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デュアルユース品目とは?両用品目の意味・該非判定・規制の仕組みを初心者向けに解説

公開2026-07-24濱本 隆太

デュアルユース品目(両用品目)とは何かを、輸出管理の実務目線でやさしく解説します。民生品がなぜ規制されるのか、4つの国際輸出管理レジーム、外為法とリスト規制・キャッチオール規制の関係、該非判定の進め方、みなし輸出まで、初めての方が最後まで読める形で整理しました。

デュアルユース品目とは?両用品目の意味・該非判定・規制の仕組みを初心者向けに解説
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

輸出管理の入り口でいちばん多い誤解を、ひとつ挙げさせてください。それは「うちは民生品しか作っていないから、輸出管理は関係ない」というものです。

この感覚はとても自然です。自社の製品カタログには、工場で使う装置や、電子機器に入る部品が並んでいる。兵器の部品を作った覚えはない。営業も購買も、そう思っています。ところが輸出管理の世界では、製品が民生品として設計され、民生市場に売られているという事実は、規制対象かどうかの判断にほとんど影響しません。判断の軸が、まったく別のところにあるからです。

その別の軸を説明する言葉が、デュアルユースです。日本の法令では両用品目と呼びます。この記事では、デュアルユースとは何か、なぜ普通の製品が規制されるのか、そして自社が何をどう確認すればいいのかまでを、輸出管理に初めて触れる方が最後まで読めるように書きます。専門用語は、そのつど日本語に開きます。

デュアルユースとは、用途が一つに決まらないという意味

デュアルユース(Dual-Use)とは、民生用にも軍事用にも使える可能性のある貨物や技術を指します。日本の外国為替及び外国貿易法(外為法)とその関係法令では、武器そのものと区別して「両用品目」という言葉が使われます。

ここで大事なのは、デュアルユースが製品の属性ではなく、可能性についての言葉だという点です。ある工作機械が軍事用に作られたわけではありません。それでも、精度が一定水準を超えていれば、兵器の部品加工に使える。だから規制の網に入る。つまり「この製品は軍事用ですか、民生用ですか」という問いの立て方自体が、輸出管理では成り立ちません。答えは「どちらにもなり得ます」だからです。

身近な例を並べてみます。高精度の工作機械は、自動車部品も航空機部品も加工できます。ベアリングは、産業機械にも、回転する軍事装備にも入ります。赤外線カメラは、設備の保守点検にも、暗視装置にも使えます。炭素繊維は、釣り竿にもスポーツ用品にも使われますが、遠心分離機の部材にもなります。高性能な半導体は、スマートフォンにも、誘導装置にも載ります。ドローンのモーターやフライトコントローラも同じ話です。

こうして並べると分かるのは、デュアルユースが例外的なカテゴリではないということです。むしろ現代の産業製品の多くが、程度の差はあれデュアルユース性を持っています。特殊な軍需品を扱う会社だけの問題ではありません。

もうひとつ、混同されやすい言葉に軍民融合があります。これは軍と民間が技術・人材・資金を一体で運用する政策そのものを指す言葉で、国家の戦略を表します。デュアルユースが品目や技術の性質を表すのに対し、軍民融合はそれを国家としてどう使うかの仕組みを指します。似た文脈で登場しますが、別のレイヤーの概念として分けておくと、後で制度の話を読むときに混乱しません。

自社製品がこの話に関係するのかどうか、まず肌感覚をつかみたい方は、輸出管理の無料セルフ診断を試してみてください。数分で、確認すべき論点の当たりがつきます。

なぜ規制するのか。スピンオフからスピンオンへ

そもそも、なぜ民生品まで管理しなければならないのでしょうか。ここには歴史的な事情があります。

かつては、軍事技術が先にあって、それが民生に降りてくる流れが主流でした。インターネットもGPSも、出発点は軍事や政府のプロジェクトです。この流れをスピンオフと呼びます。技術の最先端は国防の側にあり、民間はその成果を受け取る側でした。

