こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
輸出管理や制裁の確認で、「50%ルール」という言葉はよく聞きます。ただ、少し突っ込むと、答えに詰まる質問が出てきます。持分が50%ちょうどなら対象でしょうか。51%なら分かるが、50%は。リスト掲載の企業が株を分け合っている場合は、足し算になるのでしょうか。孫会社、ひ孫会社になると、持分はどう数えるのでしょうか。
この記事では、米国商務省BISの50%ルール(関連事業体ルール)と、財務省OFACの50%ルールについて、規則の原文とOFACのFAQの数字つきの例をもとに、これらの答えを整理します。BISのルールには、2026年11月に期限を迎える停止があります。その現状も書きます。確認した日付は、2026年10月19日から20日です。
先に、4つの答え
| 質問 | 答え |
|---|---|
| 50%ちょうどは対象か | 対象です。BISは「at least 50 percent」、OFACは「50 percent or more」と書いています |
| 複数の対象者の持分は合算するか | 合算します。内訳は問われません |
| 孫会社・ひ孫会社はどう数えるか | 途中の会社を50%以上持たれていれば、その先の持分は全額が数えられ、掛け算で薄まりません。途中が50%未満なら、OFACはその先を算入しません |
| 支配しているだけで、50%未満なら | OFACは、50%ルールでは自動的に対象としません。ただし、将来の指定や執行の対象になりうるとして、注意を求めています |
以下、順に、原文で確かめます。
「50%以上」。51%でなくても対象になる
BISの規則は、Entity List(エンティティリスト)、MEU List、特定のSDNが、「直接または間接に、単独または合算で、50%以上」を所有する外国の事業体を、それ自身がリスト掲載者と同じ制限を受けるものとして扱います。2025年9月30日に官報に掲載された暫定最終規則の要約は、「Entity Listの掲載者が少なくとも50%(at least 50 percent)を所有する事業体は、自動的にEntity Listの制限の対象になる」と書いています。1
OFACも、同じ構造です。OFACのFAQは、「被ブロック者による保有が50%以上であれば、その事業体はブロック対象になる」としています。2 51%ではなく、50%に達していれば足ります。
BISの規則原文には、ちょうど50%の例があります。適用例1のなかで、「会社Dは、会社Cに50%を所有されている」と書いたうえで、会社Dが対象になるとしています(会社Cは、リストには載っていませんが、持分を理由に制限を受ける会社です)。1 50%ちょうどが対象になる、という読み方を、原文が裏づけています。
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複数の持分は、合算される
持分が分散していても、足し算で見ます。
OFACのFAQの例は、被ブロック者Xが会社Aの25%、被ブロック者Yが会社Aの25%を持つ場合です。合算で50%になるので、会社Aはブロック対象です。異なる制裁プログラムでブロックされた者の持分も、合算に含めます。3
BISの規則原文にも、同じ考え方の適用例があります。会社AがEntity Listに載り、会社Cの35%を持ちます。会社BもEntity Listに載り、会社Cの15%を持ちます。会社Cは、合算で50%以上を、リスト掲載者に持たれていることになります。会社Cには、掲載者に対する要件が適用されます。2つの要件の厳しさが違う場合は、より厳しいほう(この例では会社A)の要件が、会社Cが当事者になる取引に適用されます。さらに、規則は、「50%以上になる内訳は問題にならない」と明記しています。会社Bが35%、会社Aが15%でも、会社Aの要件が適用される、という例も添えられています。1
実務では、一番の株主だけを調べても足りないことになります。株主のすべてを、リストと照らし合わせる必要があります。
孫会社、ひ孫会社の数え方
いちばん疑問が出やすいのは、ここです。持分が連鎖するときに、どう数えるのか。OFACのFAQ401に、数字つきの例が5つあります。4
| 例 | 持分の構造 | 結論 |
|---|---|---|
