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素材・レアアースメーカーの輸出管理|重要鉱物・中国規制・米中対立下の経営実務【2026年版】

2026-04-24濱本 隆太

ネオジム、ジスプロシウム、ガリウム、ゲルマニウム、タングステン。素材・レアアースメーカーが中国輸出規制と米中対立のなかで抱える実務課題を、2026年時点の最新動向と日本企業の対応、該非判定フローとともに整理しました。業種別TRAFEEDシリーズ第8弾。

素材・レアアースメーカーの輸出管理|重要鉱物・中国規制・米中対立下の経営実務【2026年版】
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

「ジスプロシウムが来月分から入らないかもしれない」。2025年の秋口、磁石材料を扱う商社の担当者から聞いた一言が、いまも耳に残っています。中国商務部が中重希土類7種の輸出管理を本格稼働させた4月以降、日本の素材メーカーは月次どころか週次で情勢を追わざるを得ない状況に置かれました。本記事は業種別TRAFEEDシリーズの第8弾として、素材・レアアースメーカーの輸出管理を取り上げます。半導体や商社、自動車部品とは異なり、「川上」の重要鉱物そのものを扱う事業者の目線で、2026年4月時点の論点を整理します。

関連記事として、重要鉱物全般の動向は重要鉱物と経済安全保障、規制本体の仕様は中国の対日輸出管理2026年完全ガイド、半導体素材に関する深掘りは半導体輸出規制2026で補足しています。あわせて参照してください。

2023年からの3年で何が積み上がったのか

中国の重要鉱物をめぐる輸出管理は、単発の規制ではなく階段状に積み上がってきました。2023年8月のガリウム、ゲルマニウム関連品目で始まり、同年12月に黒鉛、2024年9月にアンチモン、2024年12月には対米軍事関連企業向けのデュアルユース輸出を原則禁止にする措置が加わりました。2025年2月にはタングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウムが追加され、4月4日からは中重希土類7種、すなわちサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの関連品目が輸出管理の対象に入りました[^1]。

極めつけは2025年10月9日です。新たにレアアース5種が対象に加わり、さらに「中国原産のレアアース関連製品または関連技術を用いて中国外で生産された製品」にまで輸出規制の網がかかる域外適用が公告されました[^2]。日本で磁石に加工したものであっても、出発点の鉱石が中国産なら中国当局の許可が要る、という読み方になります。これまでの「出国時点で縛る」発想と地続きではなく、商流そのものの設計を問われる話です。

ただし情勢は直線ではありません。2025年11月、中国は対米デュアルユース輸出禁止を1年間停止し、10月に公告された措置の一部も2026年11月まで一時停止としました[^3]。ここで注意したいのは、停止はあくまで運用レベルの一時措置であり、制度の枠組み自体は残っている点です。米中のテーブルで何かが動けば翌月にも元に戻り得ます。素材メーカーとしては「今は出せる」状態をベースラインにするのではなく、「いつ止まっても部品を出荷できる」ように調達と在庫を組む姿勢のほうが現実的だと考えています。

輸出管理の課題を解決するには?

TRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK)の機能と導入効果をまとめた資料をご覧ください。

素材メーカーの現場で何が起きているか

私が把握している範囲でも、ここ1年で起きている変化は小さくありません。磁石メーカーでは、ジスプロシウム含有量を下げた設計が一気に主流化しました。TDKはHAL法という独自の組織制御技術を使い、重希土類を使わないか、使っても極少量に抑えるDyフリー・低Dyネオジム磁石の量産化を公表しています[^4]。信越化学工業やプロテリアル(旧日立金属)も低Dy磁石の設計で長年の蓄積があり、EVや産業用ロボット向けに指名される場面が増えました。

