こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
「経済産業省から、許可申請をしてくださいという通知が届いたら、どうすればいいのですか」。輸出管理の入門講座で、受講者から出る質問のなかでも、特に具体的な不安を含んだ質問のひとつです。もうひとつよく聞くのが、「事前に経産省へ相談したほうがいいのか、それとも黙って進めたほうがいいのか」という迷いです。「相談すると損をする」という声も、「相談しないと危ない」という声も耳にします。どちらの話も、時間がかかる、取引の機会を逃す、罰則に触れるおそれがある、という3つの場面に分けると整理できます。この記事では、その3つの観点で、公式資料で確かめられる範囲に絞って説明します。
先に結論を書いておきます。インフォーム通知は、経済産業大臣が個別の貨物や技術について「許可申請をすべき旨」を文書で伝えるものです。届いたら、その貨物の輸出や技術の提供は、許可を受けるまで行えません。事前相談は法律上の義務ではなく、確認の結果「許可は不要」と判断できて、通知も届いていなければ、輸出者の判断で進められます。そのうえで、判断に迷う取引や、懸念につながる情報を手にした取引では、許可申請の前に安全保障貿易審査課へ相談する道が用意されています。相談するかしないかで一方が必ず得で他方が必ず損、という整理は、条文にも公式の案内にも出てきません。変わるのは、いつ、どの情報を持って、どの順番で動くかです。
この記事で分かることは4つです。インフォーム要件が条文のどこに書かれているか。通知が届いたときの実務の流れ。事前相談の窓口と準備する書類、そして分かること・分からないこと。相談しなかったとき、あるいは通知を見落としたときに起こりうることです。キャッチオール規制そのものの成り立ちや、2025年10月の改正の全体像は、別の記事で詳しく書いているので、ここでは繰り返しません。制度の基本から知りたい方はキャッチオール規制の成り立ちを、客観要件の判断基準は明らかガイドラインの解説を先に読んでいただくと、この記事の話がつながります。
先に押さえる言葉。ここで迷子にならないための表
この分野は、似た言葉が並びます。まず、記事の中で使う言葉を一覧にします。
| 言葉 | 意味 | たとえるなら |
|---|---|---|
| キャッチオール規制 | 正式名称は補完的輸出規制。リスト規制の対象外の貨物・技術でも、用途や相手によって許可が必要になる仕組み | リスト規制は「立入禁止の部屋」を決める。キャッチオールは「部屋の外でも、人や目的を見て止めることがある」という補足 |
| 客観要件 | 輸出者が用途や需要者を確認して、懸念が分かったときに許可が必要になる要件。用途要件と需要者要件の2つ | 自分で荷物の中身と届け先を確かめる検品 |
| インフォーム要件 | 経済産業大臣から文書で通知を受けたときに許可が必要になる要件 | 役所から「この荷物はここから先、通行証が要ります」と手紙で言われる |
| インフォーム通知 | 上の手紙そのもの。正式には「許可の申請をすべき旨の通知」 | 通行証が必要になったと知らせる手紙 |
| 事前相談 | 許可申請の前に、安全保障貿易審査課へ相談すること。法律上の義務ではない | 門を通る前に、守衛さんに「この荷物は通れますか」と聞く |
| 客観要件確認シート | 経産省が参考様式として示している、客観要件の確認結果を残す審査票 | 検品の記録表 |
| 輸出注意事項 | 経産省が出す通達。補完的輸出規制の手続きの細目が書かれている | 運用ルールの手引き |
| 外国ユーザーリスト | 懸念が払拭されない外国所在団体の情報を、輸出者に参照用として示すもの | 検品のときに見る参考名簿 |
ひとつだけ補足します。ここまでの表で「懸念」「おそれ」という言葉が出ますが、通知を受けたことや、外国ユーザーリストに載っていることは、その会社が不正をしたという判断ではありません。経済産業省が示しているのは、この貨物や技術が懸念される用途に使われるおそれがあるかどうか、という制度上の区分です。通知の相手が日本企業であれ外国企業であれ、同じ考え方です。
条文のどこに書いてあるか。輸出令第4条の読み方
