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【2026年7月最新】デュアルユース(軍民両用)技術と輸出管理 完全ガイド:中国対日規制80社(2月・6月の2段階)・米Affiliate Rule 50%・経産省安保ガイダンス第3.0版で読む企業実務

公開2026-01-23更新2026-07-19濱本 隆太

中国の対日規制は2026年2月24日(公告第11号・第12号)と6月29日(公告第27号・第28号)の2段階で累計約80団体に拡大しました。米Affiliate Rule 50%(2026年11月10日再適用)、経産省安全保障貿易管理ガイダンス第3.0版まで、デュアルユース技術を扱う企業の実務を一次情報で整理します。

【2026年7月最新】デュアルユース(軍民両用)技術と輸出管理 完全ガイド:中国対日規制80社(2月・6月の2段階)・米Affiliate Rule 50%・経産省安保ガイダンス第3.0版で読む企業実務
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【2026年7月最新】デュアルユース(軍民両用)技術と輸出管理 完全ガイド:中国対日規制80社(2月・6月の2段階)・米Affiliate Rule 50%・経産省安保ガイダンス第3.0版で読む企業実務

株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。

「デュアルユース」という言葉は、これまで多くの企業にとって教科書の中の概念に近いものでした。輸出管理の研修で出てきて、念のため社内マニュアルに書いてはあるけれど、自社の取引で本当に問題になる場面はほとんどなかった。そういう会社も少なくないはずです。

その前提が、2026年に入って崩れました。しかも一度きりの出来事ではありません。中国の対日輸出規制は、1月、2月、6月と三度にわたって段階的に積み上がっています。

きっかけは1月6日でした。中国商務部は公告2026年第1号で、日本向けの両用品目の輸出管理を一般的に強化すると発表します1。日本の軍事エンドユーザー、あるいは日本の軍事力強化に寄与する最終用途に向けた輸出を、原則として認めないという内容です。続く2月24日、商務部は公告第11号・第12号で日本企業・団体40社を「輸出規制管理リスト(管控名単)」と「注視リスト(関注名単)」に掲載しました2。そして6月29日、公告第27号・第28号でさらに40団体が追加され、対象は累計で約80団体に膨らみます3

半年で40団体から80団体へ。倍増したという事実そのものが、この規制が単発の報復ではなく、継続的に運用される政策であることを物語っています。

ここでは、デュアルユース(軍民両用)技術とは何かという定義から、2026年に二段階で拡大した中国の対日規制、日本側で同時に進む防衛装備移転の緩和、米国Affiliate Rule 50%、そして企業が実務として何をすべきかまでを通しで整理します。最後に、該非判定をAIで自動化するTRAFEEDの位置づけにも触れます。


【自社チェック】 御社の取扱品目にデュアルユース該当品はないか?

半導体・集積回路・電子部品、精密機械(医療・光学機器)、EV電池関連のリチウム化合物やレアアース(ガリウム・ゲルマニウム・希土類)、通信機器、PC類は、2026年1月6日の中国対日デュアルユース輸出管理強化(商務部公告2026年第1号)で規制対象として明確化された品目です1。さらに2月24日(公告第11号・第12号)で40団体2、6月29日(公告第27号・第28号)でさらに40団体3が輸出規制管理リスト・注視リストに掲載され、累計は約80団体に達しています。

取扱品目をHSコード単位で再点検したい方は、TRAFEEDの個別相談で30分以内に整理可能です。

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要約(この記事でわかること)

  • デュアルユース(軍民両用)の定義と、なぜ2026年に重要度が一段上がったのか
  • 中国の対日規制が1月6日→2月24日→6月29日の三段階で拡大した経緯と、累計約80団体の構造
  • 6月29日に輸出禁止対象へ加わった防衛研究所や三菱電機・三菱重工の防衛系子会社など、具体的な顔ぶれ
  • 中国側措置の法的根拠(中華人民共和国輸出管理法と両用品目輸出管理条例)
  • 防衛装備移転三原則の運用指針改正(4月21日)が示す「規制強化と緩和の同時進行」という非対称構造
  • 米国Affiliate Rule 50%(2026年11月10日再適用予定)が日本企業のサプライチェーン管理に求める対応
  • 経産省「安全保障貿易管理 ガイダンス 入門編 第3.0版」(令和8年3月)で更新された実務ポイント
  • ワッセナー・NSG・AG・MTCRの国際輸出管理レジームと、日本のキャッチオール規制の位置関係
  • HSコードに基づく該非判定、需要者要件、用途要件の実務フロー
  • TRAFEEDで該非判定とスクリーニングを自動化する具体的な進め方

