こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
新規事業がうまくいかないとき、原因の多くは「解決策」ではなく「課題」の側にあります。よくできたアプリ、洗練されたUI、丁寧なサポート。全部そろっているのに売れない。理由はシンプルで、そもそも解こうとしている課題が、顧客にとって「お金や時間を払ってでも解きたい課題」ではなかった、というだけの話です。逆に言えば、深い課題さえ掴んでいれば、最初のプロダクトが多少ダサくても人は使ってくれます。
この記事は、新規事業づくりの9ステップを解説するシリーズのSTEP2です。全体像は新規事業フレームワーク完全ガイドにまとめています。STEP1の顧客セグメントの決め方で「誰を狙うか」を決めたら、次はその人の「本当の困りごと」を掘り当てる番です。ここで使うのが顧客インタビューとエンパシーマップ(共感マップ)。この2つの道具の使い方を、今日から手を動かせるレベルまで具体的に書いていきます。
先に要点を3つ。
- 顧客課題は、顧客が「言うこと」ではなく「やっていること」に出ます。言葉と行動のズレを探すのが課題発見のコツです
- エンパシーマップは、想像で埋めるものではありません。顧客インタビューという一次データを整理する器として使います
- AIは「顧客の代わり」にはなりません。質問案の壁打ちや文字起こしの仕分けなど、あなたの思考を整理する相棒として使うのが実務的です
なお、自分が事業づくりのどこでつまずいているのかを客観的に見たい方は、AIリテラシー診断で現状を10分ほどで棚卸ししてから読み進めると、この記事の使いどころが見えやすくなります。
顧客課題は「言葉」ではなく「行動」に出る
まず、課題には2種類あります。顧客自身が自覚していて口にできる顕在課題と、本人も言葉にできていない潜在課題です。「予約管理が面倒」は顕在課題。これは聞けば出てきます。やっかいなのは潜在課題のほうで、こちらは本人に聞いても「別に困ってないよ」という答えが返ってきます。でも行動を見ると、毎晩30分かけて手作業で連絡している。この矛盾のなかに、本当の課題が眠っています。
ここで思い出したいのが、マーケティングの古典的な洞察です。人は4分の1インチのドリルが欲しいのではなく、4分の1インチの穴が欲しい1。顧客が欲しいのは手段ではなく成果です。ドリルという製品に惚れ込んで「もっと高性能なドリルを」と考え始めた瞬間、あなたは顧客ではなく自分のプロダクトを見ています。新規事業で最も起きやすい事故がこれで、課題を掘っているつもりが、いつのまにか「◯◯というツールがない」という解決策の裏返しを課題だと思い込んでしまう。「ツールがない」は課題ではありません。「なぜ困るのか」をもう一段掘った先に、本当の課題があります。
掘るための道具として、トヨタ生産方式で使われる「なぜを5回(5 Whys)」2が効きます。豊田佐吉の発想を大野耐一が体系化したもので、表面的な要望に「なぜ?」を繰り返し当てて、根本原因まで下りていく手法です。「予約管理が面倒」という声に「なぜ面倒なのか」と問うと、「施術中に電話に出られないから」と返ってくる。さらに「なぜそれが困るのか」と重ねると、「無断キャンセルの穴を埋められないから」。もう一度「なぜ埋めたいのか」と続けていくと、最初の「面倒」からは見えなかった、売上の不安という本丸にたどり着きます。
そして課題発見でいちばん大事なのが、冒頭で触れた「言うこととやることのズレ」です。人は自分をよく見せたいので、インタビューでは理想の自分を語ります。「健康のために自炊したい」と言いながら、冷蔵庫にはコンビニ弁当が並んでいる。この場合、口にした「自炊したい」より、コンビニ弁当を買い続けているという行動のほうが真実に近い。だから私は、顧客の発言を鵜呑みにせず、必ず「で、実際はどうしているんですか?」と行動を確認します。課題は言葉ではなく、行動に出るからです。
エンパシーマップとは何か。ペルソナとの違いと6要素
この「言動」と「内面」を分けて書き出すために生まれたのが、エンパシーマップ(共感マップ)です。XPLANE社のDave Grayが顧客理解のために考案したビジュアルツールで、Alex Osterwalderの『ビジネスモデル・ジェネレーション』で紹介されて一気に広まりました3。定義はシンプルで、特定の顧客について「分かっていること」を1枚に外へ出し、チームで共通理解をつくって意思決定を助けるためのコラボレーションツールです。
