こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
化学品の輸出管理の話になると、こんな疑問が出てきます。「化学品の場合は、別表第2も見ないといけないですよね。それに第3の2とかも」。
答えは、どちらも「はい」です。ただし、この2つは役割がまったく違います。別表第2は「輸出に承認が要る物質」のリスト、別表第3の2は物質ではなく「輸出先の地域」のリストです。さらに、化学品でいちばん最初に見る別表第1の3項は、その2つとも別の理由で作られた表です。表の名前が似ているので混ざりやすく、現場では「別1の3項に非該当だったから終わり」と考えて止まってしまうことが少なくありません。
この記事では、化学品を扱う会社の担当者が、自社の製品を手元に置いて、どの表をどの順番で見ればよいかを整理します。条文は、2026年11月6日にe-Govから取得した輸出貿易管理令(輸出令)、貨物等省令、外国為替令、化学兵器禁止法の原文で確かめました。化学兵器禁止条約(CWC)との対応は、条約を運営する化学兵器禁止機関(OPCW)の公開資料で確かめています。
業界ごとの体制や大手メーカーの取り組みは、すでに化学品メーカーの輸出管理の解説に書きました。別表第2の全項目は別表第2の解説記事にまとめてあります。今回は重ねて書かず、「自社の製品を例に、3つの表をつなげて読む」ことだけに絞ります。
30秒で読む要点 化学品は、次の順に確かめます。第一に別表第1の3項。軍用の化学製剤の原料や製造装置が対象で、許可が要ります。第二に別表第2。オゾン層破壊物質や水銀など、別の理由で承認が要る化学品が載っています。第三に16項と別表第3、別表第3の2。ここまでのリストに当たらない化学品でも、用途や需要者、輸出先の地域によって許可が要る場合があります。別表第3の2は物質ではなく地域の区分です。
先に押さえる言葉。表の名前と役割を一枚にします
最初に、言葉をそろえます。ここがあいまいなまま読み進めると、どの表の話をしているのか分からなくなります。日常のたとえを添えておくので、建物の出入り口を思い浮かべながら読んでください。
| 言葉 | 意味 | たとえ |
|---|---|---|
| 輸出令 | 輸出貿易管理令。外為法の下で、輸出に許可や承認が要る貨物と地域を定めた政令 | 建物の入退室ルールの本文 |
| 別表第1 | 輸出に許可が要る貨物と仕向地を定めた表。1〜16項 | 立入禁止の部屋の一覧 |
| 別表第1の3項 | 軍用の化学製剤の原料、製造装置、修理用の部品。化学品の中心になる項 | 立入禁止の部屋のうち、薬品庫 |
| 別表第2 | 輸出に承認が要る貨物と仕向地を定めた表。環境・健康・条約などが理由 | 入るのに届け出が要る部屋の一覧 |
| 別表第3 | 輸出管理の体制が整っているとされる27か国。経産省はグループAと呼ぶ | 顔なじみの来客 |
| 別表第3の2 | アフガニスタン、北朝鮮など10の国・地域。仕向地の区分で、物質のリストではない | 入室時の確認を一段厳しくする来客の区分 |
| 貨物等省令 | 輸出令の項目ごとに、具体的な物質名や濃度、仕様を定めた省令 | 部屋ごとの持込み品の詳細な札 |
| 16項 | リストにない貨物も、用途や需要者次第で許可を求めるキャッチオール規制の受け皿 | 札に載っていなくても、怪しければ止める受付 |
| 化学兵器禁止条約(CWC) | 化学兵器の開発・生産・保有・使用を禁じる条約。OPCWが運営する | 世界共通の薬品庫の規則 |
| 該非判定 | 自社の貨物が、リスト規制の項目に当たるか当たらないかを判断する作業 | 持込み品の札と、自分の荷物を見比べる作業 |
許可と承認という言葉も区別してください。輸出令の別表第1に当たる貨物は、輸出令第1条にもとづく「許可」を受けます。別表第2に当たる貨物は、第2条にもとづく「承認」を受けます。どちらも経済産業大臣への申請ですが、根拠も、対象も、例外の仕組みも別物です。同じ貨物が両方に載ることも、理屈の上ではありえます。
最初の表。別表第1の3項は、化学品の「中身」を見る
化学品でまず確かめるのは、別表第1の3項です。条文は3つの部分に分かれています。
(一)は、軍用の化学製剤の原料となる物質、または軍用の化学製剤と同等の毒性を持つ物質、あるいはその原料となる物質のうち、経済産業省令で定めるものです。(二)は、軍用の化学製剤の製造に使われる装置やその部品、附属装置のうち、省令で定める仕様のものです。具体的には、反応器、貯蔵容器、熱交換器や凝縮器、蒸留塔や吸収塔、充てん用の機械、かくはん機、弁、多重管、ポンプ、焼却装置、空気中の物質を検知する装置の11種類が並びます。(三)は、反応器や貯蔵容器の修理に使う組立品や部品です。下欄の仕向地はすべて「全地域」で、どの国に送る場合でも許可が要ります1。