目次

  1. デュアルユース(軍民両用技術)とは何か
  2. 2026年の事態:中国の対日規制が二段階で拡大した
  3. 米国Affiliate Rule 50%と経産省安保ガイダンス第3.0版
  4. 国際輸出管理レジームと日本の位置
  5. 両用品目を扱う際の実務フロー
  6. TRAFEEDで該非判定を自動化する

デュアルユース(軍民両用技術)とは何か

定義

デュアルユース(Dual-Use)とは、民生用にも軍事用にも使える技術や製品、ソフトウェアを指します。日本の輸出貿易管理令や外為法では「両用品目」と呼ばれ、武器そのもの(リスト規制1項)とは区別して、リスト規制2項以降に整理されています。

似た言葉に「軍民融合」があります。こちらは軍と民間が技術・人材・資金を一体で運用する政策そのものを指す言葉で、特に中国が2017年以降に国家戦略として強化してきました。デュアルユースは技術や品目の属性を表し、軍民融合はそれを国家として活用する仕組みを表す。混同されがちですが、別の概念として整理しておくと、後半の中国の措置も理解しやすくなります。

歴史的経緯

冷戦期には、ココム(COCOM、対共産圏輸出統制委員会)が西側諸国の対共産圏輸出を統制していました。1987年の東芝機械ココム違反事件は、高精度工作機械が潜水艦のスクリュー加工に使われ、ソ連海軍の静粛性が向上したとされる事案で、日米関係に深刻な影を落としています。輸出管理が経営リスクに直結することを、日本企業が痛感した最初の大事件でした。

冷戦終結後にココムは解散し、後継としてワッセナー・アレンジメント(WA)が1996年に発足します。WAは通常兵器と両用品目の輸出を透明化する多国間の枠組みで、日本もオリジナルメンバーとして参加しています4

スピンオフからスピンオンへの逆転

歴史的には、軍事技術が民生に降りてくる「スピンオフ」(インターネット、GPS、電子レンジなど)が技術発展の主流でした。ところが2010年代以降、民生技術のほうが軍事技術を上回る分野が急増しています。

分野 状況 代表例
半導体 商用が最先端をリード TSMC、Samsungの先端ロジック
AI・機械学習 民間企業が研究を主導 大規模言語モデル、画像認識
ドローン 民生機が軍事転用可能な水準 産業用マルチコプター各社
通信 民間主導で標準化 5G、衛星ブロードバンド

この「スピンオン」の時代では、何の変哲もない民生品が、組み合わせ次第で軍事システムの中核部品になります。輸出管理の難しさは、ほぼここに集約されていると見ています。自社製品を「民生品だから」と安心して線引きできる時代は、もう終わりました。


該非判定の属人化を、AIで解消する。

経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。

2026年の事態:中国の対日規制が二段階で拡大した

まず用語を正す:不可靠実体清単ではなく、管控名単と関注名単

対日規制を語るとき、リストの名前を取り違えると実務判断まで狂います。今回の一連の措置で日本企業が載ったのは、中国の「不可靠実体清単(信頼できないエンティティリスト)」ではありません。中国商務部が両用品目輸出管理条例に基づいて運用する「輸出規制管理リスト(管控名単)」と「注視リスト(関注名単)」の二つです2。名前は似ていますが、課される措置の重さがまったく違います。

リスト 性質 実務上の意味
管控名単(輸出規制管理リスト) 両用品目の輸出を原則禁止 事実上の禁輸。進行中の取引も即時停止
関注名単(注視リスト) 厳格審査の対象 包括許可が使えず、個別許可・リスク評価報告書・誓約書が必要

ざっくり言えば、管控名単は「出すな」、関注名単は「出すなら相当の手間と説明責任を負え」です。取引先がどちらに載っているかで、必要な対応はまるで変わります。

三段階のタイムライン(1月6日・2月24日・6月29日)

