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国内リージョンでLLMは動かせるのか|各社の可用性と、規制が本当に求めていること

公開2026-09-05濱本 隆太

「東京リージョンで使えます」と「東京リージョンだけで処理されます」は別の話です。AWS・Azure・Googleの公式ドキュメントを読むと、最新モデルほど国内で完結できない構造が見えてきます。可用性の事実と、国内所在を本当に求めている制度を、条文と原文で整理しました。

国内リージョンでLLMは動かせるのか|各社の可用性と、規制が本当に求めていること
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

先日、ある製造業の情報システム部門の方から、こんな相談を受けました。「クラウドのAIを使いたいのですが、社内の規程でデータを国外に出せません。東京リージョンを選べば大丈夫ですよね」。

私はその場で答えられませんでした。正確には、答えられるつもりでいたのに、確認したら答えが変わったのです。

各社の公式ドキュメントを一次情報で読み直したところ、「東京リージョンで使えます」と「東京リージョンだけで処理されます」は、まったく別の話でした。しかも、その差は年々広がっているように見えます。

この記事では、AWS・Microsoft・Google・Fireworks AIの公式ドキュメントに何が書かれているのかを、原文のまま並べます。そのうえで、国内にデータを置くことを本当に要求している制度がどこにあるのかを、条文で整理します。先に結論を言うと、多くの企業が理由にしている個人情報保護法は、その根拠になりません。

なお、モデルの提供状況は動きます。この記事の内容は2026年9月5日時点に取得した公式ドキュメントに基づきます。自社の検討では必ず最新版を確認してください。自社の体制がどこまで整っているかを先に把握したい方には、AI活用レディネスの無料診断を用意しています。

「東京で使えます」が意味していないこと

AWSのBedrockは、モデルごとに「モデルカード」という詳細ページを公開しています。そこには、そのモデルをどういう形で呼べるかが3つに分けて書かれています。In-Region(指定したリージョンから出さない)、Geo(決められた地理の範囲内でリージョンをまたぐ)、Global(世界中に振り分ける)の3つです1

日本の会社が見るべき欄は2つだけです。東京(ap-northeast-1)が In-Region に入っているか。そして Geo の欄に jp. で始まるIDがあるか。jp. は日本国内に閉じたクロスリージョン推論で、東京と大阪の間で振り分けられます。主要なモデルのカードを1枚ずつ開いて、この2点を確認しました。

モデル 東京 In-Region 日本Geo(jp. Global
Anthropic Claude Opus 5 なし
Anthropic Claude Sonnet 5 なし
Anthropic Claude Sonnet 4.5 あり
Anthropic Claude Haiku 4.5 あり
Amazon Nova 2 Lite あり
DeepSeek V3.2 非対応 非対応
Qwen3 32B 非対応 非対応
gpt-oss-120b 非対応 非対応

上半分と下半分で、話が逆になっているのが分かるでしょうか。

まず上の4行。Anthropicのモデルは、In-Region の欄そのものが「N/A」と書かれています。東京に限らず、どのリージョンにも固定できないという意味です。日本に留めたいなら Geo の jp. を使うことになります。ここで最新世代を見てください。Opus 5 と Sonnet 5 に並んでいるのは us. eu. au. の3つだけ。jp. がありません。 一方、ひとつ前の Sonnet 4.5 と Haiku 4.5 には jp. があります。

読み替えると、こうなります。処理を日本国内に留めたままAnthropicのモデルを使いたいなら、選べるのは一世代前だということ。最新を取れば国外に出て、国内に留めれば世代が下がる。二択を迫られている状態です。Amazon自身の Nova 2 Lite も東京の In-Region は「✗」で、日本国内に留めるなら jp. のGeoを使う形になっていました。

