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【完全解説】UK OTSI(Office of Trade Sanctions Implementation)の権限拡大と2026年執行強化|SEUC施行とUKSL一本化

2026-05-20濱本 隆太

英国OTSI(貿易制裁実施局)は2024年10月10日にDBT配下で設立。2026年初頭にECJUから輸出制裁ライセンスを移管、5月13日にSEUC(迂回輸出規制)施行、1月28日にはUKSLへ制裁リスト一本化。民事制裁金は最大£1M/違反額の50%でstrict liability。日本企業の英国経由取引・スクリーニング体制への影響と実務5ステップを整理しました。

【完全解説】UK OTSI(Office of Trade Sanctions Implementation)の権限拡大と2026年執行強化|SEUC施行とUKSL一本化
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株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。輸出管理担当のお客様からこの春いちばん多い質問が「英国の OTSI って結局なにをやる組織で、日本企業もいま何を準備すればよいんですか?」というものです。結論からお伝えすると、英国は2024年10月から制裁執行体制を大きく組み替え、2026年1月〜5月にかけて「制裁リスト一本化」「ライセンス移管」「迂回輸出規制(SEUC)」が立て続けに動き出しました。本記事では、輸出管理に馴染みのない方向けに、英国の制裁執行のいま起きていることと、日本企業がやるべきことを整理します。

この記事でわかること

  • 英国 OTSI が2024年10月10日に DBT 配下で設立された経緯と、2025年10月の「設立1周年」レビューの中身
  • 2026年初頭の権限拡大(ECJUから輸出制裁ライセンスを移管)と2026年5月13日施行の SEUC(迂回輸出規制)
  • 2026年1月28日に OFSI Consolidated List の更新が止まり、UK Sanctions List(UKSL)へ一本化される意味
  • 民事制裁金 最大£1M/違反額の50%、strict liability(厳格責任)の重さ
  • 日本企業に効く4つの影響と、実務でやるべき5ステップ

まず用語を3つだけ理解する

用語 意味
OTSI Office of Trade Sanctions Implementation/英国貿易制裁実施局。DBT(Department for Business and Trade、ビジネス通商省)配下で、貿易制裁の 民事執行 を担当する。日本でいえば経産省安全保障貿易管理課の「民事ルート」にあたるが、strict liability ベースで運用される点が大きく違う。
SEUC Sanctions End-Use Controls/制裁エンドユース規制。戦略物資に該当しない貨物・関連技術であっても、英政府が「迂回リスクあり」と通知(inform)した場合にライセンス取得が義務化される仕組み。米国 EAR の "Is Informed" レターに似た発想で、2026年5月13日に施行された。
UKSL UK Sanctions List/英国制裁リスト。FCDO(Foreign, Commonwealth and Development Office、外務・連邦・開発省)が一元管理。2026年1月28日に OFSI Consolidated List の更新が停止し、英国の制裁指定情報は UKSL に集約された。

この3語を頭に入れていただければ、本文は十分追えます。本文中で初出する略語(HMRC・OFSI・ECJU・TASSCER 等)は、それぞれの章で短く補足します。

【重要訂正】OTSI は2024年10月設立、HMRC配下ではなく DBT 配下

社内勉強会や一部の解説記事で「OTSI は2025年10月に HMRC 配下で設立」と紹介されることがありますが、正しくは次のとおりです。

項目 正しい内容
設立日 2024年10月10日(2025年ではない)
所属 DBT(Department for Business and Trade)配下(HMRC ではない)
根拠法 Trade, Aircraft and Shipping Sanctions (Civil Enforcement) Regulations 2024(通称 TASSCER 2024
2025年10月の位置づけ 設立から1年が経過した「One Year Update」公表のタイミング

HMRC(His Majesty's Revenue and Customs、英国歳入関税庁)は刑事執行・関税法執行を担当しており、OTSI と HMRC は 同じ貿易制裁を「民事」と「刑事」で分担する並立関係 にあります。日本企業の社内資料・eラーニング・スクリーニングSOPに古い記述が残っていないか、この機会に必ず確認してください。

該非判定の属人化を、AIで解消する。

経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDなら、判定時間を約7割削減し、判定根拠を構造化データで保存できます。