インフォーム要件は、輸出貿易管理令(輸出令)の中で少し読みにくい形で書かれています。第4条は「法第48条第1項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない」という書き出しで、許可が不要になる特例を並べた条文です1。つまり、第4条は「許可が要らない道」の入口を定めています。ここで、キャッチオールの対象である16項の貨物については、特例が使える条件として「イ、ロ、ハ、ニのいずれにも該当しないとき」と書かれています。その「ロ」と「ニ」が、経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたときです1。通知を受けると、許可が要らない道から外れ、許可が必要な道に戻る。条文の作りは、そう読めます。
場面ごとに、通知が出てくる条文を表にします。
| 場面 | 条文 | 通知の位置づけ |
|---|---|---|
| 貨物。16項(1)の特定品目。大量破壊兵器等の観点 | 輸出令第4条第1項第3号ロ | 通知を受けたとき、特例から外れる |
| 貨物。16項(1)の特定品目。通常兵器の観点 | 同号ニ | 同上 |
| 貨物。16項(2)。大量破壊兵器等・通常兵器の観点 | 同項第4号ロ・ニ | 同上 |
| 貨物。グループA(輸出令別表第3の地域)向け | 輸出令第1条第3項、第4条第2項第3号イ・ロ | 通知を受けたときだけ許可が必要。客観要件は適用されない |
| 技術の提供 | 貿易外省令第9条第2項第7号・第8号のロ・ニ(輸出注意事項の整理による)2 | 通知を受けたとき、許可が必要 |
| 外国相互間の貨物の取引(仲介貿易) | 外為令第17条第5項第2号ロ3 | 通知を受けた場合の取引が許可の対象 |
貨物が16項(1)か(2)か、仕向地がグループAか一般国かによる適用の違いは、2025年10月改正の解説記事に適用マトリクスをまとめています。ここでは、どの場面でも通知を受けたときが条文に入っているという点だけ押さえてください。通達にも、通知を受けた場合は客観要件の確認結果にかかわらず、許可申請を行い許可を受けなければ輸出も提供もできない、と書かれています4。
ひとつ、条番号の探し方を補足します。キャッチオールの条文を探していると、第4条の第3項・第4項に目が行くかもしれません。しかしこの2つの項は、輸出承認という別の制度(第2条)の特例を定めたもので、インフォームとは関係がありません1。インフォームの条文は、第1条第3項と第4条第1項・第2項です。条番号を引用するとき、ここを取り違えないようにしてください。
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通知はどんなときに届くのか。公式に言えること、言えないこと
「うちにはいつ通知が来るのか」は、いちばん知りたいところでしょう。経済産業省のQ&Aは、「輸出する貨物又は取引する技術が、大量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵に用いられるおそれがある、又は通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがある(輸出令別表第3の地域を仕向地とする輸出等においては迂回懸念がある)と当省が判断した場合に文書にて通知されます」と答えています5。
言えるのは、ここまでです。通知は経済産業省の判断で出ること。形式は文書であること。グループA向けの場合は、迂回輸出の懸念がある場合に限られること。そして、判断の材料や基準、過去に通知が出た具体的な事例は、私が確認した範囲の公式資料には出ていませんでした。どんな情報が通知につながったのかは、公開されていないのだと理解しています。ですから、「こういう会社に来る」「こういう取引で来やすい」と一般化することは、この記事ではしません。
公表資料の上で、通知と結びついた経路が確かめられるものが、ひとつあります。2025年に始まった官民対話スキームです。重要管理対象技術の提供について、契約を結ぶ前に経産省へ事前報告をします。経産省は、報告を踏まえて、許可申請を求めるインフォームを出すかどうかを判断します。その判断の目安は、事前報告から原則30日以内とされています。仕組みの詳細は官民対話スキームの事前報告の記事にまとめました。この30日の目安は、同記事で経産省のQ&Aに基づいて整理した数字で、今回の作業では経産省のサイトが連続アクセスを制限したため原文を再取得できていません。引用するときは、原文を確認してください。