よく混同されるのがペルソナとの違いです。ペルソナは「誰か」という顧客像そのものを定義した人物設定で、名前や年齢、職業、目標をまとめたプロフィールにあたります。対してエンパシーマップは、その人物の「内面」を理解するための可視化ツールです。関係を整理すると、インタビューで集めた事実をエンパシーマップに並べて理解を深め、その理解をもとにペルソナを描く。エンパシーマップはペルソナの前段の素材になる、と捉えると迷いません。
従来型のエンパシーマップは、中心に対象の人物を置き、周りを6つの要素で囲みます。
| 要素 | 何を書くか |
|---|---|
| See(見ている環境) | その人が日々目にしている市場、周囲の人の行動、身の回りの光景 |
| Say(言っていること) | インタビューで実際に口にした言葉。要約せず、なるべくそのまま |
| Do(していること) | 実際の行動や習慣。言葉ではなく事実としての動作 |
| Hear(聞いている声) | 周囲の人や環境から耳に入ってくる声、影響を受けている意見 |
| Think & Feel(考え・感情) | 口には出さない本音、迷い、感情。ここは推測が入る |
| Pain・Gain(痛みと得たいこと) | 障害・不安・不満(Pain)と、望む成果・欲求・成功の定義(Gain) |
要素が6つか4つかは流派の違いです。UX研究の現場やデザイン思考の授業では、Says(発言)、Thinks(内心)、Does(行動)、Feels(感情)の4象限で描くこともあります。呼び方はいろいろですが、本質はどれも同じで、「観察できる外側(言動)」と「推測する内側(思考・感情)」を分けて可視化することにあります。どの象限に貼るかで議論が止まるくらいなら、分類にこだわりすぎないほうがいい。分けること自体が目的ではなく、中身が目的です。
埋める順番にはコツがあります。まず「誰を、何のために理解したいのか」というゴールを決める。次に、外側の観察できる事実(See・Say・Do・Hear)から先に埋める。最後に内側の推測(Think & Feel)へ進み、そこからPainとGainを抽出する。外から内へ、が鉄則です4。順番を守るだけで、いきなり内面を想像して決めつける事故がぐっと減ります。
ここでいちばん強調したいのは、エンパシーマップは想像で埋めるものではない、ということです。一次データ、つまり実際のインタビューや観察にもとづいて埋めます。想像だけで作ったマップは、顧客ではなくチームの思い込みを可視化しただけの資料になってしまう。そして空欄が多い象限が出たら、それは失敗ではありません。「まだ分かっていないこと」が可視化された、という成果です。その空欄を次の調査項目にすればいい。マップは一度で完成させず、調査のたびに更新していく生きた資料として扱います。
顧客インタビューのやり方。「本音」を引き出す聞き方
エンパシーマップの中身は、顧客インタビューの質でほぼ決まります。そしてインタビューで最もやりがちな失敗が、自分のアイデアの感想を聞いてしまうことです。「こういうサービス、良いと思いますか?」と聞けば、相手は気を遣って「いいですね」と言ってくれます。でもそれは、偽の合格点です。この落とし穴を体系的にまとめたのがRob Fitzpatrickの『The Mom Test』で、名前の由来がふるっています。お母さんに「私のビジネス、うまくいくと思う?」と聞いても、愛情ゆえにお世辞で嘘の答えが返ってくる。だから、お世辞でしか答えられないような質問そのものを避けよう、という考え方です5。
原則は3つです。1つ目、自分のアイデアではなく相手の生活について話す。2つ目、未来の意見や一般論ではなく、過去の具体的な事実を聞く。3つ目、自分が話すより相手に話させる。この3つを守るだけで、インタビューの精度は大きく変わります。
具体的な質問の良し悪しを並べてみます。
- NG「もし自動リマインド機能があったら使いますか?」。OKに直すなら「直近で予約の連絡はどうやって送りましたか、そのとき何分くらいかけましたか」
- NG「月いくらなら払えますか?」。これは「いまその作業のために、何かにお金や時間を使っていますか」と過去の実績を聞く形にします
- NG「この課題、困ってますよね?」。誘導になるので「最後にそれで困ったのはいつですか、そのとき実際にどうしましたか」と尋ねます
違いは一貫しています。未来と仮定と誘導を捨て、過去の実際の行動と支出を聞く。人は未来の自分の行動を過大評価する生き物なので、「使いますか」「払えますか」への答えはほぼ当てになりません。当てになるのは、すでにやったこと、すでに払ったお金です。