商務部の措置は、公告番号で追うと構造がはっきり見えてきます。

公告 公表・施行日 内容
公告2026年第1号 1月6日 日本向け両用品目の輸出管理を一般強化。日本の軍事用途・軍事力強化に寄与する最終用途向けの輸出を原則禁止1
公告第11号・第12号 2月24日 日本企業・団体40社を掲載。管控名単20+関注名単202
公告第27号・第28号 6月29日 さらに40団体を追加。管控名単20+関注名単20。累計約80団体へ3

ここで押さえてほしいのは、1月6日の公告第1号は40社の掲載日ではないという点です。第1号はあくまで「一般強化」であって、具体的な団体名がリスト化されたのは2月24日が最初でした。ニュースのまとめ記事では「1月に40社」と誤って書かれることがありますが、一次情報を追うと日付も中身も違います。

第2弾(6月29日)の顔ぶれ:防衛研究機関と重工・電機の防衛系子会社

この記事で最もお伝えしたいのは、6月29日の第2弾です。上位の法律事務所や報道はほぼ全てこの6月分を含んでいますが、対応が2月止まりの社内マニュアルは少なくありません。

公告第27号で管控名単(輸出禁止)に追加された20団体には、防衛省の研究機関が並びました。防衛研究所、陸上装備研究所、艦艇装備研究所、航空装備研究所の4機関です。加えて、日鋼特機、三菱電機ディフェンス&スペーステクノロジーズ、三菱プレシジョン、エムエイチアイオーシャニクスといった、三菱電機・三菱重工の防衛系子会社が大半を占めます3。防衛装備の研究開発そのものを担う組織を狙い撃ちにした構図です。

公告第28号で関注名単(厳格審査)に追加された20社には、無人機、原子燃料、火工品など、中国側が両用品目に関わりうると位置づけた分野の企業が並びます。掲載理由は、両用品目の最終需要者と最終用途を確認できない日本の実体である、というもので、各社が不正を行ったという判断ではありません3。並んでいるのはいずれも正規の民生用途を主とする日本のメーカーで、広い区分の中で名前が挙がった格好です。

規制の中身も、掲載されただけでは終わりません。管控名単の20団体に対しては、両用品目の輸出を禁止するだけでなく、国外の組織や個人が中国原産の両用品目を当該団体へ移転・提供することまで禁じられ、進行中の活動は即刻停止が求められます。関注名単の20社に対しては、取引ごとにリスク評価報告書と、両用品目を「日本の軍事力強化に寄与する用途に使わない」旨の誓約書の提出が必須になりました3

なお、80団体すべての正式社名は姉妹記事に一覧化しています。取引先照合には代表例ではなく全名簿が要るので、そちらを併用してください。

中国側措置の法的根拠

一連の措置は思いつきで出されているわけではなく、明確な国内法を土台にしています。根拠となるのは《中華人民共和国輸出管理法》と、2024年12月1日に施行された《両用品目輸出管理条例》です5。管控名単の輸出禁止は同条例の第28条・第29条、関注名単の厳格審査は第26条に紐づいています。中国は、自国の法体系に沿って粛々と対象を積み上げているのであって、外交交渉で簡単に撤回される性質のものではない。そう捉えておくほうが、対応の解像度は上がります。

政治的エスカレーションと経済インパクト

日本政府は第1弾の当日に反応しました。報道によれば、佐藤啓官房副長官は2026年2月24日の会見で「決して許容できず極めて遺憾」と述べ、中国側に強く抗議して撤回を求めています2。それでも6月に第2弾が出た事実は、抗議だけで流れが止まる局面ではないことを示しています。報道では、6月の措置を高市政権と中国の対立が一段と深まる場面として伝えています。

経済への影響は、対象品目の解釈次第で大きく振れます。野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、中国が「両用品目」を広く解釈した場合、影響が及びうる品目が2024年の日本の対中輸入総額(約25.3兆円)の約42%に達しうると試算しています6。レアアースや半導体材料まで含めて解釈が広がれば、リストに社名が載っていない企業も調達面で無関係ではいられません。

サプライチェーンへの実務影響

40社、そして80団体に掲載されていない企業も、無関係ではありません。理由は三つあります。

一つめは、取引先経由の波及です。掲載団体のサプライヤーや下請けは、取引継続そのものが難しくなる可能性があります。二つめは、クリティカルマテリアルの調達難です。ガリウムやゲルマニウム、希土類の中国からの輸出が制限されれば、半導体や電池、モーターを扱う日本企業全体に影響が及びます。三つめは、第三国経由取引の精査です。中国側は迂回輸出にも目を光らせており、香港やシンガポール、マレーシアを経由する取引が監視対象になります。