化学品の担当者が主に見るのは(一)です。「どの物質が」「どれだけ含まれていると」該当するのかは、輸出令には書かれていません。貨物等省令の第2条第1項が、その中身を定めています2。
3つの区分と、含有率の3段階
省令の第2条第1項は、物質を3つの区分に分けています。
| 区分 | 何を指すか | 混合物で該当する含有量(全重量に対して) |
|---|---|---|
| 第1号 | 軍用の化学製剤の原料となる物質 | 列挙された物質のどれかが30パーセント超 |
| 第2号 | 軍用の化学製剤と同等の毒性を持つ物質 | アミトン、PFIB、BZ(省令の表記ではイ〜ハ)は1パーセント超。二塩化カルボニル、塩化シアン、シアン化水素、トリクロロニトロメタン(ニ〜ト)は30パーセント超 |
| 第3号 | 第2号の物質の原料となる物質 | ヘ〜タに当たるものは10パーセント超。塩化ホスホリルから、エチルジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンまで(レ〜ヤ)は30パーセント超 |
数字の違いに注意してください。同じ「混合物」でも、1パーセント、10パーセント、30パーセントと3つの線があります。毒性が強い物質ほど、少量でも該当します。配合表の成分と割合が分からないと、この判定はそもそも始められません。
第1号の物質には、フッ化水素、フッ化カリウム、シアン化カリウム、ジメチルアミン、ジエチルアミン、五硫化リンなど、工業原料として身近な名前が並びます。第3号には、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、亜リン酸のエステル類、トリエタノールアミンといった、化学メーカーなら見慣れた薬品が入っています。ここで確認しておきたいのは、掲載は物質の区分であって、その物質を扱う会社や取引先への評価ではないという点です。民生用途でも使われる物質が多く、医薬、農薬、樹脂、洗浄剤、電子材料の原料として扱う会社は少なくありません。
化学兵器禁止条約(CWC)との対応
3項が国際的な枠組みとどうつながっているかを、確かめておきます。CWCは、規制する化学物質を「表1」「表2」「表3」の3つに分けています。OPCWの公開資料で、表2にはアミトン、PFIB、BZ、三塩化ヒ素、チオジグリコールなどが、表3にはホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリン、そしてオキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、トリエタノールアミンなどが載っていることを確かめました34。
この顔ぶれは、貨物等省令の第2号と第3号に並ぶ物質と重なります。たとえば、省令第2号のイ〜ハはCWC表2のアミトン、PFIB、BZに、ニ〜トは表3の有毒化学物質に対応します。国内法の化学兵器禁止法も同じ構造で、施行令の別表が「特定物質」「第一種指定物質」「第二種指定物質」の3つに分けています。第一種指定物質の欄にはアミトン、PFIB、BZが、第二種指定物質の欄にはホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリンが並んでいて、表2と表3に重なるのがわかります5。
一方で、重ならない部分もあります。省令第1号に挙がるフッ化水素やフッ化カリウムは、OPCWが公開している表2と表3の物質一覧には見当たりませんでした。つまり、CWCの表を見るだけでは、3項の対象を取りこぼします。条約の表は入り口の目安で、判定の根拠は貨物等省令の列挙です。この区別が、化学品の該非判定で最初のつまずきどころになります。
もう一つ、輸出の許可と、化学兵器禁止法にもとづく届出は別の手続きです。化学兵器禁止法の第28条は、指定物質を輸出または輸入した人に、前年の実績数量を毎年経済産業大臣に届け出るよう求めています6。これは事後の実績報告です。届出をしたことが、輸出の許可の代わりになることはありません。
少量でも「少額特例」は使えません
3項のもう一つの大事な点が、少額の特例がないことです。輸出令第4条第1項第5号は、総価額が100万円以下の貨物については許可を不要にする仕組みですが、対象は別表第1の5項から13項まで、および15項の貨物に限られています1。3項は入っていません。
