【2026年版】図面・設計データの輸出管理|みなし輸出と技術提供規制の実務ガイド
株式会社TIMEWELLの濱本です。
「海外工場に設計図面をメールで送る」「外国人研究者に技術資料を渡す」
これらの行為が輸出管理の規制対象になることをご存知ですか?
輸出管理というと「モノ(貨物)の輸出」をイメージしがちですが、実は技術情報の提供も同様に規制されています。さらに2022年の法改正で、国内での技術提供であっても規制対象となる「みなし輸出」の範囲が拡大されました。
本記事では、図面・設計データの輸出管理について、技術の該非判定の方法から、みなし輸出規制、軍事転用を防ぐ設計のポイントまで、実務に役立つ情報を解説します。
要約(この記事でわかること)
- 技術提供も規制対象:図面、仕様書、マニュアル等の提供も輸出許可が必要な場合あり
- みなし輸出:国内での外国人への技術提供も規制対象
- 2022年改正:「特定類型」に該当する居住者への提供も規制対象に
- 技術の該非判定:貨物の該非判定とは別に実施が必要
- 軍事転用防止設計:民生利用に限定する設計上の工夫
目次
- 技術提供規制の基本
- みなし輸出とは?2022年改正の影響
- 技術の該非判定:図面・設計データのチェックポイント
- 海外拠点への図面送付時の注意点
- 軍事転用を防ぐ民生設計のポイント
- よくある違反パターンと対策
- AIで技術管理を効率化する方法
技術提供規制の基本
輸出管理の2つの柱
日本の輸出管理は、「貨物の輸出」と「技術の提供」の2つを対象としています。
| 対象 | 根拠法令 | 規制内容 |
|---|---|---|
| 貨物の輸出 | 輸出貿易管理令別表第1 | 1項〜15項の貨物 |
| 技術の提供 | 外国為替令別表 | 1項〜15項の技術 |
技術とは何か?
外為法における「技術」には、以下のようなものが含まれます。
| 技術の形態 | 具体例 |
|---|---|
| 技術データ | 設計図面、製造方法書、仕様書 |
| プログラム | ソフトウェア、ソースコード |
| 技術報告書 | 研究レポート、試験データ |
| 作業知識 | 口頭での技術指導、ノウハウ |
技術提供の方法
「技術の提供」には、以下のすべての方法が含まれます。
| 提供方法 | 例 |
|---|---|
| 媒体での提供 | 紙、USB、CD-ROM |
| 電子的送信 | メール添付、クラウド共有 |
| 口頭 | 技術指導、セミナー、講義 |
| 視覚的提示 | 工場見学、実演 |
重要:技術の所有権は関係ありません。借りた技術資料を返却する行為も「技術提供」に該当します。
みなし輸出とは?2022年改正の影響
みなし輸出の定義
みなし輸出とは、日本国内での技術提供であっても、一定の条件を満たす場合は「輸出」と同等に扱い、許可申請を求める制度です。
従来のみなし輸出(〜2022年4月)
従来は、「非居住者への技術提供」が規制対象でした。
| 区分 | 規制 |
|---|---|
| 非居住者への提供 | 規制対象 |
| 居住者への提供 | 規制対象外 |
非居住者の例:
- 外国に住む外国人
- 日本滞在6ヶ月未満の外国人
- 日本国内の外国企業事務所職員
2022年改正後のみなし輸出
2022年5月1日の改正により、「特定類型」に該当する居住者への技術提供も規制対象になりました。
| 区分 | 規制 |
|---|---|
| 非居住者への提供 | 規制対象 |
| 特定類型の居住者への提供 | 規制対象(新設) |
| 一般の居住者への提供 | 規制対象外 |
特定類型とは?