| 1 | XがAの50%を持ち、AがBの50%を持つ | XはBを間接的に50%持つことになり、Bは対象 |
| 2 | XがAの50%、Bの50%を持つ。AとBが、それぞれCの25%を持つ | Cの間接保有は25%+25%=50%で、Cは対象 |
| 3 | XがAの50%、Bの10%を持つ。AがBの40%を持つ | Bは、直接10%と間接40%の合計で50%となり、対象 |
| 4 | XがAの50%、Bの25%を持つ。AとBが、それぞれCの25%を持つ | Bは50%未満なので、Bを通じた分は算入されず、Cへの間接保有はAを通じた25%のみ。Cは対象外 |
| 5 | XがAの25%、Bの25%を持つ。AとBが、それぞれCの50%を持つ | AもBも50%未満なので対象外。したがってCも対象外 |
この表から、ルールが2つ読み取れます。
1つ目は、途中の会社が50%以上なら、その先の持分は、全額が数えられるということです。 例2では、XがAを50%持っています。Aが持つCの25%は、掛け算でXの12.5%に薄まりません。25%のまま、XのCへの間接保有として数えられます。祖父にあたる会社の持分が50%でも、その先の会社の持分を100として見る、というご指摘のとおりです。
2つ目は、途中の会社が50%未満なら、その先は数えられないということです。 例4と例5は、この点を示しています。途中の会社が対象にならなければ、その会社が持つ先の会社の持分は、算入されません。
BISの規則原文にも、連鎖の例があります。先ほどの適用例1で、会社Cは、会社AとBに合算で50%以上を持たれ、対象になります。会社Dは、そのCに50%を持たれています。Cは、リストには載っていませんが、持分を理由に制限を受けます。そのCに50%を持たれたDも、同じ制限の対象になる、と原文は書いています。1 持分のチェーンが、一段先まで及ぶ例です。
BISが、OFACと同じ数え方をするかについては、規則原文に「OFACと同様に」という記述があります。1 ただし、OFACの例4・例5のような、途中の会社が50%未満のときの扱いを、BISの適用例で示した箇所は、私が確認した範囲では見つかりませんでした。BISの規則の数え方の細部は、確認が済むまで、OFACより広く見ておくのが安全だと考えます。
50%未満と「支配」。対象にならなくても、注意が要る
ここで、よくある誤解があります。「50%未満なら、取引してよい」「50%を持っていなければ、関係ない」。そうとは言い切れません。
OFACのFAQ398は、「ブロックされた者が支配している事業体は、50%ルールでブロックされるか」という問いに、「いいえ」と答えています。50%ルールが扱うのは「所有」だけで、「支配」ではありません。ブロックされた者が、50%以上を持っていなければ、支配していても、その事業体は50%ルールによって自動的にブロックされません。5
その一方で、同じFAQは、次のことも述べています。OFACは、別の基準に基づいて、その事業体を指定することがある。ブロックされた者が、重要な持分を持つ事業体や、過半数以外の方法で支配している事業体は、将来の指定や執行措置の対象になりうる。だから、そうした事業体との取引には、注意するよう求めています。5
BISの規則も、似た考え方をとっています。50%未満の重要な持分や、取締役の兼任などの強い結びつきを、拡散リスクのレッドフラグ(警戒すべき兆候)として挙げています。持分の割合が分からないときについても、新しいRed Flag 29を設けました。リスト掲載の所有者がいることを知っている輸出者などは、その持分の割合を確かめる義務があり、確かめられないときは、掲載の所有者への要件に基づいて、BISの許可を取るよう求められます。1
また、Entity Listなどの要件は、「知っていたか」を問わず適用される(strict liability)と、規則は書いています。「知っていたか」は、違反があった場合の罰則を計算するときの要素になります。1 知らなかったから済む、という構造ではありません。
BISとOFAC。同じ「50%」で、効果が違う
| 項目 | BIS(EARの関連事業体ルール) | OFAC |
|---|---|---|
| 対象にするもの | Entity List、MEU List、特定のSDNが、50%以上を所有する外国の事業体 | 被ブロック者が、50%以上を所有する事業体 |