研究機関や商社でよくある場面を考えてみてください。海外の共同研究先に、試薬50グラムを送りたい。金額は数千円です。ところが、その試薬が貨物等省令の基準を超える含有率で3項(一)に当たれば、金額に関係なく許可の対象になります。「少量だから」「無償だから」という理由で外せるのは、3項では例外に当たらないと理解しておくのが安全です。
技術の提供は、外為令の別表で別に見る
3項には、貨物とは別に技術の話もあります。化学兵器関連の設計図や製造ノウハウを海外に渡す場合は、外国為替令の別表3項が対象です。(一)は別表第1の3項(一)の貨物の設計、製造または使用に係る技術を、仕様の限定なしで全地域向けに規制しています。(二)は、装置にあたる3項(二)と(三)の貨物の技術のうち、省令が定めるものです7。化学品の製造条件や配合を海外の拠点やお客様に伝えるときは、貨物の輸出と同じ感覚で、この技術の側も確認する必要があります。
該非判定の属人化を、AIで解消する。
経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。
二つ目の表。別表第2は「承認」で、他の法令の物質をそのまま引く
3項で該当しなかった化学品も、別表第2で止まることがあります。別表第2は、輸出令第2条にもとづき、経済産業大臣の「承認」を受けなければ輸出できない貨物と仕向地を定めた表です。軍事転用の懸念で組み立てた別表第1と違い、環境の保護、人の健康、条約の履行、国内法の取締りなどが理由になっています1。
化学品に関係するのは、おもに次の項です。
| 項 | 対象 | 下欄 |
|---|---|---|
| 21の3 | 麻薬向精神薬原料その他、麻薬や向精神薬の原材料となる化学物質で省令が定めるもの | 全地域 |
| 35 | オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の附属書A、B、C、Eに掲げる物質 | 全地域 |
| 35の3 | ロッテルダム条約の附属書IIIの化学物質、一定の農薬や殺虫剤の成分、特定毒物、労働安全衛生法施行令の特定の物、化審法の第一種特定化学物質 | 全地域 |
| 35の4 | 水俣条約が定める水銀、水銀を使用した特定の製品 | 全地域 |
35の3は(一)から(六)まで6つの枠があり、(一)がロッテルダム条約、(二)が農薬の成分、(三)が特定毒物、(四)が殺虫剤の成分、(五)が労働安全衛生法施行令に掲げる物、(六)が化審法の第一種特定化学物質です1。条文を見ると、物質名はほとんど書かれていません。「条約の附属書に掲げる」「法律の第何条に規定する」といった書き方で、他の法令や告示に参照を回しています。
この構造が、別表第2のいちばん厄介な点だと考えています。参照先の法律や条約で物質が追加されると、輸出令の条文は1文字も変わらないまま、輸出に承認が要る範囲が広がるからです。2026年も化審法の第一種特定化学物質に追加が続いていて、具体的な物質と施行日は別表第2の解説記事で整理しています。化学品の担当者は、輸出令だけでなく、化審法、農薬取締法、毒物及び劇物取締法といった元の法令の改正も追う体制が必要です。
金額による除外は、化学品ではほとんど効きません
別表第1の3項に少額特例がないことを書きましたが、別表第2でも事情は似ています。輸出令第4条第4項は、総価額が別表第7の金額以下であれば承認を不要にしていますが、別表第7に挙がるのは3区分だけです。化学品に関係するのは、21の3のうちアセトン、エチルエーテルなど省令で定めるもので、30万円以下という基準です。35、35の3、35の4の化学品に、この金額による除外はありません1。
ロシア・ベラルーシ向けの別表第2の3
別表第2には、物質の種類ではなく仕向地で決まる枝番もあります。別表第2の3は、ロシアやベラルーシ向けの輸出に承認を求める貨物を並べた表で、化学品に関しては、軍用の化学製剤の原料となる物質や、化学製剤の製造に使う反応器、貯蔵容器、蒸留塔、ポンプなどの装置が含まれます。さらに、別表第2の4に列挙された10の国・地域向けでは、経済産業大臣が告示で指定した者との取引に限って承認が要る仕組みもあります1。ここは制裁と連動して改正が続く部分です。最新の対象は、輸出する時点で、必ず原文で確かめてください。
三つ目の表。16項と別表第3、別表第3の2が「行き先」を決める
ここまでの2つの表は、貨物そのものを見て判定しました。3つ目は、貨物ではなく用途と行き先を見る仕組みです。