そして下の3行。DeepSeek V3.2、Qwen3 32B、gpt-oss-120b といったオープンウェイトのモデルは、東京の In-Region に「✓」が立っています。しかもGeoもGlobalも「非対応」。裏を返すと、これらは東京から出しようがないのです。1つのリージョンに処理を閉じるという一点だけで見れば、いま最も素直な選択肢はオープンウェイトのほうでした。

正直なところ、調べ始めた時点では逆の結果を予想していました。オープンウェイトは後回しにされ、商用の主力モデルこそ手厚く各国に配られているだろう、と。実際は反対です。専有モデルほど計算資源を集約したい事情があり、オープンウェイトはリージョン単位で置きやすい。この非対称が、いまの日本の選択肢の形を決めています。

念のため補足すると、私はこれをAWSの怠慢だとは思っていません。最新モデルを動かすGPUは希少で、しかも需要が世界中で同時に立ちます。限られた計算資源を集約して運用したほうが、レイテンシも安定性も稼げます。合理的な判断です。ただ、その合理性は利用者側の制約とは別の話として存在します。

ちなみに、AWSとGoogle Cloudを併用したセキュアな構成についてはClaude CodeをBedrockとVertexで安全に動かす構成でも触れました。あわせて読んでいただくと、どこで境界を引くかの感覚がつかめると思います。

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Microsoftは「リージョン内は拡大しない」と書いている

Azure側はもっと踏み込んだ書き方をしています。Microsoft Learnの公式ドキュメント(2026年9月4日更新版)で、モデルごとの提供形態が Standard regions、Data Zone、Global の3つに整理されています2

ファインチューニング対応モデルの表を抜き出すと、次のようになっていました。

モデル Standard regions(リージョン内) Data Zone Global
gpt-5 (2025-08-07) North Central US / Sweden Central US
o4-mini (2025-04-16) East US2 / Sweden Central US
Qwen-32B Not supported US
Llama-3.3-70B-Instruct Not supported US
gpt-oss-20b Not supported US

最新のフラグシップモデルでリージョン内提供が用意されているのは、米国と北欧の特定リージョンだけ。日本は入っていません。そして注目していただきたいのが、オープンウェイトのモデルです。Qwen、Llama、gpt-oss のいずれも、Standard regions が「Not supported」。リージョン内で動かす選択肢が、そもそも用意されていないということになります。

さらに同じドキュメントには、こう書かれています。

Global training provides more affordable training per token, but doesn't offer data residency.

ファインチューニングの節に置かれた一文ですが、Globalは安い代わりにデータレジデンシーは提供しない、と提供側が自分で書いています。Data Zoneを選んだときに保存と処理でどこまで話が変わるかは、AzureのData Zoneを選ぶとデータはどこまで日本に留まるのかに分けました。

もうひとつ、私が読んでいて手が止まった記述があります。

At this time, access to o1-mini standard (regional) deployments isn't being expanded.

リージョン内デプロイのアクセスを拡大していない、という趣旨の一文です。これは特定モデルについての記載ではありますが、方向性としては受け取り方が難しい。「これから国内リージョン対応が増えていくはずだ」という期待の側に、根拠が乏しいということです。私はこの1行を読んで、待っていても解決しない類の問題だと考えるようになりました。

Googleは「エンドポイントは保証しない」と書いている

Google Cloud側のドキュメントには、さらに直接的な記述があります。Vertex AIの生成AIのロケーション文書に、次の2文があります3

Important: Endpoints don't guarantee data residency or in-region ML processing.

Don't use the global endpoint if you have ML processing requirements, because you can't control or know which region your ML processing requests are sent to when a request is made.

