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サービスを立ち上げる前に確認したい法令の見取り図|業種ではなく「機能」で決まる5つのフィルター

Published2026-08-16濱本 隆太

サービスが法令に触れるかどうかは、業種ではなく機能で決まります。DMを1つ足しただけで電気通信事業法の話になり、ポイント残高を持たせただけで資金決済法の話になります。この記事では、専門家に相談する前に自社の機能を棚卸しするための見取り図を、お金・通信・データ・広告・専門家の業務という5つのフィルターに整理してお話しします。

サービスを立ち上げる前に確認したい法令の見取り図|業種ではなく「機能」で決まる5つのフィルター
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株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。

サービスを立ち上げる前の方から、いちばんよく聞かれるのがこの質問です。「うちのサービス、何か許可とか要りますか」。答えは毎回同じで、「業種では決まらないので、機能を見せてください」になります。

同じ「マッチングアプリ」でも、メッセージ機能があるかないか、決済を自社で預かるかどうかで、関係してくる法律がまるごと変わります。DMを1つ足しただけで電気通信事業法の話になり、ポイント残高を持たせただけで資金決済法の話になります。この構造が分かっていないと、リリース直前に「これ、届出が要るのでは」と気づいて、日程ごと崩れます。

先にお断りしておきます。この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。特定のサービスが特定の法律に該当するかどうかの判断はしませんし、規約の文案も示しません。前の記事でも書いたとおり、専門家に相談するための地図のようなもの、と受け取っていただければと思います1。最終的な確認は、弁護士・弁理士・所管官庁へ。

A4 15ページの見取り図を配布しています: この記事で触れる5つのフィルター、用語のミニ解説、機能別の見取り図、そしてフェーズ別のリリース前チェックリストを、印刷して使える形にまとめました。専門家に相談する前の棚卸しにお使いください。→ サービスを立ち上げる前に ── 確認すべき法令の見取り図(A4 15ページ)をダウンロード(無料。会社名とお勤め先のメールアドレスのご登録が必要です)

業種ではなく「機能」に法律がついてくる

自社の機能を一覧にして、次の5つのフィルターに通してみてください。1つでも引っかかれば、その分野の所管法令を確認する必要があります。

フィルター こんな機能があれば確認が要る 主に関係する法律
お金 ユーザー間送金、ポイント・残高、後払い、投資情報、割り勘、カード番号の入力欄 資金決済法、割賦販売法、金融商品取引法、犯罪収益移転防止法など
通信 DM・チャット、掲示板、マッチング、メール送受信、通話 電気通信事業法、出会い系サイト規制法など
データ 会員登録、行動ログ、Cookie・SDKによる外部送信、位置情報、海外サーバー利用 個人情報保護法、電気通信事業法(外部送信規律)、GDPR
広告 効果効能の訴求、比較表示、キャンペーン、インフルエンサー施策、メール配信 景品表示法(ステマ規制含む)、特定電子メール法、薬機法広告規制など
専門家の業務 法律相談・契約書レビュー、税務相談、投資助言、不動産仲介、職業紹介 弁護士法72条、税理士法52条、宅建業法、職業安定法など

この表の使い方は単純で、機能一覧を左から順に当てていくだけです。ポイントは、自分の会社が何屋さんかを考えないこと。「うちは業務効率化のSaaSだから金融は関係ない」と思っていても、社内ポイントで報酬を配る機能を足した瞬間に、お金のフィルターに引っかかります。

業種を問わず、ほぼすべてのWebサービスが確認しておきたいのは4つです。電気通信事業法(届出の要否と外部送信規律)、個人情報保護法(公表事項と漏えい報告)、景品表示法(広告表現とステマ規制)、そして有料サービスなら特定商取引法。

