こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
「日本の工場から、日本以外の国へ送るだけなのに、なぜ米国の規則が関係するのですか」。輸出管理の相談で、とてもよく聞かれる質問です。逆向きの勘違いも同じくらい多く、「米国製の部品が1個でも入っていれば、必ず米国の許可が要る」と思い込んでいる方もいます。
どちらも正確ではありません。米国のEAR(輸出管理規則)も、中国の輸出管理も、自国の外で行われる取引に法の効力を及ぼす仕組みを持っています。これが域外適用です。ただし、及ぶ条件には数字と例外があり、その条件を知らないと、必要な確認を飛ばすか、不要な取引を止めてしまうかのどちらかになります。
この記事では、米国EARが日本からの輸出に及ぶ入口を整理し、デミニミス(含有率)の計算と、外国直接製品のルールを説明します。そのうえで、中国のレアアース0.1%ルールの内容と現状、自社に及ぶかを確かめる手順を書きます。記載はすべて2026年10月19日時点です。
先に、よくある3つの勘違い
| 勘違い | 実際 |
|---|---|
| 米国へ送らなければ、米国の規則は関係ない | EARは、物の所在地を問わず、米国原産品、米国原産のコンテンツを含む外国製品、米国の技術やソフトウェアから作られた外国製品にも及びます。1 |
| 米国製の部品が1個でも入っていれば対象になる | 組み込まれた米国原産の規制対象品目の価値が、一定の割合以下なら対象外です(デミニミス)。ただし、この割合が使えない例外があります。2 |
| 中国は、レアアースが入っていれば今すぐ許可が必要 | 0.1%ルールを含む公告は2025年10月に出ましたが、公告第70号により2026年11月10日まで暫停されています。3 |
3つ目は、時期の話です。ルールそのものは消えておらず、期限が来れば自動で戻る構造なので、「いまは止まっているから関係ない」とも言えません。
米国EARが及ぶ4つの入口
EARの条文(15 CFR 734.3)は、EARの対象になる品目を列挙しています。日本の輸出者の目線で整理すると、入口は4つです。1
| 入口 | 内容 | 日本の輸出者に起きること |
|---|---|---|
| 米国内にある品目 | 米国内にあるもの、米国を経由して外国から別の外国へ運ばれるもの | 米国経由の輸送でも対象になりえます |
| 米国原産品 | 世界のどこにあっても対象 | 米国から買った部品や機器を、日本から第三国へ送るのは「再輸出」です。米国を出たあとも、EARの対象のままです |
| 米国原産のコンテンツを含む外国製品 | 規制対象の米国原産の部品を組み込んだ製品、米国原産のソフトウェアが同梱された製品など | 割合がデミニミス基準を超えると対象になります(次の章) |
| 外国直接製品 | 米国原産の特定の技術やソフトウェア、またはそれで作られたプラントや主要設備から生まれた外国製品 | 製品に米国の部品が入っていなくても、作り方が米国由来なら対象になりえます(その次の章) |
米国以外の国から、別の国へ送る行為が「再輸出」です。日本から第三国へ送るのは、この再輸出に当たります。日本国内で外国人に渡す場合などは別の扱いがありますが、ここでは物の輸出に絞ります。
注意したいのは、「EARの対象になる」ことと「許可が必要になる」ことが別だという点です。条文の注記も、対象になったあとで個別に許可の要否を判断する必要があり、すべての取引で許可が必要になるわけではないと述べています。4 品目の分類(ECCN)、仕向地、最終需要者、用途の組み合わせで決まります。分類の考え方はECCN番号とはで、EAR99との違いはEAR99とはで書いています。
なお、米国務省が管理するITAR(武器)や財務省OFACの制裁は、EARとは別の制度です。出版物や公開情報など、EARの対象外になる類型もあります。1
該非判定の属人化を、AIで解消する。
経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。
「1個でも」は誤解。デミニミスの計算
外国製品に米国原産の部品を組み込んだとき、その割合が小さければ、再輸出はEARの対象外になります。この考え方をデミニミス(de minimis、取るに足らない量)と呼びます。条文(734.4)が定める閾値は2つです。2
