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科学技術を守ることは、国を守ること:輸出管理が担う経済安全保障の最前線

2026-01-22濱本

科学技術を守ることは、国を守ること:輸出管理が担う経済安全保障の最前線。輸出管理は単なるコンプライアンスではありません。科学技術を守り、企業を守り、国益を守る——その本質と、今企業・大学が直面するリスクを最新データとともに解説します。こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

科学技術を守ることは、国を守ること:輸出管理が担う経済安全保障の最前線
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科学技術を守ることは、国を守ること:輸出管理が担う経済安全保障の最前線

こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

今日は、輸出管理の「本当の意味」についてお話しします。

「輸出管理」と聞くと、多くの方は「面倒な書類手続き」「コンプライアンスの一環」といったイメージを持たれるかもしれません。しかし、私はこの認識を根本から見直していただきたいと考えています。

輸出管理業務をしっかりやることは、あなたの企業を守り、あなた自身を守り、そして日本という国を守ることに直結しています。

大げさに聞こえるかもしれません。しかし、この記事を読み終える頃には、その意味をご理解いただけるはずです。

要約:この記事でお伝えすること

  • 日本の先端技術が軍事転用されるリスクは、かつてないほど高まっている
  • 2024年度の外国人留学生数は33.6万人で過去最多、うち中国からは12.3万人
  • 営業秘密侵害の相談件数は2024年に79件で過去最多を更新
  • 2022年の「みなし輸出」規制強化により、留学生・外国人研究者への技術提供も許可が必要に
  • 輸出管理は「義務」であると同時に、科学技術を守り、国益を守る「使命」である

第1章:なぜ今、この話をするのか

工作活動の活発化という現実

2023年6月、衝撃的なニュースが日本を駆け巡りました。

国立研究開発法人「産業技術総合研究所(産総研)」の主任研究員が、不正競争防止法違反の容疑で逮捕されたのです。容疑は、自身が研究していたフッ素化合物に関する先端技術を中国企業に漏洩させたというもの。国の研究機関から中国への情報漏出が立件されるのは極めて異例の事態でした。

この研究員は、中国の「国防7校」の一つである南京理工大学の出身であり、さらに北京理工大学の教職を兼任していた時期があったことも明らかになっています。研究データを受け取った中国企業は、わずか1週間後に中国で特許を申請していました。

これは氷山の一角に過ぎません。

数字が示す危機的状況

警察庁の統計によると、2024年の営業秘密侵害事犯の相談件数は79件で過去最多を記録しました。検挙件数も22件と高水準で推移しています。

しかし、これらは「発覚した」案件に過ぎません。実際の技術流出はこの何倍も起きていると考えるべきでしょう。

年度 営業秘密侵害 検挙件数 相談件数
2022年 22件 約60件
2023年 26件 78件(過去2番目)
2024年 22件 79件(過去最多)

表1:営業秘密侵害事犯の推移(警察庁統計より)


第2章:科学技術を守る → 企業を守る → 国を守る

技術流出がもたらす「三重の損失」

技術流出は、単なる「情報漏洩」ではありません。それは三重の損失をもたらします。

1. 企業の損失 研究開発に投じた数億円、数十億円の投資が一瞬で無駄になります。競合他社(特に海外企業)に技術が渡れば、市場における競争優位性は失われます。積水化学工業の事例では、スマートフォンのタッチパネルに使う技術が中国企業に流出しました。

2. 研究者個人の損失 技術流出に関与した場合、刑事罰の対象となります。不正競争防止法違反の場合、10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金が科される可能性があります。キャリアの終わりを意味することは言うまでもありません。

3. 国家の損失 日本が長年かけて培ってきた技術的優位性が失われます。それは国際競争力の低下を意味し、ひいては国民の生活水準にも影響を及ぼします。さらに深刻なのは、流出した技術が軍事転用される可能性です。

