読めます。

ネオクラウドの強さは、この「先に契約で埋め、電力を押さえ、資金を集め、誰よりも速く建てる」という実行力にあります。ハイパースケーラーも同じことをしていますが、彼らは自社のサービスのためにGPUを使う立場でもあり、他社に貸す優先度は必ずしも高くありません。そこに、GPUを貸すことだけに専念する会社が入り込む余地が生まれました。実際、2026年に入ってから、MicrosoftもMetaもOpenAIも、自社で建てるだけでは間に合わず、ネオクラウドから借りる契約を積み増しています。

CoreWeaveの会社概要。暗号資産の採掘から、1,040億ドルの受注残へ

CoreWeaveは2017年に設立され、本社は米ニュージャージー州リビングストンにあります1。もともとは暗号資産のマイニング(採掘)のためにGPUを集めていた会社で、暗号資産市場の変動を受けて、GPUをAI向けに貸し出す事業へ転換しました。この転換が、結果として時代に最も合った判断になります。

2025年3月28日、同社はNasdaqに上場しました。公開価格は1株40ドルで、当初の想定より低い水準に落ち着き、初日の終値も40ドルと動きませんでしたが、調達額は15億ドルに達しました2。上場前後から、同社の名前を一躍有名にしたのが大口顧客との契約です。OpenAIとは2025年3月に最大119億ドル、5月に40億ドル、9月に65億ドルと契約を積み増し、累計は約224億ドルになりました3。Metaとは2025年9月30日に、2031年12月までで最大142億ドルの契約を結び4、2026年4月にはさらに210億ドルを追加したと報じられています4

そして2026年1月26日、NVIDIAがCoreWeaveに20億ドルを出資しました。1株87.20ドルでの引き受けで、CoreWeaveが2030年までに5ギガワット超のAIファクトリー(NVIDIAはAI向けデータセンターをこう呼びます)を建てる計画を加速させるためのものです。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは発表の中で、「CoreWeaveのAIファクトリーに関する深い専門性、プラットフォームソフトウェア、そして比類のない実行速度は、業界全体に認められている」と述べています5。GPUを作る会社が、GPUを買う側の会社に出資し、しかも半導体の話ではなく「実行速度」を褒めているわけです。これが、ネオクラウドという業態がNVIDIAにとってどれほど重要かを示しています。NVIDIAの言う「AIファクトリー」とは、GPUを何万枚も並べて、電力を入れると知能(学習済みモデルや推論結果)が出てくる工場、という比喩です。工場を建てるのが速い会社ほど、NVIDIAの新しいGPUを早く大量に買ってくれます。出資は、その関係を固定するための投資でもあります。

数字を見てみましょう。2026年8月11日に公表された2026年第2四半期の決算では、売上が25億7,500万ドルで、前年同期の12億1,200万ドルから112%増えました。調整後EBITDA(利払い、税金、減価償却などを差し引く前の利益)は15億1,000万ドルで、利益率は59%です。一方で純損失は6億2,600万ドルでした。受注残は6月30日時点で約1,040億ドル。稼働中の電力容量は1.5ギガワットで、この四半期だけで約500メガワット増え、契約済みの電力は約3.7ギガワットに達しています。設備投資は四半期で64億2,200万ドル、上半期の累計で141億1,700万ドルです1。この四半期には、CaterpillarやGrammarly、Isomorphic Labs、Sunday Roboticsといった新規顧客と、Databricks、Runway MLなどの既存顧客の拡大も発表されました1

ここで、初めてこの数字を見る方に注意していただきたいことがあります。売上が2倍になり、利益率が59%ある会社が、なぜ6億ドル以上の赤字なのか。答えは、借金の利息。GPUと建物を先に買うために巨額の負債を抱えており、その利払いが利益を上回っています。ネオクラウドは、契約という「将来の売上の約束」を担保に、いま借りて、いま建てる商売です。受注残1,040億ドルという数字は、その約束の大きさであると同時に、履行しなければならない義務の大きさでもあるわけです。私は、この構造を理解せずに「AIインフラ企業は儲かる」と言うのは危ういと感じています。強い会社であることと、リスクの大きい会社であることは、両立するのです。