防衛装備移転三原則 運用指針改正(4月21日)という非対称

中国が規制を強めていた一方で、日本側は逆方向に動いていました。経済産業省と外務省は2026年4月21日、防衛装備移転三原則の運用指針を改正しています7。両用品目を扱う民間企業の視点で重要なのは次の点です。

改正項目 民間企業への含意
国際共同開発品の第三国移転条件の緩和 防衛装備品の構成部品を作る民間サプライヤーの取引機会が拡大
部品・役務の対象範囲の明確化 自社製品が「装備品」と一体で輸出される場合の判断基準が整理
完成装備品の移転対象国の拡大 民生技術派生品の流れが増える可能性

ここに構造の妙があります。中国側は規制を強化し、日本側は移転を緩和する。同じ「両用品目」という土俵の上で、規制強化と規制緩和が同時に走っているわけです。両用品目を扱う企業は、輸出先ごとに真逆の力学が働く規制の組み合わせを、一つのフローでマネジメントしなければならなくなりました。詳細は別記事で整理しています。


米国Affiliate Rule 50%と経産省安保ガイダンス第3.0版

2026年は中国側だけが動いた年ではありません。米国の輸出管理規則と日本側の運用ガイダンスも、ほぼ同時期に大きく更新されました。輸出管理担当者として押さえておくべきは、次の3点です。

米国 Affiliate Rule 50%(2026年11月10日 再適用予定)

米商務省産業安全保障局(BIS)は、2025年9月30日にFederal Register(90 FR 47201)でいわゆる「Affiliate Rule(関連会社ルール)」の暫定最終規則を公布しました。施行日は2025年9月29日付です。Entity List(実体リスト)に掲載された企業が直接または間接に50%以上を出資する関連会社や子会社にも、本体と同じEAR規制が自動的に及ぶという内容です。

その後、米国政府は2025年11月10日から2026年11月9日までの1年間、本則の適用を停止(Stay)する措置をとりました8。Stay期間は、企業がコンプライアンス体制を整えるための猶予です。2026年11月10日には本則が再適用され、その後は無期限で継続する見込みになっています。「1年間止まっているから当面は関係ない」ではなく、「1年後に必ず来る前提で準備する」ものだと理解してください。

実務で影響が出るのは、次のようなケースです。

ケース リスク
Entity List掲載企業の50%以上子会社が、自社の主要部品サプライヤーになっている 米国原産技術・部品を含む製品の輸出・再輸出が事実上停止
自社の代理店・販社が、Entity List掲載企業の関連会社経由で中国向けに販売している 再輸出規制違反で米国制裁の対象になり得る
中国・第三国を経由する取引で、サプライチェーン上のどこかにEntity List掲載企業の関連会社がいる 自社が直接の取引相手でなくても、間接的にEAR規制の網にかかる

つまり、直接の取引相手だけを見ていては足りません。資本関係の連鎖を50%基準でたどり、サプライチェーン全体を可視化しておく必要があります。


【11/10 再適用予定】米国Affiliate Rule 50%の影響評価チェックリスト

Entity List掲載企業の50%以上子会社も自動的に規制対象とする米国Affiliate Ruleは、2025年11月10日から2026年11月9日まで1年間停止され、2026年11月10日に再適用される見込みです8

  • 自社の主要部品サプライヤーの中に、Entity List掲載企業の50%以上出資先がいないか
  • 自社の販売先・代理店経由で、Entity List掲載企業へ間接納品される可能性はないか
  • 中国・第三国を経由するスキームでEAR規制品が使われていないか
  • 親会社・子会社・グループ会社の資本関係マップが最新化されているか
  • CP(社内輸出管理規程)にAffiliate Rule対応が織り込まれているか

ひとつでも未対応があれば、TRAFEEDの個別相談で30分以内に整理可能です。


経産省「安全保障貿易管理 ガイダンス 入門編 第3.0版」(令和8年3月)

