こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
「うちは物を輸出していないので、輸出管理は関係ないと思っていました」
大学の研究支援担当の方とお話ししていて、いちばん多く聞く一言です。無理もないと思います。輸出管理と聞いて頭に浮かぶのは、税関や船積みや通関書類。研究室でやっていることとは別世界に見えます。
ところが経済産業省のガイダンスは、その入口をはっきり閉じています。安全保障貿易管理は大学や研究機関のコンプライアンスの一部であり、法令に違反すればその大学や研究機関も罰せられる可能性があることに留意しなければならない、と書かれています1。さらに、大学等は技術の提供が主な管理対象であることや、指揮命令下にない留学生や特定類型該当者が多数在籍するなど、外為法を遵守するために高度な管理が求められる、とも1。企業より易しいどころか、むしろ難しいという整理です。
この記事では、輸出管理に初めて触れる大学の方に向けて、何が規制されているのか、なぜ研究室の日常が対象になるのか、2022年5月から加わった特定類型とは何か、そして現場が何をすればいいのかを、一次情報に沿って順に整理します。まず自組織の状況をざっと把握したい方は、輸出管理の無料セルフ診断から入っていただくのが早いかもしれません。研究セキュリティ全体の見取り図は完全ガイドにまとめています。
「輸出していない」のに規制がかかる理由
まず、根っこにある発想を押さえます。
外為法(がいためほう。外国為替及び外国貿易法の略称です)が守ろうとしているのは、大量破壊兵器や通常兵器の開発などに転用され得る技術や物が、意図せず広がってしまうのを防ぐこと。ここで効いてくるのが、規制の対象は物だけではない、という点です。ミサイルの設計図そのものが規制されるわけではありません。たとえば高性能な材料の作り方や、精密な測定の手順といった、民生用にも軍事用にも使える技術が対象になります。こうした二面性を持つ品目や技術をデュアルユース品目と呼びます。
物を国外へ持ち出せば輸出です。では、技術はどうでしょうか。技術は紙にもUSBメモリにも、人の頭の中にも入ります。国境を越えなくても外国の組織へ伝わる経路が残っているわけで、そこで外為法は、技術の提供という行為そのものを規制の対象に据えました。
大学が対象になるのは、この構造の当然の帰結です。研究室が日々やっているのは、まさに技術のやりとりだからです。指導、共同研究、学会発表、装置の使い方の説明。そのすべてが法律上は技術の提供になり得ます。輸出管理を所管する経済産業省が、企業向けとは別に大学・研究機関用のガイダンスを出しているのも、この事情によるものでしょう。現行版は令和7年9月に公表された第五版で、約150ページの分量があります1。
もうひとつ、大学の方に知っておいていただきたい前提があります。提供する技術の知的財産権が大学ではなく研究者個人に帰属する場合でも、法令に則った手続は必要です1。「これは私の研究成果だから自由に扱える」という理屈は、外為法の前では通りません。ここは説明を求められる場面が多いところなので、先に書いておきます。
何が「技術の提供」にあたるのか
では、具体的にどこからが技術の提供になるのか。ここが実務でいちばん誤解されます。
外為法でいう技術とは、貨物の設計、製造または使用に必要な特定の情報を指します1。やっかいなのは、この設計・製造・使用という3つの言葉が、日常語よりずっと広く定義されている点。設計には設計研究、設計解析、プロトタイプの製作および試験、設計データ、レイアウトなど、製造前のすべての段階が含まれます。製造なら建設、生産エンジニアリング、組立て、検査、試験、品質保証といったすべての工程。使用には操作、据付、保守、修理、オーバーホール、分解修理までが入ります1。ガイダンス自身が「各一般的に想定する概念よりも広い範囲とされているので注意してください」と念を押しているほどです。
情報が伝わる形も、二通りに整理されています。ひとつは技術データで、青写真、設計図、モデル、数式、設計仕様書、マニュアル、指示書、プログラムなどがこれにあたります。紙か電子ファイルかという提供形態は問いません1。もうひとつは技術支援で、技術指導、技能訓練、作業知識の提供、コンサルティングサービスなどが含まれます。プレゼンテーションソフトを使った説明も、口頭による研究発表や指導も、ここに入ります1。
つまり、次のような場面がすべて技術提供になり得ます。
- 設計図や実験データをメールに添付して送る
- CDやUSBメモリなどの記憶媒体に入れて渡す
- インターネットなどの通信手段で外国に送信する(クラウド上のフォルダを共有して相手にアクセスさせる形も、実質的には送信と同じ機能を果たします)
- セミナーや電話で技術指導や技能訓練を行う
- 研究室で口頭により指導する