ところが2010年代以降、この関係が逆転する分野が急速に増えました。半導体の最先端は商用ファウンドリが牽引し、AIの研究は民間企業が主導し、ドローンは民生機のほうが安価で高性能になり、通信規格も民間主導で標準化されています。民生技術が軍事技術を追い越し、軍の側が民間から調達する。この逆流をスピンオンと呼びます。

輸出管理の難しさは、ほぼここに集約されていると私は思っています。規制の対象が「軍需品」から「普通に売られている高性能品」へと広がったわけです。売り手からすれば、何の変哲もない産業用部品です。しかし組み合わせと使い道によっては、兵器システムの中核になり得る。この非対称が、現場の担当者を悩ませ続けています。

日本には、この問題を痛感した歴史的な事件があります。1987年に発覚した東芝機械のココム違反事件です。高精度の工作機械が、潜水艦のスクリュー加工に使われ、静粛性の向上につながったとされた事案で、日米関係に深い影を落としました。当時のココム(対共産圏輸出統制委員会)は冷戦下の枠組みで、1996年にワッセナー・アレンジメントへ引き継がれています。輸出管理が経営リスクに直結すると日本企業が最初に学んだ事件として、今も語られます。

該非判定の属人化を、AIで解消する。

経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。

誰が決めているのか。4つの国際レジームと日本の法体系

規制対象のリストは、日本が単独で決めているわけではありません。国際的な枠組みで合意された内容が、各国の国内法に落とし込まれます。ここを知っておくと、なぜ各国のリストが似ているのか、そしてなぜ毎年更新されるのかが理解できます。

主要な枠組みは4つです。

枠組み 対象分野
ワッセナー・アレンジメント(WA) 通常兵器と関連する汎用品・技術
ミサイル技術管理レジーム(MTCR) ミサイルおよび無人航空機の運搬手段関連
オーストラリア・グループ(AG) 化学・生物兵器に関連する物質と設備
原子力供給国グループ(NSG) 原子力関連の資機材と技術

これら4つのレジームで合意された内容が、日本では外為法の下にある政令に反映されます。貨物については輸出貿易管理令(輸出令)の別表第1、技術については外国為替令(外為令)の別表です。輸出令別表第1は項番で整理されていて、1項が武器そのもの、2項以降がいわゆる両用品目にあたります。ここが冒頭で触れた「武器とは区別して扱う」の中身です。

この構造を知っておくと実務で得をします。たとえばEUや米国のリストと日本のリストが似た構造を持つのは、元をたどれば同じレジームの合意に基づいているからです。同時に、各国が独自に上乗せする領域も増えていて、そこは国ごとに読み分ける必要があります。EUの制度についてはEU Dual-Use Regulationの基礎構造で詳しく扱っています。

リスト規制とキャッチオール規制という2階建て

日本の輸出管理は、大きく2つの仕組みでできています。ここが理解できれば、実務の骨格はつかめたと言っていいと思います。

ひとつ目がリスト規制です。輸出令別表第1や外為令別表に列挙された、性能や仕様の基準に当てはまる品目が対象になります。たとえば「加工精度が○○マイクロメートル以下の工作機械」のように、条文はスペックで書かれています。該当すれば、原則として仕向地を問わず経済産業大臣の許可が必要です。相手が友好国であっても、リストに当たれば手続きは必要になります。

ふたつ目がキャッチオール規制です。こちらはリストに該当しない品目が対象で、大量破壊兵器や通常兵器の開発・製造などに用いられるおそれがあると分かった場合、あるいは経済産業省から通知を受けた場合に、許可が必要になります。判断のきっかけは、用途と需要者です。つまりモノのスペックではなく、誰が何に使うかで決まる規制です。