経済産業省は令和8年(2026年)3月、安全保障貿易管理の入門ガイダンスを第3.0版に改訂しました9。第2版(令和3年)からの主な変更点は次のとおりです。

改訂ポイント 第3.0版での扱い
キャッチオール規制の運用整理 2025年10月9日施行の改正キャッチオール規制を反映、用途要件のフローチャートを刷新
外国ユーザーリスト 直近改正で835団体まで拡大した点を明記、リスト掲載者と関連企業の照合手順を例示
みなし輸出(居住者要件) 外為法上のみなし輸出規制(特定類型に該当する居住者への技術提供)を実例付きで整理
中小企業向け輸出管理体制 1〜2名で運用する場合の最低限の社内手続きを「ミニマムCP」として提示
経済安全保障推進法との関係 特定重要物資・特定重要技術との重複領域を明示

第3.0版の特徴は、「これまでの安全保障貿易管理(外為法)」「経済安全保障推進法」「みなし輸出規制」「キャッチオール規制」の関係を1冊で整理した点にあります。輸出管理担当者の新人研修や、社内CPの見直しのベースとして使える内容です。

キャッチオール改正(2025年10月9日施行)と外国ユーザーリスト835団体

2025年10月9日に施行されたキャッチオール規制の改正では、輸出先国に関係なく一定の懸念用途に該当する場合に許可申請が必要となる範囲が広がりました。並行して、経産省は2025年9月29日付で外国ユーザーリストを改正し、掲載団体数は835団体まで拡大しています10

実務上の意味は単純です。「リスト掲載者と関連会社、グループ会社の照合作業」が増える。経産省が2025年12月に公表した「外為法違反事案の分析結果(2024年度)」によれば、違反事案の52%が該非判定の誤り、36%が管理体制の不備に起因していました11。現場を見ていると、担当者の手作業に依存している会社ほど、規制改定のたびに違反リスクが積み上がる構造になっています。


国際輸出管理レジームと日本の位置

4つの主要レジーム

両用品目の規制は、各国がバラバラに決めているわけではなく、複数の国際レジームで合意した内容を各国が国内法に落とし込む構造です。

レジーム 対象 加盟国数(2026年)
ワッセナー・アレンジメント(WA) 通常兵器・両用品目 42
NSG(原子力供給国グループ) 核関連品目・技術 48
AG(オーストラリア・グループ) 化学・生物兵器関連 43
MTCR(ミサイル技術管理レジーム) ミサイル関連技術 35

日本は4つすべてに加盟しており、合意された規制対象は外為法および輸出貿易管理令の別表第1(リスト規制)に反映されます。中国の対日規制と違い、これらは国際合意を経た枠組みなので、動きは相対的に緩やかです。ただし、後述のとおり半導体製造装置や量子、AI関連では対象拡大の議論が続いています。

キャッチオール規制との関係

リスト規制に該当しない貨物や技術であっても、軍事用途への転用が客観的に判断できる、あるいは需要者要件や用途要件に該当する場合は、許可申請が必要になります。これが「キャッチオール規制」です。

区分 根拠 判定の起点
リスト規制 別表第1(1〜15項) スペック・性能基準
キャッチオール(用途要件) 経産省告示 用途が大量破壊兵器・通常兵器に該当
キャッチオール(需要者要件) 外国ユーザーリスト 需要者が懸念対象
キャッチオール(インフォーム要件) 経産省からの通知 個別案件として通知あり

国際レジーム改定の最新動向

WAは2025年末の総会で、半導体製造装置(特定のEUVリソグラフィ補助装置)、量子コンピューティング関連の極低温機器、AI推論用の特定アクセラレータを規制対象に追加しました。順次、各国の国内法へ反映される段階に入っています。

NSGではウラン濃縮用の高性能炭素繊維、AGでは合成生物学関連の機器、MTCRでは小型衛星打ち上げ用の固体推進薬の議論が続いています。詳細は経産省 安全保障貿易管理ページ12でも追えます。


両用品目を扱う際の実務フロー

ここからは、企業が実際に輸出案件を回す際のフローを5ステップで整理します。

Step 1: 該当性の事前確認(HSコードと品目分類)

まずはHSコード(関税分類コード)を起点に、自社製品が別表第1のどの項に当たる可能性があるかをスクリーニングします。HSコードは関税のための分類なので、輸出管理上の項目と1対1にはなりません。それでも、当たりをつける入口としては有効です。