見落とされやすいところ、3つ

見取り図を作る過程で、相談前の段階で抜けやすい論点がだいたい決まっていることが分かってきました。3つ挙げます。

1|「うちは通信会社じゃない」という思い込み

IT系のサービスで最も見落とされやすいのが、電気通信事業法の手続です。総務省の参入マニュアルの考え方に沿うと、確認の順序はこうなります2。電気通信役務を提供しているか(Webサービスやアプリはほぼ入ります)。他人の需要に応じて提供しているか。そして分岐点になるのが、「他人の通信を媒介」しているかどうかです。媒介する場合、電気通信回線設備を設置しない事業者に必要なのは届出とされています(法16条1項)。

ここで注意したいのが、「届出不要」を「法律の対象外」と読み替えてしまう誤解です。DM機能を持たないSNSは登録・届出が不要とされていますが、届出が不要でも通信の秘密の保護(法4条)、外部送信規律(法27条の12)、業務改善命令、報告徴収・立入検査の規定は適用されます(法164条3項)。届出が要らないことと、何もしなくてよいことは、別の話です。

2|外部送信規律を「送信先ドメインの一覧」で済ませてしまう

2022年改正で新設され2023年6月16日に施行された電気通信事業法27条の12です。Cookieや広告タグ、アプリに組み込んだSDKなどで利用者の情報を外部に送るときの決まりで、対象は広範囲にわたります。

通知または公表すべきは3点。①送信されることとなる情報の内容、②その情報を取り扱うこととなる者の氏名または名称、③利用目的です3。実務で崩れやすいのが②で、これは「送信先」ではありません。ドメイン名やURLを並べただけでは、要件を満たしません。事業者名で書けるように、使っているタグとSDKを棚卸しする必要があります。

もうひとつ知っておくと楽になるのが、対応手段が二択ではないことです。①通知または公表(利用者が容易に知り得る状態に置く)、②同意取得、③オプトアウト措置と所定事項の公表、このいずれかで足ります。役務提供のために真に必要な情報や、自社が利用者端末に送信した識別符号は、通知・公表が不要とされています。

罰則の順序も知っておくと、無駄に身構えずに済みます。27条の12に違反しても、それ自体に罰則はありません。まず総務大臣の業務改善命令が出て、その命令に違反したときに200万円以下の罰金(法186条3号)。この段取りを知らないまま「違反したら即罰金」と思い込んでいる方が、けっこういます。

3|士業の業務独占(AIを使うなら、ここは必ず)

サービス設計で最も見落とされるのが、資格者にしかできないと定められた業務です。AIを組み込むサービスなら、なおさら関係します。

弁護士法72条は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱い、またはこれらを周旋することを業とすることを禁じています。見落とされやすいのが最後の「周旋」、つまりあっせん・紹介が対象に入っている点です。士業マッチングや紹介手数料のモデルを考えているなら、ここが主論点になります。罰則は2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法77条3号)で、法人には両罰規定があります。

契約書関連のAIサービスについては、法務省が2023年8月に整理を公表しています4。①報酬を得る目的、②「訴訟事件その他一般の法律事件」該当性、③「鑑定その他の法律事務」該当性の3要件を立て、いずれか1つでも該当しなければ72条違反とならない、とした整理です。3要件すべてに該当する場合でも、弁護士が自ら精査し必要に応じ自ら修正する方法で利用するときは通常違反しない、という類型も示されています。

税理士法は要件が違うので、同じ感覚で読むと事故ります。税理士法52条には「報酬を得る目的」という要件がありません。「業とする」は反復継続して行うことをいい、有償であることを要しないと解されています。「無料で提供するから大丈夫」という整理は、弁護士法72条には一定の意味があっても、税理士法52条には通用しません。

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「一切責任を負いません」は、書いても効きません

利用規約は、置いてあれば効くものではありません。①ユーザーに合意させる手続を踏んでいること、②条項が無効にならない書き方であること。この2つが揃って初めて機能します。

