TRAFEED

中国「戦略鉱産」輸出管制違反の通報処理制度|商務部公告2026年第26号を原文で読む

公開2026-07-30濱本 隆太

中国商務部の公告2026年第26号が2026年7月1日に施行されました。あらゆる組織・個人が戦略鉱産関連の両用品目の輸出管制違反を通報できる13の類型、受付窓口、不受理事由、そして第七条の自主申告(主动报告)の位置づけを原文から整理し、「通報される側」に立ったときに何が反証材料になるのかを実務に落とします。

中国「戦略鉱産」輸出管制違反の通報処理制度|商務部公告2026年第26号を原文で読む
シェア

株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。

中国商務部が2026年6月24日に出した公告2026年第26号が、7月1日から施行されています1。表題は「戦略鉱産両用物項の輸出管制違法違規行為の通報処理業務のさらなる整備に関する事項」。日本語のニュースでは扱いが小さかったのですが、私はこの公告を今年前半でいちばん実務に効く中国側の文書だと見ています。

理由は単純です。名簿系の公告は「この相手と取引していますか」という照合作業に落ちますが、この公告は「あなたの会社の取引が、外部の誰かの目にどう映るか」という話だからです。取引先、元従業員、同業者、物流業者、通関業者、銀行。取引の流れを見ている人はいくらでもいます。その全員に通報の窓口が開いた、というのが第26号の内容です。

先に断っておきます。この記事では制度そのものの善悪を論じません。商務部の報道官は同日のQ&Aで、通報による監督機能の発揮は国際的な一般的慣行であり、多くの国に関連規定があると述べています2。制度への評価を並べても実務は一歩も進みません。この記事は**「通報される側」の視点で書きます**。通報されたから違反、ではありません。公告自体が不受理の基準と悪意ある通報への対処を書いています。だからこそ、通報が入っても淡々と説明できる状態を作っておくことがゴールになります。

公告2026年第26号の骨格

商務部 産業安全与進出口管制局のサイトに掲載されている原文から確認できる事項です1

項目 内容
文書番号 商务部公告2026年第26号
表題 关于进一步完善战略矿产两用物项出口管制违法违规行为举报处理工作有关事项
発布単位 商務部 安全与管制局(産業安全与進出口管制局)
発文日 2026年6月24日
施行日 2026年7月1日(原文「本公告自2026年7月1日起正式实施」)
上位法 中華人民共和国出口管制法、中華人民共和国対外貿易法 等
構成 第一条〜第九条

前文は「社会監督の作用を十分に発揮させ、戦略鉱産両用物項の輸出管制違法違規行為を取り締まるため」と目的を述べています。公布から施行までわずか1週間ですが、既存の運用を明文化した性格の文書なので長い移行期間は必要なかったのだろうと読みました。報道官Q&Aも「以前から通報処理業務について関連する実践を行ってきており、通報の方式や内容などをさらに明確にする必要があった」と説明しています2

法的根拠として、Q&Aは輸出管理法第31条を挙げています。同条は「本法の規定に違反する疑いのある行為について、あらゆる組織および個人は国家輸出管制管理部門に通報する権利を有し、同部門は通報を受けた後、法に従い速やかに処理し、通報者のために秘密を保持しなければならない」と定めています3。通報権と通報者の秘密保持は、公告より上位の法律レベルに既にありました。

通報できるのは誰か、何を書くのか

第一条の冒頭は「任何组织和个人有权举报」です。あらゆる組織および個人に通報の権利がある。国籍や所在地による限定は原文にありません。中国国外にいる者を除外する文言も、明示的に含める文言もない、というのが正確な読み方です。

歯止めは通報者側にもかかります。第三条は「通報者は通報内容の真実性に責任を負う」と明記し、第六条は「悪意ある通報の疑いがある行為について、商務部は関係部門と共同で厳格に選別(甄别)し、法に従って処置する」としています。競合や取引先による嫌がらせ通報を無条件に通すつもりはない、という牽制条項として読めます。

言語は「以中文为准」、中国語が基準です。記載事項は第三条が6項目を挙げます。(一)通報者の基本情況、(二)通報者の連絡先、(三)被通報者の基本情況、(四)違反の疑いのある具体的状況、(五)同一事項を他の機関に既に通報しているかどうか、(六)その他説明を要すると通報者が考える事項。(五)が目を引きます。複数窓口に同じ話が持ち込まれるのを前提にした設計です。