もう一つ、初心者の方が見落としやすい点を補足します。受注残1,040億ドルのうち、大きな部分をOpenAIとMetaという少数の顧客が占めています。少数の大口顧客に依存する事業は、契約が更新されれば安泰ですが、顧客側の計画が変われば一気に揺れます。CoreWeaveが第2四半期にCaterpillarやGrammarlyのような、AI専業ではない企業を新規顧客として挙げているのは1、この集中を薄めようとしている表れだと私は見ています。建設機械のメーカーや文章校正ツールの会社がGPUを借りる時代になった、という事実そのものも、AIの需要がAI企業の外へ広がっていることの証拠でしょう。

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Nebiusの会社概要。Yandexから生まれ、フィンランドの排熱で街を暖める

Nebiusは、オランダ・アムステルダムに本社を置くAIクラウド事業者です。出自が少し複雑で、もともとはロシアの検索大手Yandexの持株会社であるオランダ法人Yandex N.V.でした。同社は2024年7月にロシア事業の売却を完了し6、8月にNebius Groupへ社名を変更、10月21日にNasdaqでの取引を再開しました7。ロシア事業を切り離した後に残ったのが、フィンランドのデータセンターと、クラウドの技術者たちだったのです。

その中核拠点が、フィンランドのマンツァラにあるデータセンターです。もともと25メガワットだった容量を75メガワットへ3倍にする拡張が進められ、最大6万枚のGPUを収容できる規模になります。このデータセンターには、サーバーの排熱を年間約2万メガワット時ぶん回収し、地域の住宅の暖房に使う仕組みがあります8。AIの計算で出た熱で街を暖めているわけです。北欧らしい発想ですが、電力と冷却がデータセンターの最大の制約になっている今、これは単なる美談ではなく競争力の一部です。

2024年12月には、NVIDIA、Accel、Orbisなどが参加する7億ドルの私募増資を実施しました9。ここでもNVIDIAが株主として入っています。そして2025年9月8日、Microsoftとの契約を発表します。米ニュージャージー州バインランドの新しいデータセンターからAIインフラを提供する契約で、2031年までの契約総額は約174億ドル、Microsoftが追加のサービスや容量を取得した場合は約194億ドルに増える内容です10。11月には、Metaとも5年間で約30億ドルの契約を結びました。

2026年8月12日に公表された第2四半期の決算資料と、創業者兼CEOのアルカディ・ヴォロジ氏による株主向けレターには、この会社の現在地が詳しく書かれています。売上は5億8,230万ドルで、前年同期の1億510万ドルから454%増。中核のAIクラウド事業は5億7,500万ドルで514%増、グループ売上の98%を占めます。年間換算売上(ARR。直近1か月の売上を12倍した数字)は30億ドルに到達しました。調整後EBITDAは2億3,620万ドルで、AIクラウド事業の調整後EBITDAマージンは50%です11

容量の面では、2026年末時点の契約済み電力の目標を、前四半期に示した4ギガワット超から5ギガワットへ引き上げました。2027年からは年間1ギガワット以上のペースで展開する計画です。拠点はフィンランド、エストニア、英国、フランス、スペイン、イスラエル、そして米国のカンザスシティ、ニュージャージー、ミズーリ、オクラホマ、ペンシルベニア、ミネソタと広がっています。Microsoft向けの容量はすべて納入を終え、2件目のMeta契約に向けた建設は2027年初の稼働を目指して進んでいます。顧客からのコミットメントは400億ドル、2026年中に90億ドル超の前払いを受け取る見込みだと同レターは述べています11

もう一つ、Nebiusを理解するうえで重要なのが、GPUの時間貸しにとどまらないソフトウェアの層です。同社は「Token Factory」というマネージド推論サービス(学習済みのAIモデルをAPIとして呼び出せるサービス)を提供し、Kimi K3、GLM-5.2、MiniMax 3、NVIDIA Nemotronといったオープンウェイトモデル(重みが公開され、誰でも自分の環境で動かせるモデル)を載せています。第2四半期には、この推論ワークロードが3倍超に増えました。自社のデータセンターを建てるだけでなく、パートナーのデータセンターにNebiusのソフトウェア基盤を展開する「アセットライト」のモデルも始めています11。インフラの下の層から始めて、だんだんと使いやすいアプリケーション寄りの層へ上がってきているのが分かります。ここはCoreWeaveとの違いとして、後で触れます。