- 10%ルール(c): 組み込まれた規制対象の米国原産品目の価値が、外国製品全体の価値の10%以下なら、世界のどの国向けでも対象外
- 25%ルール(d): 同じく25%以下なら、Country Group E:1・E:2に指定された国を除く国向けで対象外
つまり、E:1・E:2の国向けは10%、それ以外の国向けは25%が上限です。
分子に入れるものと、入れないもの
計算の細則は、734の補足第2号にあります。ここが、実務でいちばん間違えやすい部分です。5
分子に数えるのは、米国原産の「規制対象」の品目だけです。具体的には、その部品を受け取ったままの形で、完成品の仕向国へ再輸出するときに、BISの許可が必要になる品目です。仕向国へ許可なしで輸出できるものや、一括許可(License Exception GBS)の対象は、含めません。たとえば、許可が不要なEAR99の部品は、多くの仕向地向けでは数えません。ただし、仕向国が禁輸などの対象で、許可が必要になる場合は、EAR99でも数える可能性が残ります。この点は、補足第2号が仕向国ごとの許可要否で決めると書いているところからの読み解きなので、個別の取引では必ず確認してください。
さらに、米国原産品が「組み込まれた」とみなされるには、3つの要件を満たす必要があります。外国製品の機能に不可欠であること、外国製品の販売に通常含まれること、外国製品とともに再輸出されることです。製品の設計や製造に使っただけの技術やソースコードは、組み込まれたものとはみなされません。5
価値は、原則として外国の製造地市場での公正市場価格です。多くの場合、実際に負担した費用と同じになります。関係会社間の取引で特別に安い価格になっている場合は、同じ市場で非関係会社に通常課される価格に直します。5
閾値が使えない例外
条文は、閾値が使えない類型も定めています。割合に関わらず、米国原産品が少しでも含まれていればEARの対象になるものです。条文(734.4(a))には、次のような類型があります。2
- 米国原産の規制対象の半導体を含み、一定の性能を超える外国製のコンピュータ
- 米国原産の暗号技術(5E002)を組み込んだ外国製の暗号技術
- 米国原産の9x515の品目や、軍用の「600シリーズ」の品目を組み込んだ外国製品(仕向地による区別あり)
- 先端ノードの半導体の開発・製造向けの特定の装置など
自社の製品がどの類型にも当たらないことを確かめてから、はじめて10%・25%の計算に進みます。
仮の数字で考えてみる
以下は、仕組みを説明するための仮の例で、実際の取引の判断ではありません。
日本で作った産業機器(完成品の価値100)に、米国原産で、仕向国向けに許可が必要な部品(価値15)が組み込まれているとします。割合は15%です。E:1・E:2以外の国向けなら25%以下なので、再輸出は原則としてEARの対象外です。しかし、E:1・E:2に指定された国向けなら、上限は10%なので、対象になります。
同じ製品でも、仕向地で結論が変わります。「1個でも入っているから」でも、「割合が小さいから大丈夫」でもなく、仕向地・品目の分類・割合・例外の4つを順に見る必要があります。
なお、米国原産の部品そのものを、組み込まずに単体で再輸出する場合は、割合の話ではなく、その部品自体が米国原産品としてEARの対象です。
作り方が米国由来なら対象になる。外国直接製品のルール
部品が1つも入っていなくても、米国原産の技術やソフトウェアから直接作られた外国製品は、EARの対象になりえます。外国直接製品(FDP)ルールです。基本の考え方は、米国原産の特定の技術やソフトウェアを使って直接作られた外国製品、または、その技術から作られたプラントや主要設備で作られた外国製品を対象にする、というものです。4
ルールは複数あり、それぞれ、対象になる製品の由来と、仕向地または相手方が決まっています。代表的なものを挙げます。4
| ルール(734.9) | 製品の由来 | 仕向地・相手方の条件 |
|---|---|---|
| 国家安全保障FDP(b) | 国家安全保障上の管理に関わる技術・ソフトウェア由来 | Country Group D:1、E:1、E:2 |
| 9x515 FDP(c)、600シリーズ FDP(d) | 宇宙機・軍用関連の技術・ソフトウェア由来 | D:5、E:1、E:2など |
| Entity List FDP(e) | 特定のECCNの技術・ソフトウェア由来 | Entity Listの特定の脚注で指定された主体が関与する場合 |