13の通報類型を一覧で

第一条は(一)から(十三)までの行為類型を並べています。ここが公告の中心なので、原文の要点と実務での読み方を対にします1

原文の要点 実務での読み方
(一) 未経許可で戦略鉱産両用物項を輸出 無許可輸出。該非判定の誤りも結果としてここに落ちる
(二) 許可証に記載された範囲・条件・有効期を超える輸出 数量超過だけでなく、有効期限切れの許可証での出荷も含む
(三) 輸出禁止品目の輸出 禁輸対象の確認漏れ
(四) 改造、部品またはコンポーネントへの分割等の方式で許可を回避 設計変更や部品単位での供給が形式上ここに見えることがある
(五) 第三国(地域)を経由して規定を回避 物流ハブ経由の通常商流も、説明がなければ外形が同じになる
(六) 貿易性輸出のほか、知的財産ライセンス・投資・交流・贈与・展覧・展示・検測・テスト・援助・伝授・共同研究開発・雇用または被雇用・コンサルティング等の方式による管制対象技術の違法な対外移転 無形移転。日常の技術交流が広く並んでいる
(七) 輸出者の違法行為を知りながら、代理・貨物輸送・宅配・通関・第三者ECプラットフォーム・金融等のサービスを提供 「明知」(知りながら)が要件として原文に書かれている
(八) 輸出者・輸入者・最終ユーザーの回避行為を教唆・幇助 助言や手配の関与
(九) 管控名単(管理リスト)掲載の輸入者・最終ユーザーとの規定違反取引 名簿照合の失敗
(十) 管制リスト外・臨時管制外の戦略鉱産関連の貨物・技術・サービスについて、輸出管理法第12条のリスクを知り、または知り得べきであったのに許可を申請しなかった キャッチオール違反そのものが通報類型
(十一) 国内の輸入経営者・最終ユーザーが商務部に対して行った誓約に違反 中国国内の需要家側の誓約違反
(十二) 規定に違反して、外国政府が提出した輸出管制関連の訪問・現場査察等の要求を無断で受諾、または受諾を約束 他国当局のエンドユース確認への対応
(十三) その他の違反行為 包括的な受け皿条項

このうち日本企業に関わりが深いと見ているのは(四)(五)(六)(七)(十)(十二)です。順に見ます。

該非判定の属人化を、AIで解消する。

経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。

(四)(五)が名指ししているもの、そして当事者から見える景色

(四)は「改造、部品またはコンポーネントへの分割等の方式で許可を回避する」行為、(五)は第三国・地域を迂回する行為です。(四)は公告で新しく作られた概念ではありません。両用品目輸出管制条例(国務院令〔2024〕792号、2024年12月1日施行)の第39条が、無許可輸出・許可範囲超過・禁輸品輸出と並べて「改造、部品またはコンポーネントへの分割等の方式で許可を回避して両用品目を輸出する行為」を列挙し、輸出管理法第34条の罰則が適用されると定めています4。既にある違反類型が、通報の対象としても明示された、という関係です。

(五)については、条例第39条のような正面からの列挙は見つけられませんでした。ただし条例第48条が、両用品目の過境・転運・通運・再輸出、および税関特殊監管区域・保税監管場所から域外への輸出についても出口管制法と本条例の規定によると定めています4。経路を替えれば許可が要らなくなる、という発想はもともと通らない建て付けです。

ここで当事者の立場から正直に書いておきたいことがあります。正規の民生取引でも、外形だけ見れば(四)(五)に見える商流は珍しくありません。顧客要求で仕様を変えた。完成品ではなく部品単位で供給する契約になっている。物流の都合で第三国のハブを経由している。どれも真っ当な理由があってそうなっています。

制度上の類型と実際の商流の外形は、こういうところで重なります。だから対策は「そういう構成をやめる」ことではなく、なぜこの構成なのか、なぜこの経路なのかを、そのとき書いた記録として持っておくことです。設計変更の技術的理由、部品供給になった契約上の経緯、経由地を選んだ物流上の合理性。後から作った説明と、当時の記録として残っている説明は、重みがまったく違います。

(六)の無形移転と、(七)の「報告主体」

(六)を読んで手が止まる方は多いと思います。管制対象の戦略鉱産関連技術を違法に対外移転する行為として、貿易としての輸出のほかに、知的財産ライセンス、投資、交流、贈与、展覧、展示、検測、テスト、援助、伝授、共同研究開発、雇用または被雇用、コンサルティングが並びます。末尾に「等」が付くので閉じたリストでもありません。材料メーカーの方なら、日常業務の一覧に近いことに気づくはずです。中国拠点の技術者を採用する。合弁先と共同で評価試験をする。展示会でサンプルとデータを見せる。全部が違反になるという話ではまったくなく、管制対象技術に当たるかどうかが分かれ目です。ただ「輸出」から物の船積みだけを想像していると、この列挙は視野の外に落ちます。