オープンウェイトモデルを推論サービスとして提供している点は、この記事の後半のテーマである「データ主権」と直接つながるので、少し補足しておきます。オープンウェイトモデルは、重みが公開されているので、Nebiusのクラウドで動かすことも、日本の事業者のクラウドで動かすことも、自社のサーバーで動かすことも、原理的にはすべて可能です。つまり「モデルを誰が作ったか」と「モデルをどこで動かすか」を切り離せます。中国の研究機関が作ったモデルを欧州のデータセンターで動かし、そのデータは欧州から出ない、という構成が成り立つのはこのためです。Nebiusが欧州の事業者として、Token Factoryにさまざまな出自のオープンウェイトモデルをそろえていることは、「モデルの選択肢」と「データを置く場所」を顧客が別々に決められる、という価値を売っているのだと理解できるでしょう。

なお、2026年8月には総額57億5,000万ドルの転換社債を発行しています12。CoreWeaveと同じく、Nebiusも巨額の資金を先に集めて建てる会社です。

なぜ強いのか。両社に共通する三つの型と、それぞれの持ち味

ここまで数字を並べてきましたが、では両社の強さの正体は何か。私の理解では、共通する型が三つあります。

第一に、需要を「契約」で先に固定していることです。両社とも、売上のはるか先に受注残や顧客コミットメントがあります。CoreWeaveの受注残1,040億ドル、Nebiusの顧客コミットメント400億ドル。これは投機的にGPUを買い込んでいるのではなく、MicrosoftやMeta、OpenAIという、世界で最もAIの計算を必要とする顧客と、数年単位の契約を結んでから建てていることを意味します。Nebiusのレターは、契約を短期(3〜6か月、割増価格)、中期(1〜3年、中核事業)、長期(投資適格の顧客、資金調達の担保)の三層で組み立てていると説明しています11。契約の組み合わせ方そのものが事業設計です。

第二に、電力と土地を、GPUより先に押さえていることです。GPUは買えても、それを動かす電力が確保できなければデータセンターは建ちません。CoreWeaveの「契約済み電力3.7ギガワット」、Nebiusの「2026年末に5ギガワット」という数字は、両社の営業力が半導体の調達ではなく、電力会社や自治体との交渉に向いていることを示しています。Nebiusがフィンランドで排熱を地域暖房に回しているのも、電力と熱の制約を競争力に変える工夫です。

第三に、NVIDIAとの関係。GPUの供給が世界的に逼迫する中で、NVIDIA自身が株主になっている会社は、最新世代のGPUを早く、確実に受け取れます。NVIDIAがCoreWeaveへの出資発表で、Rubinプラットフォーム、Vera CPU、BlueFieldストレージといった次世代製品の展開に触れているのは5、両社が単なる顧客ではなく、NVIDIAの新製品を最初に大規模展開する「実証の場」でもあることを意味します。NVIDIAから見れば、自社の最新製品をすぐに数万枚単位で買い、稼働させ、ソフトウェアまで整えてくれる相手は、育てる価値のあるパートナーです。ジェンスン・フアン氏の「比類のない実行速度」という言葉は、その評価の表れだと私は読んでいます。

一方で、両社の持ち味は同じではありません。CoreWeaveは、OpenAIやMetaといった超大口の顧客に、ギガワット級の容量を丸ごと提供する型に強みがあります。契約の規模が大きく、受注残も巨大。その分、顧客が数社に集中し、利払いも重くなります。Nebiusは、Microsoftとの大型契約を持ちつつ、Token FactoryやAI Studioのような、中小の開発者が自分で使えるサービスの層を厚くしています。オープンウェイトモデルをそろえて推論を売る、パートナーのデータセンターに自社基盤を載せる、といった動きは、GPUの時間貸しから「使いやすさ」で稼ぐ方向へ広げようとしているものです。正直なところ、どちらの型が最終的に勝つかは分かりません。ただ、日本の企業や政府が学ぶべきなのは、後者の「基盤を持ちながら、使いやすさまで自分たちで積み上げる」姿勢だと思っています。