一方で、完全に切り離すのはまだ難しいのが実態です。NEDOは2023年度から「部素材からのレアアース分離精製技術開発事業」を進めており、これまで経済性が合わなかった鉱石処理液や廃磁石から重希土類を回収する取り組みが本格化しています[^5]。磁石メーカーの製造ラインで発生する切削屑や市場から戻ってくる廃モーターを、社内と協力先の精錬業者で循環させる仕組みが、じわじわと立ち上がってきました。再生利用は「きれいごと」ではなく、原料リスクを実務で下げる一手として機能し始めています。

調達側でも動きが続いています。豊田通商は2025年10月にオーストラリアから重希土類を初輸入し、さらにナミビアのレアアース開発プロジェクトにも参画しました[^6]。Lynas Rare Earthsが持つ西オーストラリアのマウントウェルド鉱山には、JOGMECと双日で組成するJARE(Japan Australia Rare Earths)が2023年3月に追加2億豪ドルを出資しており、中重希土類の分離工程立ち上げを支える格好になっています。JX金属は半導体のスパッタリングターゲットで存在感を保ち、住友金属鉱山はニッケル、コバルトの上流権益を押さえています。東邦チタニウムと大阪チタニウムテクノロジーズは高品位スポンジチタンの供給を握り、このレイヤーは実質的に日本、中国、ロシアの3カ国に限られます[^7]。

こうした動きを眺めていて思うのは、「脱中国」を掲げて逃げるのではなく、「中国も含めて複数の供給源を使いこなす」現実路線に日本企業がシフトしたことです。2020年代前半の議論は代替地探しが中心でしたが、2026年の論点は分散調達の運用と、調達先ごとに異なるKYC・書類要件を回せる体制づくりに移っています。

該非判定とトレーサビリティの実務

素材メーカーの輸出管理で最初に躓くのは、自社製品がどのEAR、どの輸出令別表、どの中国商務部リストに該当するのかを正確に引き当てる作業です。半導体装置メーカーであれば品目数は絞られますが、素材メーカーは顧客要求で配合を変えるため、品番ごとに判定が動きます。あるフェライト磁石メーカーでは、品番の数が4桁に乗った段階で、Excel台帳の運用が事実上機能しなくなっていました。

外為法の該非判定は、項番ごとの技術仕様を押さえたうえで、複数国の規制を横断する作業になります。2026年時点で最低限考慮すべきなのは、日本の外為法(輸出貿易管理令別表第1)、米国のEAR、EUのデュアルユース規則2021/821(改定版)、そして中国商務部の輸出管理措置です。ここに2026年2月に公表された商務部の「40社リスト」や米国のエンティティリスト、SDNリストを重ねて、取引先スクリーニングをかけます。さらに中国原産レアアースの域外適用を見逃すと、日本で加工した磁石の中国向け再輸出で引っかかる事故が起きます。

トレーサビリティは「そもそも原料はどこから来たのか」の問いに答える準備でもあります。商流の2〜3段上まで遡らないと、真の原産地が確認できない素材は少なくありません。取引先に原産地証明と加工地情報を求める契約条項を追加し、年次で棚卸しする運用が、2026年のスタンダードになりつつあります。正直なところ、中堅素材メーカーで専任担当を置いているところは、まだ多くありません。私の経験では、1人の総務兼法務担当がExcel台帳を抱えているケースが大半です。ここをAIで支える設計に変えないと、担当者が辞めた瞬間に運用が止まります。

備蓄、代替、再生、それぞれの経営判断

素材メーカーのBCPは、短期の在庫積み増し、中期の代替設計、長期の再生利用という3つの時間軸で考える必要があります。短期ではJOGMECの国家備蓄が頼りですが、G7Kananaskisサミット(2025年6月)で合意された重要鉱物行動計画や、オーストラリアが2026年後半に運用開始する1.2億豪ドル規模のCritical Minerals Strategic Reserveなど、国際連携の備蓄が整いつつあります[^8]。自社在庫だけでなく、日豪連携の備蓄枠をどう使うかが、調達戦略の議題に上がる時代になりました。