なお第九条は「《中華人民共和国技術進出口管理条例》の戦略鉱産技術輸出に関する規定に違反する疑いのある行為の通報は、本公告を参照して執行する」と定めています1。禁止・制限技術目録に基づく技術輸出のルートも同じ通報スキームに乗るわけです。目録側についても、商務部・科技部公告2025年第28号が「軍民両用技術に属するものは輸出管制管理に組み入れる」と明記しており、2つのルートは接続しています5

一方(七)を「フォワーダーや銀行も取締り対象になった」と読むと、制度の形を取り違えます。要件は「明知」、知りながらです。輸出管理法第20条はサービス提供の禁止を定め、第36条が罰則を置いていますが、罰則条文の側も知りながら提供した場合に限定しています3。知らずに運んだ、知らずに決済したという場合を捕まえる書き方ではありません。そして裏側があります。条例第36条の後段は、これらのサービス提供事業者が違反の疑いを発見した場合、速やかに国務院商務主管部門へ報告しなければならないと定めています4。フォワーダー、通関業者、ECプラットフォーム、銀行は、取締りの相手というより制度に組み込まれた報告主体です。条例第40条第2款は、報告義務を履行しなかった場合の罰則(警告・改正命令のうえ10万元以下の過料を科すことができ、情状が重い場合は10万〜50万元)まで用意しています。

輸出者側から見た意味はこうです。**自社の取引を最もよく見ている外部の目は、通報窓口の存在を知っているだけでなく、報告する立場に置かれている。**物流や決済の相手に不自然な説明をしてやり過ごす、という選択肢は制度上想定されていません。書類の一貫性を保つ以外にやることがない、というのが私の見立てです。

(十)のキャッチオールと、(十二)の他国当局対応

(十)は、管制リストにも臨時管制にも載っていない戦略鉱産関連の貨物・技術・サービスについて、輸出管理法第12条のリスクを「知っているか、または知り得べきであった」のに許可を申請しなかった行為です。第12条第3款が挙げるリスクは、国家の安全と利益を害すること、大量破壊兵器およびその運搬手段の設計・開発・生産・使用に用いられること、テロリズムの目的に用いられることの3つです3

同条第4款には救いもあります。管制品目に該当するか判断できない場合、輸出者は当局に照会でき、当局は速やかに回答しなければならないという規定です3。グレーゾーンを自己判断で押し切るのではなく、公式の照会ルートに乗せた記録を作れる。考え方は日本の制度と共通するところが多いので、キャッチオール規制の3要件も併せて読むと整理しやすいはずです。

(十二)は、外国政府から出された輸出管制関連の訪問・現場査察等の要求を無断で受諾、または受諾を約束する行為です。母法は条例第38条で、中国の公民・法人・非法人組織はこうした要求を受けた場合、直ちに国務院商務主管部門へ報告しなければならず、同部門の同意なく受諾または受諾の約束をしてはならないと定めています4。罰則は条例第43条(警告および50万元以下、情状が重い場合は50万〜300万元、特に重い場合は停業整理)です。

在中国拠点を持つ日本企業には、かなり具体的な問題です。他国当局のエンドユース確認や現地査察の要請が中国拠点に届いたとき、現場が善意で「どうぞ」と答えると、中国側では手続違反として扱われ得ます。誰が受け取り、誰に上げ、どこへ報告してから返答するのか。事前に決めておくべき論点です。域外への効き方については中国輸出管理法の域外適用で条文構造から整理しています。

自社の中国関連取引を1件ずつ確認する方へ: 出口管制法・両用物項出口管制条例、鉱産関連の管制公告、そして管控名単・関注名単・不可靠実体清単・反制清単の4系統を、取引ごとに記入しながら確認できるスクリーニングシートを配布しています。誰が載っているかの一覧ではなく、取引前に何を確かめるかの手順書です。記入した記録がそのまま社内の判断根拠と取引先への説明資料になります。なお名簿への掲載は規制上の区分であって、掲載された企業の是非を判断するものではありません。→ 中国関連取引 輸出管理スクリーニングシート(記入式・2026年版)をダウンロード(無料。会社名とお勤め先のメールアドレスのご登録が必要です)

受付窓口、受理されない4つの場合、処分までの距離

第二条は窓口を2つ示しています1。ひとつは商務部産業安全与進出口管制局のサイト(https://aqygzj.mofcom.gov.cn)にある「戦略鉱産両用物項輸出管制違法違規疑い手がかり通報プラットフォーム」からのオンライン通報。もうひとつは受付電話010-12369で、受付時間は法定就業日の8:30〜11:30と14:00〜17:00です。