進め方の実務も押さえておきます。相手は5〜8人ほど集めれば、主要な問題の多くは見えてきます。定性の調査なので、統計的な人数は要りません。ただし1点だけ妥協してはいけないのが、リクルートの相手です。身近な知人や社内の人ばかりに聞くと、忖度が入って課題の深刻さを見誤ります。「その課題を実際に抱えている他人」を必ず入れてください。本番では、最近の出来事や一日の流れを語ってもらい、自分のアイデアは最後まで出さない。相手が9割話している状態を保ち、「なぜですか?」「そのとき具体的には?」で深掘りする。さきほどの5 Whysを、会話のなかで自然に回すイメージです。
記録は要約せず、できるだけ逐語で残します。相手の言葉そのままが、あとでエンパシーマップのSay象限になります。加えて、ため息、間、口調、表情といった非言語も書き留めておく。これがFeel象限を埋めるときの、数少ない根拠になります。正直なところ、インタビュー中はメモに必死で表情まで見る余裕がないこともあるので、可能なら録音して、あとで聞き返すのがおすすめです。
手を動かす。エンパシーマップの書き方9ステップ
ここからは実践です。架空の新規事業を例に、一連の流れをたどります。題材は、一人でサロンを切り盛りする美容室オーナー向けに、無断キャンセルを減らす「LINE連携の自動リマインドと事前決済アプリ(仮にサロンリンクと呼びます)」。全体の手順は次の9ステップです。
- 対象顧客を1人(1ペルソナ)に絞る。属性より「状況・役割」で具体化する
- インタビュー相手を5〜8人リクルートする。実際に課題を抱えている他人を優先
- 質問はThe Mom Testに従い、過去の具体的行動を聞く設計にする
- 本番では相手に9割話させ、自分のアイデアは最後まで出さない
- 発言は逐語で記録し、ため息や口調などの非言語も残す
- 直後に外側から埋める(Say、Do、See、Hearの順)
- 次に内側を推測で埋める(Think・Feel)。そこからPainとGainを抽出する
- 象限間の矛盾を探し、インサイトを1〜2行で言語化する
- 空欄を次の調査項目にする。マップは追加調査ごとに更新する
ポイントは、ステップ6と7の順番です。インタビューが終わったら、記憶が新しいうちに、まず観察できた事実(Say・Do・See・Hear)から埋めます。ここは推測を混ぜてはいけません。そのあとで、内面(Think・Feel)を推測で埋める。事実と推測を必ず分ける。これを守らないと、あとで見返したときに「これは本人が言ったことなのか、自分がそう思っただけなのか」が分からなくなります。
サロンリンクのインタビューで、あるオーナーがこう語ったとします。「先週も2件すっぽかされてね。予約表は埋まってたのに実際は半分。電話でリマインドしたいけど施術中は無理。かといってアプリを入れるのは、正直また覚えることが増えるのが億劫でさ。今は前日にLINEで一件ずつ送ってる」。この発言から、エンパシーマップはこう埋まります。
| 要素 | 記入例(サロンリンクのオーナー) |
|---|---|
| Say(言ったこと) | 「アプリを入れるのは億劫」「前日にLINEで一件ずつ送っている」「埋まってたのに実際は半分」 |
| Do(行動) | 前日夜に手作業でLINEリマインドを送信。予約は今も紙の予約表で管理 |
| See(見ている環境) | 埋まっているはずの予約表、空いた施術席、同業のSNS投稿 |
| Hear(聞いている声) | 常連の「また今度ね」、知人経営者の「ドタキャンは仕方ない」という諦め |
| Think(内心・推測) | 「新しいツールは覚えるのが面倒」「でも売上の穴は放置できない」「自分は機械に弱い」 |
| Feel(感情・推測) | 無断キャンセルへの怒りと諦め、新技術への不安、一人で回すことへの焦り |
ここから痛みと得たいことを抜き出します。Painは、無断キャンセルによる売上損失、毎晩30分のリマインド手作業、新しいツールの学習コストへの恐れ。Gainは、空席を確実に埋めて売上を安定させたい、面倒な連絡から解放されたい、今のやり方を大きく変えずに済ませたい。この3つ目のGainが、あとで効いてきます。
ステップ8の矛盾探しが、この手法のハイライトです。オーナーは「ドタキャンは仕方ない」と諦めを口にしています(Say・Hear)。ところが実際は、毎晩手作業でLINEを送っている(Do)。言っていることとやっていることが食い違っている。この矛盾こそ、本当は強く困っている動かぬ証拠です。ここから導けるインサイトはこうです。本当の課題は「ドタキャンそのもの」よりも、「対策の手間と、新しいツールを覚えることへの恐れ」にある。だとすれば、多機能で高度な予約システムは、この人にはむしろ嫌われる。機能を足すほど遠ざかる、という逆説です。
