こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
2026年10月19日、経済産業省が「外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令案等」への意見募集を始めました。締切は11月18日(水)必着で、あと12日です1。報道や業界の連絡では「外為法のパブコメ」と呼ばれていますが、正確には、外為法という法律そのものを直す案ではありません。法律の下にある政令、省令、告示、通達の4種類を、まとめて見直す案です。
資料を開いてみると、新旧対照表だけで合計約110ページあります。政令が7ページ、省令が60ページ、告示が6ページ、通達が36ページ。しかも省令と告示は縦書きで、「改正後」と「現行」が上下に並び、変わった箇所にだけ傍線が引かれています。専門の輸出管理担当者でも、全部を通して読むのは骨が折れます。
そこで私は、この新旧対照表を最後まで読み込み、2026年2月14日に施行された現行規定(この記事では「2月版」と呼びます)から何が変わるのかを、順に整理しました。輸出管理を初めて学ぶ方にも分かるよう、基本の仕組みから説明します。大事な前提として、これはまだ「案」です。意見募集の結果によって内容が変わる可能性があり、公布日も施行日も決まっていません。
2月からここまでの経緯と、公布から施行までの期間の見通しは、先に公開した外為法の改正を初心者向けに解説した記事で整理しました。そこでは確認しきれなかった省令と通達の中身を、今回は新旧対照表の全体から読み解きます。
この記事の要点
- 今回の案は、外為法そのものではなく、政令、省令、告示、通達の改正案です。新旧対照表は約110ページあり、公示の概要が挙げる4項目より、実際の改正ははるかに多く含まれています。
- 貨物の規制では、核酸合成装置のしきい値が1.5キロベースから0.5キロベースに下がります。データセンター向けの処理装置にも新しい区分が加わります。爆発物などを積層造形で作る装置も、新たに対象になります。
- 一方で、水中用の照明装置と観測装置、アナログデジタル変換器の一部の性能区分などは、対象から外れる案です。広がる部分と狭まる部分が混在しています。
- 技術の規制(外為令別表)にも、通信、海洋、推進装置、爆発物対策などの項目で新しい区分が加わります。
- 手続き面では、修理に加えて校正と検査も再輸出の特例の対象になる、包括許可の実績報告が見直される、といった変更も含まれます。
- 意見は11月18日までに出せます。省令案の施行は、公布から2か月を経過した日の予定です。
先に押さえる基礎知識
外為法と、政令、省令、告示、通達の関係
外為法(外国為替及び外国貿易法)は、国際的な平和と安全を守るために、規制対象の貨物を輸出したり、規制対象の技術を外国に提供したりするとき、経済産業大臣の許可を必要とする、という大原則を定める法律です。どの貨物や技術が規制対象かという具体的な中身は、法律ではなく、その下にある規定に書かれています。
この「下にある規定」が、今回の改正案の対象です。階層を表にします。
| 種類 | 何を決めるか | 今回の案での主な改正 |
|---|---|---|
| 法律(外為法) | 許可が要るという大原則 | 今回の案では改正されない |
| 政令(輸出貿易管理令、外国為替令) | 規制対象の項目(別表)と、手続きの骨組み | 項目の追加と削除、承認等前決済、仮陸揚げ貨物の定義 |
| 省令(貨物等省令) | 項目ごとの具体的な数値と仕様 | しきい値の変更、定義の書き直し、新しい区分 |
| 告示 | 経済産業大臣が個別に指定する事項 | 再輸出の特例の対象 |
| 通達 | 役所の運用と、用語の解釈、申請の様式 | 用語の解釈、包括許可の取扱い、地域区分表 |
輸出貿易管理令は「輸出令」、外国為替令は「外為令」と略されます。貨物は輸出令の別表第一、技術は外為令の別表に、それぞれ1から16までの項番で並んでいます。項番の中身が気になる方は、当社の輸出令別表第1の解説に1〜16項の一覧があります。
項番を、この記事で使う分だけ確認する
この記事に出てくる項番を、先に整理しておきます。
| 項番 | 大まかな分野 |