①について。民法548条の2第1項により、定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、またはあらかじめその旨を相手方に表示していたときに、個別条項に合意したものとみなされます。効いてくるのは、「公表」ではなく「表示」だという一語の差。フッターに規約リンクを置いただけでは不十分な場合があります。登録フローの中に「利用規約に同意する」のチェックと規約へのリンクを組み込む実装が定番なのは、この要件があるからです。

②について。消費者契約法8条は事業者の損害賠償責任を全部免除する条項を、10条は消費者の利益を一方的に害する条項を無効としています。だから「当社は一切責任を負いません」は、消費者向けサービスでは効きません。免責の範囲が不明確な条項も無効となるリスクが指摘されています。

規約の文案は弁護士にお願いするとして、依頼する前に自分で決めておけることがあります。消費者向けか事業者向けか。有償か無償か、課金があるなら金額とタイミング。ユーザー投稿があるか、あるなら権利の扱いをどうしたいか。アカウント停止をどの行為で行いたいか。未成年の利用を認めるか。サービス終了時のデータと未消化分をどうするか。ここが決まっていると、相談の時間が設計の議論に使えます。決まっていないと、時間単価の高い打ち合わせが要件ヒアリングで終わります。

商標は「調べてから決める、決めたら出す」

論点は2つだけです。他社の商標を侵害していないか(調査)と、自社の名称を守れているか(登録)。調査は名称を確定する前に。登録は遅くとも広告展開・資金調達の前に。

調査にはJ-PlatPatが無料で使えます。完全一致だけで済ませず、称呼検索、つまり読み方での検索を必ず行ってください。表記が違っても読みが同じなら類似と判断されることがあります。ただし類否の判断は外観・称呼・観念の3要素で行われるため、自己調査はスクリーニングと割り切って、最終判断は弁理士の専門調査を併用するのが安全です。

この類否判断がどれくらい難しいかというと、行政と司法で結論が割れることがあります。「Re就活」と「リシュ活」をめぐる事件では、特許庁が2020年12月に両者を非類似と判断して登録異議申立を退けた一方、大阪地方裁判所は2021年1月12日に類似として侵害を認めました。控訴審では2021年10月に和解が成立しています。報道および当事者の告知によれば、和解は侵害に当たらないことを認める内容で、一審の判断は実質的に維持されていません。

ここから読み取るべきは「侵害と認定されたら怖い」ではなく、称呼が似ている領域では行政と司法で結論が分かれるほど判断が難しく、審級によって逆転しうるということです。一連の対応には約3年を要しています。だからこそ、出願前の調査と早期の権利化が効きます。

費用の目安も置いておきます。特許庁費用は出願料が3,400円+(8,600円×区分数)、10年分の登録料が32,900円×区分数。SaaSやアプリなら第9類(ダウンロード可能なソフトウェア)と第42類(SaaS、プログラムの設計・作成)の両方を指定するのが定石で、2区分なら合計86,400円です5。弁理士報酬は別途。審査期間は、出願から一次審査通知まで平均6.6か月、権利化まで平均7.5か月(2025年度)。早期審査を申し出た場合は、申出から最初の審査結果の通知まで平均2か月程度とされています。起算点が違うので、そこだけ気をつけてください。

グレーなときは、国に聞ける

新しいサービスほど、既存の法律にきれいには当てはまりません。「たぶん大丈夫」で走り出す前に、行政に照会する制度があります。

最もよく使われるのが、産業競争力強化法にもとづくグレーゾーン解消制度です6。新規事業計画に即して規制の適用の有無を事前に照会できます。照会書を事業所管省庁に提出して回答を得る仕組みで、同意した場合は照会内容と回答が公表されます。つまり、過去の公表事例を検索すると、自社に近いケースの回答が見つかることがあります。ここは意外と知られていない使い方かもしれません。

ほかに、規制そのものが障害になっている場合の新事業特例制度、期間と参加者を限定して実証を行う規制のサンドボックス制度、特定の規制への抵触の有無を所管行政庁に事前確認するノーアクションレター(法令適用事前確認手続)があります。ノーアクションレターは照会できる法令の範囲がグレーゾーン解消制度より限定的なので、まずはグレーゾーン解消制度から検討するのが実務的です。