最後に、抽出した課題をジョブ理論の型に言い換えます。ジョブ理論は、顧客は製品を「買う」のではなく、ある状況で片づけたい用事(ジョブ)を成し遂げるために製品を「雇う」と考える枠組みです6。型は「〔状況〕のとき、私は〔したいこと〕したい。なぜなら〔動機〕だから」。サロンリンクなら、こうなります。「一人でサロンを回し施術中に連絡できない状況で、私は“新しく覚えることを増やさずに”無断キャンセルを減らしたい。なぜなら、空席の損失は痛いが、それ以上に“また何かを覚える負担”を避けたいから」。機能的なジョブ(キャンセルを減らす)と感情的なジョブ(覚える負担を避ける)が同居しているのが分かります。この一文が、そのまま次のステップの検証仮説になります。ここで掘り当てたPainとGainは、STEP3のバリュープロポジションキャンバスの顧客プロフィールへそっくり引き継げるので、課題発見から解決策の設計まで一本の線でつながります。
手を動かすときは、書き込み用のテンプレートがあると早いです。この記事のエンパシーマップと9ステップのワークシートを1つにまとめました。サンプルPPTテンプレートを無料ダウンロードして、自分の事業のインタビュー結果を流し込んでみてください。
AIを課題発見の相棒にする
ここまでの作業は、正直なところ地味で手間がかかります。だからこそAIの出番です。ただし最初に釘を刺しておきたいのは、AIは「顧客の代わり」にはならない、ということです。AIに架空のペルソナを演じさせて回答を作らせ、それを実顧客の一次情報の代わりに使う。これは絶対にやってはいけません。合成された回答はもっともらしく見えますが、実在する誰かの過去の行動ではないので、課題の深刻さを保証しません。AIが得意なのは「作る」ことではなく、あなたが集めた一次情報を「整理し、壁打ちする」ことです。使いどころを間違えなければ、これほど頼れる相棒はいません。
まず、インタビュー設計。The Mom Testに沿った質問リストを、AIに叩き台として作らせます。
あなたはThe Mom Test(Rob Fitzpatrick)に精通した新規事業リサーチャーです。以下の事業仮説について、顧客の「本当の課題」を見つける顧客インタビューの質問を作ってください。
【事業仮説】〔1〜2行で記入〕
【対象顧客】〔役割・状況を具体的に〕
条件:
(1) 自分のアイデアの感想を聞く質問は禁止。相手の「過去の具体的な行動・出来事」を聞く。
(2) 「もし〜なら使いますか」のような未来・仮定の質問は禁止。
(3) アイスブレイク→現状の行動→直近で困った具体的エピソード→今の代替手段と不満→深掘り、の順で計15問。
(4) 各質問にThe Mom Testのどの原則に沿うか一言添える。
(5) やりがちなNG質問を5つ、なぜNGかとOKへの言い換え付きで示す。
インタビューが終わったら、文字起こしをエンパシーマップの各象限に仕分けさせます。手作業だと30分かかる分類が、数十秒で下書きになります。
以下は顧客インタビューの文字起こしです。内容をエンパシーマップの6要素に仕分けしてください。
【文字起こし】〔貼り付け〕
出力:
・Say(実際の言葉=できるだけ逐語で引用)
・Do(行動・習慣)
・See(見ている環境・市場)
・Hear(周囲から聞く声)
・Think(口に出さない本音・迷い=推測。根拠の発言も併記)
・Feel(感情を形容詞+文脈で。根拠も併記)
そのうえでPain(痛み・障害・不安)とGain(得たい成果・欲求)を各3つ抽出し、SayとDoの矛盾があれば指摘してください。推測部分は必ず「推測」と明記し、事実と分けること。
課題をもう一段深く掘りたいときは、5 Whysとジョブ化をまとめて任せます。
次の顧客の悩みについて「なぜ?」を5回繰り返し、根本課題まで掘り下げてください。
【顧客の悩み】〔一次情報から拾った発言や事象を1つ〕
各段階で、その答えが事実ベースか推測かを明記してください。
最後に根本課題を「〔状況〕のとき、私は〔したいこと〕したい。なぜなら〔動機〕だから」の型(機能的・社会的・感情的の3側面を意識)に言い換えてください。
掘り下げが解決策の裏返し(「◯◯というツールがない」)になっていないかも自己チェックしてください。
マップが埋まったら、そこからインサイトと検証仮説を引き出させます。象限間の矛盾に、人間は意外と気づけません。
以下のエンパシーマップ(6要素)を読み、新規事業の意思決定に効くインサイト(洞察)を抽出してください。
【エンパシーマップ】〔See/Say/Do/Hear/Think・Feel/Pain/Gainを貼り付け〕