もう一つ大切なのは、通知は誰か一般に向けて出されるのではなく、輸出しようとする貨物や技術に結びついて出される、という点です。条文は「その貨物が…おそれがあるものとして経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたとき」と書いています1。したがって、届いた文書で、対象の貨物や技術、取引、仕向地がどこまで特定されているかを、まず読み取る必要があります。他の取引先や他の貨物にも波及するのかどうかは、文書の記載と、必要なら審査課への確認で判断するしかありません。私はここを推測で語りません。
通知が届いたら。7つの手順と、対応の流れ
ここからが実務です。通知が届いたときの動きを、番号を振って並べます。公式資料に書かれているのは「許可を受けなければ輸出も提供もできない」という部分で、社内で何をどの順にやるかは、公式の手順書があるわけではありません。以下の手順は、条文と通達の趣旨をもとに私が組み立てた、実務上の整理です。
- 受領した日時、宛先、文書の件名、対象として書かれている貨物・技術・取引・仕向地を記録します。原本は紛失しないよう保管し、輸出管理責任者に必ず届く経路をつくります。通知は文書で行われるとされています6。
- 対象の出荷と技術の提供を止めます。受注残、在庫から引き当て済みの数量、梱包や船積みの手配、通関業者への依頼、メールやクラウドでの技術資料の共有まで、止めるべき動線は意外に多く、見落とすのは物流以外の経路です。すでに出荷済みのものがあるかどうかも確認します。
- 関係者に伝えます。営業、物流、購買、通関業者、技術部門。誰が何を止めたのかが分かる連絡を、社内の記録として残します。
- 許可申請をするかどうかを、輸出管理責任者が判断します。通知を受けた貨物を輸出する場合は、許可申請が必要です。申請先は安全保障貿易審査課です6。一方で、その案件自体を見送るという判断もありえます。
- 申請する場合は、許可されない可能性を前提に動きます。経産省のQ&Aは、通知は経産省が懸念があると判断して行っているため、申請しても許可されないことがあり、懸念が払拭されたときに限って許可される、と説明しています5。納期や契約の条件は、許可が下りない場合に備えて組み直します。
- 取引先に説明します。説明の目的は、許可の手続きのために出荷を保留していることを伝えることです。相手を疑うような言い方はしません。通知を受けたことが相手の不正を意味するわけではないからです。どこまで文書を見せてよいか、どの範囲まで内容を伝えてよいかは、私が確かめられる公式資料に規定が見当たりません。迷う場合は、審査課に尋ねてから、取引先へ伝えてください。
- 他の案件への影響を点検します。同じ取引先、同じ貨物、同じ仕向地で進めている案件がないかを洗い出し、記録します。CPの運用手順に「通知受領時の動き」を書き加えておくと、次に備えられます。
対応の流れを、時系列の表にします。
| 順序 | 誰が | 何をするか | 残す記録 |
|---|---|---|---|
| 1 | 受領した部署 | 通知を輸出管理責任者に即時に渡す | 受領日時、文書の写し |
| 2 | 輸出管理責任者 | 対象の貨物・技術・取引・仕向地を読み取る | 対象範囲のメモ |
| 3 | 輸出管理責任者、営業、物流 | 対象の出荷・提供を止める。出荷済みの有無を確認 | 停止した案件の一覧 |
| 4 | 輸出管理責任者 | 許可申請をするか、見送るかを決める | 判断の理由 |
| 5 | 営業、法務 | 取引先へ手続き上の保留を説明。納期・契約の扱いを調整 | 説明の日時と内容 |
| 6 | 輸出管理責任者 | 他の案件への波及を点検 | 点検結果 |
| 7 | 輸出管理責任者 | CPの手順に反映 | 改定履歴 |
ここで、仮の例をひとつ置きます。実在の事例ではなく、流れをつかむための想定です。ある部品メーカーが、汎用の電子部品を一般国の商社へ輸出する計画で、受注残が3件、うち1件はすでに港へ向けて陸送中だったとします。そこへ通知が届いたとき、最初に確かめるのは、通知の対象がその3件のどれに及ぶのか、そして陸送中の1件を止められるのか、です。物流の担当者が通知の存在を知らないまま船積みの手続きが進むのが、いちばん避けたい展開です。通知を受けた時点で、社内の連絡が数時間遅れるかどうかが、その後の選択肢を大きく変えることがあります。
事前相談。窓口、準備する書類、分かること、分からないこと
通知が届く前の話に移ります。事前相談の根拠は、経産省の輸出注意事項(通達)にあります。16項の貨物の輸出や技術の提供を行おうとして、取引が申請要件に当たるか判断しづらい場合を含め、不明な点があれば、安全保障貿易審査課に相談できる、とされています4。「相談することができる」という書き方で、義務ではなく、輸出者に開かれた手段として書かれています。