正直に書くと、オンラインプラットフォームの入口画面は当社では確認できていません。公告はポータルのドメインを示すだけで直接URLがなく、2026年7月30日時点で取得した同ポータルのトップページからは該当する入口を見つけられませんでした。電話番号についても、公告原文に記載がある事実は確認済みですが、この回線が輸出管制専用なのか他用途と共用なのかを説明する一次文書は見つかっていません。断定できるのは公告に書かれている範囲までです。

そのうえで、実務的にいちばん重要なのは第四条だと思います。次の4つに当たる通報は受理しない、という規定です。

  1. 本公告第一条に列挙された類型に属さないもの
  2. 通報内容の重要な要素が欠けており、処置の手がかりとならず、商務部が補充または補正を求めた後もなお不完全・不明確なもの
  3. 通報に関わる事項が既に処置済みで、通報者が同一の事実または理由で重複して通報したもの
  4. その他受理しない場合

つまりこの制度は「通報すれば必ず調査される」建て付けになっていません。要素を欠いた通報は補正を求めたうえで、それでも埋まらなければ受け付けない。同じ話の使い回しも受け付けない。第六条の悪意ある通報への対処と合わせれば、通報の数を稼ぐための制度ではないことが分かります。報道官Q&Aも、今後関係部門が法令に従って通報処理を行い「コンプライアンスを実施している貿易企業の合法的な権益を保障する」と明言しています2

第五条は実名通報について、商務部が適切な方式で受理状況をフィードバックし、事実と確認された場合は関連規定に従って褒賞(奖励)を与えることができるとしています。ただし金額や算定方法は本公告に規定がなく「按有关规定」と委任されており、参照先の規定は今回特定できませんでした。褒賞の水準を前提にした議論はできません。第八条は守秘義務で、通報処理業務に関与する部門・機関・個人は、業務上知り得た国家秘密、商業秘密、個人のプライバシーについて法に従い秘密を保持しなければならないと定めています。被通報企業から見れば、営業秘密保護の根拠条項です。

そして通報から処分までには距離があります。輸出管理法第30条は、違法リスクを防ぐため当局が監督面談(监管谈话)や警告書の交付(出具警示函)等の措置を取ることができると定め3、条例第34条はこれを通報起点で明示しています。国務院商務主管部門が職権により、または関係方面の提案・通報に基づいて違法リスクの存在を認めた場合に、監督面談や警告書等の措置を取ることができる4。いきなり過料ではなく、話を聞き、注意を出す段階が用意されている。逆に言えば、この段階での説明の質が結果を左右します。

調査に進んだ場合の権限も条文で確認できます。輸出管理法第28条は、立入検査、質問と説明の要求、伝票・契約・会計帳簿・業務往復文書等の閲覧と複製、輸出用運送手段の検査、関係物品の封印・押収、銀行口座の照会を認めていますが、封印・押収と銀行口座照会の2つは責任者の書面による承認を要すると明記されています3。条例第32条は、執法人員が2名未満の場合や執法証件・法律文書を提示しない場合、被検査者は検査を拒否できるとしています4。当局側にも守秘義務があり(輸出管理法第29条第3款)、他方で同条第2款は協力義務を定め、拒否・妨害には第38条で警告および10万〜30万元、情状が重い場合は停業整理から資格取消まであり得ます3。協力する、しかし手続の適正性は確認する。条文上その両方ができる形です。

第七条の自主申告(主动报告)をどう読むか

いちばん考えさせられたのが第七条です。原文を訳します1

輸出経営者またはその他の実体が、戦略鉱産両用物項の輸出管制等の関連規定に違反する行為が自らに存在することを発見した場合、または自らが関連規定に違反した可能性があると考える場合、主動的に商務部へ報告しなければならない。主動的に報告した事情は、当該違法違規行為に対する従軽または減軽処罰の考量因素とする。

読むべき点が3つあります。第一に、対象が「出口经营者或其他实体」で、輸出者に限られていません。第二に、「自らが関連規定に違反した可能性があると考える場合」と書かれており、違反が確定していない疑いの段階でも報告の対象になります。第三に効果です。原文は「従軽または減軽処罰の考量因素」。**考慮要素です。免責の保証ではありません。**申告すれば処分されない、と読むのは誤りです。

ではどう位置づけるか。私は損得の計算から外して考えるべきだと思っています。理由は条例第40条第1款です。輸出経営者が条例の規定に違反して報告義務を履行しなかった場合、警告および改正命令、情状が重い場合は違法所得の没収に加えて、違法経営額が50万元以上なら5倍以上10倍以下の過料、50万元未満または違法経営額がない場合は50万〜300万元の過料と定められています4。報告しないこと自体が独立した制裁対象なのです。「申告すると不利になるかもしれないから黙っておく」は、選択肢に見えて選択肢ではありません。