|---|---|
| 2の項 | 原子力関連 |
| 3の項 | 化学兵器関連 |
| 3の2の項 | 生物兵器関連 |
| 5の項 | 先端材料 |
| 6の項 | 材料加工 |
| 7の項 | エレクトロニクス(電子部品、半導体) |
| 10の項 | センサー、レーザー |
| 12の項 | 海洋関連 |
| 13の項 | 推進装置 |
| 16の項 | キャッチオール(リストに載っていない貨物の広い規制) |
規制対象かどうかを調べる作業を、一般に「該非判定」と呼びます。自社の製品が、どの項番の、どの仕様に当たるか当たらないかを、省令の数値と見比べて決めていく作業です。今回の改正案で数値や定義が動くと、この該非判定の結果が変わる製品が出てきます。
パブリックコメント(意見募集)とは
国の役所は、政令や省令などを変えるとき、案を公表して広く意見を募ります。これが意見募集、通称パブリックコメントです。募った意見を踏まえて、役所が内容を決め、公布します。意見募集は、案が確定する前の最後の段階の1つです。意見を出せるのは、一般の個人でも企業でも構いません。ただし、提出した意見に役所が個別に返事をすることはなく、「最終的な決定の参考にする」とされています2。
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公示の中身を、地図にしてみる
公示された4種類の文書
今回の意見募集は、4種類の文書をまとめて対象にしています1。
政令は、外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令です。省令は、貨物等省令の一部を改正する省令です。告示は、無償の再輸出などに関する告示の改正です。通達は、輸出令の運用についての通達、技術提供についての通達、申請書類についての通達、包括許可取扱要領の4本です。
意見募集の要領には、改正の趣旨が3点にまとめられています2。
1つめは、国際輸出管理レジームの合意と、責任ある技術保有国としての国際的な状況を踏まえた改正です。輸出令別表第一と外為令別表に、品目を追加したり削除したりします。要領が挙げる例は、核酸の合成装置の追加と、核酸の結合のみを行う装置の削除、爆発装置等を製造するための積層造形用の装置の追加、サンプリングオシロスコープからリアルタイムオシロスコープへの変更、水中用の照明装置の削除です。技術の側でも、無機繊維等を使用した成型品、伝送通信装置、潜水艦、船舶用の防音装置、エアクッション船、簡易爆発装置を妨害する装置などの技術が加わります。
2つめは、承認等前決済の禁止の対象から除外する項目の追加です。3つめは、外国向け仮陸揚げ貨物の定義規定の見直しです。
ここで、1つ重要な点があります。要領に書かれた概要は、この3つの趣旨に沿った主な例にすぎません。私が新旧対照表を最後まで読んだところ、省令だけで数十か所の変更があり、通達にも、概要には出てこない改正が数多く含まれていました。この記事では、概要に出ている項目も、出ていない項目も、新旧対照表に基づいて書きます。
施行日は、省令の附則で分かる
施行日について、公示の要領には書かれていません。ただ、省令案の附則には、公布の日から起算して2月を経過した日から施行する、とあります。さらに、施行日より前でも、改正後の別表に基づく貨物や技術について、許可の申請を行うことができる、という準備行為の規定も置かれています。告示案は、公布の日から施行です34。
公布日は、現時点で公表されていません。別の記事で整理したとおり、前回の定例改正では、意見募集の終了から公布まで約6週間でした。今回も同程度とは限りませんので、時期を断定はできません。公布された時点で、施行までに約2か月の準備期間がある、という見通しです。
貨物の規制が、項番ごとにどう変わるか
ここからが本題です。貨物の側の改正を、項番の順に見ていきます。変更を「広がる」「狭まる」「言い換え」の3つに分けて、方向を添えます。この方向づけは、新旧対照表を読んだ私の判断です。実際の該当性は、条文全体と、自社製品の仕様で確認してください。
2の項 ターボエキスパンダ(狭まる部分と広がる部分)