窓口は、経済産業省 貿易経済安全保障局 貿易管理部 安全保障貿易審査課です。経産省のキャッチオール規制のページでは、相談が2つに分かれています6。ひとつは、許可申請についての相談や個別案件の相談で、メールで書類を提出する形です。もうひとつは、制度の概要などの一般的な問い合わせで、別のメール窓口が案内されています。電話や面談の窓口があるのかは、今回確認できていません。宛先のメールアドレスは変更される可能性があるので、この記事には書かず、ページで最新の案内を見てください。
個別案件の相談で用意する書類として、経産省のページは次の4点を挙げています6。
- 貨物の商流、物流、契約の内容、用途が分かる資料(様式自由)
- カタログまたは仕様書などの技術資料
- 需要者等の事業内容に関する資料
- 申請要件に当たるかどうかを確認した審査票(客観要件確認シート)
「必要に応じて上記以外の書類を求めることがある」という注記もついています。さらに通達は、具体的な懸念情報があり、許可申請に先立って書面で事前相談をしたい場合の書式を定めています。補完的輸出規制に係る事前相談書(様式1)、該非判定書、カタログ・仕様書、商談全体の内容が分かるもの(注文書、契約済みなら契約書)、懸念につながる記載を示す文書などです4。懸念情報がないときの一般相談では、書面の様式まで求められているわけではない、と通達の書き方からは読めます。
では、相談で何が分かるのか。通達には、補完的輸出規制に基づく許可申請を行う必要があるかどうかについて、事前相談書の判定欄で回答する、と書かれています4。つまり、得られるのは、許可申請が必要かどうかについての経産省の回答です。
分からないことも、はっきり書いておきます。第一に、回答の後でインフォーム通知が出ないという保証が、通達に書かれているかどうかです。私が読んだ範囲では、そうした記載は見つかりませんでした。第二に、回答までにかかる標準的な期間です。官民対話スキームでは「原則30日以内」という目安が示されていますが、一般の事前相談について同様の期間を示した公式資料は確認できていません。第三に、相談の内容が通知につながる可能性があるのかどうかです。事前相談の結果と通知の関係について、公式の説明は見当たりません。これらは推測せず、必要なら相談の際に直接尋ねるのが確実です。
もうひとつ、民間の相談窓口があります。CISTEC(一般財団法人安全保障貿易情報センター)のWEB・面接相談は、外為法第25条第1項から第4項と第48条第1項に関する相談を対象にしています。該非判定、輸出管理内部規程、輸出許可申請の書類など、安全保障貿易管理に関することが範囲です。料金は、2026年11月6日に取得した規約によると、賛助会員が無料、一般企業が最初の20分で5,500円(税込)、以降20分ごとに3,300円(税込)です。回答は助言であり、CISTECの故意または重大な過失の場合を除いて、助言によって生じた不利益や損害の責任を負わない、とも書かれています7。メール相談の対象は、賛助会員、大学会員、その他の大学法人です8。役所への相談と並行して、民間の知見を使う選択肢として覚えておくとよいでしょう。
事前相談の使い勝手については、産業界からの声もあります。別記事の出口管制の手続き負担をめぐる記事で整理したとおり、商社などでつくる団体は経産省への要望のなかで、事前相談がメール中心になっていて詳しいやり取りが難しい、という趣旨の指摘をしています。これは団体の要望書を読んだ限りの整理で、すべての企業に当てはまるわけではなく、経産省がどう受け止めたかも確認できていません。
相談するか、しないか。時間・取引機会・罰則から考える
冒頭に書いた、「相談で損をする」という話に戻ります。時間、取引機会、罰則の3つの観点で、公式資料から言えることを並べます。
| 観点 | 相談する場合に起こりうること | 相談せずに進める場合に起こりうること |
|---|---|---|
| 時間 | 資料を整える手間と、回答を待つ時間がかかる。一般の事前相談の標準的な期間は、確認できていない | 確認の結果が「許可不要」で、通知もなければ、輸出者の判断ですぐ進められる6 |
| 取引の機会 | 回答待ちの間、契約や納期に影響しうる。早めに動けば、計画に織り込める | 後から「許可が必要」と分かると、出荷後・契約後の対応になり、選べる手が減る |