この2階建てを理解していないと、典型的な失敗が起きます。「リストを確認して非該当だった。だから自由に輸出できる」という判断です。リスト非該当は1階をクリアしただけで、2階のキャッチオールが残っています。取引先の素性が不明だったり、用途の説明が曖昧だったり、第三国経由で再輸出される気配があったりすれば、そこで立ち止まる必要があります。

私が現場を見ていて思うのは、事故の多くは巧妙な密輸ではなく、この2階部分を素通りする退屈な承認から生まれるということです。規程には書いてある。教育も年1回やっている。でも実際の審査は、営業が書いた「用途:産業用設備の補修部品」という一文を承認欄に転記する作業になっている。そういう会社は、決して珍しくありません。

該非判定という、すべての出発点

では具体的に何をするのか。最初にやるのが該非判定です。

該非判定とは、自社の貨物や技術が規制リストに該当するかどうかを判定し、その結果を根拠つきで記録する作業を指します。読み方は「がいひはんてい」です。方法としては、製品の仕様を条文の要件と1つずつ突き合わせていきます。実務では、パラメータシートや項目別対比表と呼ばれる様式を使って、条文の各要件に対して自社製品の数値がどうなっているかを並べ、該当か非該当かを判断していきます。

この作業の結果は、社内で完結しません。取引先から「この製品は非該当ですか」と聞かれ、非該当証明書の提出を求められる場面が頻繁にあります。特に商社や海外顧客との取引では、判定結果そのものが取引条件になります。つまり該非判定は、コンプライアンス部門の内部文書ではなく、対外的な説明責任を伴う成果物です。

該非判定でつまずきやすいポイントを3つ挙げておきます。

第一に、条文が読みにくいこと。輸出令別表第1と、それを具体化する省令(貨物等省令)を行き来しながら読む必要があり、初見ではまず構造がつかめません。慣れるまでは経済産業省の解釈通達や、業界団体の解説を併用するのが現実的です。

第二に、製品仕様が動くこと。設計変更でスペックが上がった結果、以前は非該当だった製品が該当に変わる、ということが起きます。判定は一度やって終わりではなく、製品ライフサイクルのなかで維持する必要があります。

第三に、リストが毎年更新されること。先ほど触れた国際レジームの合意を反映して、各国のリストは定期的に改正されます。去年の判定根拠が今年も有効とは限りません。

この3つが重なると、製品点数の多い会社では管理が一気に難しくなります。数千点の型番があり、それぞれに設計変更があり、その上でリストが毎年変わる。専任が一人か二人の体制で回すのは、正直なところ相当に厳しいと感じています。

モノだけではない。技術提供とみなし輸出

もうひとつ、見落とされやすい論点があります。輸出管理の対象はモノだけではありません。技術の提供も対象です。

ここでいう技術には、設計図、仕様書、製造ノウハウ、プログラムなどが含まれます。そしてこれを非居住者に提供する行為は、モノを輸出するのと同じように許可の対象になり得ます。この考え方をみなし輸出(deemed export)と呼びます。物理的に国境を越えていなくても、技術が外国に渡るのと同じ効果があるから輸出とみなす、という発想です。

提供の形は幅広く捉えられます。メールに図面を添付して送る。クラウドの共有フォルダにアクセス権を与える。工場見学で製造ラインを見せる。会議で口頭説明する。いずれも技術の提供に当たり得ます。「書類を渡していないから大丈夫」とは言えません。

さらに2022年5月から、居住者への技術提供についても運用が明確化されました。外為法上、入国後6か月を経過した外国人などは居住者として扱われるため、従来のみなし輸出管理の対象外になっていました。そこで、居住者であっても外国政府等の強い影響下にある状態を3つの類型として整理し、そうした人への技術提供も管理対象であることが明確にされています。これを特定類型と呼びます。