ターボエキスパンダは、極低温の気体を膨張させて冷やす装置で、水素などを扱います。現行は「温度が零下238度以下で用いることができるように設計したもので、水素の排出量が1時間につき1,000キログラム以上のもの」です。改正案では、温度が「零下258度以上、零下238度以下」と下限が付きます。排出量の対象は、水素に「ヘリウム」が加わり、「水素又はヘリウム」になります。温度の幅は絞られ、気体の種類は増える、という両方向の変更です3。
3の項 化学兵器関連
軍用の化学製剤の原料物質の一覧に、「テトラエチルグアニジン」が追加されます3。
3の2の項 生物兵器関連(広がる)
核酸の合成装置が最も大きな変更です。核酸は、DNAやRNAのことで、遺伝情報を書いた分子です。現行は、核酸の合成、または核酸同士の結合を行う装置のうち、自動化されたもので「1回の稼働で、連続した長さが1.5キロベースを超える核酸を、5パーセント未満のエラー率で生成するように設計したもの」が対象です。キロベースは、塩基1,000個分の長さの単位で、DNAの「文字数」を表します。
改正案では、連続した長さが「0.5キロベース」を超える核酸を生成するように設計したもの、と下がります。さらに「1回の稼働で」と「5パーセント未満のエラー率で」という条件が条文から消えます。しきい値が3分の1になり、条件も減るため、対象になる装置の範囲は広がります。装置の書き方も変わり、「核酸の合成を行う装置」と「核酸の合成を結合とともに行う装置」になって、結合のみを行う装置は書かれなくなります。
そのほか、発酵槽は、用途の記述が加わり、「ウイルス又は毒素を生産するために、エアロゾルの拡散を伴わずに微生物若しくは生細胞の培養に用いることができる」ものに絞られます。クロスフローろ過の装置も、「微生物、ウイルス、毒素又は細胞培養物の分離に用いることができる」ものと明記され、除外される血液関連の機器の書き方が「医療用途の血液ろ過のために設計したもの」に変わります。通達にも、この医療用途の血液ろ過が、血液透析や血漿交換をいう、という解釈が新設されます6。
5の項と6の項 先端材料、積層造形(広がる)
爆発装置、火工品、推進装置、または爆発物、火工品、推進薬の成型品を製造するための装置のうち、積層造形用のものが、5の項に新設されます。積層造形は、いわゆる3Dプリンターです。省令の案では、エネルギー材料から爆発装置などを製造するために設計または改造された積層造形用の装置のうち、超音波押出機または超音波ノズルを1つ以上有するもの、と具体的に書かれています。通達には「エネルギー材料」の定義も新設され、所定の用途に必要なエネルギーを放出するために化学反応を起こす物質または混合物とされています。6の項の積層造形用の装置には、「5の項の中欄に掲げるものを除く」という書き分けが加わり、重なりが整理されます536。
5の項には、ほかにも変更があります。炭化けい素繊維の製造用の装置は、現行が「熱したフィラメント状の基材に元素や化合物を化学的に蒸着させるもの」という1種類でした。改正案は、これを「化学気相成長させるための装置」と書き直したうえで、「レーザー駆動の化学気相成長により、複数の平行繊維を製造するための装置」を第2の区分として加えます。
繊維を巻き付けて成形する装置などの定義では、「基本軸(サーボ制御によって動作するものに限る)」という言い方が「一次サーボ位置決め軸」に置き換わります。本数(3本以上、5本以上、2本以上)は変わらないので、用語の整理です。通達の「サーボ位置決め」の解釈も合わせて書き直されます。
セラミックを基材とする複合材料を強化する繊維の定義も、書き直されます。現行は、一定の性能に満たない繊維を「除く」という書き方でした。改正案は、700メガパスカル以上の引張強さと、一定の荷重で100時間後のクリープひずみが1パーセント以下、という条件を、肯定形の「次の全てに該当するもの」として書きます。数値そのものは同じです。酸化アルミニウム系の材料として、ムライトも明記されます。
7の項 エレクトロニクス(広がる部分、狭まる部分、言い換え)