該非判定を本格的に行う場合は、品目別マトリクス表(経産省とCISTECが公表)と自社製品の仕様書を突き合わせます。判断基準は数値スペック(精度、温度範囲、解像度など)が中心です。

Step 2: リスト規制の該非判定

該非判定書(パラメーターシート)を作成し、別表第1の各項の判定基準と照合します。

対象 代表的な判定指標
5項 先端材料 引張強度、繊維配向、純度
6項 材料加工 位置決め精度、軸数、温度範囲
7項 エレクトロニクス 動作温度、放射線耐性、演算速度
8項 コンピュータ 演算性能(TOPS/FLOPS)
9項 通信 周波数帯、暗号強度
10項 センサー 感度、検出波長、分解能

該当した場合は経産省への許可申請が必要です。「非該当」と判断した場合も、その根拠を該非判定書として記録に残します。

Step 3: 需要者要件の確認(外国ユーザーリストと中国のリストとの突合)

経産省が公表する外国ユーザーリストと、取引先や需要者、最終需要者を照合します。リスト掲載者は懸念外国ユーザーとされ、両用品目の輸出には個別許可が必要です。

2026年からは、これに中国側のリストとの照合が加わりました。自社の取引先が中国の管控名単・関注名単(累計約80団体)に載っていないか、あるいはそれらと資本関係のある企業でないかを確認するプロセスが、実務として恒常化しています。

Step 4: 用途要件の確認

需要者と最終用途について、次を確認します。

  • 用途が大量破壊兵器(核、化学、生物、ミサイル)の開発・製造・使用・貯蔵に関連しないか
  • 通常兵器の開発・製造・使用・貯蔵に関連しないか
  • 用途説明が不自然でないか(汎用品なのに大量発注、技術サポート不要、現金即決など)

用途要件は「客観的にわかる場合」と「経産省からの通知(インフォーム)がある場合」に発動します。判断に迷う場合は、経産省やCISTECに事前相談するのが現実的です。

Step 5: 非該当証明書の発行と記録

非該当と判定した案件は、需要者から求められることの多い「非該当証明書(パラメーターシート)」を発行し、社内に判定根拠を保管します。保存期間は法令上7年ですが、サプライチェーン上のトレーサビリティを考えると、より長期の保管が望ましいケースが多いと感じています。

詳細は非該当証明書の書き方ガイドで解説しています。スパイ防止法やセキュリティ・クリアランス制度の議論はスパイ防止法とビジネスも参照ください。


TRAFEEDで該非判定を自動化する

ここまでの実務フローを、社内の輸出管理担当者が手作業で回すのは難しくなってきていると考えています。理由は三つあります。

一つめは、リスト規制対象品目が国際レジームの改定ごとに増え続けていること。二つめは、中国、米国、EUがそれぞれ異なる規制を強化しており、輸出先ごとに別の照合が必要になっていること。三つめは、外国ユーザーリスト835団体、中国の管控名単・関注名単、米国のEntity ListやSDNリストなど、参照すべきリストが増え続けていることです。半年で対象が倍増する中国の例を見れば、人手での追随が限界に近いのは明らかでしょう。

TRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK)は、世界初の輸出管理AIエージェントとして、この実務フローの自動化を目的に作っています。

機能 内容
HSコードからの該非判定支援 製品仕様を入力すると別表第1の該当可能性を判定
多言語スクリーニング 外国ユーザーリスト、SDN、中国の管控名単・関注名単、EU・英国制裁リストを多言語で横断照合
規制改定の自動反映 WA・NSG・AG・MTCRの改定情報、各国制裁リストの更新を自動取り込み
該非判定書の自動生成 パラメーターシート形式で出力、社内審査に流せる状態で完成
監査ログ すべての判定履歴を保存、外為法の保存期間要件に対応

TRAFEEDのAI判定精度は、岡山大学との共同実証で過去審査データ約3万件を用い、95%以上を確認しています(自社調べ)。それでも、最終的な該非判定は貴社の輸出管理責任者が行うものであり、AIはその判断を支える道具です。輸出管理担当者がいない、あるいは1〜2名で回している中堅・中小メーカーほど、工数削減の効果が出やすい構造になっています。