別表第1の16項は、キャッチオール規制の受け皿です。リストに載っていない貨物でも、大量破壊兵器や通常兵器の開発などに使われるおそれがあるときは、許可を求めます。16項の中欄は2段になっています。(一)は工作機械、レーダー、集積回路、航空機、分析・測定用の機器など、省令で定める特定の品目です。(二)は、関税定率法別表の第25類から第40類、第54類から第59類、第63類、第68類から第93類、第95類に当たる貨物です。化学品の大半が分類される第28類(無機化学品)と第29類(有機化学品)は、第25類から第40類の中に入ります1。
つまり、3項にも別表第2にも当たらなかった化学品は、ほぼ例外なく16項(二)の対象になります。「リスト規制に非該当だから、輸出管理とは無縁」ではない理由が、ここにあります。リスト規制とキャッチオール規制の違いはリスト規制とキャッチオール規制の違いで、2025年10月の改正の全体像はキャッチオール規制の改正まとめで説明しています。
別表第3と別表第3の2は、仕向地を3つに分ける
16項の下欄は「全地域(別表第三に掲げる地域を除く。)」です。この一文で、仕向地が3つに分かれます。
別表第3は、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、ドイツ、フランス、大韓民国、英国、アメリカ合衆国など27か国です。経産省はグループAと呼んでいます。この地域は16項の下欄から除かれているので、客観要件(輸出者自身が用途と需要者を確認して、懸念があれば許可が要るという仕組み)はかかりません。ただし2025年10月9日の見直しで、迂回輸出のおそれがあるとして経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知(インフォーム通知)を受けたときは、この地域向けでも許可が必要になりました1。
別表第3の2は、アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダンの10の国・地域です。条文は地域名を列挙しているだけですが、国連の武器禁輸の枠組みに対応する地域と整理されることが多く、私もその理解で読んでいます。ただし、その対応関係は条文には書かれていないため、経産省の最新の説明で確かめてください。この区分に入る仕向地では、後で見るように、通常兵器の用途要件が加わります。別表第3の2に掲載されているのは、制度上の仕向地の区分であり、その地域の企業や人々への評価ではありません。
別表第3にも別表第3の2にも入らない地域が、いわゆる一般国です。
16項(二)の化学品に、仕向地ごとに何がかかるか
輸出令第4条第1項第4号の書き方を表に直すと、次のようになります1。
| 仕向地 | 大量破壊兵器の用途要件 | 大量破壊兵器のインフォーム通知 | 通常兵器の用途要件 | 通常兵器のインフォーム通知 |
|---|---|---|---|---|
| 別表第3(27か国) | かからない | 通知を受けたときだけ許可が要る(第1条第3項) | かからない | 同左 |
| 一般国 | かかる | かかる | かからない | かかる |
| 別表第3の2(10の国・地域) | かかる | かかる | かかる | かかる |
用途要件とは、その貨物が兵器の開発等に使われるおそれがある場合として、経済産業省令が定めている条件に当たるか、という確認です。インフォーム通知は、経済産業大臣から個別に許可申請をすべき旨の通知を受けたときの要件です。表のとおり、別表第3の2に入るかどうかで違うのは、通常兵器の用途要件が加わるかどうかです。つまり別表第3の2は、化学品の中身を調べる表ではなく、「この化学品を、どの地域に出すのか」を確かめる表です。
化学品の現場に引き寄せて言うと、3項に当たらない汎用の溶剤や中間体でも、仕向地が別表第3の2の地域であれば、確認の手間が一段増えます。逆に、別表第3の27か国向けであっても、迂回輸出のおそれがあるという通知を受けた取引は止まります。通知は、輸出者の側では予測しにくいので、事前に経産省へ相談しておく文化が実務では大切だと考えています。
国際的な枠組みの位置づけ