| 先端コンピューティングFDP(h)、スーパーコンピュータFDP(i)、SME FDP(k) | 半導体・計算機関連の技術・ソフトウェア由来 | 特定の仕向地や用途 |
日本の工場で、米国原産の技術やソフトウェアを使って作った製品を輸出するときは、部品のBOMだけでなく、製造に使った技術やソフトウェアの出自も確認が要ります。
ここで一つ、時期に関わる注意があります。Entity List FDP(e)の本文の末尾3文と、(g)の末尾2文は、BISの50%ルール(関連事業体ルール)に関わる部分とみられ、官報による停止が2026年11月9日まで続いています。4 停止の経緯と期限の扱いは、先ほどの11月10日の米中同時期限に整理しています。なお、リストへの掲載は規制上の区分であって、企業の是非を判断するものではありません。
中国の輸出管理。レアアース0.1%ルールの中身と現状
中国にも、同じ構造の仕組みがあります。2025年10月9日に商務部が出した公告2025年第61号は、中国国外の事業者が、一定の物項を中国以外へ輸出する前に、商務部の両用物項の輸出許可を取るよう求めています。対象は3類型です。6
- 中国原産のレアアース関連物項を含む、または混ぜた、国外で作られた物項で、その価値の比例が0.1%以上のもの
- 中国原産のレアアース関連技術を使って、国外で生産した物項
- 中国原産の対象物項
米国のデミニミスと機能は似ていますが、閾値は0.1%と桁が違います。レアアースは、製品の価値に占める割合が小さくても性能への寄与が大きいため、閾値が低く設定されていると考えられます(この点は、条文からではなく、私の読み解きです)。
公告は、さらに、許可の判断も示しています。国外の軍事ユーザーや、中国の出口管制の「管控名単」「関注名単」に載った輸入者・最終用户(それらが50%以上出資する子会社を含む)への申請は、原則として許可しません。14nm以下のロジック半導体や256層以上のメモリの研究開発・製造などは、個別に審査します。国外の輸出者が管制対象物項を次の受け手に移すときにも、「合規告知書」を出すことが求められています。6
計算の細則と対象リストは、本文だけでは確認できない
ここは、米国と大きく違う点です。公告第61号の本文には、0.1%を計算する方法の説明がありません。対象になる元素や物項の具体的な列挙も、附件1(物項列表)にあり、本文には入っていません。6 公告の附件の内容と、計算の運用が示される時期は、中国側の今後の動き次第です。
現状は暫停中。ただし期限があります
2025年11月7日、商務部と海関総署は公告2025年第70号で、公告第61号、62号などの実施を、2026年11月10日まで暫停すると発表しました。3 暫停であって、撤回ではありません。
米中が、この期限を2027年1月10日まで延ばすと発表したことは、11月10日の米中同時期限で扱いました。ただ、2026年10月19日時点で、第70号の期限を延ばす個別の公告は、私が確認した範囲では見つかっていません。米国側も、BISが連邦官報に延長の文書を出したことは、確認できていません(10月1日以降のBIS関連の官報文書を検索しましたが、該当はありませんでした)。
なお、中国のレアアースには、暫停の対象ではない恒久の規制もあります。その整理は中国レアアース輸出規制マップにあります。
法的な根拠
中国の出口管制法は、国外の組織・個人が出口管制の規定に違反し、中国の国家安全と利益を害し、防拡散などの国際義務の履行を妨げたときは、法に基づいて処理して責任を追及する、と定めています(第44条)。管制物項の過境、転運、通運、再出口にも、同法の規定が適用されます(第45条)。7 公告第61号は、この考え方を、レアアース関連物項に具体化したものと読めます。
米国EARと中国のルールを並べてみる
| 項目 | 米国EAR | 中国(公告2025年第61号) |
|---|---|---|
| 国外の製品に及ぶ入口 | 米国原産品、米国原産コンテンツを含む製品、米国技術・ソフトウェア由来の製品 | 中国原産のレアアース関連物項を含む製品、中国原産技術で作った製品、中国原産の物項 |
| 含有率の閾値 | 10%(E:1・E:2向け)、25%(その他) | 0.1%(価値比例) |
| 計算の細則 | 補足第2号に公正市場価格などを規定 | 本文に記載なし |
| 閾値が使えない例外 | 条文に類型あり | 本文に記載なし(人道目的は許可証不要だが報告が必要) |