そして報告義務の引き金は、思ったより手前にあります。条例第25条は、輸出経営者と輸入者が次の事情を発見した場合、直ちに輸出を停止し、国務院商務主管部門へ報告して核査に協力しなければならないと定めています4。最終ユーザーまたは最終用途が既に変更された、もしくは変更される可能性がある場合。最終ユーザー・最終用途の証明文書に偽造・改変・失効がある場合。詐欺や賄賂等の不正な手段で証明文書を取得した場合。条例第35条はさらに、条例第14条第3款・第18条第4款・第25条の事情を発見した場合または当局から通知を受けた場合に、速やかに報告し、求めに応じて危害を除去または軽減する措置を取り、調査処理に協力すべきとしています。輸出管理法第16条第2款も同旨です。

エンドユーザー証明書の実務論点はエンドユーザー・スクリーニングと顧客デュー・ディリジェンスで扱っています。「書類に違和感があるが、出荷を止めると納期が飛ぶ」という場面での判断が、そのまま第七条の適用局面に接続していると考えてください。

反証材料は5年分の記録しかない

通報された側に立ったとき、手元にあるのは記録だけです。ここが実務の結論だと思っています。

条例第27条は、輸出経営者は両用品目の輸出に関連する最終ユーザーおよび最終用途の証明文書、契約、請求書(发票)、帳簿、伝票、業務往復文書(业务函电)等の資料を適切に保存しなければならず、保存期限は5年を下回らないと定めています4。業務往復文書が入っている点に注目してください。メールやチャットが対象です。そして輸出管理法第28条で当局が閲覧・複製できるものとして挙げられているのも、まさに伝票・契約・会計帳簿・業務往復文書です3

ここから逆算すると、残すべきものが決まります。

  • 該非判定の結論と、その理由。品目のスペックのどこを見て、どの管制コードに当たる/当たらないと判断したのか。判断日と判断者
  • エンドユーザー・エンドユースの確認記録。誰にどう確認し、どの書類を受け取り、何を怪しいと思わなかったのか
  • 名簿照合の記録。いつ、どのリストの、いつ時点版と照合したのか。結果が「ヒットなし」でも、照合した事実自体が記録
  • 商流と経路を選んだ理由。前述の(四)(五)への説明材料
  • 通関申告の内容との整合。商務部・税関総署公告2025年第18号は、輸出者は物項の識別を強化し、通関時に備考欄へ管制品目に当たるか否かを記載し、当たる場合は両用品目輸出管制コードを明記すべきとしています。記載情報に疑義がある場合、税関は法に従って質疑し、質疑期間中は輸出貨物を通さないとも書かれています6

最後の1点は見落とされがちです。該非判定の結論を、自ら通関書類に書き込む建て付けになっています。社内の判定と申告書の記載がずれていれば、それ自体が説明を要する材料になります。通関書類のチェックリスト側の実務と、該非判定の実務を突き合わせておく必要があります。

私たちがTRAFEEDで該非判定と取引先スクリーニングの過程を根拠つきで残す設計にしているのは、この5年保存の要請に人手で応えるのが現実的でないからです。判定した事実は覚えていても、どの資料のどの記載を見てそう判断したのかは、半年経つと本人でも再現できません。もっとも、最終的な該非判定と取引可否の判断は各社の輸出管理責任者が行うものです。私たちが担うのは、判断の材料と根拠を後から取り出せる形で揃えるところまでです。

罰金より重いのは「資格」と「人」への効果

金額だけ見ると、リスクの構造を読み間違えます。制度の説明として、条文の水準を並べます。

行為 根拠 過料の水準
無許可輸出/許可範囲・条件・有効期の超過/禁輸品目の輸出 輸出管理法第34条 違法経営額50万元以上で5〜10倍、それ未満または違法経営額なしで50万〜500万元。情状が重い場合は停業整理から輸出経営資格の取消まで
管控名単掲載の輸入者・最終ユーザーとの違反取引 輸出管理法第37条 違法経営額50万元以上で10〜20倍、それ未満で50万〜500万元
知りながらのサービス提供 輸出管理法第36条 違法経営額10万元以上で3〜5倍、それ未満で10万〜50万元
回避の教唆・幇助 条例第41条 違法所得10万元以上で3〜5倍、それ未満で10万〜50万元(違法経営額ではなく違法所得ベース)
報告義務の不履行(輸出者) 条例第40条第1款 警告・改正命令。情状が重い場合、違法経営額50万元以上で5〜10倍、それ未満で50万〜300万元
報告義務の不履行(サービス提供者) 条例第40条第2款 警告・改正命令のうえ10万元以下の過料を科し得る。情状が重い場合10万〜50万元
国内輸入者・最終ユーザーの誓約違反 条例第42条 違法経営額50万元以上で3〜5倍、それ未満で30万〜300万元。加えて5年間、最終ユーザー・最終用途説明文書の申請を受理しないことがある
外国政府の査察等の無断受諾 条例第43条 警告および50万元以下。情状が重い場合50万〜300万元、特に重い場合は停業整理

