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国連総会2026一般討論の要旨|高市首相ら各国の安全保障発言を整理

公開2026-10-04濱本 隆太

2026年9月22〜28日の第81回国連総会一般討論で、高市首相、トランプ大統領、中国の韓正国家副主席、ロシアのラブロフ外相らが安全保障について何を語ったかを、各国の演説原稿の原文から論点別に整理しました。ウクライナ、ホルムズ海峡、朝鮮半島、南シナ海、AI、安保理改革、制裁と輸出管理まで、企業の実務への影響も考えます。

国連総会2026一般討論の要旨|高市首相ら各国の安全保障発言を整理
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株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。

2026年9月22日から28日まで、ニューヨークの国連本部で第81回国連総会の一般討論が開かれました。日本からは高市早苗首相が初日に演壇に立っています。

各国の演説原稿を順に読んでいくと、興味深い重なりに気づきます。日本は「恣意的な輸出規制」への懸念を語り、ドイツは「原材料が服従を強いるために使われること」に反対し、インドは「あらゆるものの武器化」を指摘し、中国は「壁を築き、供給網を断ち切ること」を批判しました。似た言葉が、それぞれ別の方向に向けて使われているのです。輸出管理や調達の担当者にとって、これは国連の議場の話で終わりません。

本稿では、各国政府が公表した演説の原文を確認し、安全保障に関わる発言を論点ごとに並べ直しました。どの国の主張が正しいかは判断しません。誰が何を言ったかを並べ、それが日本企業の輸出・調達・海外拠点にどう関わるかを考えます。自社の輸出管理体制をざっと点検したい方は、3分でできる輸出管理チェックも使えます。

要約: 第81回国連総会の一般討論(2026年9月22〜28日)では、ウクライナ、ホルムズ海峡とイランの核問題、朝鮮半島、南シナ海、AIと自律型兵器、安保理改革が主な論点になりました。高市首相は恣意的な輸出規制への懸念、NPT体制の強化、安保理の常任・非常任双方の拡大と旧敵国条項の削除を訴え、中国と北朝鮮は答弁権で旧敵国条項の削除に反対しました。米国はイランの核兵器保有を認めない立場とAIの国際的な管理枠組みへの反対を表明し、ロシアは特別軍事作戦の目標達成を掲げました。ドイツやインドは原材料や供給網が圧力の手段になることへの懸念を示しています。イラン制裁をめぐる各国の立場の違いは、企業の取引先照合に直接関わります。

第81回国連総会の一般討論とは:会期と主な登壇者

国連総会の一般討論(General Debate)は、毎年9月の会期の初めに、加盟国の首脳や閣僚が順番に演壇に立ち、自国の立場を述べる場です。決議を採るわけではありません。それでも、各国が1年分の外交方針を自分の言葉でまとめて示す機会なので、その年の国際情勢の論点を見渡すには最も手早い材料になります。

第81回の一般討論は、2026年9月22日から28日まで開かれました1。全体テーマは「信頼の回復、変化の管理、すべての人のために成果を出す国連(Restoring trust, managing transformation: a United Nations that delivers for all)」です。議長はバングラデシュのハリルル・ラーマン氏が務めました。初日はグテーレス事務総長の演説に続いて、慣例どおりブラジル、米国の順に首脳が登壇しています。グテーレス氏は2026年末で任期を終えるため、今回が最後の一般討論になりました。

日本からは高市早苗首相が22日に演説しました2。首相として初めての一般討論で、9月17日に第2次改造内閣を発足させた直後の訪米です。改造内閣の顔ぶれと経済安全保障の体制は第2次高市改造内閣の解説にまとめています。

主な国と国際機関の登壇者は次のとおりです。首脳本人が来た国と、外相などが代わりに立った国があります。中国は韓正国家副主席が登壇しました。同じ週、習近平国家主席は米国を国賓として訪問しており、9月24日にはホワイトハウスで歓迎式典が開かれています3。

国・機関 登壇者 日付(ニューヨーク時間)
国連 アントニオ・グテーレス事務総長 9月22日
日本 高市早苗 首相 9月22日
米国 ドナルド・トランプ 大統領 9月22日
フランス エマニュエル・マクロン 大統領 9月22日
英国 アンディ・バーナム 首相 9月22日
韓国 李在明(イ・ジェミョン)大統領 9月22日
ウクライナ ウォロディミル・ゼレンスキー 大統領 9月23日
イラン マスード・ペゼシュキアン 大統領 9月23日
EU アントニオ・コスタ 欧州理事会議長 9月24日
中国 韓正 国家副主席 9月26日
ロシア セルゲイ・ラブロフ 外相 9月26日
ドイツ ヨハン・ワーデフール 外相 9月26日
インド スブラマニヤム・ジャイシャンカル 外相 9月26日
フィリピン テレサ・ラザロ 外相 9月26日
北朝鮮 金善敬(キム・ソンギョン)外務次官 9月28日

もう一つの読みどころが「答弁権(right of reply)」です。演説で名指しされたり批判されたりした国が、会合の最後に反論のために発言できる仕組みで、今回は日本も3回使いました。9月26日にロシアの演説に対して1回、28日に北朝鮮と中国の発言に対して2回です4。

背景として押さえておきたいのが、核兵器不拡散条約(NPT)の運用検討会議です。5年に1度、条約の運用を締約国で点検する会議で、2026年は4月27日から5月22日まで開かれましたが、最終文書を採択できないまま閉幕しました5。一般討論でも、日本、フィリピン、EUなどがNPT体制の維持・強化に触れています。

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論点×国の一覧表:誰が何を言ったか

下の表は、安全保障に関わる主な発言を論点ごとに並べたものです。「原文」の列は、各国政府が公表した演説原稿、または国連に提出された原稿から短く引いています。日本語の要旨は私が原文から訳しました。北朝鮮は代表団が国連に提出した英語原稿、ウクライナは大統領府が公表した英語版とウクライナ語版の両方で確認しています。