前者を素直に読むと、エンドポイントを選ぶことはデータレジデンシーもリージョン内でのML処理も保証しない、ということになります。これはグローバルエンドポイントに限った話ではなく、エンドポイント一般についての注記として置かれています。後者は、グローバルエンドポイントを使うとどのリージョンに処理が飛ぶか制御も把握もできない、と明言しています。

冒頭の相談に戻ります。「東京リージョンを選べば大丈夫ですよね」という問いに、私が即答できなかった理由がこれです。リージョンの選択とデータの所在は、利用者が素朴に想像するほど強く結びついていない。 提供側がドキュメントでそう書いているのだから、こちらの読み違いではありません。

誤解のないように書いておくと、Googleがこれを隠しているという話ではありません。むしろ明記している点は誠実だと思います。問題は、この注記が読まれないまま「リージョンを東京にしたので国内で完結しています」という説明が社内で通ってしまうことのほうです。監査や委託先審査で指摘されるのは、たいていそこです。東京で実際に呼べるモデルと、日本でのML処理が確約される項目が一致していないことは、Vertex AIの東京リージョンで何が使えるのかで表を突き合わせて確かめました。

リージョン指定に、値段がついた

もうひとつ、見過ごせない動きがあります。推論APIを提供するFireworks AIの価格ページに、次の一文があります4

Region-restricted deployments are priced at a 1.5x premium.

リージョンを限定したデプロイは1.5倍。オンデマンドのデプロイが対象です。同ページのGPU時間単価は、H100 80GBが7.00〜8.00ドル、B200 180GBが10.00〜13.00ドル、GB300 288GBが18.00〜20.00ドルと記載されています。

この1行が示しているのは、リージョン指定が「設定項目」から「課金対象」に変わったという事実です。そして課金対象になったものは、コスト比較の場面で真っ先に検討の俎上に載ります。性能と価格で並べられたとき、1.5倍の上乗せを正当化できる説明を持っている部署は、そう多くありません。

私はここに、この問題の本当の難しさがあると思っています。技術的に不可能なわけではないのです。「できるが、高い」「できるが、モデルが古い」という形で、少しずつ選ばれなくなっていく。 禁止されるよりも、この方が静かに進みます。気づいたときには、国内で完結する構成では最新のモデルが使えなくなっている。

では、国内に置く理由はどこにあるのか

ここまでを読んで、「やはり国内リージョンにこだわるべきだ」と感じた方もいるかもしれません。その前に、ひとつ整理しておきたいことがあります。国内所在を求める理由として最もよく挙げられる個人情報保護法は、実はその根拠になりません。

個人情報保護委員会のQ&A 7-53は、クラウドサービスの利用が法27条の「提供」に当たるかどうかについて、こう整理しています。クラウド事業者が契約上その個人データを取り扱わないこととなっており、適切なアクセス制御が講じられている場合、個人データを提供したことにはならない。したがって本人の同意は不要である、と5

さらにQ&A 7-54では、「提供」に当たらない以上、法25条の委託先監督義務も生じないとしています6。もちろん、自らが講じるべき安全管理措置は当然に必要です。ただ、それは「サーバーが国内にあるかどうか」とは別の論点です。

この点を曖昧にしたまま「個人情報があるので国内リージョンで」と社内規程に書いてしまうと、二重に損をします。ひとつは、必要のない制約でモデルの選択肢を狭めること。もうひとつは、規程の根拠を問われたときに答えられないことです。私は後者のほうが深刻だと思っています。根拠のない規程は、いずれ現場で無視されます。28条の越境提供まで含めた枠組みは、LLMのAPIに個人データを渡すと越境提供になるのかで条文から順に整理しました。

では、どこに本当の理由があるのか。実務で効いてくるのは、次のような領域です。

医療分野では、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が第7.0版(令和8年6月)まで更新されています7。経済産業省と総務省の提供事業者向けガイドラインと合わせて、いわゆる3省2ガイドラインとして運用されており、医療情報を扱うシステムには固有の要求が課されます。第7.0版でクラウドとAIがどう書かれたかは医療情報ガイドライン第7.0版で原文を追いました。金融分野ではFISCの安全対策基準が、政府調達ではISMAPが同様の役割を果たします。金融側の公開文書で何が言えるのかは金融機関の生成AIとデータの置き場所に、ISMAPの制度概要はISMAPとガバメントクラウドのセキュリティにまとめています。