軍民融合という脅威

中国政府は「軍民融合」という国家戦略を掲げています。これは、民間の先端技術を軍事力強化に直結させるという方針です。

つまり、あなたが長年研究してきた技術、あなたの企業が開発した製品が、知らぬ間にミサイルの誘導システムや、大量破壊兵器の製造に使われる可能性があるということです。

自分の研究成果が人を殺す兵器に転用される——これほど研究者にとって悲しいことはないでしょう。


第3章:大学・研究機関が直面するリスク

留学生の急増と「みなし輸出」

日本の大学における外国人留学生数は、コロナ禍を経て急回復しています。

年度 外国人留学生数 前年比
2019年 31.2万人
2022年 23.1万人 (コロナ影響で減少)
2023年 27.9万人 +20.8%
2024年 33.6万人 +20.6%(過去最多)

表2:外国人留学生数の推移(JASSO統計より)

2024年時点で、中国からの留学生は約12.3万人(前年比6.9%増)で最多。東京大学では、中国人留学生が全留学生の約7割を占め、全学生数の1割以上に達しています。

もちろん、大多数の留学生は純粋に学びを求めて日本に来ています。しかし、そのなかに技術流出を目的とした人物が紛れ込んでいるリスクを、私たちは直視しなければなりません。

「国防7校」からの留学生

中国の「国防7校」とは、中国人民解放軍と関連が深く、兵器開発ともつながりがあるとされる7つの大学です。

2020年度の調査では、この国防7校のうち6校から計39人が日本の大学に留学していたことが判明しています。徳島大、東北大、千葉大、高知大、新潟大、名古屋大、会津大、東京工業大など計10大学が受け入れていました。

2022年の規制強化:「みなし輸出」管理の明確化

こうした状況を受け、2022年5月1日から**「みなし輸出」規制**が強化されました。

従来、留学生が6ヶ月以上日本に滞在すると「居住者」扱いとなり、技術提供の規制対象外となっていました。しかし改正後は、たとえ居住者であっても、以下の「特定類型」に該当する場合は、非居住者への技術提供と同様に経済産業省の許可が必要となります。

特定類型の例:

  • 外国政府や外国法人との雇用契約があり、その指揮命令下にある者
  • 外国政府等から年間所得の25%以上の経済的利益を受けている者
  • 外国政府等の理工系人材獲得プログラム(千人計画など)に参加している者

つまり、研究室の留学生に先端技術を教える行為そのものが、場合によっては外為法違反になる可能性があるのです。


第4章:密閉技術と核開発リスク

「民生品」が兵器になる現実

輸出管理の難しさは、一見すると何の問題もない製品が、実は大量破壊兵器の製造に転用できるという点にあります。

凍結乾燥機(フリーズドライ)の事例

2006年、東京都の貿易会社元社長が、凍結乾燥機を北朝鮮に不正輸出した容疑で逮捕されました。フリーズドライといえばインスタント食品を思い浮かべますが、この技術は生物兵器の製造にも転用可能です。

真空ポンプの事例

真空ポンプは多くの産業で使われる汎用品ですが、ウラン濃縮用の遠心分離機に不可欠な部品でもあります。北朝鮮への不正輸出が摘発された事例があります。

化学用ポンプの事例

内部に特殊加工が施され、強い化学反応でも融解しない化学用ポンプは、サリンなどの化学兵器の製造に転用可能です。中国への不正輸出で書類送検された事例があります。

規制強化の動き

こうした背景から、密閉性の高い機器や真空関連技術に対する規制は年々厳格化しています。

2024年には、軍事転用の防止を目的として重要・新興技術に関連する4品目が規制に追加されました。また、ロシアによるウクライナ侵略以降、日本製の工作機械や電子部品がロシアの通常兵器に軍事利用されていることが判明し、キャッチオール規制の見直しも行われています。

「うちの製品は関係ない」は、もはや通用しない時代なのです。


第5章:年間100件超——摘発の現実

外為法違反の実態

経済産業省の分析によると、2023年度の外為法違反事案の処分状況は以下の通りです:

処分内容 割合
報告書提出(軽微な事案) 79%
経緯書+口頭注意 15%
経緯書+文書注意 3%
行政制裁・警告(悪質な事案) 3%

表3:外為法違反の処分状況(2023年度、経済産業省資料より)

「軽微な事案が多い」と思われるかもしれません。しかし、これは発覚した案件に過ぎず、さらに悪質な事案は刑事告発に至っています。

2024年7月には、軍事転用の恐れがある水上バイクなどをロシアに不正輸出したとして、ロシア国籍の貿易会社社長が逮捕されました。同年10月には懲役3年、執行猶予4年の有罪判決が下されています。

「知らなかった」は通用しない

外為法違反のほとんどは、知識不足や管理体制の不備によるものです。輸出管理内部規程(CP)を届け出ていない企業が半分以上を占めています。

しかし、「知らなかった」は法的に免責事由になりません。行政制裁には時効がなく、刑事処分が不起訴になっても行政制裁が科されることがあります。


第6章:なぜ輸出管理が「義務」であり「使命」なのか

外国人採用・留学生受け入れの増加とリスク

グローバル化が進む中、日本企業は外国人材の採用を積極的に進めています。大学も国際化の観点から留学生の受け入れを拡大しています。

これ自体は歓迎すべきことです。しかし同時に、技術流出のリスクも比例して高まっているという事実を認識しなければなりません。

経済産業省が2025年1月に改正した「外国ユーザーリスト」では、大量破壊兵器等の開発懸念がある団体として15か国・地域の748団体(前回比42増)が掲載されています。

輸出管理は「防衛」である

輸出管理を「面倒な事務作業」と捉えるのではなく、**「科学技術を守るための防衛活動」**と捉え直してください。

  • 取引先をしっかり調査することは、あなたの技術が兵器に転用されることを防ぐ
  • 留学生・外国人研究者のバックグラウンドを確認することは、研究成果が不正に持ち出されることを防ぐ
  • エビデンスを残すことは、万が一の際にあなた自身を守る

これは義務であると同時に、科学技術に携わる者としての使命ではないでしょうか。


第7章:では、何をすべきか

取引先・需要者のスクリーニング

すべての輸出・技術提供において、相手先が「懸念のある団体・個人」でないかを確認してください。

チェックすべきリスト:

  • 外国ユーザーリスト(経済産業省)
  • 米国SDNリスト(OFAC)
  • EL/DPL(米国商務省)
  • EU制裁リスト

手作業では膨大な時間がかかります。私たちTIMEWELLが提供する**ZEROCK EX-Checkは、これらのリストとの自動照合を5秒で完了**します。名前のバリエーション(漢字・仮名・ローマ字)にも対応し、見落としリスクを最小化します。

留学生・外国人研究者の受け入れ審査

「特定類型」に該当しないか、自己申告書などで確認してください。特に以下の点に注意が必要です:

  • 出身大学(国防7校など軍事関連機関でないか)
  • 資金源(外国政府等から多額の支援を受けていないか)
  • 兼業状況(外国機関との雇用関係がないか)

エビデンスの保存

「なぜその判定をしたのか」を記録として残してください。監査時や、万が一の際の証拠となります。

EX-CHECKでは、判定理由と根拠URLを明示したレポートを自動生成。「AIが判定した」で終わらせない透明性を確保します。


まとめ:科学技術を守ることは、未来を守ること

輸出管理は「やらなければならない義務」です。

しかし、その本質は**「日本の科学技術を守り、企業の競争力を守り、国の安全保障に貢献すること」**にあります。

あなたが研究してきた技術、あなたの企業が生み出した製品が、人を傷つける兵器に転用されることを防ぐ。それが輸出管理の使命です。

そして、この義務を効率的に果たすことで、あなたは本来の仕事——研究や創造的活動——に集中する時間を取り戻すことができます。

私たちTIMEWELLは、ZEROCK EX-CHECKを通じて、その実現をサポートします。

科学技術を守り、企業を守り、国を守る。そして、未来を創る時間を取り戻す。

一緒に取り組んでいきましょう。


参考文献・出典

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