ガイダンスは、来日後6か月未満の外国人であって日本の大学等に雇用されていない方に対し、リスト規制対象となる設計図や仕様書、実験データ、プログラムをメールや記憶媒体で提供すること、セミナーや電話で技術指導や技能訓練を行うことは、非居住者への技術提供にあたり許可が必要だと明示しています1。
見落とされやすいのが、対面の場面。外国からの研究者を受け入れて施設見学や研究室での意見交換を行い、大学側が規制技術を説明する場合には事前許可が必要とされています1。しかも、一般公開している見学コースを使わずに見学者当人に限定した特別なコースを設定するなら、事前に見学コースや説明内容を精査してリスト規制技術の有無を確認しておく必要がある、とまで書かれているほどです。訪問対応こそ盲点ではないでしょうか。装置の前で「これはこうやって温度を上げていて」と説明する、あの何気ない数分。そこが該当し得るわけです。
学内の会議体も対象です。非公開の学内研究セミナー、非公開の修士論文発表会や研究発表会に非居住者や特定類型に該当する方が参加する場合には、手続が必要とされています1。渡航の有無も関係ありません。外国の大学で開かれる非公開の打合せにオンラインで参加して規制技術を提供すれば、同じく許可の対象です。
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2022年5月に加わった「特定類型」という考え方
ここまでは、誰に提供するかを居住者か非居住者かで切り分ける枠組みでした。外国人でも日本の事務所に勤務していれば居住者、入国後6か月以上経過していれば居住者です。日本人でも2年以上外国に滞在する目的で出国していれば非居住者になります1。この区分は昭和55年の通達に基づくもので、長く実務の基準でした。
そこに、2022年5月から新しい考え方が加わりました。居住者であっても、外国の政府や法人の強い影響下にある方への技術提供は許可の対象とするという整理です2。役務通達(えきむつうたつ。技術提供に関する取扱いを定めた経済産業省の通達です)が改正され、その対象を判断するための枠組みが「特定類型」として示されました。
3つの類型があります。
類型①は、契約に基づく関係です。 外国法令に基づいて設立された法人その他の団体(外国法人等)、または外国の政府、政府機関、地方公共団体、中央銀行、政党その他の政治団体(外国政府等)との間で雇用契約、委任契約、請負契約その他の契約を締結しており、その契約に基づいて相手の指揮命令に服する、または相手に対して善管注意義務を負う方が該当します1。大学での典型例は、外国大学と兼業している教職員。クロスアポイントメントもここに含まれます。もうひとつの例が、外国企業に勤務している社会人学生です。ここでいう外国企業とは国内に拠点を持たない企業を指し、外資系企業(外国企業の子会社である日本法人)は含まれません2。
類型②は、外国政府等からの経済的利益です。 外国政府等から多額の金銭その他の重大な利益を得ている方、または得ることを約している方が該当します。では「多額の」とはどのくらいか。具体的な水準は役務通達と関連するガイドラインに示されていますので、金額を記憶に頼って判断せず、実際の場面では必ず最新の原文を確認してください。大学での例としては、外国政府から留学資金の提供を受けている学生、外国政府の理工系人材獲得プログラムに参加して個人として多額の研究資金や生活費の提供を受けている研究者などが挙げられています2。
この類型②には、実務で効く但し書きがあります。多額の金銭その他の重大な利益を得ているとは、あくまで個人の所得として利益を得ている場合を指し、大学教授が大学や研究室として外国政府等から利益を受ける場合は原則として該当しない、という整理です1。経産省のスライドも、人材獲得プログラムの例で「個人として」と明記し、大学として、研究室として受ける場合と区別しました2。ただし、規制を潜脱する意図をもって形式的な受領主体を大学や研究室とし、実質的には教授個人が利益を受けると認められる場合は該当します。
類型③は、日本国内での行動に関する指示です。 本邦における行動に関し外国政府等の指示または依頼を受ける方が該当します1。類型②と③は外国政府等が対象であり、外国法人等から利益や指示を受けている方は含まれません1。ここは類型①と範囲が違うので、混同しないようにしてください。
そして、この記事でいちばんお伝えしたい事実があります。特定類型に該当するかどうかは、国籍を問いません。 ガイダンスは「特定類型に該当する者は自然人である居住者に限定されていますが、当該居住者の国籍を問いません(すなわち、日本人であっても特定類型に該当し得ます。)」と明記しています1。海外大学の教授職を兼任している日本人教授は、まさに類型①の典型例。輸出管理は外国人だけの話という理解は、ここで完全に崩れます。