そして経済安全保障の観点があります。技術情報がどこで処理され、どの国の法制度の下に置かれるのかは、輸出管理や供給網の管理と地続きの論点です。この文脈では、データの所在は「気持ちの問題」ではなく、説明責任の対象になります。

どの国の政府が、どこまでデータに手を伸ばせるのか。米国のCLOUD Act、中国の国家情報法ほか2法、EUのGDPR第48条、そして日本政府の国会答弁を条文で読んだ整理は、国外サーバのデータに外国政府は手を伸ばせるのかに分けて書きました。個人情報保護委員会が中国の3法について列挙した「存在しない規定」のリストは、どの国の基盤を評価するときにも使える軸になります。

整理すると、国内所在を求めるべき理由は制度側にあり、しかもその制度は業種によって違うということです。自社がどれに当たるのかを先に確定させないと、議論が前に進みません。

政府は「リージョン」と書かず、ISMAPで担保している

ここまでは提供各社のドキュメントを読んできました。では、日本政府はどう整理しているのでしょうか。

デジタル庁が2026年6月12日に決定した「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(DS-920)は、政府情報システムのルールとして遵守すべき内容を定めた文書です8。全64ページ。生成AIの調達で各府省庁が何を確認するかが書かれています。

まず、意外に思われるかもしれない事実から。このガイドラインの本文に「リージョン」という語は一度も出てきません。 私も検索して確認しました。政府はデータの所在をリージョン名で縛っていないのです。

代わりに使われているのがISMAPです。

本ガイドラインの対象となる生成 AI システムに関して、要機密情報を取り扱うクラウドサービスを調達する場合においては、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)の原則利用の考え方に基づき、原則として ISMAP 等クラウドサービスリストから選定した上で、別途、本ガイドラインによる対応を行う必要がある。

制度で担保する、という設計です。「政府もデータは国内にと言っている」という説明を社内で聞いたことがある方は、根拠を確認したほうがいいと思います。政府はそうは書いていません。では担保する側のISMAPが国内保存を求めているのかというと、管理基準を全文で検索した限り、そちらにも書かれていませんでした。ISMAPは「データを国内に置け」とは書いていないに検索結果ごと残しています。

ただし、国外にサーバを置くことのリスクについては、はっきり書かれています。

国外にサーバ装置を設置している場合は、現地の法令が適用され、現地の政府等による検閲や接収を受ける可能性がある。

これが政府の挙げる理由です。個人情報保護法ではなく、準拠法と、その国の政府による検閲や接収の可能性。前の章で「本当の理由は別のところにある」と書きましたが、政府文書はそれをこの一文で表現しています。あわせて同ガイドラインは、調達を伴わない利用であっても国家サイバー統括室の助言を求めたうえで判断するよう求めています。

政府の調達要件は「替えられること」を求めている

DS-920でいちばん驚いたのは、調達時の確認項目でした。ベンダーロックインの回避という分類の下に、次のような項目が並んでいます。

区分 確認項目
基本項目 利用している生成AIモデルはバージョン情報を含めて明示可能であること
任意追加(加点) 特定のモデルの利用が主たる目的ではない場合、複数の生成AIモデルの中から最適な生成AIモデルを選択又は組み合わせて利用する技術を有していること
基本項目 アーキテクチャ設計と実装において、ベンダーやシステムの移行の容易性も踏まえた開発や運用が可能であること
基本項目 メジャーアップデート又は移行に関する生成AI固有の観点からリスク軽減していること
任意追加(加点) 生成AIシステムが日本の言語環境や文化環境に即した出力が可能であること

対策例として挙げられている記述も具体的です。

モデルやベンダーの切り替えを想定した抽象化レイヤー(アダプタ)を用意し、「出口戦略」をアーキテクチャレベルで組み込む

ここは区分の読み分けが要ります。複数モデルの選択そのものは加点項目で、必須ではありません。原則必須の基本項目に入っているのは、使っているモデルのバージョンを明示できることと、移行の容易性を踏まえて設計・運用できることのほうです。