出力:
(1) 象限間の矛盾や意外な点を3つ(例:言うこととやることのズレ)
(2) そこから導ける本当の課題仮説を3つ(各1文)
(3) 各仮説を検証するために「次に確認すべき問い」とインタビュー質問を1問ずつ
(4) いま情報が足りない(空欄が多い)観点を指摘
仕上げに、できあがった課題仮説を、忖度なしの投資家目線で壁打ちさせます。自分ひとりだと、どうしても自分の仮説に甘くなるからです。
私の新規事業の課題仮説を、批判的な投資家の視点で忖度なくレビューしてください。
【課題仮説】〔状況・したいこと・動機の一文〕
【根拠にした一次情報】〔インタビュー人数・主な発言〕
観点:
(1) この課題は「あったら良い」程度か、お金や時間を払ってでも解決したい深刻な課題か
(2) サンプルの偏り(身内・少数・忖度)のリスク
(3) 課題より先に解決策を決めていないか
(4) 検証が「意見」でなく過去の行動・実支出に基づくか
最後に、仮説を棄却または修正するための最小の次の検証(人数・質問・観察)を提案してください。
こうしたAIの使いこなしを、個人のセンスではなくチームの標準装備にしていくのが、私たちのAIコンサルティングWARPでご一緒している仕事です。プロンプトを配って終わりではなく、事業づくりのどの工程でAIに何を任せるかを設計し、意思決定の質そのものを底上げする。もし自社のAI活用レベルに不安があれば、まずはAIリテラシー診断で現在地を測ってみてください。
まとめ
顧客課題の見つけ方とエンパシーマップの書き方を、一連の流れとしてたどってきました。要点を、次の一歩とセットで置いておきます。
- 顧客が「言うこと」ではなく「やっていること」を見る。言動のズレに本当の課題が隠れています
- エンパシーマップは想像で埋めない。顧客インタビューという一次データを、外側(言動)から内側(思考・感情)の順に整理する器として使います
- 掘り当てたPainとGainは、ジョブ理論の一文に言い換え、次のSTEP3で価値提案の設計に引き継ぎます
- AIは顧客の代わりにはならない。質問案の壁打ち、文字起こしの仕分け、矛盾の発見という「整理役」として使うのが正解です
最後にひとつだけ。エンパシーマップを「きれいに完成させること」を目的にしないでください。付箋が埋まって満足した瞬間に、思考は止まります。大事なのは埋まったマスではなく、空いたマスと、象限どうしの矛盾です。そこに、まだ誰も解いていない課題が眠っています。次は、その課題に対して「何を、どう提供するか」を設計するSTEP3、バリュープロポジションキャンバスの書き方へ進みましょう。前のステップを振り返りたい方は、STEP1の顧客セグメントの決め方へ。9ステップ全体は新規事業フレームワーク完全ガイドにまとまっています。
課題の掘り当てからAIの使いどころまで、自社の事業づくりに合わせて具体的に壁打ちしたい方は、WARPの個別相談でお話を聞かせてください。
参考文献
Footnotes
-
「人は4分の1インチのドリルではなく、4分の1インチの穴が欲しい」の着想元として広く引用される。Theodore Levitt「Marketing Myopia」Harvard Business Review(1960)。 ↩
-
なぜを5回(5 Whys)。トヨタ生産方式で用いられる根本原因分析の手法。豊田佐吉の発想を大野耐一が体系化した。 ↩
-
エンパシーマップ(共感マップ)の原典。Dave Gray, Sunni Brown, James Macanufo『Gamestorming』(O'Reilly Media, 2010)。普及の契機となったのはAlexander Osterwalder & Yves Pigneur『Business Model Generation(ビジネスモデル・ジェネレーション)』(2010)。 ↩
-
更新版のエンパシーマップ・キャンバス(Dave Gray, 2017)。まずゴール(誰を・何を理解したいか)を定義し、外側の観察できる事実から内側の推測へと「外から内へ」埋める順序を推奨している。 ↩
-
顧客インタビューの原則。Rob Fitzpatrick『The Mom Test』(2013)。 ↩
-
ジョブ理論(Jobs To Be Done)。Clayton M. Christensen ほか「Know Your Customers' Jobs to Be Done」Harvard Business Review(2016年9月号)、および『Competing Against Luck(ジョブ理論)』(2016)。 ↩