両社の主な数字を並べておきます。いずれも2026年第2四半期の公表資料に基づく値です111

項目 CoreWeave Nebius
本社 米ニュージャージー州リビングストン オランダ・アムステルダム
上場 Nasdaq(2025年3月28日上場) Nasdaq(2024年10月21日に取引再開)
2026年Q2売上 25億7,500万ドル(前年同期比112%増) 5億8,230万ドル(同454%増)
将来の契約 受注残 約1,040億ドル 顧客コミットメント 400億ドル、ARR 30億ドル
電力容量 稼働1.5GW、契約済み約3.7GW 2026年末に契約電力5GWを目標
主な大口顧客 OpenAI、Meta Microsoft、Meta
NVIDIAとの関係 2026年1月に20億ドルの出資 2024年12月の7億ドル私募増資に参加
特徴的な層 ギガワット級の容量提供 Token Factory(推論)、アセットライト展開

日本企業が利用者として見るときの注意点。拠点、契約、データの行き先

ここで一度、投資家ではなく利用者の目に切り替えます。日本の企業がネオクラウドを直接使う場面は、まだ多くありません。それでも、AIサービスを提供する海外のスタートアップが裏側でこれらのGPUを借りていることは珍しくなく、自社が契約するAIサービスの計算がどこで行われているかをたどると、ネオクラウドに行き着くことがあります。

第一に確認したいのは拠点です。この記事で参照したNebiusの株主向けレターに並ぶ拠点は、フィンランド、エストニア、英国、フランス、スペイン、イスラエル、そして米国各州で、日本の拠点は出てきません11。CoreWeaveの決算資料にも、日本国内の拠点についての記載はありません1。つまり、両社のGPUを使うAIサービスにデータを渡すということは、現時点では、そのデータが米国か欧州で処理される可能性が高いということです。それが問題になるかどうかは、渡すデータの性質次第ですが、知らずに渡すのと、知ったうえで渡すのとでは、後で説明できるかどうかが違います。

第二に契約です。ネオクラウドの契約は、大口顧客との複数年契約が中心で、その条件は公開されません。日本の企業が間接的に利用する場合、自社と直接契約するのは、その上に載っているAIサービス事業者です。自社のデータがどこまで下の層に流れ、どこで保存され、誰がアクセスできるのかは、直接の契約相手に確認するしかありません。前の節で挙げた三つの問い、計算する場所、置く場所、学習に使われるかどうかを、契約相手に文書で答えてもらうことをお勧めします。

第三に、供給の継続性です。両社の決算資料が示すとおり、ネオクラウドは巨額の負債を抱え、少数の大口顧客に依存して成長しています。成長が続けば問題はありませんが、大口契約の見直しや金利の変動で事業の前提が変われば、その上に載るサービスの価格や提供条件も変わり得ます。自社の業務に組み込むAIサービスについては、代替手段を持っておくこと、そして自社のデータを自社の手元に取り戻せる形で保管しておくことが、供給側の変動に備える現実的な方法です。

日本の現在地。経産省の認定実績と、桁の違いをどう受け止めるか

では日本は今どこにいるのか。数字で確かめます。

日本政府は、経済安全保障推進法に基づいて「クラウドプログラム」を特定重要物資に指定し、GPUクラウドの供給確保計画を認定した事業者に助成する制度を運用しています。特定重要物資とは、供給が途絶えると国民の生活や経済活動に大きな支障が出るとして国が指定する物資のことで、半導体や蓄電池、重要鉱物と並んで、AI向けのクラウド基盤もその一つに数えられています。GPUを動かすクラウドが、電気やガスのように「途絶えてはいけないもの」として法律上位置づけられている、と理解してください。経産省が公表している認定実績を見ると、2023年4月の東京大学(量子コンピューターを活用したクラウド、最大約42億円)を皮切りに、さくらインターネット(約68億円、約6億円、約501億円)、ソフトバンク(約53億円、約421億円)、KDDI(約102.4億円)、ハイレゾ(約77億円)、GMOインターネットグループ(約19.3億円)、RUTILEAとAI福島(約25.6億円)、ゼウレカ(約11億円)と続き、11件の最大助成額を合計するとおよそ1,326億円になります13。2025年10月には、KDDI、さくらインターネット、ハイレゾの3社がGPUの相互再販などを行う「日本GPUアライアンス」を設立しました14

この1,326億円という数字を、両社と並べてみます。CoreWeaveの設備投資は、2026年第2四半期の3か月だけで64億2,200万ドルでした1。1ドル150円で換算すれば約9,600億円。日本政府がこれまでに認定した助成の上限合計の7倍以上を、一社が一つの四半期で投じています。Nebiusが2026年に受け取る見込みの顧客前払いだけで90億ドル超11、約1兆3,500億円です。桁が一つ違う、というのが率直な事実です。