「特定類型」とは、居住者(日本に住んでいる人)であっても、外国政府等から強い影響を受けている状態を指します。
| 特定類型の例 | 内容 |
|---|---|
| 外国政府との雇用契約 | 外国政府機関の職員として雇用されている |
| 多額の金銭報酬 | 外国政府等から多額の報酬を得ている |
| 指示従属関係 | 外国政府等の指示に従う契約がある |
なぜ改正されたのか
改正の背景には、以下のような事例がありました。
- 日本の大学に在籍しながら、本国政府の軍事研究機関と雇用関係を持つ研究者
- 本国政府から奨学金を受け、研究成果の報告義務を負う留学生
- 外国企業との雇用契約で、技術情報の共有を義務付けられている技術者
これらは「居住者」であっても、技術が外国に流出するリスクがあると判断されました。
技術の該非判定:図面・設計データのチェックポイント
技術の該非判定の手順
技術の該非判定は、以下の手順で行います。
【ステップ1】判定対象技術の特定
↓
【ステップ2】関連貨物の該非判定
↓
【ステップ3】判定対象項番の選定
↓
【ステップ4】該非判定の実施
ステップ1:判定対象技術の特定
まず、提供しようとする技術を明確にします。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 技術の内容 | 設計、製造、使用のいずれに関する技術か |
| 技術の形態 | 図面、プログラム、口頭指導等 |
| 提供先 | 誰に提供するか |
| 提供方法 | メール、対面、クラウド等 |
ステップ2:関連貨物の該非判定
技術の該非判定の前に、関連する貨物の該非判定を行います。
外為法の技術規制は、原則として「規制貨物の設計、製造、使用に関する技術」が対象です。
| 関連貨物の該非 | 技術の該非 |
|---|---|
| 該当 | 技術も該当する可能性が高い |
| 非該当 | 技術も非該当の可能性が高い(例外あり) |
例外:暗号技術など、貨物とは独立して規制される技術もあります。
ステップ3:判定対象項番の選定
技術が関連する可能性のある項番を特定します。
| 技術の種類 | 関連項番の例 |
|---|---|
| 工作機械の設計図 | 6項(材料加工) |
| 半導体の製造方法 | 7項(エレクトロニクス) |
| 暗号アルゴリズム | 9項(通信)、15項(機微品目) |
ステップ4:該非判定の実施
技術の仕様と規制基準を照合し、該当・非該当を判定します。
図面チェックのポイント
図面から軍事転用リスクを評価する際の観点を紹介します。
| チェックポイント | 確認内容 |
|---|---|
| 性能スペック | 規制基準を超える精度、速度、出力がないか |
| 材質指定 | 規制対象の素材(炭素繊維等)を使用していないか |
| 用途推定 | 設計から推定される用途が軍事利用可能か |
| 暗号機能 | 暗号化機能が含まれていないか |
| プログラム | 制御ソフトウェアが付属していないか |
「設計、製造、使用」の区別
技術規制は「設計、製造、使用」に関する技術が対象です。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 設計 | 製品を作るための設計情報 | 設計図面、CADデータ |
| 製造 | 製品を作るための製造ノウハウ | 製造手順書、工程表 |
| 使用 | 製品を使うための情報 | 操作マニュアル、保守手順 |
海外拠点への図面送付時の注意点
海外子会社への図面送付
海外子会社であっても、図面を送付する際は輸出管理の対象になります。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 図面の該非判定 | 規制技術に該当するか |
| 送付先国 | グループA国か、一般国か |
| 受取人 | 特定類型に該当する人がいないか |
| 用途 | 民生用途に限定されているか |
現地スタッフによる図面参照
海外工場で現地スタッフが日本本社の設計図面を参照する場合も、「技術提供」に該当する可能性があります。
| シナリオ | 規制適用 |
|---|---|
| 日本から図面をメールで送付 | 技術提供に該当 |
| 日本サーバーにある図面を海外からアクセス | 技術提供に該当 |
| 現地サーバーにコピーして参照 | 技術提供に該当 |
クラウドストレージの利用
図面をクラウドストレージ(Google Drive、Dropbox等)に保存し、海外からアクセス可能にする場合も注意が必要です。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 海外からのアクセスを許可 | 技術提供と見なされる可能性 |
| アクセス権限を日本国内に限定 | リスク軽減(ただし管理が必要) |
| 規制技術を含む場合 | 許可申請の検討が必要 |
出張時の技術情報の持ち出し
海外出張で技術資料を持ち出す場合も規制対象です。
| 持ち出し形態 | 規制適用 |
|---|---|
| 紙の資料 | 技術提供に該当 |
| ノートPCに保存 | 技術提供に該当 |
| USBメモリ | 技術提供に該当 |
対策:
- 該非判定を事前に実施
- 必要な許可を取得
- 持ち出しリストを作成・管理
軍事転用を防ぐ民生設計のポイント
民生利用限定設計とは
民生利用限定設計とは、製品が軍事目的に転用されにくいように、設計段階で工夫を施すことです。
これにより、輸出管理上のリスクを低減できる場合があります。
設計上の工夫
| アプローチ | 内容 |
|---|---|