論点 国・登壇者(日付) 要旨 原文(短い引用)
輸出規制・供給網 日本・高市首相(9/22) 恣意的な輸出規制への懸念が国際社会に広がっていると指摘し、重要鉱物の供給網強化策を提示 「恣意的な輸出規制に対する懸念が強まっています」
輸出規制・供給網 ドイツ・ワーデフール外相(9/26) 原材料や供給網が圧力の道具になることを受け入れるべきではないと主張 "No country should have to accept raw materials being used to force obedience."
輸出規制・供給網 インド・ジャイシャンカル外相(9/26) 金融、市場アクセス、供給網、技術まで圧力の手段になっていると指摘 "a weaponization of everything"
輸出規制・供給網 中国・韓正国家副主席(9/26) 保護主義やデカップリングは供給網の安定を乱し、各国の利益を損なうと主張 「保护主义没有赢家」
ウクライナ ロシア・ラブロフ外相(9/26) 特別軍事作戦の目標は達成されると表明 «цели специальной военной операции будут достигнуты»
ウクライナ ウクライナ・ゼレンスキー大統領(9/23) ロシアとの貿易の制限と制裁の継続を各国に要請 "When someone gives Russia more money through trade, they give this war more time."
ウクライナ 中国・韓正国家副主席(9/26) 習主席の「四つのべき」に沿い、独自の方法で政治解決に建設的役割を果たすと表明 「以自己的方式」
ウクライナ フランス・マクロン大統領(9/22) エネルギー・民間インフラと黒海を対象にした二重の一時停止を支持 «un double moratoire»
中東・海上交通 日本・高市首相(9/22) 追加費用なしで全船舶がホルムズ海峡を自由かつ安全に通航できることを要求 「追加的費用のない形で」
中東・イラン核 米国・トランプ大統領(9/22) イランに核兵器を持たせないと表明 "I will never allow Iran to have a nuclear weapon."
中東・海上交通 フランス・マクロン大統領(9/22) ホルムズ海峡の航行の自由を回復する多国籍の連合を立ち上げたと説明 «restaurer la liberté de navigation dans le détroit d'Ormuz»
中東・海上交通 EU・コスタ欧州理事会議長(9/24) ホルムズ海峡の無条件の航行の自由と、イランの核兵器保有の阻止を主張 "unconditionally and without hindrance"
朝鮮半島 韓国・李在明大統領(9/22) 核・ミサイル能力の高度化の停止、中期的な縮小、長期的に核のない朝鮮半島という段階を提示 「중단시키고, 중기적으로 축소를 거쳐」
朝鮮半島 北朝鮮・金善敬外務次官(9/28) 核保有国としての地位は覆らないと主張 "can never be reversed in any circumstances or by any means"
朝鮮半島 日本・高市首相(9/22) 完全な非核化の原則の下での安保理決議の完全履行と拉致問題の解決を要求 「北朝鮮の完全な非核化という原則の下」
南シナ海 フィリピン・ラザロ外相(9/26) 2016年の仲裁判断は最終的で法的拘束力があると主張 "final and legally binding"
南シナ海 中国・孫磊大使(国連代表部、答弁権、9/28) 国連は南シナ海問題を議論する場ではないとし、仲裁判断を受け入れない立場を表明 「联合国不是讨论南海问题的合适场所」
台湾海峡 ツバル・テオ首相(9/25) 台湾周辺の軍事活動の高まりが海峡の安定と輸送・貿易を脅かすと懸念 "threaten stability across the Taiwan Strait"
AI・自律型兵器 国連・グテーレス事務総長(9/22) 生死に関わる判断を機械に委ねてはならないと主張 "Killer robots must have no place in our future."
AI 米国・トランプ大統領(9/22) AIを国際的に管理する枠組みづくりを拒否 "totally rejects any attempt to construct a globalist scheme of control"
AI ドイツ・ワーデフール外相(9/26) 最も高性能なAIモデルに公開前の試験と重大事故の報告を求める共通要件を提案 "test these models before release"
AI・宇宙・サイバー フランス・マクロン大統領(9/22) 宇宙、防衛、サイバーでのAIに国家間の新たな枠組みが必要と主張 «dans le spatial, dans la défense, dans la cybersécurité»
情報・サイバー 英国・バーナム首相(9/22) 国家による情報攻撃に対処する新組織の検討を治安機関に指示 "National Centre for Information Defence"
安保理改革 日本・高市首相(9/22) 常任・非常任の双方の拡大と、旧敵国条項の削除を要求 「同条項は早急に削除されるべきです」
安保理改革 ロシア・ラブロフ外相(9/26) 西側、とくにドイツと日本への追加議席に反対し、ブラジルとインドを支持 «тем более Германии и Японии»
旧敵国条項 中国・孫磊大使(国連代表部、答弁権、9/28) 旧敵国条項は今も現実的な意義があるとして削除に反対 「时至今日仍具有重要现实意义」
防衛・同盟 英国・バーナム首相(9/22) NATOでの約束を果たし、抑止力の構築を続けると表明 "relentless in building up our hard power and deterrence"
防衛・同盟 豪州・アルバニージー首相(9/24) 同盟国の米国、貿易相手の中国の双方と協力すると説明 "our principal ally the United States and our major trading partner in China"

表を作ってみて分かったのは、台湾海峡について、私が確認した主要国の原稿には直接の言及がほとんどなく、台湾と外交関係を持つ国々が語っていたことです。もう一つは、輸出規制や供給網をめぐる懸念が、立場の違う国々から同じような言葉で出ていたことでした。この二点は後半でもう少し掘り下げます。

主要国の発言の要点

ここからは、主な国の演説を一つずつ見ていきます。各国が限られた演説時間をどの論点に多く割いたかは、それ自体が優先順位の表明です。日本、米国と中国、ロシアとウクライナ、欧州、アジア太平洋の順に、安全保障と経済安全保障に関わる部分を中心にまとめました。引用は原文から取り、日本語訳は私が付けています。

日本:高市首相は「三つの柱」と国連改革を前面に

高市首相の演説は、国際秩序の揺らぎを指摘したうえで、5月に発表した「進化したFOIP(自由で開かれたインド太平洋)」を軸に三つの柱を示す構成でした2。一つ目はエネルギー・重要物資のサプライチェーンの強靱化です。ここで首相は「国際社会全体で恣意的な輸出規制に対する懸念が強まっています」と述べ、代替供給源づくりに加えて、供給が断たれたときの各国の対応能力を高める構想を提案しました。具体策として挙げたのが、重要鉱物の産出国が採掘・精錬・加工でより大きな役割を担えるよう協力する「RISE(強靱で包摂的なサプライチェーンの強化)パートナーシップ」と、世界銀行グループに設けた「RISE+」への2,000万ドルの拠出です。演説の中で特定の国名は挙げていません。