中期の代替設計は、すでに紹介したDyフリー化や低Dy化が代表例です。磁石以外でも、タングステン代替の超硬材料、ガリウム代替の化合物半導体技術など、領域ごとに研究が進んでいます。ここで注意したいのは、完全代替は技術ロードマップ上まだ数年先であり、「代替できるから中国規制は怖くない」という結論は楽観に過ぎることです。代替研究は保険として進めつつ、当面は現行配合で供給を守るのが現実です。

長期の再生利用は、メーカー単独では回せません。NEDOの分離精製技術開発、リサイクル業者との連携、ユーザー企業からの廃製品回収、回収効率を上げる設計思想。これらをサプライチェーン全体で組み替える必要があります。余談ですが、素材メーカーの工場を訪問すると、廃棄物置き場の整理状況でその会社のリサイクル本気度が大体わかります。廃磁石が汚れたまま一括で積まれているか、品種別に分けて湿気を遮っているかで、回収率が数十パーセント変わるからです。BCPは会議室の資料だけでは完結せず、現場の粒度で初めて意味を持つと感じています。

TRAFEEDで素材メーカーの輸出管理をどう変えるか

ここまで書いてきた通り、素材メーカーの輸出管理は「品目数が多く、規制が頻繁に動き、商流が深い」三拍子が揃っており、人手でExcelを回す運用では早晩限界が来ます。TIMEWELLが提供するTRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK)は、世界初の輸出管理AIエージェントとして、経産省基準に準拠した該非判定を生成AIで支援し、取引先スクリーニングを自動化するサービスです。外為法、EAR、EUデュアルユース、中国商務部リストを横断する多国間クロスチェックに対応し、商務部40社リストや米国エンティティリストとの突合もワークフローに組み込めます。

現場では、Excel台帳を廃止して品番ごとの判定履歴をAIに蓄積し、改訂時の再判定を自動トリガーで走らせる運用が効きます。素材メーカーのある担当者は、従来は月40時間を該非判定と顧客提出書類の作成に費やしていましたが、TRAFEEDの導入後は月15時間まで減り、浮いた時間を原産地確認とBCP設計に充てられるようになったと話していました。私自身、輸出管理は「属人化を解く」ことが最大の改革だと考えています。担当者の知見をAIに学習させ、異動や退職があっても運用が続く形を作る。これが、変動が激しい2026年以降の規制環境を生き延びる最短ルートです。

素材・レアアースメーカーの本業は、配合開発と品質管理、そして顧客との技術協業にあります。輸出管理はそれを支える裏方仕事であり、本業から人を削いでまでやるべき作業ではありません。AIと専門サービスを組み合わせ、必要十分な体制を最小工数で維持する。それが、重要鉱物の時代に素材メーカーが採るべき経営実務だと考えています。

参考文献

[^1]: JETRO「中国、中・重希土類7種のレアアース関連品目で4月4日から輸出管理を実施」2025年4月 https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/04/9008601e0d63d27d.html [^2]: JOGMEC「2025年 金属鉱物資源をめぐる動向:カレント・トピックス」2026年1月 https://mric.jogmec.go.jp/reports/current/20260113/187778/ [^3]: Semicon.TODAY「中国のガリウム/レアアース規制『1年停止』が示す意味」 https://semicon.today/archives/4160 [^4]: TDK Product Center「Dyフリーネオジムマグネット」 https://product.tdk.com/en/products/magnet/renaissance/video02.html [^5]: NEDO Web Magazine「分離回収・次世代磁石 重レアアース確保」2025年10月 https://webmagazine.nedo.go.jp/release-guide/mirai/20251022/ [^6]: 日本経済新聞「豊田通商、ナミビアでレアアース開発に参画」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD182KG0Y6A310C2000000/ [^7]: note「株価上昇セクター 非鉄金属 2025-2026年 構造的転換と投資の視点」 https://note.com/noted_jacana411/n/nba64dc138418 [^8]: JETRO「日豪連携で強める重要鉱物供給網(1)資源大国オーストラリアの潜在可能性」2026年1月 https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2026/0101/56b245d250defc84.html

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