正直なところ、「うちは民生品だけだから関係ない」と感じている会社こそ、一度該非判定をAIに通してみてほしいと思っています。2026年の規制環境では、自社製品が両用品目に該当することに気づいていないほうが、リスクとしてはよほど大きいからです。


規制が二段階で動いた2026年、デュアルユース管理を「即応体制」にする

中国の対日規制(1月6日の一般強化、2月24日の40団体掲載、6月29日の第2弾で累計約80団体)、防衛装備移転三原則の運用指針改正(4月21日)、米国Affiliate Rule 50%(2026年11月10日再適用予定)8、経産省安保ガイダンス第3.0版(令和8年3月)9、2025年10月9日施行のキャッチオール改正、外国ユーザーリスト835団体10。2026年は規制環境が立て続けに動いた年で、デュアルユース技術を扱う企業の輸出管理担当者の作業量は明確に増えています。しかも、中国側は規制強化、日本側は移転緩和と、方向が逆の力が同時にかかっている。この非対称を一つのフローで捌かなければなりません。

TIMEWELLのTRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK)は、世界初の輸出管理AIエージェントとして、デュアルユース該非判定・キャッチオール規制・取引相手リスト横断照合をAIで自動化します。

TRAFEEDで解決できる課題

課題 TRAFEEDでの解決
デュアルユース該非判定が属人化していて担当者の退職で再現できない 判定根拠を構造化データで保存、引き継ぎを自動化
外国ユーザーリスト835団体・中国の約80団体規制の自社該当チェックに時間がかかる 取引先リストをアップロードすれば数秒で一括照合
Affiliate Rule再適用(2026年11月)に向けた50%資本連鎖チェックが手作業 親会社・子会社・グループ会社の資本関係を自動展開
規制改正のたびに項目別対比表・CP更新が追いつかない 法令更新を自動キャッチして判定ロジックに反映

→ TRAFEEDの個別相談を予約する(30分)→ TRAFEEDサービス詳細を見る


まとめ

  • デュアルユース(軍民両用)は2026年、教科書的な定義から現実の規制リスクに転じました
  • 中国の対日規制は、1月6日の一般強化(公告第1号)、2月24日の40団体掲載(第11号・第12号)、6月29日の第2弾(第27号・第28号)と三段階で拡大し、累計約80団体に達しています
  • 掲載先は「不可靠実体清単」ではなく、輸出禁止の管控名単と厳格審査の関注名単。根拠は中国輸出管理法と両用品目輸出管理条例(2024年12月施行)です
  • 中国側の規制強化と、日本側の防衛装備移転緩和(4月21日)が同時進行しており、企業は真逆の力学を一つのフローで管理する必要があります
  • 米国Affiliate Rule 50%は2026年11月10日に再適用され、以後無期限で続く見込み。1年後を前提に資本連鎖チェックを準備しておくべきです
  • 参照すべきリストと改定情報が増え続けているため、AIによる自動化が現実的な選択肢になっています

半年で対象が倍増した事実は、第3弾がありうることを暗に示しています。社名がリストに載っているかを確かめて終わりにせず、中国原産品のフローと取引先の先の先まで見通せる体制を、いまのうちに整えておくことをおすすめします。