英国の三層体制|OTSI/HMRC/OFSI の役割分担

英国の制裁執行は、貿易・刑事・金融の3軸で機関が分かれています。

領域 担当機関 親組織
戦略物資(軍事品・デュアルユース品)の輸出ライセンス ECJU(Export Control Joint Unit) DBT
戦略物資関連の刑事捜査・訴追/関税法執行 HMRC HM Treasury(財務省)
貿易制裁の 民事執行(金融・専門サービス・輸送・貨物等) OTSI DBT
金融制裁(資産凍結)の執行 OFSI(Office of Financial Sanctions Implementation) HM Treasury
制裁指定・リスト管理(UKSL) FCDO 外務・連邦・開発省

ここを誤解しやすいのですが、**「資産凍結=OFSI」「貨物・サービス取引=OTSI」**と覚えると整理が早いです。たとえば UKSL 掲載者へ送金しただけなら OFSI、UKSL 掲載者向けに貨物や法務サービスを提供したら OTSI、悪質で刑事相当と判断されれば HMRC へ照会、という流れになります。

民事ルート(OTSI)の整備によって、英国の制裁執行は「刑事一本のため敷居が高く、実効性に欠ける」と長年言われてきた状況から、民事の「警告書→制裁金→公表」という段階的執行が可能な体制 に変わりました。これは EU・米国と並ぶ「実効的な執行」を志向した制度改革といえます。

2025年10月 One Year Update|146件違反報告/60件ライセンス申請

OTSI は2025年10月、設立1周年のレビューを公表しました(One Year Update、PDF版あり)。1年目の活動実績は次のとおりです。

ライセンス申請

項目 件数
受領件数 60件
大半の対象 Russia(Sanctions)(EU Exit)Regulations 2019 下の professional and business services 提供
審査完了 28件
- フル/部分許可 12件
- 却下・取下げ・誤申請・ライセンス不要分類 16件

違反報告(potential breaches)

項目 内容
受領件数 146件
報告元の構成 84%が mandatory reporting 義務を負うセクター(金融サービス中心)
民事制裁金の実績 2025年10月時点で0件(複数案件が調査中)

民事制裁金の実績が「ゼロ」だった点に注目してください。設立から1年目は 執行体制の構築期間 にあたり、OTSI 公式ブログ(otsi.blog.gov.uk)でも「Compliance Clarity: Real World Lessons in Trade Sanctions Breach Detection」(2025年10月13日)「What does good breach reporting look like?」(2025年12月16日)といった compliance guidance を矢継ぎ早に公表しました。146件の調査が進行している以上、2026年以降に初の民事制裁金事例が出る可能性は高い と各国の主要法律事務所(Baker McKenzie、Travers Smith、Steptoe など)が揃って指摘しています。

「ゼロだからまだ大丈夫」と読むのではなく、「2026年は初年度事例が出る年」と読むのが、ベテラン輸出管理担当者の解釈です。

2026年初頭の権限拡大|ECJUから輸出制裁ライセンスを移管

OTSI の2年目に向けて、まず動いたのが ライセンシング権限の集約 です。

  • 2026年初頭、OTSI は 輸出制裁ライセンシングの大部分 を ECJU から引き継ぎました。
  • 例外:戦略輸出管理(軍事品・デュアルユース品)の対象品目に関するライセンスは引き続き ECJU の管轄。
  • 主に Russia 制裁下の professional and business services(法務、会計、コンサル、ITサービス、広告等)の提供ライセンスが、OTSI に一元化されました。

これにより、英国で Russia 関連の専門サービス提供ライセンスを申請する企業は、ECJU の SPIRE システムではなく OTSI 経由 で手続きをすることになります。日本のメガバンクの英国拠点、大手商社の英国子会社、英国子会社経由でロシア向けに何らかのサービスを提供している企業は、申請窓口の更新が必要 です。