| 相手方による扱い | Entity Listなど | 管控名単・関注名単に原則不許可 |
| 現状(2026年10月19日) | 有効(50%ルールの部分は停止中) | 暫停中(2026年11月10日まで) |
どちらの国の政策がよい、悪いということは、ここでは評価しません。書いているのは、それぞれの国が、自国の外の取引に及ぼしている範囲と、条文に書かれた条件です。
自社に及ぶかを確かめる7つの手順
最終的な該非判定と許可の要否は、貴社の輸出管理責任者が行います。そのための入口として、次の7つを順に見ます。
- BOMで、部品の原産国を洗い出す。 米国原産、中国原産のレアアース関連の部品が、どこにどれだけ入っているかを書き出します。商社やOEMを経由した部品は、一次・二次の取引先まで遡ります。
- 米国原産の部品の、ECCNを確認する。 仕入れ先から、分類の情報を取ります。分からなければ、EAR99かどうかも含めて問い合わせます。
- 仕向地ごとに、許可の要否を確認する。 同じ部品でも、仕向地によって、許可が必要かどうかが変わります。
- 割合を計算して、例外の類型に当たらないかを確かめる。 10%・25%の閾値の前に、0%の類型に当たらないかを確かめます。中国原産のレアアース関連の部品は、0.1%と比べます。
- 製造に使った技術・ソフトウェアの出自を確認する。 米国原産の技術やソフトウェアで作った製品には、外国直接製品のルールが及びます。
- 相手方と最終用途を確認する。 Entity Listなどのリストへの照合と、資本関係の確認が必要です。リストへの掲載は規制上の区分であり、企業の是非を示すものではありません。
- 計算と判断を、記録に残す。 価値の算定方法と、実市場価格か代替取引・製造原価かの記録は、条文が求めています。2
最初の手順は、輸出管理の簡易診断で、自社の状況を整理するところから始められます。EARの関連事業体ルールについては、EARアフィリエイトルールとはでも書いています。
まとめ
米国EARも、中国の輸出管理も、日本から日本以外の国へ送る製品に及びうる、という点は、多くの方が思っているより広く当てはまります。一方で、「1個でも入っていれば必ず対象」でも、「日本から出すだけなら関係ない」でもなく、仕向地、品目の分類、割合、例外、製造方法、相手方の組み合わせで決まります。
私が、実務でいちばん危ういと思うのは、確認が一度で終わることです。11月9日・10日の期限が近づき、延長が発表されたとはいえ法的な手当てが確認できない現状では、「戻ったときに、すぐ判断できる」状態を作っておくことが、いちばんの備えになります。
BOMの原産国の洗い出しから始めて、取引先の資本関係までを回すには、人手では足りなくなる場面があります。そのときは、TRAFEEDが担当できる範囲です。取引先の各種リスト照合、資本関係と関連事業体ネットワークの調査、判断ごとに根拠を紐づけて残すところまでを支援します。最終的な該非判定は、貴社の輸出管理責任者が行います。自社の体制で足りるか不安な方は、個別のご相談からお声がけください。
参考
Footnotes
-
15 CFR 734.3 Items subject to the EAR — eCFR(米国連邦規則集)— 2026年10月15日時点 ↩ ↩2 ↩3
-
15 CFR 734.4 De minimis U.S. content — eCFR — 2026年10月15日時点 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
商务部、海关总署公告2025年第70号(公告第55・56・57・58号、商务部公告第61・62号の暫停)— 中国商務部 — 2025年11月7日 ↩ ↩2
-
15 CFR 734.9 Foreign-Direct Product (FDP) Rules — eCFR — 2026年10月15日時点 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
Supplement No. 2 to Part 734 Guidelines for De Minimis Rules — eCFR — 2026年10月15日時点 ↩ ↩2 ↩3
-
商务部公告2025年第61号 公布对境外相关稀土物项实施出口管制的决定 — 中国商務部(新華社転載)— 2025年10月9日 ↩ ↩2 ↩3