もっとも、細部には例外もあります。海外大学の教授職を兼任していても、海外大学と日本の大学または当該教授との間で、日本の大学の指揮命令権が優先する関係にあることを合意している場合などは、類型①の例外にあたります1。また留学生については、たとえ海外大学に籍を置いていても、その海外大学と雇用契約や委任契約などを締結していないのであれば類型①には該当しません1。籍があるだけでは該当しない、という点は現場で誤解されやすいところです。
特定類型は「懸念者リスト」ではありません
ここで、必ず押さえていただきたい一文を引きます。経済産業省は、大学向けと企業向けの両方の資料に同じ文を置いています。
特定類型は、あくまで個別に審査で確認する必要がある場合を類型的にまとめたものであり、特定類型に該当するからといって安全保障上懸念がある者とみなされるわけではない2
該当は、手続上の区分です。その方への評価ではありません。
これは制度の建て付けとして本当に重要なところで、正直なところ、私はここが現場に伝わっていないことが最大の問題だと感じています。誓約書を配る側がこの前提を理解していないと、書類は「あなたを疑っています」という手紙として届いてしまいかねません。逆にこの一文を添えて説明すれば、多くの方は制度上の確認として受け止めてくださいます。研究室の空気は、そこで決まると思います。
もうひとつ、ガイダンスが2か所で繰り返している注記があります。
※法令は留学生等に対する指導・教育を禁止するものではないため、許可を取得した上で指導・教育を行うのであれば問題ありません。1
必要なのは、提供する技術が規制対象にあたるかを確認し、あたるなら事前に許可を取ることであって、人を選別することではありません。研究セキュリティの側でも同じ姿勢が明示されています。内閣府の有識者会議がまとめた手順書は、研究機関や研究者にゼロ・リスクを求めることはせず、対象とする技術を限定してリスクの程度に応じた合理的な対処を求めるとしたうえで、「相手方等が信頼できるパートナーであるかどうかを判断するに当たって、国籍や人種、宗教・文化等を理由とした差別的な取扱いがあってはならないことは当然である」と明記しました3。欧米各国と共有されている原則も、可能な限りアカデミアの自由と透明性と開放性を尊重し、真に守るべき領域を特定して高い塀を立てるという考え方です3。
制度は、過剰反応を防ぐところまで含めて設計されています。それでも現場で萎縮が起きるとすれば、原因は制度ではなく、判断の根拠を揃えられないところにあるのではないでしょうか。根拠がなければ、念のため止めるのがいちばん安全に見えてしまいます。この点は外国人研究者・留学生の受け入れとバックグラウンドチェックでも同じ結論を書きました。
「通常果たすべき注意義務」を果たすとはどういうことか
ここまで読んで、「では大学は、教職員や学生一人ひとりの外国との関係をすべて調べ上げなければならないのか」と不安になった方がいるかもしれません。そこは制度がきちんと線を引いています。
ガイダンスはこう書いています。技術の提供者は、取引の相手方に技術を提供するにあたり、通常果たすべき注意義務を果たした結果として確認できる範囲で、相手方が特定類型に該当するか否かを判断する必要がある、と1。何をすれば注意義務を果たしたことになるかは、役務通達の別紙1-3「特定類型の該当性の判断に係るガイドライン」に示されています。
そして、その効果が明快です。このガイドラインに従った確認をしていれば、仮に相手方が特定類型該当者であったことが後から判明した場合でも、事前許可を取得しなかったことについて無過失となり、罰則または行政処分の対象とはされません1。いわば安全港が用意されているわけです。
確認の方法は、相手が自組織の指揮命令下にあるかどうかで分かれます。
大学に雇用されていない学生、研究生、招聘教員、名誉教授などは、指揮命令下にない方として扱われます。この場合は、その取引を行ううえで通常取得することとなる契約書等の書面、たとえば出願書類や履歴書に記載された情報から該当が明らかであるのに漫然と技術提供すれば注意義務違反となります。逆に、書面から明らかでない場合は、追加で確認を行うことは求められません1。学内の非公開研究発表会に参加される方についても、参加申込書などの書面に特定類型該当が明記されていない限り、原則として非該当として扱って差し支えないとされています1。
一方、常勤か非常勤かを問わず大学に雇用される教授や講師、TAやRAとして雇用される学生、パートやアルバイトの方は、指揮命令下にある方。この場合、類型①と②については、採用の時点での自己申告(誓約書)と、在職中に新たに該当することとなった場合の報告義務によって確認します1。類型③は、指揮命令の有無にかかわらず書面ベースの確認です。