倍率で目を引くのは第37条の10〜20倍ですが、実務でより重いのは輸出管理法第39条だと思います。処罰を受けた輸出経営者について、処罰決定の発効日から5年以内は輸出許可の申請を受理しないことができる。直接の責任者および他の直接責任者個人については5年以内の関連する輸出経営活動への従事を禁止でき、輸出管制違反で刑事処罰を受けた場合は終身、従事できない。そして違反の状況は信用記録に組み入れられる3。条例第20条も効きます。両用品目輸出管制違反で刑事処罰を受けた場合、5年内に情状の重い行政処罰を受けた場合などは、通用許可の申請や登記記入方式による輸出証憑の取得ができません4。簡便ルートから外れる、という意味です。

通報は名簿掲載の入力にもなります。条例第28条は、国務院商務主管部門が職権により、または関係方面の提案・通報に基づいて、最終ユーザーまたは最終用途の管理要求に違反した場合などに、輸入者・最終ユーザーを管控名単に掲載することを決定できると定めています4。条例第26条は、期限内に核査に協力せず最終ユーザー・最終用途を確認できない場合に関注名単へ掲載できるとし、関注名単の相手への輸出には通用許可や登記記入方式が使えないとしています。出口もあり、条例第30条は、調査への協力・事実の陳述・違法行為の停止・主動的な措置による危害の除去・誓約の履行によって管控名単からの除外を申請できると定めています。名簿は一方通行ではありません。

名簿制度に触れるので、もう一度書いておきます。**規制リストや名簿への掲載は、その国の輸出管理制度上の区分であって、掲載された企業や機関の是非を判断するものではありません。**各国の制度は目的も基準も手続きも異なります。掲載の事実は確認手続きが必要になるという意味であり、その組織の事業や信用を否定的に評価する根拠にはなりません。2026年の商務部公告一覧では、第26号の前後に第23号(米国10社を管控名単)、第27号(日本20社を管控名単)、第28号(日本20社を関注名単)、第30号(EU14社を管控名単)が並んでいます7。日本企業が掲載される側に立つ局面も既に現実に起きています。詳細はMOFCOM公告2026年第1号の解説EU14事業体の公告第30号にまとめています。

「戦略鉱産」の範囲は、有効なものと停止中のものを分けて把握する

ここは慎重に書きます。公告2026年第26号には「戦略鉱産」の定義規定が置かれていません。原文を通して読みましたが、定義条項はありません。範囲は個別の管制公告から逆算するしかありません。

2026年7月時点で実施されているものとして確認できるのは2本です。商務部・税関総署公告2025年第18号(発文日2025年4月4日、公布日から実施)は、サマリウム(1C902)、ガドリニウム(1C903)、テルビウム(1C904)、ジスプロシウム(1C905)、ルテチウム(1C906)、スカンジウム(1C907)、イットリウム(1C908)の7元素について、金属・合金、ターゲット材、酸化物・化合物およびその混合物、サマリウムコバルト永久磁石材料、テルビウムまたはジスプロシウムを含有するネオジム鉄ボロン永久磁石材料を管制対象とし、参考HSコードまで併記しています6。同2025年第10号(発文日2025年2月4日)は、タングステン、テルル、ビスマス、モリブデン粉、インジウム(リン化インジウム、トリメチルインジウム等)の関連品目と、それぞれの製造技術・資料を管制対象としています8。戦略鉱産はレアアースだけではない、というのがこの公告から読める事実です。

そして落としてはいけない事実があります。2025年10月9日付で出た鉱産関連の6公告は、実施が停止されています。商務部・税関総署公告2025年第70号(発文日2025年11月7日)が、即日から2026年11月10日まで、公告2025年第55号・56号・57号・58号および商務部公告2025年第61号・62号の実施を停止すると定めています9。商務部公告一覧で確認できる各号の表題は、第55号が超硬材料、第56号が一部のレアアース設備・原副資材、第57号が一部の中重レアアース、第58号がリチウム電池と人造黒鉛負極材、第61号が域外関連のレアアース物項、第62号がレアアース関連技術です。対米の両用品目強化についても、商務部公告2025年第72号(発文日2025年11月9日)が、即日から2026年11月27日まで商務部公告2024年第46号の第二款の実施を停止するとしています10。第46号の原文は今回取得していないので、第二款の内容には踏み込みません。