最も注目されるのは、デジタルプロセッサユニットの新区分です。現行は、合計処理性能(TPP)が6,000以上のものが対象です。TPPは、処理装置の計算能力を表す指標です。改正案では、この6,000以上は(一)として残りながら、(二)として「TPPが1,600以上6,000未満であって、性能密度が5.92以上のもの」が加わります。ただし、データセンターでの使用を目的として設計されていないものは除かれます。
通達には、2つの定義が新設されます。性能密度は、TPPを「適用ダイ面積」(平方ミリメートル)で割った値です。データセンターは、情報技術とネットワーク通信機器を集中的に収容し、相互接続し、運用するための構造物で、電力分配と環境制御の設備を備えたもの、と書かれています。つまり、新しい区分に当たるのは、TPPがやや低くても、小さな面積に高い性能を詰め込んだ、データセンター向けの処理装置です。
電池の一次セルは、連続的な電力密度が「350ワット毎キログラム超」から「500ワット毎キログラム超」に上がります。エネルギー密度の条件は変わりません。対象は狭まります。
回転入力型のアブソリュートエンコーダは、回転する軸の角度を高い精度で検出する部品です。現行は「角度の変換誤差の絶対値が1秒以下のもの」でした。改正案は、(イ)誘導型で、デジタル出力、外形が40ミリメートル以下、分解能が16ビット以上のもの、と、(ロ)精度が1.0角度秒以下のもの、の2つの区分にします。(イ)が新設で、小型のデジタル出力品が新たに対象になります。通達にも「精度」の定義が新設されます。
パワー半導体は、電力の制御や整流を行う半導体素子です。現行は、「最大動作接合部温度が215度を超える」「繰返しピーク休止状態電圧が300ボルトを超える」など3つの条件のすべてに当たるもの、という形でした。改正案は、「定格最大動作接合部温度が215度超か、215度以下か」で2つの区分に分け、それぞれに電圧、電流、バンドギャップなどの条件を付けます。215度超の区分は、300ボルト超かつ継続電流が1アンペア超です。215度以下の区分は、5,000ボルト超、継続電流1アンペア超、バンドギャップが2.0電子ボルト超の3条件で、炭化けい素、窒化ガリウム、三酸化二ガリウムの素子も含みます。民生用の除外も、現行の「自動車、鉄道車両、航空機」から、「送配電又はエネルギー変換」を使う装置まで広がります。条件の組み替えなので、どちらの方向にも動く製品が出ます。
アナログデジタル変換器(アナログ信号をデジタルに変える回路)は、「分解能が8ビット以上10ビット未満で、サンプルレートが1.3ギガサンプル毎秒を超えるもの」という性能区分が、3か所で削除されます。対象は狭まります。
オシロスコープは、「サンプリングオシロスコープ(リアルタイムサンプリング手法を用いるもの)」が「リアルタイムオシロスコープ」という書き方に変わります。通達の解釈も同じ置き換えです。数値の変更は見当たらないため、用語の整理と読めます。
有機金属化合物は、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの化合物です。現行は「純度が99.999パーセントを超えるもの」だけでした。改正案は、純度を「金属基準」と明記し、さらに、元素が分子の有機部分の炭素と直接結合しているもの、という条件を足します。リン、ヒ素、アンチモンの有機化合物も同様に、純度は「無機元素基準」と明記され、炭素との直接結合の条件が付きます。条件が増えるので、対象は絞られる方向です。通達にあった同じ内容の定義は、省令に移されて通達からは削られます。
10の項 センサー、レーザー(動く数値が多い)
センサー用の光ファイバーは、現行が「音響、温度、加速度、電磁気又は放射線の測定用のもの」でした。改正案は、「音響、温度、加速度、電磁気若しくは放射線に対して感度を有するように、組成的若しくは構造的に特別に製造された、又はコーティングによって改造されたもの」と書き直し、温度の感知用に設計した光ファイバブラッググレーティングのうち、最大感知温度が150度未満で、最小感知温度が零下100度を超えるものを除きます3。
電子式カメラの2つの区分には、「第四号に該当するものを除く」という除外が加わり、重なりが整理されます。