| 罰則 | 相談そのものに罰則はない | 許可が必要な輸出を許可なく行った場合、外為法上の罰則や行政上の制裁の対象になりうる |
この表で言いたいのは、相談の有無を「損か得か」で割り切れない、ということです。相談には手間と待ち時間がかかります。それは確かです。一方で、確認の記録が十分にあり、懸念情報が一切なく、「明らかなとき」の判断にも迷いがない取引まで、毎回相談する必要があるとは、公式の案内も言っていません。逆に、手元の文書に懸念につながる記載があるのに、確認を飛ばして進めたとき、後から困るのは輸出者です。
どんな場面で相談が向くのかを、通達の文言から拾います。通達の確認項目には、輸入者や需要者から用途について明確な説明があること、というものがあります。そして、最終用途に関する情報を提供したがらない場合は、明確な説明はないものと推定する、とも書かれています4。たとえば(仮の例です)、汎用の機械部品を輸出する取引で、先方が最終用途を教えてくれない、という場面を考えます。この場合、「明らかなとき」とは判断しにくく、通達の言う「判断が困難な場合」に近づきます。ここで、確認の記録を整えたうえで審査課に相談するのは、通達が想定している使い方のひとつでしょう。
私の考えを一つだけ添えます。相談の価値は、回答の中身だけではなく、自社の確認の過程を整理させてくれる点にもあると思っています。客観要件確認シートを埋めながら、どこが分からないのかが言葉になる。分からないところだけを聞けば、相談する側の負担も、聞かれる側の負担も小さくなります。時間の観点では、相談をして遅れることよりも、確認の記録がなくて社内の判断が止まることのほうが、実務では重くなりがちです。
相談しなかった・通知を見落としたときに起きうること
では、相談せずに進めたり、通知を見落としたりしたとき、何が起こりうるのか。ここは条文の範囲で説明します。
通知を受けた貨物を、許可を受けずに輸出すれば、外為法第48条第1項の許可を受けないで輸出した、という整理になります。同法第69条の7第1項は、第48条第1項の許可を受けないで輸出したときの罰則として、7年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金、またはその併科を定めています。違反行為の目的物の価格の5倍が2,000万円を超えるときは、罰金は価格の5倍以下とされます。輸出については未遂も罰せられます。さらに、核兵器等などに係る特に重い類型は、第2項で10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金です。どの貨物がどの項に当たるかは、私は政令の指定まで確かめていません。実際の適用は、個別の事実で決まります9。
会社に対しては、第72条が両罰規定を置いていて、法人の罰金は第1項の違反で7億円以下、第2項の違反で10億円以下(いずれも目的物の価格の5倍が上限を超える場合は5倍以下)と書かれています9。刑事罰とは別に、第53条には行政上の制裁があり、許可を受けないで輸出した者に対して、3年以内の期間を限って輸出や技術の提供などを禁止できると定められています9。罰則の全体像や、これまでの処分の状況は、外為法違反の罰則を整理した記事にまとめています。違反がどう発覚するのか、原因は何が多いのかは、経産省の統計を数え直した外為法違反6年分の分析記事が参考になります。
注意してほしいのは、罰則に関する記述は条文の書き方を説明しているだけで、「通知を見落としたら必ずこうなる」と言っているのではない、という点です。刑事責任が成立するかどうかは、故意の有無などを含む個別の事実で決まります。通知を社内で受け取った担当者が共有しなかった場合に、会社としてどう評価されるのかも、条文から直ちに言えるものではありません。ただ、条文は「通知を受けたとき」と書いているだけで、社内連絡の失敗を免れさせる定めは見当たりません。だから私は、通知の受け取り口を一本化することを強くお勧めしています。
通知を見落とさないために、現実的にできることを3つ挙げます。通知の宛先と受取窓口を、輸出管理責任者の管理下にある一か所にそろえること。郵便や通常メールで届いたものを、部署の別を問わず輸出管理責任者に回す社内ルールを書いておくこと。そして、出荷前の最終確認の項目に「通知の有無」を入れて、確認のたびに記録を残すことです。
よくある誤解
最後の節に入る前に、この分野でよく聞く誤解を整理します。