2026年5月13日 SEUC 施行|米国"Is Informed"類似の迂回輸出規制

権限拡大と並ぶインパクトが、Sanctions End-Use Controls(SEUC) の施行です。

  • 根拠法:Sanctions (EU Exit) (Miscellaneous Amendments) Regulations 2026(2026年4月22日上程)
  • 施行日:2026年5月13日
  • 仕組み:戦略物資に該当しない貨物・関連技術であっても、英政府が「制裁対象地域・人物への迂回リスクが高い」と判断して exporter に通知("inform")した場合、ライセンスなしでの輸出は 刑事犯罪 となる。
  • 通知ルート:HMRC の national clearance hub 経由、または OTSI からの直接連絡。
  • 申請の構造:「インフォーム原則」型 の規制で、事前ライセンス申請は受け付けていない。通知(informed)されてから初めて申請する仕組み。

ここがポイントですが、SEUC は 米国 EAR の "Is Informed" レター に近い設計です。米国の輸出管理担当者にはおなじみの仕組みで、BIS から「この案件は規制対象だ」と通知された瞬間にライセンスが必要になります。英国もこの設計を採用しました。

戦略物資該当性(5桁の ECCN 分類)を見ているだけでは捕まらない取引が、ある日「政府から通知が来る」ことで規制対象になります。中央アジア・中東・ASEAN・コーカサス諸国経由で第三国へ流れる迂回ルートを潰す狙いで、Russia への部品迂回や Iran 向けドローン部品迂回 が主なターゲットだと、Skadden や Foot Anstey の解説で整理されています。

2026年1月28日 UKSL 一本化|OFSI Consolidated List の更新停止

3つ目の大きな変化が 制裁リストの一本化 です。

項目 旧体制(〜2026年1月28日) 新体制(2026年1月28日〜)
メインリスト OFSI Consolidated List UK Sanctions List(UKSL)
管理機関 HM Treasury(OFSI) FCDO
識別子 OFSI Group ID/Unique ID Unique ID のみ(Group ID 廃止)
更新 2026年1月28日 9:00 UK time をもって停止 以降の指定はすべて UKSL に統合

例外:「Russia: list of persons named in relation to financial and investment restrictions」(金融・投資制限リスト)は UKSL の対象外で、引き続き GOV.UK の個別ページで確認する必要があります。

日本企業のスクリーニングシステム(社内ツールでも、Refinitiv/Dow Jones/LSEG/Moody's 等の外部サービスでも)は、UKSL を参照先として再構築する必要 があります。古い OFSI Consolidated List の URL を見にいったまま放置している社内システムは、2026年2月以降は「最新の指定が反映されない死んだリスト」を参照していることになります。ここは2026年上半期中に確実に直しておきたいポイントです。

民事制裁金 最大£1M/違反額の50%|strict liability の重さ

ここが日本企業にとって最大の論点です。

項目 内容
民事制裁金の上限 £1 million(約2億円)または違反額の50%のいずれか高い方
責任原則 strict liability(厳格責任)
故意・過失の証明 不要(OTSI 側に証明義務なし)
「知らなかった」抗弁 通用しない(合理的に疑う理由がなかった、も同様)

EU の dual-use 規制が「knowledge requirement(ナレッジ要件)」を置いているのに対し、OTSI の民事執行は ナレッジ要件なし で動きます。「故意でなかった」「気づけなかった」では責任を免れません。

OTSI の制裁手段は次の4種類があり、軽度な違反は警告書、悪質案件は HMRC へ刑事訴追照会、という段階的設計です。

  1. 公表(naming and shaming):違反企業名の公開
  2. 詳細レポート公表:違反の経緯・態様の public 開示
  3. 民事制裁金(monetary penalty):£1M/違反額の50%
  4. HMRC への刑事捜査照会:悪質案件

実務的には「3」だけでなく「1」「2」のレピュテーションリスクも大きい点に注意してください。英国の上場企業・金融機関は「公表」を非常に強く避けるため、社内で違反が見つかった瞬間に mandatory reporting(強制報告)と外部弁護士の早期関与が走るのが標準的な対応です。

日本企業への4つの影響

「英国の話でしょう?」と思われた方ほど、ここからをじっくり読んでください。

影響①|英国子会社・拠点経由の取引にそのまま効く

日本企業の英国子会社・英国拠点が貿易制裁違反に関与した場合、OTSI の民事制裁金(最大£1M/50%)対象になります。strict liability のため、本社管理が行き届かず英国拠点でうっかり違反が起きた場合でも、「気づかなかった」では責任を免れません。日本本社の輸出管理規程と英国拠点の運用に乖離があると、ここがリスクの温床 になります。