レーザー発振器では、数値の変更が複数あります。975ナノメートルを超え1,150ナノメートル以下の波長範囲で使うよう設計した、単一横モードの持続波レーザーは、定格出力のしきい値が「1,000ワット超」から「2キロワット超」に上がります。一方で、同じ範囲に、定格出力1.5キロワット超で、スペクトルバンド幅が40ギガヘルツ以上100ギガヘルツ未満のもの、という区分が新設されます。多重横モードで発振するものでは、「ウォールプラグ効率が18パーセントを超え、定格出力が1,000ワットを超えるもの」の区分が削除され、「定格出力が2キロワットを超えるもの」が「3キロワットを超えるもの」に変わります。1,400ナノメートルを超える波長の一部のレーザーには、平均出力または持続波の定格出力が1ワット超10ワット以下、消費電力が250ワット以上で、総重量が50キログラムを超えるもの、という除外が加わります。
通達でも、産業用レーザー発振器を除外する際の区分が組み替えられます。現行は、定格出力が1.0キロワット超から10.0キロワット以下までを6つの区分に分け、それぞれにビームパラメータ積の条件を付けていました。改正案は、このうち1.0キロワット超3.3キロワット以下の3区分を削除し、3キロワット超12キロワット以下(ビームパラメータ積3.2超)、12キロワット超20キロワット以下(同3.9超)、20キロワット超40キロワット以下(同5超)の3区分にまとめます。省令と通達の数値の動きを合わせて読む必要があり、レーザーを扱う会社は、自社製品がどの出力帯と、どのビーム品質に当たるかを、改めて確認するとよいでしょう。
12の項 海洋関連(狭まる)
水中用の照明装置が、規制対象から削除されます。ストロボ法を用いたもの、アルゴンのアークを用いて水深1,000メートルを超える場所で使えるもの、という2区分が丸ごとなくなります。潜水艇の部分品または附属装置の一部だった、潜水艇に搭載して遠隔操作する「水中用の観測装置」も削除です。照明装置の削除は、意見募集の要領の概要にも書かれています。一方、観測装置の削除は概要に出てこず、省令の新旧対照表を読んで初めて分かる変更です53。
13の項 推進装置(言い回しの整理)
打上げ用の飛しょう体などの部分品で、複合材料の定義が「繊維又は樹脂」から、「繊維及び樹脂からなる複合材料」と読める書き方に変わります。「又は」が「及び」に変わる点が目立ちますが、範囲が実際に狭まるかどうかは、条文全体と引用先を合わせて確認する必要があります。
項番ごとの動きのまとめ
ここまでの内容を、方向ごとにまとめます。
| 方向 | 主な変更 |
|---|---|
| 広がる | 核酸合成装置(3の2)、爆発物等の積層造形装置(5)、データセンター向け処理装置の新区分(7)、小型エンコーダの新区分(7)、レーザーの新区分(10)、炭化けい素繊維の製造方式(5) |
| 狭まる | 水中用の照明装置と観測装置(12)、アナログデジタル変換器の性能区分(7)、一次セルの電力密度(7)、有機金属化合物(7)、ターボエキスパンダの温度範囲(2) |
| 言い換えと整理 | 一次サーボ位置決め軸(5)、リアルタイムオシロスコープ(7)、セラミック複合材料の書き直し(5)、複合材料の「及び」(13) |
| どちらにも動く | パワー半導体の再編(7)、レーザーの出力しきい値(10) |
技術の規制は、外為令別表でこう変わる
貨物と並んで、技術の側にも変更があります。技術の規制は、外為令別表に項番があり、貨物等省令に具体的な内容が書かれます。たとえば、規制対象の貨物の「設計」「製造」「使用」に必要な技術を外国に提供する場合などが対象です53。
5の項では、無機繊維等を使用した成型品の使用に係る技術が加わります。5の項の技術に関する省令では、参照する号に、爆発物の積層造形装置を定める号が追加されます。
9の項には、新しい区分が設けられます。伝送通信装置や、簡易爆発装置対策装置の無線送信装置などの「使用」に係る技術と、そのためのプログラムです。操作に係るものは除かれ、使用に必要な技術、使用するために設計したプログラム、同等の機能を提供するために設計したプログラムなど、5つの区分で書かれています。