停止中の規制を現行として扱うと、社内に不要な負担を生みます。一方で停止が期限付きであることも見落とせません。「有効」「停止中(期限付き)」を分けた一覧を社内に持ち、期限日をカレンダーに入れておくのが最低限の管理です。レアアース関連の公告の時系列は中国レアアース輸出管制の全体マップで整理しています。

今週の30分でできること

大きな体制構築の話をする前に、短時間で埋められる穴があります。

  1. 「有効/停止中」の管制公告一覧を作る。 自社が扱う鉱産・材料に関係する公告を並べ、実施中か停止中か、停止なら期限日を書く。これだけで社内の議論が噛み合います
  2. 通関申告の備考欄の記載を、社内の該非判定と突き合わせる。 中国拠点からの直近の輸出について1件ずつ確認し、ずれていればなぜずれたのかを先に押さえます
  3. 商流と経路の理由を1行で書けるか確認する。 部品単位の供給、第三国経由、仕様変更。当時の資料を根拠に1行で言えない案件が、説明が要る案件です
  4. 外国政府からの査察・訪問要請の受付フローを決める。 中国拠点の誰が受け取り、誰に上げ、いつ商務部へ報告し、それまで何と答えるのか。条例第38条の建て付けを前提に決めます
  5. 5年保存の対象に業務往復文書が入っていることを、営業と技術に共有する。 メールとチャットが保存対象であり、調査時に閲覧・複製の対象になり得ます
  6. 疑いを持ったときのエスカレーション先を決める。 条例第25条は書類の異常等を発見したら直ちに輸出を停止して報告すべきとしています。現場が単独で「止める」判断をできる会社は少ないので、誰にどのくらいの速さで上げるかを事前に決めます

社内体制そのものの作り方は輸出管理体制の構築手順に整理しています。なお中国の制度側も、内部コンプライアンス制度を評価する仕組みを持っています。輸出管理法第14条は、輸出経営者が輸出管制の内部コンプライアンス制度を構築し運用状況が良好である場合、当局は通用許可等の便宜措置を与えることができると定めています3。条例第6条も、商務主管部門がコンプライアンスガイドを策定・公表し、輸出者および貨物輸送・第三者EC・金融等のサービス提供事業者にも内部規程の整備を奨励・誘導するとしています4。体制整備は防御のためだけの投資ではありません。

まとめ

  • 商務部公告2026年第26号は2026年6月24日発文、2026年7月1日施行。通報の方式・記載事項・受理基準・自主申告の扱いを定めています
  • 通報主体は「任何组织和个人」で、国籍・所在地の限定は原文にありません。窓口はオンラインの通報プラットフォームと受付電話010-12369(法定就業日の8:30〜11:30、14:00〜17:00)
  • 通報類型は13。**改造・部品化による許可回避(四)、第三国迂回(五)、幅広い行為類型による技術の対外移転(六)、キャッチオール違反(十)、外国政府の査察の無断受諾(十二)**は、正規の民生取引でも外形が重なり得ます
  • 物流・通関・EC・金融のサービス提供者は「明知」を要件とする(七)の対象である一方、条例第36条により疑いを発見したら報告する立場にも置かれています。取締り対象というより制度の報告主体です
  • **通報の存在それ自体が処分を意味しません。**第四条は不受理事由を4つ置き、第六条は悪意ある通報を厳格に選別するとし、輸出管理法第30条・条例第34条は監督面談と警告書という段階的措置を用意しています
  • 第七条の自主申告は「従軽または減軽処罰の考量因素」で、**免責の保証ではありません。**一方で条例第40条は報告義務の不履行自体を制裁対象としており、申告は損得ではなく法定義務の履行の問題です
  • 反証材料は記録だけです。条例第27条は証明文書・契約・請求書・帳簿・伝票・業務往復文書の5年以上の保存を義務づけています。罰金より重いのは輸出管理法第39条の効果(5年間の許可申請不受理、責任者個人の5年間の業務禁止、刑事処罰なら終身、信用記録への組入れ)です
  • 「戦略鉱産」の定義規定は公告にありません。2025年10月の6公告は2025年第70号により2026年11月10日まで実施停止なので、有効なものと停止中のものを分けて管理します。施行後の運用実績(受理件数、処分事例、第七条の適用例)は2026年7月30日時点で商務部の公表を確認できていません

最後に私の見方を書いておきます。通報制度が入ったことで新しく作られた違反類型は、実はほとんどありません。13類型の大半は、輸出管理法と両用品目輸出管制条例に対応する規定がすでにあります。(五)の第三国迂回や(六)の行為類型の列挙のように、公告で具体化された部分はありますが、いずれも既存の規制の輪郭をなぞったものです。変わったのは、それが外部から指摘され得る形になったことと、疑いの段階で自ら報告することが明文で求められたことです。