この差は、実務ではむしろ厳しいほうに効きます。「複数モデルを選べます」と言うだけなら構成の話で済みますが、バージョンを明示し、いつでも移行できる状態を保てというのは、設計そのものへの要求です。私はこの部分を読んで、自分が民間の相談で話していたことが、すでに公文書になっていたのだと気づきました。

DS-920は64ページあり、チェックシートの全項目や高リスク判定の枠組みまで含めると、ここでは書き切れません。項目ごとの読み方は政府の生成AI調達ガイドライン(DS-920)を読むにまとめました。

この観点は民間の調達にもそのまま使えます。「どのモデルを使うか」より「モデルを替えられるか」を先に確認する。バージョンが明示されるか、切り替えの抽象化層があるか、履歴やプロンプトを持ち出せるか。ここまで見てきたリージョンの制約を踏まえると、モデルを固定した構成は、いずれ選択肢のない場所に自分を追い込みます。

なお、同ガイドラインはバイアス対策の確認資料として「生成AIモデルの提供企業の所在国におけるAIに対する規律」を挙げています。モデルがどの国の規律の下にあるかを調達側が確認する枠組みが、すでに文書として存在しているということです。

背景の制度も整いました。人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)があり、それに基づく人工知能基本計画が令和7年12月23日に閣議決定され、適正性確保の指針が同年12月19日に人工知能戦略本部で決定されています。基本計画はその後さらに動いていて、令和8年7月14日に新しいものが閣議決定され、内閣府は令和7年12月23日版を過去の計画として掲載しています。AI事業者ガイドラインも第1.2版(令和8年3月31日)まで来ました9この1年で、参照すべき文書がひととおり揃ったという状況です。何がどう変わったのかはAI事業者ガイドライン第1.2版は何が変わったのかで原文と突き合わせました。

選ぶときに確かめる5つのこと

最後に、実際に基盤を選ぶときに私が確認するようにしている項目を書いておきます。抽象的なチェックリストではなく、ドキュメントのどこを見るか、という粒度で書きます。

第一に、使いたいモデルが In-Region で提供されているかを、提供各社の可用性表で確認します。「東京リージョンで利用可能」という営業資料の一文ではなく、モデル単位の表を見る。ここまで見てきたとおり、同じリージョンでもモデルによって答えが変わるからです。

第二に、クロスリージョンやグローバルのエンドポイントを使う場合、処理がどこで行われるのかが特定できるかを確認します。Googleのドキュメントのように「制御も把握もできない」と書かれている場合、それは監査で説明できないということです。

第三に、リージョン指定にコストが乗るかどうかを、価格ページで確認します。Fireworks AIの1.5倍のように明示されていることもあれば、暗黙のうちに選択肢が限られていることも。

第四に、モデルの追随性を見ます。今日その基盤で最新モデルが使えることよりも、半年後に出る次のモデルが同じ条件で使えるかどうかのほうが、運用では効いてきます。Microsoftの「拡大していない」という記載は、この観点で読むべき情報です。

第五に、自社に適用される制度を先に確定させることです。医療なのか、金融なのか、政府調達なのか、経済安全保障なのか。それとも、実はどれにも当たらないのか。当たらないのであれば、国内に置くことのコストと、最新モデルを使えないことのコストを、正面から比較すべきです。

私自身の考えを書いておくと、「国産だから安心」という言い方には与しません。安心かどうかを決めるのは所在地ではなく、契約とアクセス制御と、それを説明できる記録です。一方で、選べないことはリスクだとも思っています。使えるモデルが構成上の制約で決まってしまう状態は、技術の進歩をそのまま逃すことになります。