ただし、この差を「日本は負けている」と受け止めるのは正確ではありません。両社の資金は、政府の補助金ではなく、顧客の契約と、その契約を担保にした借入と、資本市場から来ています。つまり差の本質は、補助金の額ではなく、「GPUを数年分まとめて買うと約束する顧客」が国内にどれだけいるか、そして「その約束を担保に建てる」という事業の型を回せる事業者がいるか、です。さくらインターネットやKDDIが投資を続け、アライアンスで供給を融通し合う動きは、その型に近づく一歩だと私は見ています。さらに言えば、日本の電力事情と土地の制約を考えると、ギガワット級のデータセンターを国内に何か所も建てるのは現実的ではなく、ネオクラウドの型をそのまま真似することがゴールでもありません。

日本にとって現実的な目標は、二つあると思います。一つは、国内で必要な計算をまかなえるだけのGPU容量を、複数の事業者で分散して持つこと。もう一つは、NebiusのToken Factoryのように、オープンウェイトモデルを国内のGPUで動かし、企業が「どのモデルを、どこで動かすか」を選べる層を国内に作ることです。海外の最新モデルを使う選択肢と、国内で動かせるモデルの選択肢を、同じ土俵に並べて選べる状態。それが、私の考える「データ主権のあるAI基盤」の最低条件です。二つ目の目標が特に重要だと思うのは、GPUの箱を国内に置くだけでは、企業はそれを使えないからです。企業が実際に必要としているのは「このモデルを、このデータで、この場所で動かしたい」という要望に応える窓口であり、Nebiusのような会社が推論サービスやパートナーモデルへ広げているのは、まさにその窓口を作る動きです。日本の事業者がGPUの調達競争で海外に勝つのは難しくても、国内の企業が求める「選べる窓口」を作る競争なら、地の利があります。国内リージョンでどのモデルが動くかについては、国内リージョンでLLMは動かせるのかを整理した記事を参考にしてください。

「データ主権」を三つに分解する。計算する場所、置く場所、学習に使われるかどうか

データ主権という言葉は、それだけでは何を守るのか分かりにくいので、企業の実務で確認できる三つの問いに分解しておきます。

一つ目は、「計算はどこで行われるか」です。AIに質問を投げたとき、その処理が東京のデータセンターで行われるのか、米国や欧州で行われるのか。これはクラウド事業者の「リージョン」の設定で決まります。同じモデルでも、国内リージョンで提供されているものと、海外リージョンでしか提供されていないものがあります。契約の前に、使いたいモデルがどのリージョンで動くのかを、事業者の公式ドキュメントで確認する必要があります。

二つ目は、「データはどこに置かれるか」です。計算が国内で行われても、ログや入力データの保存先が海外になっている構成はあり得ます。保存先、バックアップ先、そして事業者の運用担当者がどこからアクセスできるか。この三つを分けて確認します。国外の政府がデータにアクセスできる法的な仕組みは国ごとに違い、国外サーバのデータに外国政府は手を伸ばせるのかを条文で読んだ記事で整理したとおり、契約書の一文で解決する話ではありません。

三つ目は、「自社のデータがモデルの学習に使われるか」です。これは前の二つとは独立した問題で、国内で計算し、国内に保存していても、事業者が自社のデータを次のモデルの学習に使う条件になっていれば、その知識は事業者のモデルの中に残ります。契約で「再学習に使わない」と明記されているか、それが標準条件なのかオプションなのかを確認します。

この三つを分けて考えると、「データ主権のあるAI基盤」とは、この三つの問いのすべてに対して、自社の事情に合わせて答えを選べる基盤のことだと言えます。全部を国内に閉じることが正解ではありません。海外の最新モデルを海外リージョンで使ったほうがよい業務もあります。大切なのは、業務ごとに選べること、そして選んだ結果を自分で説明できることです。個人情報保護の法令は、この三つを確認した先で関わってくる論点であって、確認の出発点ではありません。