二つ目の柱は平和と安定に向けた連携で、NPT体制の維持・強化、北朝鮮の核・ミサイル開発と暗号資産の窃取を含むサイバー活動、拉致問題を取り上げました。ロシアと北朝鮮の軍事協力による核・ミサイル関連技術の拡散にも懸念を示し、「インド・太平洋と欧州・大西洋の安全保障は不可分なのです」と述べています。三つ目の柱は法の支配に基づく国際秩序です。ロシアのウクライナ侵略を例に、常任理事国が自国の行為に関する決議に拒否権を使う状況では「安全保障理事会は、国際社会の平和のために機能していないと言わざるを得ません」と述べました。ホルムズ海峡については、従来どおり追加的費用のない形で全ての船舶が自由かつ安全に通過できることが極めて重要だとしています。

後半は国連改革に踏み込みました。安保理の常任・非常任の双方を拡大すること、国連憲章のいわゆる旧敵国条項を削除することを求めています。AIについては広島AIプロセスを紹介し、AIサミットを早期に日本で開く考えを示しました。締めくくりでは、国連加盟以来70年、専守防衛の考え方の下で平和国家として歩んできた方針は「今後も一切変わりません」と述べています。翌23日の内外記者会見では、トランプ大統領との会談でAI、半導体、重要鉱物を含む経済安全保障の協力強化で一致したことも説明しました6。

米国と中国:トランプ大統領と韓正国家副主席

トランプ大統領の演説は、イランに多くの時間を割いた内容でした。ホワイトハウスが公表した抜粋によると、大統領は "I will never allow Iran to have a nuclear weapon."(イランに核兵器を持たせることは決してない)と述べています7。国連の会議要旨によれば、大統領はイランへの経済的な圧力を各国が続けるよう求め、そのうえで合意に至るとの見通しも語りました8。ウクライナについてはロシアとウクライナの指導者と緊密に協議していると述べ、早期の決着に意欲を示しています。AIでは "The United States totally rejects any attempt to construct a globalist scheme of control for the Artificial Intelligence"(米国は、AIを国際的に管理しようとするいかなる枠組みづくりも全面的に拒否する)と述べ、AIを「スーパーインテリジェンス」と呼ぶとしました。グリーンランドをめぐるデンマーク、グリーンランドとの合意にも触れています。

韓正国家副主席は、習近平国家主席が提唱した発展・安全・文明・ガバナンスの四つのグローバル・イニシアチブを軸に、4項目の提案を示しました9。安全保障では冷戦思考と陣営対立を退け、「反对违反联合国宪章、绕开联合国安理会授权的单边军事行动」(国連憲章に違反し、安保理の授権を経ない一方的な軍事行動に反対する)と述べています。ウクライナ問題では習主席の「四つのべき」を根本的な指針とし、「以自己的方式」(自らのやり方で)政治解決に建設的な役割を果たすとしました。

経済面の発言は、輸出管理の担当者にとって見逃せない部分です。韓正氏は「保护主义没有赢家」(保護主義に勝者はいない)と述べ、「筑墙设垒」「脱钩断链」(壁を築いて障壁を設けること、デカップリングと供給網の切り離し)は世界の産業チェーン・供給網の安定を乱し、各方面の利益を損なうと主張しました。サイバー、宇宙、極地といった分野の統治ルールの整備にも触れています。演説の後半では、1971年の国連総会決議2758号の採択から55年になることに言及しました。

ロシアとウクライナ:ラブロフ外相とゼレンスキー大統領

ラブロフ外相はプーチン大統領の言葉を引きながら、グローバル・サウスと東の国々が主権的な発展の中心として台頭する一方で、「西側の少数派」が特権を守ろうとしていると主張しました10。ウクライナについては «цели специальной военной операции будут достигнуты»(特別軍事作戦の目標は達成される)と述べています。中東では、米国とイスラエルの攻撃がIAEA(国際原子力機関)の保障措置の下にあるイランの原子力施設に及んだことで、不拡散体制に損害が生じたと主張しました。

安保理改革については、西側、とくにドイツと日本への追加議席に反対し、ブラジルとインドの常任理事国入りとアフリカの利益の実現を支持すると述べています。NATOが影響を東南アジアや北東アジアにまで広げようとしているとも批判し、ベラルーシなどと「21世紀の多様性と多極性に関するユーラシア憲章」の作業を始めたと表明しました。サイバー分野では、ロシアの主導で作成された国連サイバー犯罪条約が前年10月にハノイで署名開放されたことを評価しています。

ゼレンスキー大統領は、ロシア軍がこの年の1〜8月に24万8,964人の死傷者を出したとする自国の集計を示し、戦争を終わらせるにはロシアの戦費調達能力を断つ必要があると訴えました11。大統領府の公表した英語版では "When someone gives Russia more money through trade, they give this war more time."(誰かが貿易を通じてロシアにより多くの資金を与えれば、この戦争により多くの時間を与えることになる)と述べ、制裁の継続と貿易の制限を各国に求めています。北朝鮮の部隊がロシア側で戦っていることにも触れ、北朝鮮の弾道ミサイルやドローンの能力が向上していると指摘しました。

防衛産業についての発言も多くありました。迎撃ドローンの増産、ウクライナを含む10か国で進める対弾道ミサイル計画「FREYJA」、各国とドローン防衛の仕組みを共有する「ドローン・ディール」を紹介し、演説当日にフィンランドとドローン・ディールを、豪州と安全保障協定を結んだと述べています。AIについては、早ければ来年にもAIが戦場の判断を担う現実的な可能性があると警告しました。

欧州:英国、フランス、ドイツ

英国のアンディ・バーナム首相は、就任後初めての一般討論で国家安全保障を出発点に据えました12。NATOでの約束を果たして防衛投資を続け、"We will be relentless in building up our hard power and deterrence."(ハードパワーと抑止力の構築を緩めない)と述べる一方、ロシアとの挑発的な言葉の応酬には乗らないとしています。ロシアの情報工作への対抗策として、国家による情報攻撃を検知・特定・妨害する「国家情報防衛センター(National Centre for Information Defence)」の検討を治安機関の幹部に指示したと表明しました。AIでは、重要インフラを守るための米国とのAI防衛パートナーシップと、2027年の英国のG20議長国の中心にAIを据える方針を示しています。ロシアの戦争継続のコストを引き上げる取り組みとして、トランプ大統領が前の週に署名したグラハム法案にも言及しました。