| 性能の限定 | 規制基準を超えない性能に設計 |
| 用途の特化 | 特定の民生用途に特化した設計 |
| 機能の制限 | 軍事利用に必要な機能を省略 |
| ソフトウェア制限 | 特定用途以外では動作しない設計 |
具体例
例1:工作機械の精度
| 設計 | 結果 |
|---|---|
| 位置決め精度:5μm | リスト規制に該当 |
| 位置決め精度:8μm | リスト規制に非該当 |
規制基準(6μm以下)を超えない性能に設計することで、規制対象外にできます。
例2:カメラの用途特化
| 設計 | 転用リスク |
|---|---|
| 汎用高解像度カメラ | 偵察・誘導に転用可能 |
| スマートフォン内蔵カメラ | 転用困難 |
特定製品に組み込まれ、取り外しが困難な設計にすることで、転用リスクを低減できます。
例3:ドローン部品の制限
| 設計 | 転用リスク |
|---|---|
| 汎用モーター | 軍用ドローンに転用可能 |
| 特定機種専用モーター | 転用困難 |
特定の民生ドローン機種にのみ適合する設計にすることで、軍事転用を困難にできます。
注意点
民生設計にしても、以下の場合は規制対象になりえます。
- キャッチオール規制の対象となる場合
- 需要者が軍事関連機関の場合
- 最終用途が軍事目的の場合
重要:設計による対策は、取引審査の代替にはなりません。
よくある違反パターンと対策
パターン1:図面の無意識な提供
事例:海外の取引先から「製品の詳細仕様が知りたい」と言われ、設計図面をメールで送付。
問題:該非判定を行わずに規制技術を提供した可能性。
対策:
- 技術資料の提供前に該非判定を実施
- 提供可否を判断するフローを整備
パターン2:留学生への技術指導
事例:大学の研究室で、留学生に規制技術に関する研究指導を行った。
問題:みなし輸出規制への対応漏れ。
対策:
- 留学生の受入時に特定類型に該当しないか確認
- 研究テーマの該非判定を実施
- 必要に応じて許可申請
パターン3:海外出張での技術説明
事例:海外の顧客を訪問し、製品の技術説明を口頭で行った。
問題:口頭での説明も「技術提供」に該当。
対策:
- 出張前に説明内容の該非判定
- 規制技術を含む場合は許可申請
- 説明範囲を限定(公知技術のみ等)
パターン4:クラウドでのファイル共有
事例:業務効率化のため、設計データをクラウドストレージにアップロードし、海外子会社からもアクセス可能にした。
問題:アクセス可能にした時点で「技術提供」と見なされる可能性。
対策:
- アクセス権限の適切な管理
- 規制技術は国内限定サーバーで管理
- クラウドサービスの選定時にセキュリティ確認
パターン5:貨物と技術の判定漏れ
事例:貨物の該非判定は行ったが、同時に提供する技術資料の該非判定を忘れた。
問題:技術についても別途該非判定が必要。
対策:
- 貨物と技術を分けてチェックするプロセス
- チェックリストの活用
AIで技術管理を効率化する方法
技術管理の課題
技術の輸出管理には、以下のような課題があります。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 判断の難しさ | 技術の該非判定は貨物より複雑 |
| 件数の多さ | 技術提供は日常的に発生 |
| 追跡の困難さ | 電子データの流れを把握しにくい |
| 知識の偏在 | 輸出管理と技術の両方を理解する人材が少ない |
ZEROCK EX-Checkによる解決
**ZEROCK EX-Check**は、技術の輸出管理にも対応した輸出管理特化型AIエージェントです。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 技術の該非判定支援 | 技術資料から規制対象かを自動判定 |
| 関連貨物の特定 | 技術に関連する貨物を自動抽出 |
| みなし輸出チェック | 提供先が特定類型に該当するか確認 |
| 提供履歴の管理 | 誰に何を提供したかを記録 |
導入効果
| 指標 | 効果 |
|---|---|
| 判定時間 | 80%削減 |
| 判定漏れ | ゼロ |
| 記録の一元管理 | 実現 |
AIと人間の役割分担
| 作業 | AI | 人間 |
|---|---|---|
| 技術資料の分析 | ○ | 確認 |
| 関連貨物の特定 | ○ | 確認 |
| 規制該当可能性の判定 | ○ | 最終判定 |
| 提供可否の決定 | 提案 | 決定 |
| 記録の管理 | ○ | 監督 |
まとめ
技術提供規制のポイント
- 技術提供も規制対象:図面、プログラム、口頭指導すべて
- みなし輸出:国内での外国人への提供も規制
- 2022年改正:特定類型の居住者への提供も規制対象に
- 技術の該非判定:貨物とは別に実施が必要
実務上の注意点
- 海外拠点への図面送付は輸出許可が必要な場合あり
- クラウドでのファイル共有にも注意
- 出張時の技術資料持ち出しも規制対象
- 「設計で対策」しても取引審査は必要
企業に求められること
- 技術の該非判定プロセスの整備
- みなし輸出への対応体制構築
- 技術資料の管理体制強化
- 「知らなかった」では済まされない意識
TIMEWELLの技術管理支援
TIMEWELLは、技術の輸出管理を効率化するソリューションを提供しています。
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「図面1枚から、国の安全を守る」
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