自己申告についても、負担を抑える整理がされています。提供者は自己申告の内容の真実性を確認することまでは求められていません1。虚偽の申告により無許可提供が生じたとしても、提供者が他に情報を得ていなければ無過失として扱われます。ただし裏返しもあって、誓約書の提出を拒否されるなどして申告がなかった場合には、特定類型に該当する蓋然性が排除されていないため、原則として注意義務を果たしたとは解されません1。
就業規則との関係にも実務のツボがあります。内部規則で副業を含む利益相反行為が禁止または申告制になっている場合、新たに類型①や②に該当することとなったときに報告を求めていると解される、との整理。ただし脚注に但し書きがあり、人事部門等による申告の受領のみでは不十分で、その申告により把握された情報が輸出管理部門における該当性の把握に用いられることが必要です1。人事に情報が溜まっているだけでは足りません。ここは組織設計の問題なので、着手しやすく効果も大きいところだと思います。
なお、すべてが規制対象になるわけではありません。すでに不特定多数に公開されている公知の技術の提供や、特定の製品の設計や製造を目的としない基礎科学分野の研究活動における技術提供は、例外として扱われます1。市販の教科書を用いた講義、不特定多数を対象とするオンライン講座、学会で公知とするために発表した技術の範囲内での質疑応答、査読のために論文を送ることなどが該当します。ただし落とし穴もあって、最終的に公知化を目指す技術であっても、提供の時点で公知でなければ例外にはあたりません。投稿中の未公表データは対象外。産学連携の共同研究のように特定の製品への応用を目的とする研究も、基礎科学の例外には該当しない場合が多いとされています1。ガイダンスは、例外規定の適用を個々の教員の判断に委ねることは法令違反につながり得るとして、組織としての意思決定手続に従って慎重に判断するよう求めています。
大学として、何から手をつけるか
体制の話に移ります。外為法第55条の10第4項が定めているのが、輸出者等遵守基準の遵守義務。すべての輸出者等に求められるのは、リスト規制に該当するかどうかを確認する責任者を定めることと、業務に従事する方へ最新の法令を周知し指導することの2つです。規制対象の貨物や技術を扱う場合にさらに加わるのが、組織の代表者を輸出管理の責任者とすること、組織内の管理体制を定めること、該非確認や用途と需要者の確認の手続を定めて実施すること、法令違反やそのおそれがあるときに経済産業大臣へ速やかに報告すること1。監査、研修、文書保存は努力義務です。
運用の型としては、入口・中間・出口の3段階で考えると整理しやすくなります。入口は受入れや採用の時点。外国ユーザーリストなどを用いて確認します。中間は在学中や在職中で、外国ユーザーリストは少なくとも年1回改訂されるため定期的な確認が要ります。出口は卒業時や退職時。帰国後の技術提供や物品の持ち出しがないよう注意喚起し、入学時や採用時と同様に誓約書を改めて取得することが推奨されています1。経済産業省は大学向けの自己評価チェックリストも公表していますので、現状把握にはそれを使うのが早いでしょう4。体制構築の手順そのものは輸出管理体制の作り方にまとめています。
そのうえで、負荷が集中する場所が2つあります。ひとつは該非判定(がいひはんてい。自分たちが扱う技術や物が規制リストに当てはまるかを判定する作業です)。もうひとつは、共同研究先や取引先のスクリーニングです。大学で扱う技術は分野が広く、原子力、精密加工、自動制御やロボット、化学と生化学、バイオテクノロジーと医学、高機能材料、航空宇宙、航法など、留意すべき領域が多岐にわたります1。この判定を、研究支援部門の数名で全学分こなすのは、どう考えても無理があるのではないでしょうか。しかも共同研究先の確認は、相手機関がリストに載っているかを照合するだけでは終わらず、資本関係や研究者のつながりまで見る必要が出てきます。
私たちがTRAFEEDで作っているのも、まさにこの2つの負荷を下げるためのAIエージェントです。論文約9,000万件、特許約1億件、研究者約30万人を含む2億件超のナレッジグラフに、企業リストと各国の制裁リストを重ねています。日本の安全保障輸出管理(リスト規制とキャッチオール規制)の分野におけるAIエージェントとしては世界初のもので、2026年3月時点の当社調査により確認しました。岡山大学との共同実証では、過去の審査データ約3万件を用いてAIによる判定精度95%以上を確認しています(自社調べ)。特許第7862062号を取得し、導入は20組織以上。研究者情報に加えて、株主や資本関係のリサーチにも対応を広げています。研究インテグリティと研究セキュリティへの対応は、今後の強化領域として開発を進めているところです。