マクロン大統領は「屈しない」という言葉を軸に五つの原則を挙げました13。中東では «une coalition indépendante et multinationale pour restaurer la liberté de navigation dans le détroit d'Ormuz»(ホルムズ海峡の航行の自由を回復するための独立した多国籍の連合)を立ち上げたと述べ、ウクライナではエネルギー・民間インフラへの攻撃と黒海の双方を対象にした「二重の一時停止(モラトリアム)」を支持しています。安保理改革では、アフリカをはじめとする新たな加盟国への議席の開放と、大規模な残虐行為の際に拒否権の行使を控えるフランス・メキシコの提案を推し、128か国が支持していると述べました。AIでは、米中の二大国だけが決める世界にしないため、独立を重んじる国々でオープンソースの最先端モデルを共同開発する構想を示しています。G7で重要鉱物とレアアースの「少数の国による囲い込み」を避ける協議を進めたことにも触れました。

ドイツのワーデフール外相は、演説の大半をAIに充てました14。冒頭で、核兵器を民間企業が開発し、発射コードがCEOの金庫にしまわれている世界を想像してほしいと問いかけ、世界のAI特許の大半を持つ企業が二つの国に集中していると指摘しています。そのうえで、最も高性能なAIモデルの提供者に公開前の試験と重大な安全上の失敗の報告を求める共通の安全要件づくりを、加盟国に呼びかけました。経済面では "No country should have to accept raw materials being used to force obedience."(原材料が服従を強いるために使われることを、どの国も受け入れる必要はない)と述べ、供給網が圧力の道具になることにも反対しています。ウクライナについては、ドイツが最大の支援国だとしたうえで、ロシアに交渉の席に着くよう求めました。

アジア太平洋:韓国、北朝鮮、インド、フィリピン、豪州

韓国の李在明大統領は、朝鮮半島の平和共存に向けた三つの青写真を示し、非核化の進め方を段階で語りました15。韓国語の原文では「우선 북측의 핵·미사일 능력 고도화를 중단시키고, 중기적으로 축소를 거쳐 장기적으로 핵 없는 한반도를 향해 나아갈 수 있을 것」と述べています。訳すと「まず北側の核・ミサイル能力の高度化を止め、中期的に縮小を経て、長期的に核のない朝鮮半島に向かえる」です。米朝対話の早期再開に期待を示し、ホルムズ海峡や紅海で航路の封鎖が繰り返されたことを踏まえて、エネルギー供給網を支える意思と能力のある国々の「건설적 기여국 연대(建設的貢献国の連帯)」を提案しました。

北朝鮮の金善敬外務次官は最終日の28日に登壇し、日米韓の安全保障協力を北朝鮮に向けた軍事ブロックだと批判しました16。日本については、憲法改正や反撃能力の保有などを挙げて再軍備を進めていると主張し、代表団の英語原稿では、こうした動きが "casting war clouds over the entire region"(地域全体に戦争の暗雲を広げている)と述べています。核については、北朝鮮の核保有国としての地位は "can never be reversed in any circumstances or by any means"(いかなる状況でも、いかなる手段によっても覆らない)と主張しました。

インドのジャイシャンカル外相は、湾岸の紛争で商船と船員が標的になっていることは受け入れられないとし、インドの船員も命を落としたと述べました17。そのうえで "what we are actually seeing, is a weaponization of everything"(いま実際に起きているのは、あらゆるものの武器化だ)と語り、金融から市場アクセスの制限、供給網の混乱、技術の提供拒否に至るまで、圧力の手段が広がっていると指摘しています。AIでは、各国が自国のモデルを開発し、自国の目標に沿って展開する権利があるとしました。

フィリピンのラザロ外相は、ホルムズ海峡での事案でフィリピン人船員が亡くなったことに触れ、海上安全保障は人間の安全保障だと述べました18。南シナ海については、2016年の仲裁判断から10年を迎えたとして、"an award that is final and legally binding"(最終的で法的拘束力のある判断)と位置づけています。海底ケーブルなど重要な海洋インフラを守るため、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づくルールの枠組みを検討するよう提案し、宇宙での軍拡競争の防止とNPTへの信頼回復にも言及しました。

豪州のアルバニージー首相は、"our principal ally the United States and our major trading partner in China"(主要な同盟国である米国と、主要な貿易相手である中国)の双方と緊密に協力しながら、日本、インド、韓国や欧州との関係を深めると述べました19。同盟と通商を分けて語るこの言い方は、米中の双方と取引する日本企業の立ち位置とも重なって見えます。

論点ごとに見る各国の立場の違い

国ごとに読むと、同じ論点でも国によって見ている方向が違うことが分かります。ここでは論点を七つに分けて、各国の発言を並べ直しました。どの立場が正しいかの判断はしません。発言のどこが重なり、どこで食い違っているかを示すことに徹します。

ウクライナ:終わらせ方をめぐる立場の違い

ウクライナをめぐる発言は、大きく三つに分かれました。一つ目はロシアの立場で、ラブロフ外相は特別軍事作戦の目標は達成されると述べ、西側がウクライナに武器を供与し、欧州が和平交渉を妨げていると主張しました。二つ目はウクライナと欧州の立場です。ゼレンスキー大統領はロシアの収入源を断つための制裁と貿易制限を求め、英国のバーナム首相は「必要な限り」ウクライナを支えると述べました。ドイツのワーデフール外相はロシアに交渉の席に着くよう求め、フランスのマクロン大統領はエネルギー・民間インフラと黒海を対象にした二重の一時停止を提案しています。

三つ目は、交渉による決着や仲介を前面に出す立場です。国連の会議要旨によると、トランプ大統領はロシアとウクライナの指導者と緊密に協議しており、決着は早まるとの見方を示しました8。中国の韓正国家副主席は、自らのやり方で政治解決に建設的役割を果たすと述べています。インドのジャイシャンカル外相は "As Prime Minister Narendra Modi stated, endless war must give way now, to an end to war."(モディ首相が述べたように、終わりのない戦争はいま、戦争の終結に道を譲らなければならない)と述べ、船員の安全や穀物・エネルギーの供給への手当てを急ぐよう求めました17。日本の高市首相は演説でロシアの侵略を名指しし、ゼレンスキー大統領との会談ではウクライナ支援と対露制裁を続ける考えを伝えたと説明しています6。