ここで誤解のないように書いておきたいのですが、経済産業省は資料のなかで、特定類型は個別に審査で確認する必要がある場合を類型的にまとめたものであり、特定類型に該当するからといって安全保障上懸念がある者とみなされるわけではないと明記しています。手続き上の区分であって、その人への評価ではありません。大学や研究機関でこの話を扱う際は、この一文を必ずセットで伝えるべきだと考えています。研究現場での実務は研究セキュリティの手順書のほうで詳しく整理しました。

自社は何から始めればいいか

ここまでを踏まえて、これから体制を作る会社が着手すべき順番を書いておきます。

出発点は、扱っている品目の棚卸しです。何を作り、何を仕入れ、何を売っているのか。型番レベルで一覧化しないと、そもそも該非判定の対象が定まりません。地味ですが、ここが抜けている会社は驚くほど多いです。

次が該非判定です。主力製品から順に、リスト該当性を判定して根拠を残します。全点を一度に終わらせようとすると挫折するので、売上上位と輸出実績のあるものから着手するのが現実的です。

三番目が取引先の確認です。誰に売っているのか、その先で誰が使うのか。エンドユーザーと最終用途を確認し、記録に残す運用にします。ここでキャッチオール規制の2階部分に対応することになります。

四番目に、社内規程と手順の整備です。輸出管理の責任者を決め、審査の手順を文書化し、疑義が出たときに止められる仕組みを作ります。ひとつだけ強調しておきたいのは、止めた人が損をしない設計にすることです。取引を通せば売上は今期に立ち、問題が表面化するのは何年も先かもしれません。この非対称を放置すると、どれだけ立派な規程があっても現場では機能しません。

体制作りの具体的な手順は輸出管理体制の作り方にまとめてあります。デュアルユース品目をめぐる2026年の規制動向、特に中国の対日措置や米国のルールについてはデュアルユース技術と軍事転用リスクのほうで扱っています。

ここまで読んでいただければ分かるとおり、この仕事は品目データと規制条文と取引先情報を突き合わせ続ける作業です。しかも規制は各国が別々のタイミングで更新します。私たちがTRAFEEDというAIエージェントを作っているのは、この突き合わせを人手だけで維持するのが現実的でなくなったからです。過去の審査データ約3万件を使った岡山大学との共同実証では、AI判定精度95%以上を確認しています(自社調べ)。もっとも、最終的な該非判定は各社の輸出管理責任者が行うものです。AIが担うのは、条文とスペックの突き合わせを漏れなく高速に行い、判断の根拠を残すところまでです。

まとめ

デュアルユースをめぐる話は、突き詰めると次の数点に集約されます。

  • デュアルユース品目(両用品目)とは、民生用にも軍事用にも使い得る貨物や技術のことです。特殊な軍需品ではなく、日常的な産業製品の多くが該当し得ます
  • 判断の軸は、製品の見た目や販売目的ではなく、スペックが法令の基準に当たるかどうかです。「民生品だから関係ない」は成り立ちません
  • 規制リストは4つの国際レジーム(WA・MTCR・AG・NSG)の合意を各国が国内法化したもので、毎年のように更新されます
  • 日本の制度はリスト規制とキャッチオール規制の2階建てです。リスト非該当でも、用途と需要者に懸念があれば許可が必要になります
  • モノだけでなく技術の提供も対象です。メール送信もクラウド共有も口頭説明も、提供に当たり得ます
  • 該非判定は一度やって終わりではありません。設計変更とリスト改正の両方で、判定は動きます

最後に、この分野に初めて触れる方へひとつだけ。輸出管理は「面倒な手続き」として語られがちですが、本質は自社の製品がどこへ行き、何に使われるかを把握する仕事です。それは本来、ものを作って売る会社が当然に関心を持っていいことのはずです。規制対応として渋々やるのか、自社の製品の行き先を知る営みとして取り組むのか。同じ作業でも、続くかどうかはそこで変わってくると感じています。

自社の製品が該当するのか、どこから手をつけるべきか判断がつかない場合は、TRAFEEDの担当までご相談ください

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