影響②|金融サービス義務(mandatory reporting)の波及

日本のメガバンク・証券会社・保険会社の英国拠点は、mandatory reporting obligation(強制報告義務)の対象です。制裁違反の疑いを発見した場合、OTSI へ報告しなかった事自体が犯罪扱いになります。法律サービス(弁護士事務所)、money service business も対象です。

ここで効いてくるのは「報告しなかった事実」も独立した違反として処罰される点で、英国の弁護士事務所では2026年に入ってから「OTSI に出すべきか、出さないべきか」の判断レビューがほぼ毎週走っている、という話が Travers Smith・Ashurst 等のニュースレターで聞こえてきます。

影響③|SEUC(2026年5月施行)の影響

戦略物資非該当品でも、UK政府から「diversion risk あり」と通知されればライセンス必要となります。日本企業が英国拠点経由で第三国(中央アジア、中東、ASEAN 等)に輸出するルートは、通知対象になる可能性があります。

「informed されたら申請」型のため、通知を受けた瞬間の対応体制 が重要です。HMRC の national clearance hub からの通知や OTSI からの直接連絡を受領するメールボックス(誰が見るか、何時間以内にエスカレーションするか)を、SOP として明文化しておく必要があります。社内で「知らない人にメールが届いて、気づかれずに放置された」が最悪のシナリオです。

影響④|制裁リスト統合への対応(UKSL)

2026年1月28日以降、英国向け取引のスクリーニングは UKSL を参照先として再構築する必要があります。日本企業のスクリーニングシステムが「OFSI Consolidated List のみ」を参照している場合、2026年2月以降の新規指定を捕まえられないリスクがあります。

加えて、Russia 金融・投資制限リストは UKSL の対象外 のため、別管理が必要です。「UKSL を見れば全部わかる」という認識でいると、ここで取りこぼします。

実務でやるべき5ステップ

その前に、「4つの影響」と「5つのステップ」の対応関係を1枚に整理しておきます。

日本企業への影響 主に効くステップ 補足的に効くステップ
影響①|英国子会社経由取引(strict liability) Step 1(英国拠点 SOP の見直し) Step 5(社内ナレッジ更新)
影響②|mandatory reporting 義務 Step 3(金融・法務拠点の報告体制整備) Step 1(SOP 見直し)
影響③|SEUC(通知受領体制) Step 4(HMRC/OTSI 通知の受領フロー整備) Step 2(取引ログ化)
影響④|UKSL 一本化 Step 2(スクリーニング参照先の差し替え) Step 5(社内ナレッジ更新)

Step 5 は4影響すべての土台になる「情報基盤」のステップです。Step 1〜4 のいずれを動かす場合も、最新ルールが社内に行き渡っていることが前提になります。

Step 1|英国子会社・拠点の SOP を見直す

英国子会社・英国拠点に既存の輸出管理 SOP がある場合、TASSCER 2024 と SEUC 施行後の運用 に追従しているかを確認してください。とくに(a)OTSI への mandatory reporting フロー、(b)民事制裁金リスクの社内エスカレーション基準、(c)strict liability を前提とした「合理的疑い」の判断基準は、日本本社の規程をそのまま英訳しただけでは足りません。英国法務顧問のレビューを必ず1回挟むことを推奨します。

Step 2|スクリーニング参照先を UKSL に切り替える

社内スクリーニングツール、外部ベンダー製品(Refinitiv/Dow Jones/LSEG/Moody's 等)の参照先を UKSL(FCDO 管理) に切り替えてください。Unique ID への移行も同時に行います。Russia 金融・投資制限リストは別管理のため、別ソースで取り込みます。「最後にスクリーニングソース定義を更新したのは何月か」 を、内部監査の論点として持ち込むのが手堅い動き方です。