企業の立場から見ると、制裁の議論が止まる気配はありません。英国首相はロシアの戦争継続のコストを引き上げる取り組みとして米国のグラハム法案に触れ、ウクライナは貿易の制限そのものを各国に求めました。ロシア向けの直接取引がない企業でも、中央アジアやコーカサス経由の迂回取引を疑われないよう、最終需要者の確認を続ける必要があります。

中東:ホルムズ海峡の航行とイランの核問題

私が読んだ原稿の中で、最も多くの国が触れた具体的な地名はホルムズ海峡でした。日本、フランス、韓国、フィリピン、EU、豪州、トルコ、イタリア、カナダ、ブラジル、パキスタンなどが、海峡の航行の自由や安全に言及しています20。インドも、湾岸で商船と船員が標的になっていることを受け入れられないと述べました。EUのコスタ欧州理事会議長は "Freedom of navigation in the Strait of Hormuz must be preserved, unconditionally and without hindrance."(ホルムズ海峡の航行の自由は、無条件かつ妨げなく守られなければならない)と述べています21。日本の高市首相が「追加的費用のない形で」という条件を付けたのは、通航そのものだけでなく、通航に新たな負担を課される事態も問題にしたものと読めます。海峡の封鎖がいつまで続くのか、再開に何が要るのかは、ホルムズ海峡封鎖はいつまで続くのか、10月時点の現状と再開条件にまとめています。

イランの核問題では、立場がはっきり分かれました。米国のトランプ大統領、EUのコスタ議長、カナダのアナンド外相は、イランに核兵器を持たせてはならないとする立場を示し、カナダは同じ週に発表した対象を絞った制裁にも触れています22。イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの核施設への攻撃は自国の存続に関わる判断だったと説明しました23。これに対しイランのペゼシュキアン大統領は、国連の会議要旨によると、平和的な原子力技術は自国の発展の一部であり核兵器は求めていないとし、交渉の最中に攻撃を受けたうえ制裁も科されていると主張しました24。ロシアのラブロフ外相は、IAEAの保障措置下の施設への攻撃が不拡散体制を損なったと述べています。

この対立は、一般討論の外でも続いています。9月17日、イラン制裁の履行を監視する専門家パネルの任期更新に関する安保理の決議案に中国とロシアが拒否権を使い、10月1日の国連総会で拒否権行使をめぐる討議が開かれました25。米国は2015年の安保理決議2231号の手続き(いわゆるスナップバック)に従って国連制裁が復活したと主張し、中国はスナップバックの発動には法的・手続き的な欠陥があり、決議2231号はすでに期限を迎えたと主張しています。国連制裁がいま効力を持っているかどうかについて、常任理事国の間で見解が割れているわけです。ホルムズ海峡の通航の実態は、当社で通航データを数えたホルムズ海峡の通航を512日分数えた記録にまとめています。

朝鮮半島と核不拡散:NPT会議の決裂のあとで

朝鮮半島について、日本と韓国はいずれも非核化を掲げましたが、語り方には違いがありました。高市首相は「北朝鮮の完全な非核化という原則の下」での安保理決議の完全な履行を求め、拉致問題の早期解決と、日朝平壌宣言に基づく対話への用意を述べています。韓国の李在明大統領は、高度化の停止、中期的な縮小、長期的な核のない朝鮮半島という段階を示し、米朝対話の再開と、朝鮮戦争の終結と平和体制への移行に向けた当事者間の対話を提案しました。

北朝鮮は、核保有国としての地位は覆らないと主張し、日米韓の協力を批判しました。ウクライナのゼレンスキー大統領は、北朝鮮の部隊がロシア側で戦い、ミサイルとドローンの能力を高めていると述べ、高市首相もロシアと北朝鮮の軍事協力を通じた技術の拡散に懸念を示しています。カナダのアナンド外相は、北朝鮮に対する国連安保理の制裁を引き続き履行すると明言しました22。

核不拡散全般では、NPT運用検討会議が5月に最終文書なしで閉幕したことを背景に、日本、フィリピン、EUなどがNPT体制の維持・強化を求めました。グテーレス事務総長も、核不拡散と核軍縮を遅滞なく進めるよう訴えています26。企業にとっての論点は、北朝鮮関連の制裁が技術の流れにも及ぶことです。高市首相が演説で暗号資産の窃取を含むサイバー活動を北朝鮮の資金源として挙げたように、取引先確認の対象は物の輸出だけでなく、IT人材の受け入れや資金の流れにも広がっています。

インド太平洋:南シナ海と台湾海峡

南シナ海では、フィリピンと中国の応酬がありました。フィリピンのラザロ外相が26日の演説で2016年の仲裁判断を最終的で法的拘束力があると位置づけたのに対し、中国国連代表部の孫磊大使は28日の答弁権で「联合国不是讨论南海问题的合适场所」(国連は南海問題を議論する適切な場ではない)と述べ、仲裁判断を受け入れず、承認しない立場を示しました27。フィリピンも答弁権で、仲裁判断は最終的で拘束力があると重ねて主張しています。中国はさらに、領土問題と海洋境界の争いは直接の当事国との交渉で解決し、ASEAN諸国とともに南シナ海の平和と安定を守るとしました。

インド太平洋全体では、日本の高市首相が、力または威圧による一方的な現状変更の試みは世界のどこであっても認められないと述べ、ロシアのラブロフ外相は、NATOが東南アジアと北東アジアにまで影響を広げようとしていると批判しました。同じ地域を見ながら、どこに懸念を向けるかが国によって違います。

台湾海峡については、私が確認した範囲では、日本、中国、ロシア、英国、フランス、ドイツ、韓国、インドの演説原稿と、米国大統領の演説の公表抜粋および国連の会議要旨に、直接の言及は見当たりませんでした。中国の韓正国家副主席は、前述のとおり決議2758号の採択から55年になることに触れています。一方、台湾と外交関係を持つ国々は台湾に言及しました。ツバルのテオ首相は台湾周辺の軍事活動の高まりについて "threaten stability across the Taiwan Strait, disrupt international transportation and trade"(台湾海峡の安定を脅かし、国際的な輸送と貿易を混乱させる)と懸念を示し、台湾の人々が国連とその専門機関に意味のある形で参加できる仕組みを求めました28。セントクリストファー・ネービスは "differences across the Taiwan Strait must be resolved peacefully"(台湾海峡を挟んだ相違は平和的に解決されなければならない)と述べています。マーシャル諸島は、決議2758号について中国とは異なる解釈を示しました。台湾は国連に加盟していないため、一般討論には登壇していません。