誤解の一つ目は、「事前相談しないと違法になる」というものです。そうではありません。経産省の案内は、確認の結果が「許可申請不要」であれば、通知を受けない限り輸出者の判断で輸出できる、としています6。ただ、その場合も、判断に至った経緯を社内の規程に従って保存するよう求められています。
二つ目は、「相談すれば許可がもらえる」という思い込みです。事前相談の回答は、許可申請が必要かどうかに関するものです。許可そのものを約束するものではありません。通知を受けて申請をした場合も、許可されないことがあります5。
三つ目は、「通知は大企業にしか来ない」というものです。私が確認できた公式資料には、通知の相手の規模に関する記述はありません。官民対話スキームの仕組みを読むと、対象になるのは技術と取引の中身で、会社の規模では区切られていません。
四つ目は、「相談すると目をつけられる」という心配です。公式資料には、相談したことが通知や不利益の原因になるとは書かれていません。同時に、相談の結果が通知に影響しないとも書かれていません。この点は確認できていないので、懸念があるなら相談の際に直接尋ねてください。
五つ目は、「通知が来たら、相手の会社に問題がある」という受け止め方です。通知は、経産省がその貨物や技術について、懸念される用途に使われるおそれがあると判断した、という区分上の文書です。取引先を非難する材料ではなく、手続きを進めるための通知として扱うのが、実務でも関係の維持でも妥当だと考えます。
明日からの一手
ここまで読んで、自社で最初にやることを決めたい方へ、順番をひとつ提案します。
最初に、輸出管理の社内規程に、通知を受領した場合の動きが書かれているか確認してください。書かれていなければ、先ほどの7つの手順を下書きにして、社内の関係者と作ってみるのがよいでしょう。次に、客観要件確認シートを、直近の取引のいくつかで実際に埋めてみて、迷った項目を洗い出します。迷いがあれば、そこが事前相談で聞く候補です。
3つめは、相談する際の準備です。経産省のページが挙げる4点の書類を、いつでも出せる形で雛形化しておくと、必要になったときの時間が大きく変わります。最後に、通知の受取窓口を一本化してください。
私はこの記事を書きながら、インフォーム通知と事前相談の周辺には、公開されていない部分が思った以上に多いと感じました。分からない点を分からないと認めて、相談で確かめるのは、決して後ろ向きな態度ではないと思います。
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Footnotes
-
輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)第1条第3項、第4条 — e-Gov法令検索 — 2026年11月6日確認 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
貿易関係貿易外取引等に関する省令(平成10年通商産業省令第8号)第9条 — e-Gov法令検索 — 2026年11月6日確認 ↩
-
大量破壊兵器等及び通常兵器に係る補完的輸出規制に関する輸出手続等について(輸出注意事項2025第27号、令和7年11月14日公布・施行の最終改正) — 経済産業省貿易経済安全保障局 — 2026年11月6日確認 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
キャッチオール関連 5.インフォーム要件に関する質問(Q1〜Q3) — 経済産業省 — 最終更新日 2025年10月15日、2026年11月6日確認 ↩ ↩2 ↩3
-
補完的輸出規制(キャッチオール規制) — 経済産業省 — 最終更新日 2025年12月23日、2026年11月6日確認 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
WEB及び面接相談利用規約(最終改正 2023年4月1日) — CISTEC(一般財団法人安全保障貿易情報センター) — 2026年11月6日確認 ↩
-
メール相談利用規約(最終改正 2023年4月1日) — CISTEC(一般財団法人安全保障貿易情報センター) — 2026年11月6日確認 ↩
-
外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)第25条、第48条、第53条、第69条の7、第72条 — e-Gov法令検索 — 2026年11月6日確認 ↩ ↩2 ↩3