12の項は、潜水艦の使用に係る技術と、船舶に使える防音装置の使用に係る技術が加わります。エアクッション船などの設計または製造の技術は、「追加」と概要に書かれています。ただし、省令の新旧対照表を見ると、現行の12の項(一)にあった同じ船舶の設計・製造技術の規定が、新しい12の項(四)に移る形です。船の種類と速度などの数値は、現行と同じに読めます。実質的に対象が増えるのか、位置づけが組み替わるだけなのかは、私の読みでは後者に近いのですが、確定には外為令側の条文との照合が必要です。
13の項は、新設の区分が加わります。ガスタービンエンジンの軸流式圧縮機の設計に必要な技術のうち、次の2つの両方に当たるものです。(イ)として、複数流ファンシステム用に特別に設計されたもの、または、圧縮機ブレードチップクリアランスのフィードバック制御などの5つの特徴のいずれかを持つもの。(ロ)として、平均代替段負荷が0.22以上、代替段負荷に41.6を掛けた値とポリトロピック効率の和が102以上、スタビリティマージンが20パーセント以上、平均段圧力比が1.2超、という4つの計算値のすべてを満たすもの。通達には、これらの用語の計算方法や定義が数ページにわたって書かれています。
14の項は、技術に加えて、プログラムの区分が新設されます。15の項は、簡易爆発装置を妨害する装置などが本来の機能を実行するための使用の技術などが加わります。11の項では、衛星航法システムのレンジングコードを「解読」するプログラムの表記が「復号」に変わります。
手続きと運用ルールの変更
ここまでは「何が規制対象か」の話でした。今回の案には、「手続きがどう動くか」の改正も含まれています。
承認等前決済の禁止の除外
外為法は、許可や承認が必要な貨物の輸出入について、許可や承認を受ける前に代金を支払うことなどを原則として禁じています。これが「承認等前決済の禁止」です。ただし、貨物の当事者や内容から、支払いがされても法の目的を達成するうえで特に支障がないと経済産業大臣が認めて告示で指定した貨物の輸出入は、例外になります。外為令の第6条第5項が、この例外の枠を決めています。
改正案は、その枠の対象に、輸出令第1条第3項に規定する輸出を加えます。輸出令第1条第3項は、別表第一の16の項に掲げる貨物(キャッチオール)を、別表第三の地域(いわゆる輸出管理の優遇地域)に向けて輸出する場合の許可を定める規定です57。この枠に入れば、その輸出の代金を許可前に決済できる可能性が開けます。ただし、実際に例外になるのは、経済産業大臣が告示で指定した貨物に限られますので、指定の内容は今後の告示で確認が必要です。
外国向け仮陸揚げ貨物の定義
仮陸揚げは、貨物を一度日本の港や空港で下ろして、そのまま外国へ運ぶ場合を指します。「外国向け仮陸揚げ貨物」の定義を定めた輸出令第4条第1項第1号の括弧の中で、定義を使う範囲の書き方が変わり、輸出令第4条第2項第3号への言及が外れます。意見募集の要領には、この見直しの趣旨の説明がありません。条文の参照を整理する改正に見えますが、実務への影響の有無は、確定版の条文で確認してください。
再輸出の特例に、校正と検査が加わる
告示と通達の改正は、特に実務に近い内容です。輸出令第4条は、一定の無償の貨物の輸出に許可を要しない特例を設けており、その対象は告示で定められます。そのうち、「本邦から輸出された貨物で、本邦において修理された後に再輸出されるもの」は、現行では「修理」だけが対象でした。改正案では、「修理、校正又は検査」された後に再輸出されるものに広がります4。
同じように、他の貨物を運搬するために使う貨物(コンテナなどの輸送用の貨物)の輸入と輸出に関する項目にも、貨物の「修理、校正、検査若しくは洗浄」のために輸入または輸出する貨物が加わります。外国政府の職員が警護の用に供するために輸入する武器関連の貨物のうち、警護の終了後に輸出するもの、という項目も新設されます。通達の解釈も同じ方向で改められ、修理等が無償か有償かを問わない、という説明に変わります6。
測定機器や検査機器を海外の顧客のもとから日本に送り返し、校正して戻す、という取引をしている会社には、実務に近い変更です。
包括許可の取扱い
包括許可は、個別の取引ごとに許可を取るのでなく、一定の条件で、まとめて許可を受ける仕組みです。通達の包括許可取扱要領には、次の変更が含まれます6。