AIと自律型兵器、宇宙とサイバー

AIは、今年の一般討論で意見の幅がとくに大きかった論点です。グテーレス事務総長は "life-and-death decisions must never be surrendered to machines. Killer robots must have no place in our future."(生死に関わる判断を決して機械に委ねてはならない。キラーロボットに未来の居場所はない)と述べ、多国間のAIリスク管理の枠組みづくりを提案しました26。ドイツは最も高性能なモデルに公開前の試験と重大事故の報告を求める共通要件を提案し、英国は2027年のG20でAIの国際原則と基準の一本化を目指すとしています。フランスは宇宙・防衛・サイバーにおけるAIについて国家間の新たな枠組みが必要だと述べ、日本は広島AIプロセスとAIサミットの開催を挙げました。

これに対し、米国のトランプ大統領はAIを国際的に管理する枠組みづくりを全面的に拒否すると述べました。中国の韓正国家副主席は、人間中心の考え方でデジタル格差を縮めるよう求め、ロシアのラブロフ外相は、AIの利用ルールはすべての国が対等な立場で参加して作るべきだとし、中国が提案する世界AI協力機構を支持すると述べています。インドは各国が自国のモデルを開発する権利を強調しました。ウクライナのゼレンスキー大統領は、来年にもAIが戦場の判断を担う可能性に触れ、そうなる前に戦争を終わらせる必要があると訴えています。

宇宙とサイバーでは、フィリピンが宇宙での軍拡競争の防止を、中国がサイバー、宇宙、極地の統治ルールの整備を求めました。英国はロシアによる情報操作に対抗する新組織を、ポーランドのナヴロツキ大統領は破壊工作やサイバー攻撃を含む "a large-scale hybrid war"(大規模なハイブリッド戦)が行われていると述べています29。フィリピンが提案した海底ケーブルの保護の枠組みも、この論点に入ります。軍事分野のAIの議論の流れは軍事AIと自律型致死兵器LAWSの解説、日本の宇宙防衛の体制は航空宇宙自衛隊の解説で扱っています。

安保理改革と「旧敵国条項」をめぐる応酬

私が読んだ原稿の多くが、安保理改革の必要性に触れていました。ただ、中身は大きく違います。日本は常任・非常任の双方の拡大を求め、過半数の加盟国が双方の拡大を支持していると述べました。マーシャル諸島は日本を含むG4の常任理事国入りへの支持を表明しています。ロシアは西側、とくにドイツと日本への追加議席に反対し、ブラジルとインドを支持しました。フランスはアフリカなどへの議席の開放と拒否権の自制を、韓国は安保理がより効果的、民主的、説明責任のある形で機能するための改革を、トルコは五つの常任理事国の意思に190を超える国が左右される仕組みの見直しを求めています20。国連の会議要旨によると、米国のトランプ大統領は国連予算の削減などを、国連史上最も抜本的な改革だと位置づけました8。

日本に関わって最も応酬が続いたのが、旧敵国条項です。国連憲章の第53条、第77条、第107条には、第二次世界大戦中の「敵国」に関する規定が残っています。1995年の国連総会決議50/52はこれらの条項が時代遅れになったと認め、2005年の世界サミット成果文書(総会決議60/1)は「敵国」への言及を削除する決意を示しました30。ただ、憲章の改正には、常任理事国すべてを含む加盟国の3分の2の批准が必要です。高市首相は演説で、2005年の決議に従って同条項は早急に削除されるべきだと述べました。

これに対し、中国国連代表部の孫磊大使は28日の答弁権で、旧敵国条項はファシズムと軍国主義が再び国際の平和と安全を脅かすことを防ぐための制度上の取り決めであり、「时至今日仍具有重要现实意义」(今日もなお重要な現実的意義を持つ)として削除に反対しました27。孫大使は日本の防衛費の増額、殺傷能力のある武器の輸出制限の緩和、中長距離ミサイルの配備の推進などを挙げて「再军事化」と批判し、2回目の答弁権では同条項を「不容删改」(削除も改変も許されない)と述べています。北朝鮮も答弁権で日本の防衛力強化を批判し、削除の要求に反対しました。

日本は2回答弁権を使って応じました。国連の一般討論サイトが公開している自動文字起こし(公式記録ではありません)によると、日本の代表は、防衛力は自国の安全を確保するための必要最小限に保たれていること、憲法の下で専守防衛に徹し他国に脅威を与える軍事大国にならない基本方針を堅持していること、非核三原則を堅持していることを述べました4。旧敵国条項については1995年と2005年の総会決議を挙げ、いずれも中国を含む支持や合意で採択されたと指摘しています。歴史認識については、戦後70年の首相談話を含む歴代内閣の立場を現内閣も全体として引き継いでいると述べました。26日のロシアへの答弁では、日本は戦後一貫して平和国家として歩んできたと応じています。

輸出管理の担当者がこの応酬から読み取るべきなのは、日本の防衛装備の輸出が、国連の場で他国から論点として挙げられたという事実でしょう。日本の制度の中身は防衛装備移転三原則の解説で整理しています。

防衛力・同盟と、経済の「武器化」

防衛力と同盟については、欧州の国々が抑止力の強化を明確に打ち出しました。英国はNATOでの約束を果たしハードパワーを強化すると述べ、ポーランドは同盟の強化と軍の近代化は戦争をするためではなく防ぐためだと説明しています。ホワイトハウスは演説翌日の発表で、NATO加盟国の防衛費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げたことをトランプ政権の成果として挙げました31。ウクライナは自国の防衛産業を他国の安全にも役立てる「保護による平和」を掲げています。日本の高市首相は専守防衛の方針は変わらないと述べ、中国と北朝鮮は日本の防衛力強化を批判しました。日本の防衛費の流れは骨太方針2026の防衛力強化で扱っています。