| 結果 | リスト掲載者と同じ許可要件が及ぶ(許可が要る) | ブロックされた財産として、原則、取引が禁止される |
| 合算 | する(内訳は問わない) | する |
| 連鎖 | 適用例で、50%を持たれた会社の先も対象 | 途中が50%以上なら、先の持分は全額算入。途中が50%未満なら算入しない |
| 50%未満・支配 | Red Flag、補足第8号で注意を求める | 自動的には対象外。将来の指定や執行のおそれがあり、注意を求める |
| 現状(2026年10月20日時点) | 官報の停止規則により、2026年11月9日まで効力が停止 | 継続して有効 |
OFACのルールは、いまも有効です。BISのルールは、停止中ですが、期限が来ると、追加の規則がなければ、自動的に戻ります。
BISの停止の現状(2026年10月20日)
BISの関連事業体ルールは、2025年9月29日に発効しました。その後、2025年11月10日に効力が停止され、停止は2026年11月9日までです。6 停止は「stay」であり、改正の条文は残っています。期限が来ると、追加の規則がない限り、2026年11月10日に効力が戻ります。
米中は、2026年9月に、この合意を2027年1月10日まで延ばすと発表しています。ただ、BISが延長を連邦官報に出した形跡は、10月20日時点で、私が確認した範囲では見つかっていません。10月1日以降のBIS関連の官報文書を検索しましたが、該当するものはありませんでした。経緯の詳細は、11月10日の米中同時期限にまとめています。
法的な手当てが確認できない以上、実務では、11月10日に戻る前提で、取引先の持分の確認を済ませておくのが、安全です。なお、リストへの掲載は規制上の区分で、企業の是非を判断するものではありません。
取引先の持分を確認する手順
最終的な判断は、貴社の輸出管理責任者が行います。そのための手順を、6つに整理します。
- 取引先の株主構成を、層ごとに書き出す。 直接の株主だけでなく、その株主の株主まで遡ります。
- 各層の持分を、数字で書く。 「大株主」といった言い方ではなく、パーセントで。
- 同じ対象者が複数の経路で持っていないか、合算する。 OFACの例2・例3のように、別の経路から持分が集まることがあります。
- 50%以上の層だけを、連鎖としてたどる。 途中の会社が50%以上なら、その先の持分は全額で数えます。50%未満の層は、OFACの数え方では先に進みませんが、注意の対象としてメモします。
- 割合が分からない場合は、分からないまま止める。 BISのRed Flag 29が求めるのは、持分の割合を確かめることです。確かめられないときは、ライセンスの要否を検討します。
- 確認した範囲と日付を、記録に残す。 ルールは、期限や停止で状況が変わります。いつ時点で、何を確認したかを、残しておきます。
取引先の名前から、資本関係をたどって、合算の持分を計算する作業は、手で回すと時間がかかります。まずは、BIS 50%ルールの簡易チェック(無料・登録不要)で、1社を試してみると、自社のデータがどこで途切れるかが分かります。関連事業体ルールの全体像は、EARアフィリエイトルールとはでも書いています。
まとめ
50%ちょうどは、BISでもOFACでも、対象になります。複数の持分は合算し、連鎖は、途中の会社が50%以上であれば、その先の持分を全額で数えます。途中が50%未満なら、OFACは先を算入しません。ただし、50%未満や支配は、「対象外」と読むのではなく、「注意が要る」と読むものです。
私が、実務でいちばん気をつけたいと思うのは、「51%でなければ大丈夫」「祖父会社の持分が薄いから大丈夫」という、数字の感覚です。原文の例では、持分が50%ちょうどでも、2段階、3段階と連鎖しても、対象になっています。
BISのルールの停止は、2026年11月9日までです。延長の法的な手当てが確認できていない現状では、戻ったときに、すぐ判断できる状態を作っておくことが、いちばんの備えになります。取引先の資本関係の確認や、各種リストの照合が、人手で回らない規模になったときは、TRAFEEDが担当できる範囲です。判断ごとに根拠を紐づけて残すところまでを支援します。最終的な判断は、貴社の輸出管理責任者が行います。自社の体制で足りるか不安な方は、個別のご相談からお声がけください。