まず、特別一般包括許可の対象から外れる条件の中で参照される「外国ユーザーリスト」の版が、令和7年1月31日付から、令和7年9月29日付の版に更新されます。次に、特別一般包括の設計・製造技術の提供に関する年間の実績報告で、「提供した実績がなくても報告すること」が書き加わります。報告書の様式にも、実績がない場合はその旨を記載する、という注記が入ります。
さらに、特別一般包括役務取引許可の条件として、ある届出を行った場合には、その届出の受理日から14日間、この許可を使って当該取引を行わないこと(経済産業省から異議がない旨の連絡を受けた場合を除く)という条件が新設されます。取引の記録を保存する期間の対象項番も、「2から4の項」が「1から4の項」に広がります。そのほか、許可が失効する場合の書き方、様式の見直し、統括責任者の変更届の文言修正などが含まれています。
地域区分の表
通達の別紙にある国・地域の区分表(「ぬ地域」の欄)に、カナダとバングラデシュが加わります。申請書類の通達にある、国と地域の区分の対照表も同様です。なお、「ぬ地域」が何を意味する区分かは、今回の意見募集の資料だけでは確認できませんでした。該当する会社は、通達の別紙で、現行の区分の定義を確認してください。
通達の「用語の解釈」が増える
通達の新旧対照表の多くは、省令で使われる用語の解釈の新設や整理です。「内容物」の定義の変更、積層造形に関連する用語、TPPの性能密度とデータセンターの定義、アブソリュートエンコーダの精度の定義、航空エンジンの圧縮機に関する多数の計算パラメータなどです。数値が動かない改正も、解釈が変わると該非判定の結果が変わる場合があります。省令だけでなく、通達の対照表まで読む理由はここにあります。
意見の出し方
意見の提出期限は、2026年11月18日(水)必着です。提出方法は3つで、e-Govの意見提出フォーム、郵送、電子メールのいずれかです。郵送は、〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1の経済産業省 貿易経済安全保障局 安全保障貿易管理課 パブリックコメント担当あてです。電子メールは、件名を「外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令案等に対する意見」にして、意見提出用紙を添付して送ります。電話では受け付けていません2。
意見提出用紙には、「該当箇所」「意見内容」「理由」を書く欄があります。意見をまとめるときは、私なら、次の点に気を付けます。どの項番のどの号の話かを具体的に書く。自社の製品や業務で、改正案が実際にどう影響するかを、事実として書く。可能なら、根拠となる出典を添える。要望は、「この数値の根拠を示してほしい」「経過措置を設けてほしい」のように、役所が対応しやすい形にする。
提出した意見は、氏名(法人や団体は名称)、住所、電話番号、メールアドレスを除いて、公開される可能性があります。個人を識別できる記述や、法人の財産権を害するおそれのある箇所は、公表時に伏せられます2。
いま、会社で準備しておくこと
案が確定していない段階で、できることがあります。
1つめは、自社の製品のうち、今回の項番に近いものを洗い出すことです。半導体、パワー半導体、エンコーダ、レーザー、光ファイバーセンサー、核酸の合成や培養に関わる機器、積層造形装置、水中機器、ガスタービン関連の技術などを扱う会社は、特に確認が必要です。経済産業省のマトリクス表で、現行の該当行を確認し、今回の案がどう変わるかを新旧対照表と照らし合わせます8。
2つめは、すでに「非該当」と判定している製品のうち、改正された項番の近くにあるものを、リストにしておくことです。しきい値が動くと、これまで非該当だった製品が該当に変わる場合があります。逆に、対象から外れる製品もあるため、取引先への説明資料を直す準備にもなります。
3つめは、再輸出や校正の取引をしている会社が、告示と通達の変更が自社の取引に関係するかを確かめることです。
そして、案が確定したときに慌てないよう、「公布から2か月で施行」という時間感覚を持っておくことです。公布の知らせを見たら、その日から、準備のカウントダウンが始まります。
おわりに