経済の「武器化」については、冒頭で触れたとおり、立場の違う国々から似た言葉が出ました。日本は恣意的な輸出規制への懸念を、ドイツは原材料と供給網が圧力の道具になることへの反対を、インドは金融から技術までの「武器化」を、フランスは重要鉱物とレアアースの囲い込みを避ける必要を語っています。中国は保護主義とデカップリングを批判しました。さらに10月1日には、中国、ロシア、北朝鮮、イランなど28か国が国連総会第三委員会で共同発言を行い、一方的な強制措置に反対するとともに、「次级制裁和过度遵守」(二次制裁と過剰な遵守)が人道や経済の問題を深刻にしていると主張しています32。

これらの発言の多くは、懸念の向け先を名指ししていません。同じ言葉でも、ある国は他国の輸出規制を、別の国は制裁を念頭に置いていると読めます。個人的には、ここが今回の一般討論で企業にとって最も実務的な部分だと考えています。輸出規制と制裁が、各国の外交方針の中心に組み込まれていることがはっきりしたからです。日本の安保3文書改定の議論でも、中国の対日輸出管理強化が政府資料に整理されています。詳しくは安保3文書改定の有識者会議の解説をご覧ください。

企業の実務への示唆:輸出管理、制裁、サプライチェーン、防衛産業

一般討論は決議を採る場ではないので、演説の翌日に規制が変わるわけではありません。それでも、各国が自分の言葉で語った方向は、その後の制裁や輸出規制を読む手がかりになります。私は次の四つを確認項目として挙げます。

一つ目は、制裁を「どの国の法令で、誰が科しているか」で管理することです。イランについては、国連制裁の効力そのものをめぐって常任理事国の見解が割れ、米国は各国に経済的な孤立を求め、カナダは独自の制裁を発表しました。ロシアについては英国が制裁の強化を語り、ウクライナは貿易の制限を求めています。逆に中国やロシアなど28か国は、一方的な制裁や過剰な遵守に反対しました。日本企業は日本の外為法に基づく措置を軸にしつつ、米国の原産品や米ドル決済が絡む取引では米国の制裁も確かめる必要があります。リストの種類と照合の手順は経済制裁リスト5系統の整理にまとめています。

二つ目は、重要鉱物や部材について、輸出規制の発動を前提に調達を組むことです。日本、ドイツ、インド、フランスがそろって供給網の「武器化」に触れたのは、供給の制約がすでに各国の実務で起きているからでしょう。中国の対日輸出管理の具体的な動きは中国の対日デュアルユース品輸出規制の解説で整理しています。代替調達先の確保と、在庫の持ち方の見直しは、規制が出てから始めても間に合わないことが多いと感じています。

三つ目は、海上交通と海底ケーブルを事業継続計画(BCP)の前提に入れることです。ホルムズ海峡、紅海、黒海、南シナ海、台湾海峡と、今回の一般討論では海の名前が繰り返し出てきました。航路の迂回による納期と保険料の変化、通信の冗長化を、平時のうちに数字で見積もっておくことをおすすめします。

四つ目は、防衛・デュアルユース分野の技術協力に、輸出許可と最終用途の確認を最初から組み込むことです。ウクライナのドローン・ディールやFREYJA、英国と米国のAI防衛パートナーシップのように、防衛技術の国際協力は広がっています。一方で、日本の防衛装備の輸出は国連の場で他国から論点として取り上げられました。協力の話が進むほど、該非判定と取引先の確認の記録が問われます。

こうした確認作業のうち、取引先を各国の制裁・規制リストと照合し、判断の根拠を記録に残す部分は、TRAFEEDのような仕組みで支えることができます。日本、米国、EU、英国、国連などのリストとの照合を一度に行い、照合の結果を残せます。ただし、最終的な判断は貴社の輸出管理責任者が行うものです。仕組みはその判断の材料をそろえる役割にとどまります。

まとめ

  • 第81回国連総会の一般討論は2026年9月22〜28日に開かれ、日本からは高市首相が22日に演説しました。中国は韓正国家副主席、ロシアはラブロフ外相が登壇しています
  • 高市首相は、恣意的な輸出規制への懸念、NPT体制の強化、北朝鮮の完全な非核化、ホルムズ海峡の自由で安全な航行、安保理の常任・非常任双方の拡大、旧敵国条項の削除を訴えました
  • 旧敵国条項をめぐっては、中国と北朝鮮が答弁権で削除に反対し、日本は専守防衛と非核三原則の堅持、1995年と2005年の総会決議を挙げて応じました
  • イランの核問題と国連制裁の効力をめぐって、米国や欧州と、中国、ロシア、イランの見解が分かれています。南シナ海ではフィリピンと中国が仲裁判断をめぐって応酬しました
  • AIでは、国際的な安全要件づくりを求める国々と、国際的な管理枠組みを拒否する米国とで立場が分かれました。事務総長は、生死に関わる判断を機械に委ねるべきではないと訴えています
  • 立場の違う国々が、輸出規制や供給網の「武器化」への懸念を似た言葉で語りました。制裁と輸出規制が各国外交の中心にあることを示す材料として、企業も読んでおく価値があります

国連総会の演説は、聞き流すとどれも同じに聞こえます。ところが原文を並べると、各国が何を譲らず、どこで線を引いているかが見えてきます。来年の今ごろ、同じ表を作ったときにどの行が動いているか。私はそれを、取引先リストを見直す時期を考える一つの目安として使うつもりです。制裁リストの変化への備えや、取引先照合の体制づくりについては、TRAFEEDの個別相談でご相談いただけます。

Footnotes

  1. United Nations, General Debate of the 81st Session of the General Assembly(2026年9月22〜28日)https://gadebate.un.org/en ↩

  2. 首相官邸「第81回国連総会における高市内閣総理大臣一般討論演説」(2026年9月22日)https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/0922enzetsu.html 、英語仮訳 https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/jp_en.pdf ↩ ↩2

  3. The White House, "First Lady Melania Trump Highlights Art, Culture, and the Next Generation During State Visit of President Xi Jinping and Madame Peng Liyuan"(2026年9月25日)https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/2026/09/first-lady-melania-trump-highlights-art-culture-and-the-next-generation-during-state-visit-of-president-xi-jinping-and-madame-peng-liyuan/ ↩

  4. United Nations, General Debate 81st Session, Japan(答弁権の記録は9月26日1回、28日2回。発言内容は同ページの自動文字起こしで確認。公式記録ではない)https://gadebate.un.org/en/81/japan ↩ ↩2

  5. United Nations, 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons(2026年4月27日〜5月22日、最終文書の合意なしで閉幕)https://www.un.org/en/conferences/npt2026 ↩