3項に並ぶ物質は、化学兵器の原料になりうる物質を各国が足並みをそろえて管理する、オーストラリア・グループ(AG)の枠組みとも関連づけて語られます。個々の物質がAGのどのリストに対応するかは、貨物等省令と経産省のマトリクス表で確かめてください。AGは、1985年にオーストラリアの提案で、化学兵器の原料となる化学品の輸出管理を足並みそろえて行うために、15か国で始まりました8。その後参加国が増え、豪州政府のページでは42か国と欧州連合が参加すると記されています。ただし、現在の正確な参加数は、AGの公式サイトで直接確かめてください。この記事では、公式ページを直接開けなかったため、検索結果に出た記載を引いています。
3つの表を順にたどる。仮の3製品で手順を試す
ここまでの内容を、手順に直します。番号の順に確かめていくと、止まる場所が分かります。
- 物質を特定します。名称、CAS番号、成分と含有率、SDS(安全データシート)を手元に並べます。混合物は配合表が必要です。
- 別表第1の3項で照合します。貨物等省令の第2条第1項の物質名と、含有率の線(1、10、30パーセント)に当たるかを見ます。装置や部品なら、省令の次の項の仕様を見ます。
- 技術の提供があるなら、外為令別表の3項も見ます。
- 別表第2で照合します。21の3、35、35の3、35の4の参照先に当たるかを、元の法令や告示で確かめます。
- 16項(二)に当たるかを見ます。化学品はほぼ該当するので、仕向地を別表第3、別表第3の2、一般国に分けます。
- 用途と需要者を確認します。仕向地の区分に応じて、用途要件、需要者についての省令の確認、インフォーム通知の有無を見ます。
- 判断の根拠を記録します。非該当でも、どの表のどの項と照合して、どう判断したかを残します。
次の3つは、仕組みを理解するための仮の例です。実在する取引ではありません。
| 仮の製品 | 3項 | 別表第2 | 16項と仕向地 | 実務での結論の書き方 |
|---|---|---|---|---|
| 製品X。トリエタノールアミン98パーセントの工業用原料 | 省令第2条第1項第3号のヤに当たり、30パーセント超。該当 | 参照先に当たるかを確認 | 3項に該当するため、仕向地を問わず許可の対象 | 許可申請の準備。含有率の根拠をSDSで示す |
| 製品Y。有機溶剤に塩化チオニルを20パーセント溶かした溶液 | 塩化チオニルは30パーセント超が線なので、20パーセントでは3項に当たらない。ただし他の列挙物質を含まないか確認 | 各項の参照先に当たらないことを確認 | 16項(二)に当たる。仕向地が一般国なら用途要件とインフォーム通知を確認 | 非該当。ただし根拠と用途確認の記録を残す |
| 製品Z。冷媒用の、モントリオール議定書の附属書に掲げられた物質 | 3項の列挙に当たらないことを確認 | 35項に当たる。承認が必要 | 別表第2で止まるため、承認の申請を先に進める | 承認申請。許可と混同しない |
製品Yのような場合が、実務ではいちばん悩ましいと感じています。「20パーセントなら3項は非該当」と判定するのは簡単ですが、同じ溶液の濃度を35パーセントに変えた新製品が出たとき、判定は逆になります。配合変更のたびに、該非判定をやり直す仕組みが要ります。配合表と判定結果を紐づけて管理しておくだけで、後からの見直しがずっと楽になります。
非該当と判断した結果を、取引先や税関に説明するときの書類については非該当証明書の解説記事にまとめました(日本語のみ)。判定作業そのものを効率化する考え方は、該非判定を効率化する進め方が参考になります。
よくある誤解と、迷ったときの問い
最後に、化学品の現場で聞く誤解を、条文でひとつずつ確かめます。
| よくある誤解 | 条文でどうなっているか |
|---|---|
| 危険な化学品だけが対象になる | 3項(一)の対象には、トリエタノールアミンやジエチルアミンなど、さまざまな工業用途に使われる物質が含まれる。含有率が基準を超えるかで決まる |
| 少量のサンプルなら許可はいらない | 少額特例は別表第1の5〜13項と15項だけ。3項にはない。別表第2も金額で除外されるのは21の3の一部などごく一部 |
| CWCの表に載っていなければ非該当 | 省令第1号のフッ化水素やフッ化カリウムは、OPCWの表2・表3の一覧にはない。判定の根拠は貨物等省令の列挙 |
| 別表第2は別表第1の続きで、同じ許可だ | 別表第1は第1条の許可、別表第2は第2条の承認。根拠も例外も別 |
| 別表第3の2は物質のリスト | 地域の区分。条文に10の国・地域が列挙されている |
| 相手の国がCWCの締約国なら安心 | 3項の下欄は全地域。国ごとの免除はない。仕向地の区分は16項のキャッチオール側で効く |
| 化学兵器禁止法の届出をしたから輸出も済んでいる | 第28条の届出は前年の輸出入の実績報告。輸出の許可とは別の手続き |