いま起きているのは、「国内で動かすこと」と「最新のモデルを選ぶこと」が両立しにくくなっている、という事態です。どちらを取るかの二択に見えますが、本当は二択にする必要はないはずだ、と私は考えています。

自社の要件がどの制度に当たるのか、いま使っているモデルが本当に国内で処理されているのか。この2つを整理するだけでも、議論の質はかなり変わります。エンタープライズでのAI基盤の設計についてはZEROCKでも取り組んでいますので、構成の相談があれば個別相談からお声がけください。オープンウェイトモデルそのものの評価については、DeepSeek V4のベンチマークQwenのオープンウェイト戦略も参考になるはずです。

Footnotes

  1. Amazon Web Services「Amazon Bedrock model cards」Amazon Bedrock ユーザーガイド。本記事の表は、各モデルのモデルカードに掲載された bedrock-runtime エンドポイントの In-Region endpoint URL、Geo inference ID、Global inference ID、および Regional Availability 表の ap-northeast-1(東京)行を、2026年9月6日に個別に取得して作成した。推論プロファイルの定義(In-Region は指定したリージョンから要求が出ないこと、Geo は定められた地理の範囲内で振り分けること)は同ユーザーガイドの Inference options による。 https://docs.aws.amazon.com/bedrock/latest/userguide/models-region-compatibility.html

  2. Microsoft Learn「Foundry Models sold by Azure」(2026年9月4日更新)。ファインチューニング対応モデルの Standard regions / Data Zone / Global 別の提供状況、「Global training provides more affordable training per token, but doesn't offer data residency.」「At this time, access to o1-mini standard (regional) deployments isn't being expanded.」「Open-source models (Ministral-3B, Qwen-32B, Llama-3.3-70B-Instruct, gpt-oss-20b) are only supported on Foundry resources and in the new Foundry UI.」の各記述は同ドキュメントによる。 https://learn.microsoft.com/en-us/azure/ai-foundry/openai/concepts/models

  3. Google Cloud「Locations」Gemini Enterprise Agent Platform ドキュメント。「Important: Endpoints don't guarantee data residency or in-region ML processing.」および「Don't use the global endpoint if you have ML processing requirements, because you can't control or know which region your ML processing requests are sent to when a request is made.」は同ドキュメントによる。 https://docs.cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/docs/learn/locations

  4. Fireworks AI「Pricing」。「Region-restricted deployments are priced at a 1.5x premium.」およびGPU時間単価(H100 80GB $7.00〜8.00/h、B200 180GB $10.00〜13.00/h、GB300 288GB $18.00〜20.00/h)は同ページによる。 https://fireworks.ai/pricing

  5. 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A Q7-53。クラウドサービス提供事業者が当該個人データを取り扱わないこととなっている場合、法第27条の「提供」に該当せず本人の同意は不要である旨を示す。 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q7-53/

  6. 個人情報保護委員会 同Q&A Q7-54。法第27条の「提供」に該当しない場合、クラウドサービス提供事業者に対する監督義務は課されない旨を示す。 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q7-54/

  7. 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(令和8年6月)」。 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html / 経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン 第2.0版」(令和7年3月改定)。 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/teikyoujigyousyagl.html

  8. デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン DS-920 行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」2026年(令和8年)6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定。位置づけは Normative(政府情報システムの整備及び管理に関するルールとして遵守する内容を定めたドキュメント)、全64ページ。初版は2025年5月27日。ISMAPの原則利用、国外サーバに関する留意、調達チェックシートの各項目は同ガイドラインによる。 https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/decb64eb-f26e-41cb-8d37-f3dd173108b8/59054b35/20260612_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf

  9. 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」令和8年3月31日。 https://www.soumu.go.jp/main_content/001064279.pdf / 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)、人工知能基本計画(令和7年12月23日閣議決定。現行は令和8年7月14日閣議決定のもの)、人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針(令和7年12月19日 人工知能戦略本部決定)。いずれもDS-920の第1章に参照文献として掲げられている。

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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