ただし、これはあくまで材料を揃える道具です。最終的な判断は研究機関(企業の場合は各社の輸出管理責任者)が行います。技術が規制に該当するか、例外規定を適用してよいか、許可申請をするかを決めるのは組織であって、AIではありません。私たちが担うのは、判断に必要な情報を漏れなく集めることと、その根拠を後から説明できる形で残すことです。監査に耐える証跡を残す設計は、輸出管理で最初から作り込んできた部分でもあります。
最後に、輸出管理と研究セキュリティのつながりにも触れておきます。内閣府の有識者会議がまとめた手順書(令和7年12月)は、成果公開を前提とする競争的研究費のうち、重要技術領域に該当する技術を含む可能性があるとして所管府省が資金配分機関と相談のうえ指定した「特定研究開発プログラム」を対象に、デュー・ディリジェンスの実施を求めています。確認の対象になるのは研究代表者と共同研究代表者、そして研究代表機関に所属する研究参画者で、ここには学生も含まれます。確認事項は13項目。その12番目が「安全保障貿易管理における『非居住者』又は『特定類型』への該当性」です3。研究セキュリティの手続が、輸出管理の特定類型をそのまま確認項目として取り込んでいるわけです。ここでも求められているのはゼロ・リスクではありません。手順書は、この確認を自己申告による情報やオープンソースの情報など、各研究代表機関が通常把握し得る情報で行ってよいとしています3。逆に言えば、輸出管理の体制がある大学は、研究セキュリティ対応でも一歩先にいるとも言えます。質問票の実務は研究セキュリティ質問票の書き方に整理しました。
まとめ
- 大学も外為法の当事者です。物を輸出していなくても、技術の提供が規制対象になります
- 設計、製造、使用という言葉は日常語より広く、メール添付、記憶媒体、オンライン送信、口頭指導、施設見学、学内の非公開発表会まで対象になり得ます
- 2022年5月から特定類型が加わりました。契約による関係、外国政府等からの経済的利益、国内での行動に関する指示の3類型です
- 特定類型は国籍を問いません。日本人の教授や学生も該当し得ます
- **該当は手続上の区分であって、その方への評価ではありません。**指導や教育が禁止されるわけでもありません
- 別紙1-3のガイドラインどおりに確認していれば、後から判明しても無過失として扱われます。過剰な調査は求められていません
輸出管理の話は、どうしても「何をしてはいけないか」の話になりがちです。ただ、ガイダンスを最初から読み通してみると、書かれていることの中心は禁止ではなく、確認の手順を決めて記録に残しておくことでした。誰に、何を、どういう根拠で提供したのか。それを説明できる状態にしておくこと。研究の透明性そのものですし、共同研究の契約実務や知財管理としても、いずれ必要になることです。
まず1本、自組織の誓約書の様式を見直すところから始めてみてください。人事に集まった兼業や利益相反の申告が、輸出管理の担当まで届いているか。そこを確認するだけでも、抜けが1つ見つかると思います。着手の順番に迷っておられるなら、TRAFEEDの担当までご相談ください。
参考文献・一次情報
Footnotes
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経済産業省貿易管理部「安全保障貿易に係る機微技術管理ガイダンス(大学・研究機関用)第五版」令和7年9月 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/daigaku/guidance5.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24 ↩25 ↩26 ↩27 ↩28 ↩29 ↩30 ↩31 ↩32 ↩33
-
経済産業省貿易管理部安全保障貿易管理課「みなし輸出管理の運用明確化について」 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/minashi/meikakukanitsuite2.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
研究セキュリティと研究インテグリティの確保に関する有識者会議「研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書」令和7年12月(内閣府) https://www8.cao.go.jp/cstp/kokusaiteki/integrity/yushikisha/guidelines_v1.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
経済産業省「大学・研究機関向け 安全保障貿易管理」 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/daigaku.html ↩
