こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
検図の話をすると、必ず同じ反応が返ってきます。「ベテランが見れば5分で分かるんですよ」。
そのとおりだと思います。問題は、そのベテランが1人しかいないことと、その人が何を見ているのかが言語化されていないことです。若手が3回出図して3回とも同じところを指摘され、それでも次の図面でまた同じ見落としをする。これは注意力の問題ではなく、手順が無いことの問題です。
この記事では、検図で見るべき項目を30に分けて並べます。寸法、公差、加工可能性、調達、法規と記録の5群です。そのまま埋められるチェックシートも用意しました。
先に要点です。
- 検図は「寸法の確認」ではない。作れるか、買えるか、検査できるかまで見る作業
- 設計者本人だけの確認では残る。 自己点検、第三者の検図、承認を分ける
- 30項目前後が、1枚に収まって10分で回せる現実的な分量
- 他社のリストをそのまま使わない。自社の是正処置報告書から項目を足すのが本筋
- 記録を残すと、品質監査の証跡になり、不具合の原因の切り分けも速くなる
検図で本当に見るべきものは5群ある
検図というと、寸法の抜けや記入ミスを探す作業だと思われがちです。実際には、その先に4つの群があります。
1群。寸法と整合。 図面として成立しているか。寸法が閉じているか、重複していないか、投影が合っているか。
2群。公差と精度。 その精度が本当に必要か。どうやって測るか。
3群。加工可能性。 その形状を、自社または取引先の設備で作れるか。
4群。調達可能性。 その材料と部品を、必要な時期に手に入る形で指定しているか。
5群。法規・規格・記録。 社内規格、顧客の要求、法令に合っているか。そして記録が残るか。
1群だけを見る検図は、図面のチェックであって、ものづくりのチェックではありません。 図面としては完璧でも、作れない図面、買えない材料を指定した図面、測れない公差を入れた図面は出ます。
30項目
以下、群ごとに並べます。自社に合わせて足し引きしてください。
寸法と整合(1〜8)
- 寸法が閉じているか。累積して合わない箇所がないか
- 同じ寸法が複数箇所に書かれていないか(重複寸法は変更漏れの原因になる)
- 投影図の対応が取れているか。正面・平面・側面で矛盾がないか
- 断面の切断位置と矢印の向きが正しいか
- 基準(データム)が明示されているか。どこから測るかが一意に決まるか
- 尺度の記載と、実際の描画が合っているか
- 部品表と図面の員数・材質・品名が一致しているか
- 図面番号と版数が正しいか。旧版が混在していないか
公差と精度(9〜14)
- 公差が指示されているか。一般公差に頼る箇所が妥当か
- その公差は本当に必要か。 過剰な精度を書いていないか
- 幾何公差の指示が、機能から見て妥当か
- 表面粗さの指示が、加工方法と整合しているか
- その公差をどうやって測るか。 測定具が社内または取引先にあるか
- 検査の頻度(全数・抜き取り)が決まっているか
加工可能性(15〜21)
- 工具が届くか。深穴、狭い隅、裏側の加工に無理がないか
- 隅Rが工具径と整合しているか。R0指示になっていないか
- 薄肉部が加工中にたわまないか
- 把持できるか。チャックや治具で保持する面があるか
- 段取り替えの回数が妥当か。5面加工を要求していないか
- 溶接の指示があるなら、溶接棒やトーチが入るか
- 熱処理やめっきによる変形・寸法変化を織り込んでいるか
調達可能性(22〜26)
- 指定した材料が定尺で手に入るか。特殊材の納期を確認したか
- 板厚・丸棒径が、流通している規格寸法か
- 市販部品の型番が現行品か。廃番になっていないか
- 支給品がある場合、その受け渡し条件が図面または注記にあるか
- 数量とロットが、材料の取り都合と合っているか
法規・規格・記録(27〜30)
- 社内規格・顧客指定の規格に適合しているか
- 法規制に関わる材料(特定化学物質、輸出規制の対象など)を使っていないか