Step 3|金融・法務・MSB 拠点の mandatory reporting 体制整備

メガバンク・証券・保険・弁護士事務所・MSB(money service business)の英国拠点は、OTSI への報告フロー を明文化してください。誰が違反を「合理的に疑う理由がある」と判断するか、判断時点から何時間以内に外部弁護士へ連絡するか、何営業日以内に OTSI へ報告するか、を SOP に落とし込みます。報告フローを書面化していない金融機関は、OTSI 検査時に減点対象となるリスクが高いです。

Step 4|SEUC「通知受領」のフロー整備

HMRC の national clearance hub および OTSI からの inform 通知 を受領するメールアドレス・宛先部署・エスカレーション経路を SOP 化してください。SEUC は「事前申請不可、通知後に申請」の仕組みのため、通知を「気づかなかった」「埋もれてしまった」が最大のリスク になります。通知メールに対する24時間以内のレスポンス基準と、対応の判断履歴を残す仕組みを併せて整備します。

Step 5|社内ナレッジの集約と更新体制構築

英国制裁・OTSI 規則・FCDO 指定の更新は、いずれも週〜月単位で動いています。「最新版を全社で同じ精度で見ている」状態を作るための社内ナレッジ基盤が、現場では最も不足しがちです。具体的な運用イメージは以下のとおりです。

頻度 アクション 担当
週次 UKSL(FCDO)の差分(追加・削除)を確認し、社内取引先マスタと突合 輸出管理担当
週次 OTSI 公式ブログ・GOV.UK の guidance 更新レビュー 輸出管理担当
月次 Russia 制裁・SEUC inform 通知の社内共有/英国法務顧問との定例 法務
四半期 主要英国拠点 SOP のレビュー(TASSCER 2024/SEUC 反映状況) 輸出管理責任者
四半期 mandatory reporting 体制の内部監査 監査・コンプライアンス
半期 英国子会社・拠点向け eラーニング更新/strict liability の社内徹底 人事・法務

この Step 5 の負荷を機械化するために、当社では TRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK) という輸出管理AIエージェントを提供しています。経産省基準準拠で、取引先スクリーニング・UKSL/Entity List 照合・社内ナレッジ管理を自動化する仕組みです。「英国 OTSI 検査時に提示できるスクリーニング履歴・判断履歴を、自動で残したい」 という担当者向けの実装、と思っていただければ近いです。

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よくある誤解/FAQ

Q1. OTSI は HMRC 配下ですよね?

違います。OTSI は DBT(Department for Business and Trade)配下、設立は 2024年10月10日 です。HMRC は刑事執行・関税法執行の機関で、OTSI(民事)と HMRC(刑事)は並立関係です。社内資料に「HMRC 配下」や「2025年10月設立」と書かれている場合は、いますぐ訂正してください。

Q2. 日本本社(UK 外)も OTSI の管轄に入りますか?

直接的には UK nexus(UK 内の行為、UK person、UK の goods 等)が必要です。ただし英国子会社・拠点経由の取引、英国経由の決済、英国金融機関の利用などで UK nexus が成立し得ます。「英国に拠点があるグループ会社」全般が、間接的に巻き込まれる可能性があると整理してください。

Q3. SEUC の事前ライセンス申請はできますか?

できません。SEUC は「インフォーム原則」型で、英政府から通知(inform)されてから初めて申請する仕組みです。事前リスク評価の枠組みではなく、「通知が来たら速やかに対応できる体制」 を整えるのが正しい備え方です。

Q4. strict liability で「知らなかった」が通用しないなら、防御策はあるのですか?

防御策は事前の体制整備に振るしかありません。具体的には(a)UKSL の最新版スクリーニング履歴、(b)取引判断の根拠ログ、(c)社内 SOP の文書化と eラーニング受講記録、の3点をきちんと残しておくことが、検査時の「合理的な体制を取っていた」という主張の根拠になります。違反が完全にゼロにはできなくても、履歴と SOP が残っていれば違反の度合いを「警告書」レベルに留められる可能性 が大きく上がります。

Q5. 2025年10月時点で OTSI の民事制裁金実績がゼロなのは安心材料ですか?

逆です。146件の調査が進行中で、各国の主要法律事務所は「2026年以降に初の制裁金事例が出る」と分析しています。設立1年目はガイダンス発行に注力した時期で、2年目から本格的な執行フェーズに入る と読むのが妥当です。

Q6. mandatory reporting 義務はどこまで適用されますか?