相談の前に、5点だけ用意する

弁護士に相談する時間は、決して安くありません。だからこそ、次の5点を先に用意しておくと、同じ費用で持ち帰れるものが変わります。

  • 機能一覧 画面遷移レベルで、ユーザーが何をできるか
  • お金の流れ図 誰から誰に、いくら、いつ動くか。手数料をどこで取るか
  • データの流れ図 何を取得し、どこに保存し、誰に渡すか(海外を含む)
  • 収益モデル 無料か有料か、課金のタイミング
  • 類似サービスの一覧 既存プレイヤーがどう整理しているかは手がかりになります

このうち、お金の流れ図とデータの流れ図は、書き出してみると自分でも設計の穴に気づきます。「あれ、この一時預かりって誰のお金なんだっけ」と引っかかるだけでも、相談の質はずいぶん変わります。

相談先の目安も書いておきます。業法の該当性、規約とプライバシーポリシーの作成・レビュー、スキーム設計は弁護士(IT・スタートアップ領域の経験がある方を選んでください)。商標の調査と出願、早期審査は弁理士。各種許認可・届出の申請代行は行政書士。制度そのものの照会は所管官庁。

まとめ

  • サービスが法令に触れるかは業種ではなく機能で決まる。お金・通信・データ・広告・専門家の業務という5つのフィルターに機能を通す
  • DM・チャットは電気通信事業法の検討対象。分岐点は「他人の通信を媒介」しているか。届出不要でも通信の秘密と外部送信規律は適用される
  • 外部送信規律で通知・公表するのは、送信先ドメインではなく情報を取り扱う者の事業者名。対応手段は通知・公表のほかに同意取得とオプトアウトの3つがある
  • 「一切責任を負いません」は消費者向けでは効かない。規約は合意させる手続と条項の有効性が揃って初めて機能する
  • 商標は名前を決める前に調べ、広告展開の前に出す。称呼検索を忘れずに
  • 迷ったら、グレーゾーン解消制度で国に聞ける。過去の公表事例も検索できる

最後にもう一度だけ。この記事は一般的な整理であり、「自社は該当しない」という判断の根拠にはなりません。ここまで読んで気になる機能が1つでも出てきたら、それはもう相談すべきタイミングです。機能一覧とお金の流れ図を持って、専門家のところへ行ってください。

見取り図はA4 15ページのPDFにまとめてあります。用語のミニ解説から、機能別の一覧、フェーズ別のリリース前チェックリストまで入れました。→ サービスを立ち上げる前に ── 確認すべき法令の見取り図をダウンロード

会社を立ち上げた直後の財務・税務・法務をどう仕組み化するかは、起業初期の財務・税務・法務のほうで書きました。この記事が「リリース前の一回きりの確認」だとすれば、あちらは「毎月まわす仕組み」の話です。あわせて読んでいただけると、全体像がつかみやすいと思います。

Footnotes

  1. 各法令の条文は e-Gov法令検索(デジタル庁)で確認できます。 https://laws.e-gov.go.jp/

  2. 総務省「電気通信事業参入マニュアル[追補版]」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/telecom_business.html

  3. 総務省「外部送信規律について」(電気通信事業法27条の12、施行規則22条の2の29) https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/jyouhoutsuusin/gaibusoushin/index.html

  4. 法務省大臣官房司法法制部「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」(2023年8月) https://www.moj.go.jp/housei/shihouhousei/housei10_00034.html

  5. 特許庁「産業財産権関係料金一覧」、および「特許行政年次報告書2026年版」。商標検索はJ-PlatPat(INPIT運営) https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/hyou.html

  6. 経済産業省「グレーゾーン解消制度・新事業特例制度」 https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/

This article was produced with the help of AI. A human verified the primary sources and edited the text before publication.

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