  6. 首相官邸「国連総会出席等についての内外記者会見」(2026年9月23日)https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/0923naigai.html ↩ ↩2

  7. The White House, "President Trump at the United Nations: 'While Others Have Talked, I Have Acted'"(2026年9月22日)https://www.whitehouse.gov/releases/2026/09/president-trump-at-the-united-nations-while-others-have-talked-i-have-acted/ ↩

  8. United Nations, Meetings Coverage GA/12785(2026年9月22日)https://press.un.org/en/2026/ga12785.doc.htm 、United Nations, General Debate 81st Session, United States of America https://gadebate.un.org/en/81/united-states-america ↩ ↩2 ↩3

  9. 中华人民共和国外交部「顺应发展潮流 勇担历史使命——在第81届联大一般性辩论上的讲话」(韓正国家副主席、2026年9月26日)https://www.mfa.gov.cn/zyxw/202609/t20260927_12031833.shtml ↩

  10. ロシア外務省「Выступление Министра иностранных дел Российской Федерации С.В.Лаврова на общеполитической дискуссии 81-й сессии Генеральной Ассамблеи ООН」(2026年9月26日、No.1562-26-09-2026)https://mid.ru/ru/press_service/minister_speeches/2149954/ 、国連掲載PDF https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/ru_ru.pdf ↩

  11. President of Ukraine, "Address by the President at the General Debate of the UN General Assembly in New York"(演説は2026年9月23日ニューヨーク時間、公表は24日キーウ時間)英語版 https://www.president.gov.ua/en/news/zvernennya-prezidenta-na-zagalnih-debatah-generalnoyi-asambl-106573 、ウクライナ語版 https://www.president.gov.ua/news/zvernennya-prezidenta-na-zagalnih-debatah-generalnoyi-asambl-106573 、国連掲載PDF https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/ua_en.pdf ↩

  12. GOV.UK, "PM speech at UNGA: 22 September 2026" https://www.gov.uk/government/speeches/pm-speech-at-unga-22-september-2026 ↩

  13. フランス大統領府の演説原稿「Discours du Président de la République lors de la 81e Assemblée générale des Nations Unies」(2026年9月22日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/fr_fr.pdf ↩

  14. ドイツ連邦外務省の演説原稿(ワーデフール外相、2026年9月26日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/de_en.pdf ↩

  15. 大韓民国大統領府「9/22(화) 제81차 유엔 총회 기조연설」https://www.president.go.kr/speeches/VWrWhWnq 、英語版 https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/kr_en.pdf ↩

  16. Statement by H.E. Mr. Kim Son Gyong, Vice-Foreign Minister of the Democratic People's Republic of Korea(2026年9月28日、代表団提出の英語原稿)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/kp_en.pdf ↩

  17. Ministry of External Affairs, India, "India's National Statement at the 81st session of the UN General Assembly"(2026年9月26日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/in_en.pdf ↩ ↩2

  18. National Statement by H.E. Ma. Theresa P. Lazaro, Secretary of Foreign Affairs of the Philippines(2026年9月26日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/ph_en.pdf ↩

  19. Prime Minister of Australia, "Australia's National Statement - United States, New York"(2026年9月24日)https://www.pm.gov.au/media/australias-national-statement-united-states-new-york ↩

  20. トルコ大統領府の演説英語版(エルドアン大統領、2026年9月22日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/tr_en.pdf 、イタリア(タヤーニ副首相、9月23日)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/it_en.pdf 、ブラジル(ルラ大統領、9月22日)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/br_en.pdf 、パキスタン(シャリフ首相、9月25日)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/pk_en.pdf ↩ ↩2

  21. European Council, "Speech by President António Costa at the 81st United Nations General Assembly"(2026年9月24日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/eu_en.pdf ↩

  22. Global Affairs Canada, "Remarks by the Honourable Anita Anand, Minister of Foreign Affairs, to the United Nations General Assembly"(2026年9月26日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/ca_en.pdf ↩ ↩2

  23. United Nations, General Debate 81st Session, Israel(会議要旨)https://gadebate.un.org/en/81/israel ↩

  24. United Nations, General Debate 81st Session, Iran (Islamic Republic of)(会議要旨。原稿PDFは非掲載)https://gadebate.un.org/en/81/iran-islamic-republic ↩

  25. United Nations, Meetings Coverage GA/12792(2026年10月1日)https://press.un.org/en/2026/ga12792.doc.htm 、中华人民共和国常驻联合国代表团「孙磊大使在联大否决权问题特别会议的发言」(2026年10月1日)http://un.china-mission.gov.cn/hyyfy/202610/t20261002_12035210.htm ↩

  26. United Nations Secretary-General, Address to the General Debate of the 81st Session(2026年9月22日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/unsg_en.pdf ↩ ↩2

  27. 中华人民共和国常驻联合国代表团「孙磊大使在第81届联大一般性辩论针对日本和菲律宾的答辩发言」(2026年9月29日掲載)http://un.china-mission.gov.cn/hyyfy/202609/t20260929_12032961.htm ↩ ↩2

  28. ツバルの演説原稿(テオ首相、2026年9月25日)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/tv_en.pdf 、セントクリストファー・ネービスの演説原稿(2026年9月25日)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/kn_en.pdf 、マーシャル諸島の演説原稿(2026年9月25日)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/mh_en.pdf ↩

  29. ポーランドの演説原稿(ナヴロツキ大統領、2026年9月23日、国連掲載PDF)https://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/81/pl_en.pdf ↩

  30. 国連憲章 第53条・第77条・第107条・第108条 https://www.un.org/en/about-us/un-charter/full-text 、国連総会決議50/52(1995年)https://undocs.org/A/RES/50/52 、国連総会決議60/1「2005年世界サミット成果文書」第177段落 https://undocs.org/A/RES/60/1 ↩

  31. The White House, "President Trump Delivers Powerful America First Message to the United Nations"(2026年9月23日)https://www.whitehouse.gov/releases/2026/09/president-trump-delivers-powerful-america-first-message-to-the-united-nations/ ↩

  32. 中华人民共和国常驻联合国代表团「傅聪大使代表观点相近国家在联大三委就单边强制措施的共同发言」(2026年10月1日)http://un.china-mission.gov.cn/hyyfy/202610/t20261002_12035148.htm ↩

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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