裏を返せば、対応は法令遵守の中身そのものです。該非判定を根拠つきで残す。エンドユーザーを確認した記録を残す。商流と経路の理由を残す。5年間取り出せる状態にしておく。派手さはありませんが、通報が入ったときに淡々と説明できるのは、そういう会社だけです。恐れることではなく、記録の習慣の問題だと思っています。

自社の中国関連取引について、どこから手をつけるべきか判断がつかない場合は、TRAFEEDの担当までご相談ください輸出管理の無料セルフ診断で現在地を確かめてから相談いただくと、話が早く具体的になります。

参考文献・一次情報

Footnotes

  1. 中華人民共和国商務部 産業安全与進出口管制局「商务部公告2026年第26号 公布关于进一步完善战略矿产两用物项出口管制违法违规行为举报处理工作有关事项」(発文日2026年6月24日、施行2026年7月1日) https://aqygzj.mofcom.gov.cn/flzc/gzjgfxwj/art/2026/art_bebe67f8f9114426bf8275bd8ee1d9f7.html 2 3 4 5 6

  2. 中華人民共和国商務部「商务部新闻发言人就进一步完善战略矿产两用物项出口管制违法违规行为举报处理工作答记者问」2026年6月24日 https://aqygzj.mofcom.gov.cn/zhxx/art/2026/art_70cd24108cfc41fe90fadcfc5793ab60.html 2 3

  3. 「中华人民共和国出口管制法」(中国輸出管理法、2020年12月1日施行)第12条・第14条・第16条・第20条・第28条・第29条・第30条・第31条・第34条・第36条・第37条・第38条・第39条 https://aqygzj.mofcom.gov.cn/flzc/fl/art/2020/art_4fda791e3ada460b8c7ef0b6d8a62724.html 2 3 4 5 6 7 8 9 10

  4. 「中华人民共和国两用物项出口管制条例」(国務院令〔2024〕792号、2024年9月30日公布、2024年12月1日施行)第6条・第20条・第25条・第26条・第27条・第28条・第30条・第32条・第34条・第35条・第36条・第38条・第39条・第40条・第41条・第42条・第43条・第48条・第49条 https://aqygzj.mofcom.gov.cn/flzc/fg/art/2024/art_94746fc2d7f24462b9ea7fe13e747718.html 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

  5. 中華人民共和国商務部・科技部「公告2025年第28号」(発文日2025年7月15日、《中国禁止出口限制出口技术目录》の一部調整) https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/blgg/gg/2025/art/2025/art_aaaf4e92c93b4809a1edc45d8ab9c070.html

  6. 中華人民共和国商務部・税関総署「公告2025年第18号」(発文日2025年4月4日、中重希土類7元素の輸出管制) https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/blgg/gg/2025/art/2025/art_5e663d0bfec7452dabd950d0f0e42153.html 2

  7. 中華人民共和国商務部「政策発布>部令公告>2026年商務部公告」一覧 https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/blgg/gg/2026/index.html

  8. 中華人民共和国商務部・税関総署「公告2025年第10号」(発文日2025年2月4日、タングステン・テルル・ビスマス・モリブデン・インジウム関連品目の輸出管制) https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/blgg/gg/2025/art/2025/art_3a5e07e8ebf647caa68dedf747f966f3.html

  9. 中華人民共和国商務部・税関総署「公告2025年第70号」(発文日2025年11月7日、公告2025年第55号・56号・57号・58号および商務部公告2025年第61号・62号の2026年11月10日までの実施停止) https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/blgg/gg/2025/art/2025/art_da147202d0934ddebe252772e95ed7b3.html

  10. 中華人民共和国商務部「公告2025年第72号」(発文日2025年11月9日、商務部公告2024年第46号第二款の2026年11月27日までの実施停止) https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/blgg/gg/2025/art/2025/art_bc4513421bb24faaa84e44c2e4f36dc5.html

外為法違反の52%は該非判定起因 — 御社は大丈夫ですか?

2024年度の経産省統計で、輸出管理違反の過半が該非判定に起因。まず5問(約2分・メール不要)のライト診断。詳細は10問本編へ。

この記事が参考になったらシェア

シェア

メルマガ登録

AI活用やDXの最新情報を毎週お届けします

ご登録いただいたメールアドレスは、メルマガ配信のみに使用します。

無料診断ツール

輸出管理のリスク、見えていますか?

まず5問(約2分・メール不要)のライト診断。必要なら10問本編で詳細レポートまで。

輸出管理の実務、一緒に整理しませんか

該非判定・取引先調査・法令追随など、現場の運用を伺いながら整理します。まずはお問い合わせフォームから(カレンダー直結ではありません)。

関連記事