迷ったら、3つの問いに戻ってください。この物質は何か(物質の問い)。この表は許可か承認か(根拠の問い)。どの地域に、どんな用途で出すのか(行き先の問い)。この3つが、3つの表にそれぞれ対応しています。
次に確かめること
当社の別記事の整理では、2026年10月19日に始まった意見公募の改正案が、別表第1の3の2、5、6、7、12の項を動かす内容です。3項そのものを動かす案とは書かれていませんが、別表第2は参照先の法令の改正で対象が増えやすいので、四半期に一度は点検する運用をおすすめします。改正案の全体像は別表第1の解説記事に書いています。
私は、化学品の輸出管理でいちばん大切なのは、判定を「物質の問い」「根拠の問い」「行き先の問い」の3つに分けて、記録に残すことだと考えています。人が全部覚えておくのは現実的ではありません。配合表、SDS、仕向地、判定結果を一つの記録にまとめておけば、担当者が替わっても、表が改正されても、確認の筋道が残ります。
TRAFEEDは、条文と仕様の突合せと、取引先・仕向地の確認を支援する輸出管理のAIエージェントです。最終的な該非判定は貴社の輸出管理責任者が行うものですが、3つの表をたどる作業の下ごしらえに使っていただけます。サービスの概要はTRAFEEDのページに、個別のご相談はお問い合わせにあります。まず自社の輸出が該当しそうかを手早く見たい方は、輸出管理の簡易診断もお使いください。
参考文献
Footnotes
-
e-Gov法令検索「輸出貿易管理令」(昭和24年政令第378号)第1条、第2条、第4条、別表第1(3項、16項)、別表第2、別表第2の3、別表第2の4、別表第3、別表第3の2、別表第7。2026年11月6日取得。 https://laws.e-gov.go.jp/law/324CO0000000378 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
-
e-Gov法令検索「輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令」(平成3年通商産業省令第49号)第2条。2026年11月6日取得。 https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50000400049 ↩
-
OPCW, Chemical Weapons Convention, Annex on Chemicals, Schedule 2. 2026年11月6日確認。 https://www.opcw.org/chemical-weapons-convention/annexes/annex-chemicals/schedule-2 ↩
-
OPCW, Chemical Weapons Convention, Annex on Chemicals, Schedule 3. 2026年11月6日確認。 https://www.opcw.org/chemical-weapons-convention/annexes/annex-chemicals/schedule-3 ↩
-
e-Gov法令検索「化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律施行令」別表。2026年11月6日取得。 https://laws.e-gov.go.jp/law/407CO0000000192 ↩
-
e-Gov法令検索「化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律」第2条、第28条。2026年11月6日取得。 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000065 ↩
-
e-Gov法令検索「外国為替令」別表3項。2026年11月6日取得。 https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000260 ↩
-
Australia Group Secretariat, Origins. 2026年11月6日、検索結果で確認(公式サイトは直接取得できなかったため、参加数は公式サイトでの再確認が必要)。 https://www.dfat.gov.au/publications/minisite/theaustraliagroupnet/site/en/origins.html ↩