フィジカルAI時代に、データ主権の問題はなぜ大きくなるのか

ここまでは、ソフトウェアとしてのAIの話でした。しかし、これから数年で大きくなるのは、ヒューマノイドロボット、産業用ロボット、ドローン、自動運転車のように、現実世界で動くAI、いわゆるフィジカルAIです。ネオクラウドもこの領域に踏み込んでいます。Nebiusは2026年6月9日、英国と欧州のロボティクススタートアップ向けに「Physical AI Living Lab」を立ち上げました。NVIDIAのIsaac SimやIsaac Lab、Cosmosといったシミュレーションと合成データ生成の道具立てを、Nebiusのクラウド上で6か月間使える仕組みで、初回は2026年9月に始まります。同社のフィジカルAI責任者は「多くのロボティクスチームは強いモデルを作れる。ボトルネックは、それを先へ進めるためのシミュレーション、合成データ、計算資源をそろえることだ」と述べています15

なぜフィジカルAIでデータ主権の問題が大きくなるのか。理由は単純で、ロボットやドローンはセンサーの塊だからです。カメラ、マイク、深度センサー、LiDAR、触覚センサー。ヒューマノイドが工場や家庭で動くということは、その工場のレイアウト、機械の配置、作業者の動き、家庭の間取り、家族の会話が、映像と音声として絶えず記録され、AIの学習データになるということです。ソフトウェアのAIが扱うのは、人が入力した文書や質問でした。フィジカルAIが扱うのは、部屋の中そのものです。

具体的に想像してみてください。製造業の工場にヒューマノイドを入れると、ロボットは作業を覚えるために、治具の配置、部品の持ち方、熟練者の手の動き、工程の順番を映像として記録し続けます。それは、その工場が何十年もかけて磨いてきた製造ノウハウそのものです。家庭用のロボットなら、家の間取り、家族の顔と声、生活の時間帯が記録されます。物流のドローンなら、倉庫や敷地の上空からの映像が蓄積されます。これらは、文書のように「渡す前に内容を確認する」ことができません。センサーが動いている限り、勝手に流れ続けるデータです。

このデータが国外の事業者のクラウドに送られ、国外の法域で学習に使われるとき、日本の企業や個人は何を失うのか。私は三つあると考えています。一つ目は、学習の成果の主導権です。日本の工場で集めたデータで賢くなったロボットの知能は、そのデータを集めた企業のものになるとは限りません。二つ目は、供給の継続です。国外の事業者や政府の判断で、サービスが止まる、条件が変わる、特定の国への提供が制限されるといったことは、この数年で何度も現実になりました。三つ目は、どこで誰がそのデータを見られるかを、自分で決められなくなることです。これらは、個人情報の扱いという法令の話より前の、事業の主導権の話です。ロボットの通信モジュールが規制対象になりうる動きは、ヒューマノイドロボットと米国のカバードリストの記事で、フィジカルAIのデータがどこへ行くかは、フィジカルAI時代の情報流出リスクの記事で、それぞれ詳しく書いています。

だからこそ、「どこで計算し、どこにデータを置くか」を自分で選べる基盤が要ります。国外の最新モデルを使うべき場面は確かにあるでしょう。しかし、工場の中の映像や、家庭の中の音声のような、二度と取り戻せないデータについては、国内のGPUで、国内に置いたまま学習と推論を行う選択肢を持っておくべきです。ネオクラウドの動きは、その選択肢を「持てる国」と「持てない国」の差が、これから開いていくことを示しています。

当社のZEROCKは、この考え方を企業向けのAI基盤として形にしたものです。クラウド基盤はAWSの国内リージョン(東京)で運用し、AIモデルはAmazon Bedrock経由で国内リージョンを指定できます。一部の最新モデルはグローバルリージョンで推論しますが、いずれの場合もお客様のデータでモデルを再学習することはありません。企業の文書や図面を国内に置いたまま、GraphRAGで組織の知識を構造化し、用途に応じてモデルを選べるようにしています。詳しくはZEROCKのページをご覧ください。フィジカルAIのセンサーデータのように、まだ多くの企業が扱い方を決めていない領域についても、同じ原則で設計しています。

まとめ。「持てる国」になるために、企業が今から選んでおくこと

CoreWeaveとNebiusは、GPUを貸すという一見単純な商売を、契約で需要を固定し、電力を押さえ、NVIDIAと組んで最速で建てる、という型で巨大化させました。CoreWeaveは受注残1,040億ドルと契約電力3.7ギガワット、Nebiusは年間換算売上30億ドルと2026年末5ギガワットの目標。両社とも巨額の負債を抱えたまま走っており、強さとリスクは表裏一体です。