参考文献

  1. CISTEC速報「中国による日本向け両用品目の輸出管理の強化(速報)」(2026-01-06、商務部公告第1号)— https://www.cistec.or.jp/service/keizai_anzenhosho/china/data/20260106-2.pdf
  2. JETRO「中国、デュアルユース品目の対日輸出管理を強化」(2026-01)— https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/01/daa0760fd28a2226.html
  3. CISTEC速報「中国当局が日本企業・大学等を『輸出規制管理リスト』(計20団体)、及び『注視リスト』(計20団体)に掲載(速報)」(2026-02-25、公告第11号・第12号)— https://www.cistec.or.jp/service/keizai_anzenhosho/china/data/20260225.pdf
  4. JETRO「中国、計40の日本企業・組織を輸出管理コントロールリストと注視リストに掲載、両用品目の輸出を禁止・審査厳格化」(2026-02)— https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/02/e4f19a798abdc080.html
  5. CISTEC速報「中国当局が日本企業等を『輸出規制管理リスト』(計20団体)及び『注視リスト』(計20団体)に追加掲載(速報)」(2026-06-29、公告第27号・第28号)— https://www.cistec.or.jp/service/keizai_anzenhosho/china/data/20260629.pdf
  6. 新華社(日本語)「中国、防衛研究所など日本の20事業体を輸出規制リストに」(2026-06-29)— https://jp.news.cn/20260629/b17450419a1548679f8a6b1058933062/c.html
  7. 人民網日本語版「中国商務部、日本の20企業・団体を輸出管理規制リストに追加」(2026-06-29)— https://j.people.com.cn/n3/2026/0629/c94476-20472207.html
  8. 中華人民共和国輸出管理法/両用品目輸出管理条例(両用物項出口管制条例、2024年12月1日施行)
  9. 経済産業省「『防衛装備移転三原則』等の一部改正について」(2026-04-21)— https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260421003/20260421003.html
  10. 経済産業省「安全保障貿易管理 ガイダンス 入門編 第3.0版」(令和8年3月)— https://www.meti.go.jp/policy/anpo/
  11. 経済産業省「外国ユーザーリスト改正」(2025-09-29)— https://www.meti.go.jp/policy/anpo/
  12. 経済産業省「外為法違反事案の分析結果(安全保障貿易関係)(2024年度)」(2025-12)— https://www.meti.go.jp/policy/anpo/gaitameho_document/ihanjireigaitamehou6.pdf
  13. Federal Register「One Year Suspension of Expansion of End-User Controls for Affiliates of Certain Listed Entities」(2025-11-12、Affiliate Ruleの1年停止・再適用)— https://www.federalregister.gov/documents/2025/11/12/2025-19846/one-year-suspension-of-expansion-of-end-user-controls-for-affiliates-of-certain-listed-entities
  14. 野村総合研究所 木内登英「中国の対日輸出規制の経済的影響(試算)」
  15. Wassenaar Arrangement — https://www.wassenaar.org/

関連記事

Footnotes

  1. CISTEC「中国による日本向け両用品目の輸出管理の強化(速報)」(2026年1月6日、商務部公告2026年第1号)https://www.cistec.or.jp/service/keizai_anzenhosho/china/data/20260106-2.pdf 2 3

  2. CISTEC「中国当局が日本企業・大学等を『輸出規制管理リスト』(計20団体)、及び『注視リスト』(計20団体)に掲載(速報)」(2026年2月25日、公告第11号・第12号)https://www.cistec.or.jp/service/keizai_anzenhosho/china/data/20260225.pdf 2 3 4 5

  3. CISTEC「中国当局が日本企業等を『輸出規制管理リスト』(計20団体)及び『注視リスト』(計20団体)に追加掲載(速報)」(2026年6月29日、公告第27号・第28号)https://www.cistec.or.jp/service/keizai_anzenhosho/china/data/20260629.pdf 2 3 4 5 6

  4. Wassenaar Arrangement https://www.wassenaar.org/

  5. 中華人民共和国輸出管理法および両用品目輸出管理条例(両用物項出口管制条例、2024年12月1日施行)。管控名単は同条例第28条・第29条、関注名単は第26条を根拠とする。

  6. 野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英による試算。中国が「両用品目」を広く解釈した場合、影響が及びうる品目が2024年の日本の対中輸入総額(約25.3兆円)の約42%に達しうるとする。

  7. 経済産業省「『防衛装備移転三原則』等の一部改正について」(2026年4月21日)https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260421003/20260421003.html

  8. Federal Register「One Year Suspension of Expansion of End-User Controls for Affiliates of Certain Listed Entities」(2025年11月12日)。暫定最終規則は2025年9月30日公布(90 FR 47201、施行2025年9月29日)、2025年11月10日から2026年11月9日まで停止、2026年11月10日に再適用。https://www.federalregister.gov/documents/2025/11/12/2025-19846/one-year-suspension-of-expansion-of-end-user-controls-for-affiliates-of-certain-listed-entities 2 3

  9. 経済産業省「安全保障貿易管理 ガイダンス 入門編 第3.0版」(令和8年3月)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/ 2

  10. 経済産業省「外国ユーザーリスト改正」(2025年9月29日、835団体)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/ 2

  11. 経済産業省「外為法違反事案の分析結果(安全保障貿易関係)(2024年度)」(2025年12月)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/gaitameho_document/ihanjireigaitamehou6.pdf

  12. 経済産業省 安全保障貿易管理 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/

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