今回の新旧対照表を読んで、私が一番強く感じたのは、「概要に書かれた数行」と「実際の改正」の間に、大きな開きがあるということでした。公示の概要は4つの項目を挙げていましたが、新旧対照表の中には、数値が動く項目、新しい区分、用語の解釈、手続きの変更が、何十と含まれていました。輸出管理は、ここに書かれた細かな数値と定義の積み重ねで、結論が決まります。
もうひとつ、規制が広がる部分と狭まる部分が、同じ案の中に混在している点も、実務では見落とせません。「今回は規制が厳しくなる改正だ」と一括りにしてしまうと、自社に関係する狭まる部分を見逃し、確認が漏れる原因になります。
意見の締切は11月18日です。自社の製品への影響を具体的に把握している会社ほど、役所にとって参考になる意見を出せます。この記事が、新旧対照表を読み進める際の地図として、役に立てば幸いです。
新旧対照表の確認や、該非判定の整理に手が回らない場合は、当社のTRAFEEDも選択肢になります。各国の法規の改正を当日反映する設計で、輸出管理の担当者が判定の根拠を整理する作業を支援します。なお、最終的な該非判定は、貴社の輸出管理責任者が行うものです。ご相談は個別相談からどうぞ。リスト規制の基本はキャッチオール規制の解説、これまでの経緯は2026年の重要な変更点の記事にもまとめています。
参考
Footnotes
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外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令案等に対する意見募集について — e-Govパブリック・コメント(案件番号595320041)— 経済産業省 貿易経済安全保障局 安全保障貿易管理課、案の公示日2026年10月19日、受付締切2026年11月18日17時、根拠法令は外国為替及び外国貿易法第16条第5項、第25条第1項、第48条第1項 ↩ ↩2
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【意見公募要領】外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令案等に対する意見募集について — 経済産業省 — 2026年10月19日 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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省令(新旧対照表)— 輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令の一部を改正する省令案(附則を含む)— 経済産業省 — 2026年10月19日 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
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告示(新旧対照表)— 輸出貿易管理令第四条第一項第二号ホ及びヘ並びに同条第二項第二号ホ及びヘの規定に基づく経済産業大臣が告示で定める貨物の一部を改正する件 — 経済産業省 — 2026年10月19日 ↩ ↩2
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政令(新旧対照表)— 外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令案 — 経済産業省 — 2026年10月19日 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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通達(新旧対照表)— 輸出貿易管理令の運用について、技術提供についての通達、提出書類についての通達、包括許可取扱要領の一部を改正する通達案 — 経済産業省 — 2026年10月19日 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)第1条、第2条、第4条 — e-Gov法令検索(デジタル庁)— 2026年11月6日確認 ↩