金融サービス、法律サービス、money service business が対象です。これらの英国拠点で「知っているまたは合理的に疑う理由のある」貿易制裁違反を発見したら、速やかに OTSI へ報告する義務があります。商社・メーカー本体は対象外ですが、グループの英国金融子会社・英国法務顧問経由で報告義務に巻き込まれるケースがあります。

Q7. TRAFEED のような輸出管理AIで対応可能ですか?

UKSL の自動スクリーニング、エンドユーザー診断、迂回リスクの事前評価、ライセンス管理など定型業務は AI 支援に適しています。SEUC の inform 通知や OTSI 民事執行の文脈で、日々の取引審査ログを残すこと自体が strict liability への防御線 になります。手作業でログを残し続けるのは現実的でないため、機械化したい領域です。

まとめ

  • 英国 OTSI は 2024年10月10日、DBT 配下で設立。2025年10月は「設立1周年」のタイミング(HMRC 配下ではない)
  • 1年目は 146件の違反報告/60件のライセンス申請 を受領、民事制裁金は0件(執行体制構築期間)
  • 2026年初頭、ECJU から輸出制裁ライセンスの大部分が OTSI に移管された
  • 2026年5月13日に SEUC 施行:戦略物資非該当品でも、英政府からの inform 通知でライセンス必要に
  • 2026年1月28日に UKSL 一本化:OFSI Consolidated List の更新停止、FCDO が一元管理へ
  • 民事制裁金 最大£1M/違反額の50%、strict liability で「知らなかった」抗弁は通用しない
  • 日本企業への影響は「英国拠点 strict liability」「mandatory reporting」「SEUC 通知」「UKSL 切替」の4つ
  • 実務は SOP 見直し・スクリーニング切替・mandatory reporting 体制・通知受領フロー・社内ナレッジ基盤の5ステップで対応する

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  • strict liability 対応の履歴設計:取引判断・スクリーニング・社内承認の履歴を、検査提示可能な形で自動記録する仕組み

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参考文献

  • One Year of the Office of Trade Sanctions Implementation (OTSI)(GOV.UK、2025年10月)
  • OTSI One Year Update(GOV.UK、PDF版、2025年10月)
  • Mandatory reporting for suspected breaches of trade sanctions(GOV.UK)
  • OTSI 公式ブログ:otsi.blog.gov.uk
  • Compliance Clarity: Real World Lessons in Trade Sanctions Breach Detection(OTSIブログ、2025年10月13日)
  • What does good breach reporting look like?(OTSIブログ、2025年12月16日)
  • UK Sanctions List Search(GOV.UK)
  • Trade, Aircraft and Shipping Sanctions (Civil Enforcement) Regulations 2024(TASSCER 2024)
  • Sanctions (EU Exit) (Miscellaneous Amendments) Regulations 2026(SEUC、2026年5月13日施行)
  • Russia (Sanctions) (EU Exit) Regulations 2019
  • Sanctions and Anti-Money Laundering Act 2018(SAMLA)
  • Baker McKenzie「UK OTSI Publishes 2024-2025 Annual Review」
  • Travers Smith「Implementation speaks louder than words」
  • Steptoe「One Year of OTSI」
  • King & Spalding「UK Launches New OTSI for Civil Enforcement」
  • K&L Gates「UK OTSI: New Enforcement Powers and Increased Reporting Obligations」(2024年10月)
  • Skadden「UK Introduces Sanctions End-Use Controls」(2026年5月)
  • Foot Anstey「Sanctions end use controls come into effect from 13 May 2026」
  • Osborne Clarke「UK Regulatory Outlook January 2026 - Sanctions」
  • Akin「Consolidating the Consolidated List: The UK Moves to a Single Sanctions List」
  • Ashurst「OTSI Reporting Obligations - The Devil is in the Detail」
  • Pinsent Masons「Licence regime updated as new UK trade sanctions implementation office launched」
  • Burness Paull「UK Sanctions Update - Spring 2026」
  • VinciWorks「UK introduces new sanctions end use control to target diversion risk」

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