- 検図者・日付・指摘・処置が記録に残るか
- 承認者の承認を経て出図されているか
3段階に分けると、抜けなくなる
30項目を1人で1回で見ようとすると、たいてい形骸化します。段階を分けて、それぞれで見る観点を変えるのが現実的です。
第1段階:設計者の自己点検。 主に1群と2群。寸法の整合、公差の指示、部品表との一致。ここは自分で潰せますし、潰さずに回すと第三者の時間を無駄に使います。
第2段階:第三者の検図。 主に3群と4群。作れるか、買えるか。 ここは設計者本人には見えにくい部分です。できれば製造や調達を知っている人が見るのが理想で、それが難しければ別の設計者でも構いません。本人以外が見ることに意味があります。
第3段階:承認。 5群と、全体としての妥当性。コストと納期を含めた判断が入ります。
この3段階を1つの様式にまとめて、それぞれの欄に名前と日付が入る形にしておくと、どこまで見たかが後から分かります。
他社のリストを、そのまま使わない
ここが一番伝えたいところです。
検図チェックリストは、ネット上にいくつも転がっています。この記事の30項目も含めて、そのまま使うと効きません。 理由は単純で、自社で実際に起きた不具合が入っていないからです。
効くリストの作り方は決まっています。是正処置報告書から項目を足す。 客先から不具合の指摘を受けた、社内で作り直しが発生した、そのたびに「検図で気づけたか」を問い、気づけたはずなら項目を1行足す。
これを2年も続けると、リストが自社の形になります。30項目のうち10項目が自社固有の項目になっていれば、そのリストはもう資産です。 他社が同じものを持っていても意味がありません。
逆に、何年も項目が増えていないリストは、たぶん使われていません。増えていないこと自体が、形骸化のサインです。
ベテランの検図眼は、形式知にできる
冒頭の「ベテランが見れば5分で分かる」に戻ります。
ベテランが5分で気づけるのは、過去に似た図面で痛い目に遭っているからです。この穴は工具が届かない、この材料は納期が読めない、この公差は測る手段がない。全部、経験の蓄積です。
そして、その経験は過去の図面と、そのときの指摘の中に残っています。 検図の記録を残していれば、それは「どの形状のときに何を指摘されたか」のデータベースです。残していなければ、その人が辞めた時点で消えます。
当社のエンタープライズAI「ZEROCK」でやっているのは、この蓄積を引けるようにすることです。いま検図している図面に似た過去の図面を探し、そのときどんな指摘が出たかを並べる。AIが検図をするのではなく、ベテランの記憶にあたる部分を検索可能にするという位置づけです。
ここも先ほどの記事と同じで、先に記録を残す運用が要ります。 記録がなければ、引けるものがありません。チェックシートを回して記録を貯めるところから始めてください。
技能の継承という観点では製造業の技能伝承に、図面の管理という観点では図面管理とPLMに、それぞれ別の角度から書いています。
チェックシート
この30項目を、チェック者・日付・指摘内容・処置・承認欄つきの様式にした検図チェックシートを用意しました。3段階の欄を分けてあるので、そのまま運用に乗せられます。品質監査で設計検証の証跡を求められたときにも出せる体裁です。
自社の項目を足していく前提で、行を追加できる形にしてあります。資料のダウンロードは、この記事の下の案内からどうぞ。
まとめ
- 検図は寸法のチェックではない。作れるか、買えるか、検査できるかまで見る
- 5群30項目に分ける。寸法と整合、公差と精度、加工可能性、調達可能性、法規と記録
- 自己点検・第三者の検図・承認の3段階に分け、見る観点を変える
- 他社のリストをそのまま使わない。是正処置報告書から自社の項目を足す
- 項目が何年も増えていないリストは、使われていない
- 記録を残せば、品質監査の証跡になり、ベテランの検図眼を形式知にできる
検図の標準化や、過去の指摘を引けるようにしたいというご相談は、お問い合わせからどうぞ。