日本の現在地は、政府の認定助成の上限合計が約1,326億円、事業者のアライアンスが始まった段階です。桁は違いますが、差の本質は補助金の額ではなく、契約と資本と電力を回す事業の型と、それを支える国内需要にあります。そしてフィジカルAIの時代には、ロボットとドローンが集める「部屋の中の情報」が学習データになるため、計算する場所とデータを置く場所を自分で選べるかどうかが、事業の主導権そのものを左右します。

最後に、AIサービスやクラウドの事業者に確認すべきことを、質問の形にしておきます。この処理は日本国内のリージョンで行われますか。入力データとログの保存先とバックアップ先はどこですか。運用担当者はどの国からアクセスできますか。私たちのデータは、御社や第三者のモデルの学習に使われますか、使われないことは契約書のどこに書いてありますか。そして、サービスが終了するとき、私たちのデータはどの形式で、いつまでに返却されますか。この五つに事業者が明確に答えられるなら、その先の議論は前向きに進められます。答えられないなら、それ自体が一つの答えです。

企業が今からできることは、難しくありません。自社のAI利用で、どのデータが国外に出ていて、どのデータは国内に留めるべきかを一度書き出すこと。海外の最新モデルと国内で動かせるモデルを、同じ土俵で選べる構成にしておくこと。そして、フィジカルAIの導入を検討する際には、センサーデータの行き先を契約の段階で確認すること。この三つを決めておけば、ネオクラウドの動きがどう転んでも、選択肢を失わずに済みます。自社のAI基盤を国内に置いたまま設計したい方、フィジカルAIのデータの扱いを決めかねている方は、個別相談からお声がけください。状況を伺ったうえで、一緒に構成を考えます。

参考

数値はいずれも各社の公表資料に基づく2026年9月12日時点のものです。為替換算は1ドル150円の概算で、参考値です。

Footnotes

  1. CoreWeave Reports Strong Second Quarter 2026 Results — CoreWeave, Inc. — 2026年8月11日 2 3 4 5 6 7

  2. Nvidia-backed CoreWeave closes flat at $40 after biggest U.S. tech IPO since 2021 — CNBC — 2025年3月28日

  3. CoreWeave Expands Agreement with OpenAI by up to $6.5B — CoreWeave, Inc. — 2025年9月25日

  4. CoreWeave stock closes up 12% after company lands $14 billion deal with Meta — CNBC — 2025年9月30日(追加契約: Meta commits to spending additional $21 billion with CoreWeave — CNBC — 2026年4月9日 2

  5. NVIDIA and CoreWeave Strengthen Collaboration to Accelerate Buildout of AI Factories — NVIDIA — 2026年1月26日 2

  6. YNV announces successful completion of the divestment of its Russia-based businesses — Nebius Group N.V. — 2024年7月

  7. Nebius Group confirms schedule for resumption of trading on Nasdaq — Nebius Group N.V. — 2024年10月21日

  8. Nebius to triple capacity at Finland data center to 75 MW — Nebius Group N.V. — 2024年

  9. Nebius announces oversubscribed strategic equity financing of USD 700 million — Nebius Group N.V. — 2024年12月2日

  10. Nebius announces multi-billion dollar agreement with Microsoft for AI infrastructure — Nebius Group N.V. — 2025年9月8日

  11. Nebius reports second quarter 2026 financial results(プレスリリースおよび創業者兼CEO Arkady Volozhの株主向けレター) — Nebius Group N.V. — 2026年8月12日 2 3 4 5 6 7

  12. Nebius Group announces closing of private offering of convertible senior notes, with aggregate gross proceeds of approximately $5.75 billion — Nebius Group N.V. — 2026年8月

  13. クラウドプログラム(経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定実績) — 経済産業省

  14. KDDI、さくらインターネット、ハイレゾ、GPUの相互再販などを行う「日本GPUアライアンス」設立 — さくらインターネット株式会社 — 2025年10月21日

  15. Nebius launches Physical AI Living Lab for UK and European robotics startups built with NVIDIA technologies — Nebius Group N.V. — 2026年6月9日

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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2026-09-12